フォレスト出版編集部の寺崎です。編集の仕事をしていると「この人の本を作りたい」というのが、どうしてもある。
でも、属する出版社のジャンル傾向に合致していないと、正直厳しい。
自分のなかでそんなモヤモヤな対象が「山本耀司」だ。
山本耀司は文筆家としてスゴい
山本耀司=ヨージ・ヤマモトは日本を代表するファッションデザイナーとして広く知られているが、じつは「文章」もすごい。
たとえば著作の『MY DEAR BOMB』(岩波書店)の冒頭の一節がこれ。
ダンディズムに溢れた文体に痺れる。
「父兄参観」と題された文章の冒頭部分がこれだけど、じわじわ共感する男性も少なくないと思う。コム・デ・ギャルソンの川久保玲しかり、この世代の「世界に認めさせた日本人クリエイター」の言葉からにじみ出る反骨精神は刺激に満ちている。
もうひとつ、好きな文章を紹介する。
「どうして何もかもがこうなのだ、という人間の原初的な不公平に寄り添って生きること。それを忘れてしまえば、どんなに新しそうなことをしたとしても、人の魂には響かない」という一文は自分の仕事にも生かせる教訓という気がする。
こんな感じの山本耀司ワールドが楽しめる唯一の著作『MY DEAR BOMB』の表4帯のキャッチコピーは
いつしか、確信犯的なロックンロールが始まる。
というもの。
カバーのない洋書のような真っ黒の装丁で、随所に強烈な美意識を感じさせる『MY DEAR BOMB』。残念ながら、現在は品切れ重版未定で手に入りにくくなってるようだけど、刺さる人にはグサッと深部まで刺さる劇薬的な本です。
山本耀司はミュージシャンとしてもスゴい
ヨージ・ヤマモトはもともとミュージシャンを目指していた時期があるそうで、これまた独特の世界観を有する音楽を創り出していて、CDもいくつか発売されている。
なかでも1998年にリリースした『地下生活 Dog of Terror』という作品が傑作。当時、このアルバムの制作風景を撮影したドキュメンタリーがテレビで放映されていて、たまたま観た瞬間に「山本耀司ヤバい」と思ってCDをすぐに買った。
山本耀司の「言葉」に圧倒されたのはこれがきっかけだった。
この歌詞にぶっ飛んだ。「世界のトレンドを作り出している最先端モードの人がこんなメッセージ発してていいの?」と率直に思ったのと同時に、「絶望の時代だから絶望するんだね」と突き放した感じで言われてショックを覚えた。
※残念ながらこのCDも廃盤で、手に入りにくい。
最後に山本耀司の名言をいくつかご紹介しよう。
以上。
言葉の一粒一粒にずしりとした重みを感じさせる山本耀司の「言葉」をご紹介しました。