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罰を与える子育てがダメな根本理由

フォレスト出版編集部の寺崎です。

先日『子どもがまっすぐ育つ言葉かけ大全』の著者・三好先生をゲストにお迎えして、Voicy「フォレスト出版チャンネル」の2日分を収録しました。

放送は来月に予定していますが、そのなかで「この本で解説されている”ほめ言葉”は大人にも使えるのか?」という質問をしたところ、基本的に子どもも大人も同じで、十分使えるとのことでした。

この本では「言葉かけの基本はほめること」とあります。人の成長においては「罰を与えること」よりも「できたときにキチンとほめる」ことのほうがよっぽど効果的だそうです。

この話を聞いて思い出したのが、ヨーロッパの最先端の刑務所は行動を制限して罰を与えるのではなく、刑務所のなかで自由に往来し、冷暖房完備、好きなことがなんでもできて、なんなら無料でいろいろ学べてキャリアアップにつながり、刑務官とも仲のいいお友達・・・みたいなことを実験的にやっている刑務所があるそうです。

しかも、それを導入したら、再犯率が驚異的に減ったそうです。

ちなみに、日本の再犯率は2021年のデータで過去最悪の49・1%だそうで、刑務所に入った人のほぼ半分がまた犯罪に手を染めているわけです。

人間に罰を与えて、人を変えようとすることの無意味さが伝わる話ですね。

これ、ご家庭における「子育て」でも同じだそうです。

人はほめられてこそ、まっすぐ育つ

 誰かにほめられるというのは、うれしいものです。
 ほめ言葉は、他人からの承認であって、子どもの心に希望の光をともします。
 ましてや、親からのほめ言葉というのは、ほかの誰からよりも子どもにとってうれしいものです。
 子どもにとって、ほめ言葉はストロークそのものなのです。
 ほめられることが喜びとなります。
 ほめられることによって、きっかけになった行動を繰り返すようになります。
 このようにして、報酬などの刺激によって行動が増えることを「強化」と呼びます。
 犬をしつけるときに、私たちはごほうびを用います。
 たとえば、「おいで」と声をかけたときに犬がやってきたら、優しい声で「よくできたね」となでながらオヤツを与えます。飼い主が望む行動を犬がとったときにごほうびをあげて、その行動を強化しているのです。
 罰を与えて行動を規制するようなやり方は、よしとされません。
 犬と子どもを同列に扱うことに違和感を覚える人もいるかもしれませんが、人間も動物の一種ですから、学びの仕組みは同じことなのです。
 蛇口をひねれば、水が出てくる。それを経験して、水が欲しいときには蛇口をひねるようになります。水という報酬を得たからこそ、蛇口をひねる行動が強化されたということになります。
 このように、強化というのは、動物にとっての自然な学習の過程なのです。
 ある行動をやってみたら、欲しいものが手に入った。
 そうすると人は、望むものを手に入れるために同じ行動をとろうとする。
 このやり方で、うまくいく行動や習慣を身につけることができるのです。
 子どもは家庭生活の中で「ほめられる」という報酬を通して、強化を繰り返して成長していきます。

三好真史『子どもがまっすぐ育つ言葉かけ大全』より

われわれ人類はついつい「人間様は犬畜生より偉い」と思いがちですが、ここで指摘されている通り、人間も動物の一種なわけです。

であれば、学習のメカニズムも同じこと。

でも、子育てのシーンでも、部下を育成するシーンでも、日常のコミュニケーションでも、ほめることよりもついつい「ダメ出し」をしてしまいがち。

罰を与える子育てがダメな理由

BEFORE
親:
なんだ、その靴のぬぎ方は!
子:え?
親:きちんと靴を揃えなさいって、言っているだろう!?
子:うん……。
(あーあ、怒られちゃった。イヤな気分だなあ……)

 しかし、この強化を間違って使ってしまう親が多いのも事実です。
 それは、親が望まない行動をしたときに、子どもを叱りつけるようなやり方です。
 たとえば、子どもに靴を揃えることを教えたい親は、例のケースのように子どもを叱ってしまいます。
 これは、「自分の望まない行動をする相手に罰を与える」というやり方です。罰によって、子どもの行動を規制しようとするものです。
 なぜか、多くの親が、罰を与えることを好んでしまいます。
 うまくいっている状態を辛抱して待つよりも、その場で叱ったほうが手間をかけずに済むと考えてしまうからでしょう。
 しかし、罰を与える子育てというのは、まったくもって合理的ではありません。
 むしろ、叱責されることによって、親子の関係が悪化してしまったり、勉強や習い事などの活動そのものが嫌いになってしまったりするなど、負の効果のほうが大きくなってしまうこともあります。
 さらによくないことに、ほめることに比べると、習慣化するまでに多大な時間がかかってしまいます。罰することでしつけようとしても、なかなか子どもの行動として身につかないのです。
 子どもができるようになるまで、しっかりと待ちましょう。
 できないときにはスルーして、辛抱して待ち続け、できたときにたっぷりほめるようにするのです。

三好真史『子どもがまっすぐ育つ言葉かけ大全』より

では、どのような言い方に変えればいいのでしょうか?

アフターはこんな感じです。

AFTER
〔靴を揃えることができたときに〕
親:わっ、今日はきちんと靴を揃えることができたね! 
  さすが!【強化】
子:うん。(ほめられた。うれしいな)
親:こうしていると、次に履くときにラクだよね。見た目もきれいで気持
ちがいいよ。【強化】

子:うん!(今度からも揃えてみよう!)

 このように、ほめ言葉というものは、子どもの成長にとって重要な役割を果たします。
 そこで、本書では次のように規定しています。

「すべての言葉かけは、最終的にほめ言葉につながるものである」

 叱った後に行動が改善されたら、ほめる。
 問いかけて考えさせた後に実行に移せていれば、ほめる。
 はげました後に少しでもがんばる姿が見られれば、ほめる。
 挑発した後に取り組んでいる姿に対しても、やっぱりほめる。

 そのようにして、最終的にはほめ言葉へとつなげていくことで、前向きな心構えを育てていくようにしましょう。

【叱り言葉からのほめ言葉】
「そういうことをしたらダメだよ!」
→「きちんとできたね!」

【問いかけ言葉からのほめ言葉】
「どうすればいいと思う?」
→「考えた通りにできたね!」

【はげまし言葉からのほめ言葉】
「一緒にやってみようよ」
→「できたね! さすが!」

【挑発言葉からのほめ言葉】
「まだ、できないと思うけどなあ〜」
→「ええっ!?  できたの! すごい!」

三好真史『子どもがまっすぐ育つ言葉かけ大全』より

冒頭で申し上げたように、これ、子育てのシーンだけで使えるテクニックではないはずです。部下の育成、大人のコミュニケーション全般にも応用できるはず。

というわけで・・・今日から、ダメ出し禁止!
どんどん周りの人をほめまくっちゃいましょう!


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