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#397【ゲスト/Web3】ブロックチェーンとWeb3の基礎解説

このnoteは2022年5月19日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

土屋:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める、土屋芳輝です。本日は編集の寺崎さんと共に「ブロックチェーンとWeb3」をテーマにお伝えてしていきます。寺崎さん、どうぞよろしくお願いします。

寺崎:よろしくお願いします。

土屋:本日も素晴らしいゲストに来てもらっているということなんですけれども。

寺崎:はい。ブロックチェーンエンジニア、思想家、人権ハクティビストの落合渉悟さん、それからフリーランス編集者で、TIDY代表の塚越雅之さんです。

土屋:落合さん、塚越さん、本日はどうぞよろしくお願いします。

落合・塚越:よろしくお願いします。

ブロックチェーンで国家の中心をなくす

寺崎:落合さんが書かれた『僕たちはメタ国家で暮らすことに決めた』という初の著書が、この度フォレスト出版から出版されます。この本はタイトルの通り、ブロックチェーンを技術的に基盤にしたDAOって書いて“ダオ”と読むのですが、日本語では“自立分散型組織”と言うのですが、このDAOで、独立した共同体、あるいは国家を作ろうという、かなり壮大な計画を目論んだ本です。ちょうど今週発売されるタイミングということで、今回はVoicyのゲストとしてご出演いただきました。

土屋:Amazonの発売が今週の土曜日ということで、21日発売ということですね。

寺崎:そうなんです。すでに発売前からランキング上位に食い込んでいて、ブロックチェーン界隈では話題の新刊です。今回、この落合渉悟さんという逸材を引っ張ってきて、企画の段階から協力してくれたのがフリー編集者の塚越さんなんですけども、塚越さんとはかなり長い付き合いでして、以前のVoicyでも「フリーすぎる編集者の半生」っていう回にゲストで出てもらっているんですけども。今回は企画の経緯なんかも織り交ぜてお話したいなと思って、再びゲストとしてお招きしました。

土屋:はい。では早速なんですけれども、まずはブロックチェーンエンジニアで、思想家、人権ハクティビストの落合渉悟さんに簡単に自己紹介をお願いできすでしょうか?

落合:はい。わかりました。阪大で研究者をしている落合渉悟と申します。32歳になります。6年ぐらいブロックチェーンをやってきて、その中で一番すごい使い方ってなんだろうと思った時に、国の中心をなくしたらどうかっていうアイデアが出てきて、それを3年ぐらい研究した結果、今につながるわけですけれども。このハクティビストって、ちょっと耳慣れないと思うので軽く説明しておくと、技術の力で今までの世の中の固定的な構造を変えてしまおうっていう人たちがいるんですけど、犯罪っぽい風味じゃなくて、アノニマスみたいな匿名集団の風味じゃなくて、みんなの人権、持っている権利、これが守られるように技術を使おうという向きの人々を“人権ハクティビスト”って呼ぶ感じですね。そういう感じで、僕は中心のない組織のプログラムを書くことで世の中に今でなかったものを導入するっていうのが仕事というか、主にやっていることですね。

土屋:人権ハクティビストという肩書きは今日初めて聞いたんですけれども、そういうことなんですね。そして今回はフリーランスの編集者である、TIDY代表の塚越さんが協力してくださったとのことなのですが、どのような経緯で出版に至ったのでしょうか?

塚越:はい。落合さんは数十年に一度の才能の持ち主だと思っているんですよ。ただ僕も未知数なところがあるんですけど。元々JPYCっていう会社の岡部さんという社長さんに落合さんをご紹介していただいたんですけども、最初にウェブで調べてみると、ビジュアル、ご経歴、あらゆる意味でサラブレッドですよ。直感的に「この人はすごい!」と思って、早速アクセスして色々と調べたんですけども。でも最初に「読むぞ」と思って読んだら、落合さんが言っていることがちょっとわからなかったんですよ。言葉がすごくロジカルで、シャープで、ものすごく独自の世界観を持っているので、全然理解できなかったんですけども。でも、お話していくうちに、なんとなく落合さんの全貌っていうものがジワジワと体の中に伝わってきて、落合さんに魅了されていったわけですよ。それで、彼の記事で一番私の心を打ったのがnoteにある「現実と地続きの“民主主義”の改善」という記事で、これを皆さんに読んでいただきたいのですが。落合さんが肉声で語った、我々にもわかるような内容で、全貌を語っていると思います。さらに今回の本で落合さんをもっと深く広く、皆さんにご理解いただけるんじゃないかと思って、発売日をワクワクして待っている状態なんです。落合さんと出会って、半年ぐらいですけども、知れば知るほど深みがどんどん伝わってきて、これから10年間はもう落合さんの世界かなと思っております。そんな感じです。

寺崎:ありがとうございます。そうなんですよね。最初は僕もブロックチェーンとかって、ちんぷんかんぷんだったんですけども、塚越さんがフリーランスの立場で今、Web3界隈の企画を複数進行させていて、ある日、「すごい人がいるんだよ!」って、ものすごく興奮気味に電話してきて、半分勢いで企画した部分もるんですけど(笑)。そもそも扱うテーマが難しいので、実は結構まとめるのが大変だったんですよ。ただ私も落合さんとお付き合いする中で、すごくレイヤーの高い世界観、先ほどのnoteの記事とかもそうですけど、そういうものに刺激される形で最終的には関係者一同の熱いエネルギーが凝集して、うまく着地したみたいな、そんな感じです。

土屋:ものすごく盛り上がって、熱量がある感じで、今回の1冊ができたということなんですかね?

寺崎:そうですね。塚越さんとか、結構関わる人も多かったし、盛り上がったね。

塚越:そうですね。今回はもう落合さんの人脈で、豪華なゲスト陣が参加されていまして、東京大学大学院教授の内田先生とか、その他、豪華メンバーが勢ぞろいです。そして、皆さんがコメントを寄せてくださっていまして、それぞれすごく深いお話をされています。

佐賀の集落でDAOの共同体をつくる

寺崎:で、落合さんは、今は佐賀県にお住いなんですよ。

土屋:そうなんですね。

寺崎:そうなんですよ。佐賀県の結構山奥ですよね。

落合:山ですよ。

寺崎:だから僕はちょっと行けなかったんですけど、塚越さんが佐賀まで取材に行って、一緒に温泉入ったりとか、そんなようなことで作り上げた感じです。

土屋:今日は実はZoomでつないでいるんですけども、佐賀か・・・。

落合:はい。これ佐賀です。古民家を直して住んでおります。

土屋:へー。すごくいいですね。

落合:これから村を作っていきますね。

土屋:そういうふうな活動もされているんですね。

寺崎:そこで実際にDAOを使っていくっていうことですよね?

落合:そうですね。実際に現場でペインを抱えている人と暮らすっていうのが大事だと思います。

国家が絶対に潰せない「ブロックチェーン」の強み

土屋:なるほど。ちょっと今日は色々と聞いていきたいなと思うんですけれども、先ほどから度々話に出てくるブロックチェーンについて、実は僕もわかっているようでわかっていないので教えていただけますでしょうか?

落合:はい。ブロックチェーンっていうのはものすごく簡単に言うと、何万個もの無数のサーバーが世の中にあって、それが出たり入ったりしているんですね。これって、みずほ銀行みたいな、ああいう堅い会社のサーバーで考えたらありえないことですよね。僕が今からUFJのサーバーを立ち上げて参加しますって言ったら、残高を書き換えられそうで、めちゃくちゃ怖くないですか?

土屋:はい。

落合:だから硬いんですよ。普通は金融のシステムとか、そういう契約とかを扱うシステムって。でも参加者が自由に出入りしていいっていう不思議な性質を持っていて、これがあるから、例えば国が怒って、ある一行の銀行を潰そうと思えば、そのサーバーを全部根こそぎ消せばいいんですよ。なんだけど、ブロックチェーンって2万個あったりして、出たり入ったりしているから全部を潰すっていうのは無理なんですよね。そう考えると、絶対に潰されないものっていうのがブロックチェーンですね。

寺崎:なるほど。僕もにわかなのですが、今”Web3“って言われているのって、”Web1“がインターネットの黎明期で、”Web2.0”がインターネットの発達によって、SNSとか、高度なコミュニケーションが実現したものの、一方ではGAFAみたいな、そういう大きな権力が出てきたっていう、今まさに我々が生きている時代で、“Web3“は、これからこのGAFAとか政府といった中央がなくなって、落合さんがおっしゃられた潰されないブロックチェーンによる自立分散型システムが実現するっていう理解なんですけど、今盛んに言われている”Web3“とか”Web3.0“というのは、全て、ブロックチェーンがあるから成り立つと考えていいんですか?

落合:そうですね。基本的には潰されないシステムだとか、潰されないシステムから成り立っている契約っていう概念の相手方が、別に特定の個人でいなくても契約できちゃう。インターネット上に書きかけの契約をポイっと放流させて何年か経ってから他の人がその契約を締結するみたいな、今までありえなかったこと、不特定多数の顔の見えない相手と時間差で契約できちゃうみたいな、全く新しいことができてくる。これを使うのが”Web3.0“っていう感じなので、”Web3.0“っていう概念の範疇は広いですね。

土屋:そっか。そういう契約が相手がいなくてもできてしまうと。なるほど。わかりやすくて、ちょっと理解ができてきました。

落合:理解が進んでいく感じですね。

WEB3の根幹を担う「スマートコントラクト」とは?

土屋:もう1つ、質問なんですけども、現在、落合さんは大阪大学大学院でスマートコントラクトの研究をされているということですが、スマートコントラクトは仮想通貨のイーサリアムに使われている技術だというところまではなんとなく理解できるんですけども、これもブロックチェーン同様にいまいち理解できていないので、ご説明いただいてもよろしいでしょうか?

落合:はい。書籍を購入していただくと、めちゃくちゃ分かりやすく書いているんですけども、ちょっと切り取って・・・。
スマートコントラクトというのは契約に関することなんですけれども、普通は契約って法律の概念で一番基本的なところですけど、アリスさんとボブさんが2人でいっぺんに契約書を署名して、ハンコを押して終わりっていう話じゃないですか。もし契約が破られたら裁判所で裁きましょうという話なんですね。
なんですけど、スマートコントラクトはボブがいなくて、ボブのことを何も知らない、アリスしかそこにはいないっていう状態で、トークンを交換したいですっていう時に・・・、トークン交換も契約ですからね。インターネット上にあるブロックチェーンのトークンを貯めているスマートコントラクトに対して、「トークンAをあげるから、トークンBをちょうだい」って言ったら、くれるんですよ。ここにボブは出てこない。この契約行為って別に法人が相手方としているわけでもないし、ボブがいるわけでもない。スマートコントラクトとだけ契約しているんです。
これってすごいことで、なぜかと言うと、まず法律っていう分野でこのことを何にも文章で残せていない。何にも考察ができていないから、法的にどう扱っていいかが全くゼロなんですよ。白紙。だから、色々と新しいものがどんどん立ち上がってきてしまうということもあるんですけど。
で、もう一個のポイントとしては、スマートコントラクトとスマートコントラクト同士も契約を結べちゃうんですよ。これはコンポーザビリティって言うんですけど、日本語であえて言うなら、構成可能性とでも名付けましょうかね。組み合わせて絶対に毎回同じ結果を返してくれたり、絶対に「故障中です」みたいなこと言わないような安定感がある組み合わせ可能なプログラムなんですけど、契約同士を、スマートコントラクト同士をガッチャンガッチャン組み合わせていって、めちゃくちゃ複雑な処理を一回の行為で済ませてしまうっていう、もう魔法ですよね。お金を入れたら、色んなことが裏側でバーっと起きて、結果が返ってくるっていう状態ができて、これって今までの金融サービスだったら各会社、それぞれがいて、会社ってサーバーの調子が悪かったり、会社が潰れたり、色んなことが間に挟まってしまって、そんなに理想的にキュッと短い処理になってくれなかったわけですよ。
例えば、お金1つとってもデジタルのpaypayのお金と実際のpaypayの会社の銀行に入っているお金って、別管理じゃないですか。価値を二重に管理しちゃっているんですよ。今、僕たちが使っている金融サービスって。だけど、スマートコントラクトの世界では、価値そのものを操作できる。二重管理とかしないっていう。これとか色んな性質があって、全く新しいインターネット上のお金によるプログラミング、そして便利な行為ができるっていうのがスマートコントラクトですね。

ブロックチェーンのエンジニアという仕事

寺崎:なるほど。そもそも落合さんってなんでブロックチェーンのエンジニアになろうと思ったんですか?この世界に入るきっかけみたいなものはあったんですか?

落合:決定的なきっかけは、インドネシアにいる時に、僕はZOZOTOWNのインドネシア版みたいなやつを、当時はCTOとしてやっていたんですけど、インドネシアの人たちってクレジットカードをほとんど持っていなくて、月給が3万円位で、カードがないから、売掛とか買掛みたいな概念がなかったんですよ。そんな中、割賦支払いっていうのを通販サイトが提供するっていう流れがあって、その時に会社がちょっと金融サービスの実装に手を出したんですよ。その関係からちょうどイーサリアムが発表されて、2016年ぐらいだったかな。システム的に当時は性能が悪いとか色々とあったけど、ちゃんと過程を考えていくと、インドネシアの経済が根っこからゴロっと変わるんじゃないかなって思って、それが最初の動機ではあるんですよね。

寺崎:そうだったんですね。インドネシアっていう話ですけど、プロフィールにはない、過去のすごい経歴みたいのがあるって、チラッと聞いたんですけど、そのあたりはどうなんですか?

落合:いやー、挙げだすときりがないですけど、東京大学でも研究員をしていましたし、今はシンガポールに移転しちゃったけど、株式会社Cryptoeconomics Lab(クリプトエコノミクス ラボ)っていう会社を創業してやっておりましたし、イーサリアムの「デブコン5」っていう世界中の開発者が集るイベントで、偶然その時は日本の大阪でそれが行われていたんですけど、そこにも自分たちのチームで登壇したりもしていますし、あとはインドネシアに行くっていうのもその前をさかのぼっていけば、当時はインドネシアに行く日本人も少なかったですね。何かビジネスをやっている人とか。その時、その時に旬なフィールドにちゃんと技術力を持って立っているっていうのは意識してやっているので、話すと長くなるんですけど、色々とやっています(笑)。

塚越:落合さんのすごいところって平たく言うと、今まで儲けようと思ったらものすごく儲けられた人なんですよ。このブロックチェーンの技術もお金儲けに使おうとしている人っていっぱいいるんですよ。でも、落合さんは九州に住んで、古民家を直して暮らしているんですけど、このブロックチェーンを民主主義の改善、つまり人権の擁護に適用しようとしたところが他の人たちとは違うすごいところなんですよ。

寺崎:なるほど。そこはちょっと痺れますよね。

塚越:めちゃくちゃユニークですよ。だって、みんなはお金儲けしたいのに、落合さんはお金に興味ないんです(笑)。そこが面白いところ。

技術イノベーションが人権や民主主義を変える

落合:この間、TEDで僕が「The Fairest Democracy」っていう、トークをやっておりますけれども、これも3年ぐらいずっとアイデア自体はみんなの目に触れられる場所に公開しているし、最初は英語版で僕は出したんですよ。しかもしっかりとした論文の形で。で、ずっと公開しているんだけど、ブロックチェーンに関係する人ってやっぱりお金儲けに興味がすごくあるから、お金っていうものを技術力で変えていって世界を変えるんだっていうふうに発想が引っ張られちゃっているから、どうしても人権とか、民主主義って、「いや、そんなのは終わったものだよ」っていう感じの態度を取る人が多くて、3年間も僕は仕様まで全てのアイデアをオープンにしていたのに、全然誰も始めないから、しょうがないから僕が始めようっていうところでやっているんですけど。
ですから、本当に時間をかけて、暇をちゃんと作って、ブロックチェーンの一番本質で、すごいところって何なんだろうって考えたら、お金じゃないんですよ。人間が組織したり、自分たちを統率する。統率するっていうのは独裁者が統率するわけじゃなくて。例えば、災害が起きた時に配給をもらうには列をなさなきゃいけないよねっていうのって、日本人はわかっているじゃないですか。そういう統率ってものを、どうとれば一番ベストなんだろうっていうところを考える上で、中心がない組織っていうものができるっていうことは、これからすごく重要な基礎になってくるんですよ。
だって、今まで中心がないと、偉い人がいないと、何もできないっていう前提が僕たちの頭の中には強くあったわけだから。今、その凝り固まった考え方を1回捨てるっていう機会が来ているんですよ。なのに、お金の話をしていてもしょうがないですよ。イノベーションとかどうでもいいんですよ。

寺崎:なるほど(笑)。ちなみに今回の新刊でも、TEDの「The Fairest Democracy」の英文と原文と「最も公正な民主主義」というタイトルの日本語の翻訳を全部掲載しています。これ、すごく短いスピーチなんですけど、今落合さんがおっしゃったような公正な民主主義国家を作ることも可能だという理論が述べられていて、未来への希望が湧く内容になっています。

土屋:僕もブロックチェーンに関しては、お金のイメージしかなかったので、お話を聞いて、そういう大前提に縛られていたなっていうのを気づきました。

塚越:今、世の中が物騒になって、権力のある人が色んなことを恣意的にコントロールしちゃうような世界がある中で、落合さんの今回の本ってすごくちょうどいいタイミングだったと思うんですよ。今、GAFA、その他に色んな情報を抜き取られたり、色んな権力者が自由に振る舞うような時代に、落合さんの考え方ってすごくエポックなテーマなんですよ。そこをみんなに知ってほしいと思うんですよね。

寺崎:ありがとうございます。

寺崎:そうですね。今、言われたような話がこの本のタイトルの“メタ国家”というふうに膨らんでいくわけなんだと思うんですけれども、今日はそろそろお時間ということで、明日もまた落合さんからお話が聞けるということで、明日は「DAOで国家をつくる・メタ国家」をテーマに、さらに踏み込んでお話を聞いてみたいと思います。ぜひリスナーの皆さんも明日もお聞きいただければと思います。ということで、落合さん、塚越さん、寺崎さん、本日はありがとうございました。

落合・塚越:ありがとうございました。

寺崎:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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