見出し画像

小沢健二「東大900番講堂講義」オンライン配信メモ

フォレスト出版編集部の寺崎です。

昨年9月、フリッパーズギター時代から愛してやまないオザケンこと小沢健二さんが、母校である東京大学で「東大900番講堂講義」なるものを実施しました。残念ながら、この企画の存在を知ったとき、すでに開催終了していました。

「く~、行きたかったーーー!」と悔しがっていたら、なんと、2024年1月1日に音声配信されるとのニュースが!
注:音声配信は1月5日23:59まで。

音声配信に先駆けて、講義で使用する教科書の受注販売が昨年10月25日にスタート。さっそくポチりました。教科書が7000円、オンライン音声配信チケットが1800円と、そこそこのお値段ですが。

ちなみに東大の「900番講堂」とは、全共闘と三島由紀夫が大討論会をやった例の伝説の場所です。もうそれだけで萌える。実際のオザケン講義でもオザケンが開口一番に「三島ゆきおーー!」と叫んでました。

さて、いざ届いた教科書をみてビックリ!

全126ページの大判アートブック仕様で、透明の仕掛けページや蛍光・夜光塗料、ラメ入り印刷など、さまざまな特殊加工を施した豪華な作り。これで7000円はむしろ安いのでは・・・?

すべてオザケンみずからデザインしたそうです。
ホント多才なひとだなぁ。

講義は3時間ぶっ通しで行われました。

その内容はというと、知的刺激に満ち満ちたもの。これまでオザケンが思考を重ねてきたものがランダムに展開されつつ、最後には一本の線が通った主張が浮かび上がります。

そのうちのいくつか、ネタバレになりますが、ご紹介します。


画面越しの生活では「色」がぜんぜん視えてない!?

教科書にはこんなページがありました。カラーパレットのような感じですね。これ、肉眼では微妙なグラデーションがすべて視覚に収めることができます(画像ではわかりにくいですが、上のほうのグリーンは外側に向けて濃くなっています)。

ところが――。

次のページに用意されている透明のページを重ねます(反射しちゃって見にくくて、すみません)。この真ん中の三角が我々が普段スマホやパソコンで眺めているsRGBというカラープロファイルで視ることができる範囲だそうです。

つまり、上の画像にある外側の濃淡がスマホやパソコンでは表現できないのです。故に、洋服の世界では「美しいグラデーションのグリーンのモヘアセーター」のような商品がネットでは売れなくなってきている。

だから最近、アパレルに従事する人は、かならずスマホで写真を撮って色の確認をするらしいです。

これって、洋服の世界だけの問題ではない気がします。

哲学者・プラトンの国家観がガチでヤバかった

哲学界の偉人・プラトン。
なんとなく聖人君子のイメージがあります。
「プラトニック・ラブ」なんて言葉の語源にもなってます。

しかし、代表的著作『国家』をひもとくと、けっこうとんでもないことを言ってるんです。

「そしてまた、たくさんの種々さまざまな欲望や快楽や苦痛を、主として子供たちや女たちや召使たちや、さらに自由人とは名ばかりの多くのつまらぬ人たちのなかに、ひとは見出すことができるだろう」「ええ、たしかに」「他方しかし、単純にして適正な欲望、知性と正しい思わくに助けられ、思惟によって導かれる欲望はといえば、君はそれを少数の、最もすぐれた素質と最もすぐれた教育を与えられた人々のなかにしか、見出さないだろう」「そのとおりです」と彼は答えた。「それでは、こうした事情がちゃんと君の国家のなかに存在していて、そこでは、多数のつまらぬ人たちのいだく欲望が、それよりも数の少ない、よりすぐれた人々の欲望と思慮の制御のもとに支配されているのを、君は目にするのではないかね」「ええ、たしかにそのとおりです」と彼は答えた。

プラトン著、藤沢令夫訳『国家』上より

ここから読み取れるのは、少数の優れた素質と教育を与えられた人々が、「多数のつまらぬ人たちの欲望」を制御・支配すべしという考え方です。

国家というある種の「暴力装置」としての存在意義の根本が、プラトンの時代にすでに明快に示されていて、いまに至る……というファクトに慄きます。

で、ですね、次に示す引用がもっとヤバいんです。

最もすぐれた男たちは最もすぐれた女たちと、できるだけしばしば交わらなければならないし、最も劣った男たちと最も劣った女たちは、その逆でなければならない。また一方から生まれた子供たちは育て、他方の子どもたちは育ててはならない。(中略)そしてすべてこうしたことは、支配者たち自身以外には気づかれないように行われなければならない。

プラトン著、藤沢令夫訳『国家』上より

もはや、これは完全に優生思想なので、ガチでヤバいっすね。
プラトンさんの印象がちょっと変わってしまう講義内容でした。

日本が世界を征服してたらこんな世界地図になってるはず

最後に。
これも面白かった!というのをご紹介します。

この世界地図、ヘンですよね?

この地図、なんだと思いますか?
最初に答えを申し上げると「英語脳でみる違和感を日本語脳で表現した」という地図なんです。

カナダのニューファンドランド
=先住民が住んでいた土地を征服した⇒新発見地

アメリカのニューヨーク
=イギリスのヨーク州の新しい州⇒新大阪(駅だよ!)

アメリカのニューオーリンズ
新和歌山

アマゾン(ギリシャの女神アマゾネスから命名)
⇒伊邪那美密林(いざなみみつりん)

アフリカのケープタウン
⇒羽織町

ヨハネスブルク(聖ヨハネの街)
⇒太郎町

エベレスト(インドを支配していた時代の提督から由来)
⇒伊藤山(伊藤博文から命名)

オーストラリアのダーウィン(科学者の名前が由来)
⇒野口(野口英世から命名)

オーストラリアのアデレード(お妃さまの名前が由来)
⇒瀬名姫

サンフランシスコ(聖フランシスの名前が由来)
⇒日蓮聖人

一見して、くだらない洒落のように思えますが、よくよく考えると、今の世界地図には帝国主義の時代の傷跡が至るところに残っているわけです。たしかに言われてみれば、そっちのほうが不自然だよなぁと感じました。

・・・というわけで、目からうろこが落ちまくったオザケン「東大900番講堂講義」のご紹介でした。

こちらは講義でもライブ演奏された名曲『アルペジオ』


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?