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ブラック企業でもホワイト企業でも、若手が離職したくなるってホント?

こんにちは。
フォレスト出版、編集部の美馬です。

「ホワイト離職」「ゆるい職場」という言葉をご存じでしょうか。近年、会社や仕事がゆるすぎて退職する若手が急増しているようです。

コロナ禍の影響で完全リモートワークを推進する企業が増え、未だに入社してから1度も出社したことがないという若手社員もいると言います。また、パワハラだのセクハラだのを意識するあまり、下手に部下に指摘ができず、ミスをしても𠮟責しないという上司も増えているようです。さらに、ブラック企業認定されないようにと、意図的に業務量を減らし、責任の伴わない仕事を部下に振るようにしている職場も散見されています。

こうしたホワイトすぎる会社、ゆるすぎる職場が若手社員の不安を煽り、もっと自分の成長が見込めるような仕事を求めて転職をする若者が急増しているのです。「若手社員の離職が増えている」と危機感を募らせる人事担当者は少なくないかと思います。

そんな新時代の、若者・仕事・日本社会をわかりやすく解説した書籍があります。今回は、リクルートワークス研究所・古屋星斗・著『ゆるい職場 若者の不安の知られざる理由』(中央公論新社)から、近年の就労状況の変化と若手を取り巻く職場環境の実際を覗いてみます。


日本の職場を変えた3つの法律

令和、コロナ禍入社組の当事者である私自身、一昔前の職場の雰囲気というものは想像でしかないですが、極端なところ若手は「怒られてなんぼ」、𠮟咤激励されて成長するものだと思っていました。
では、そんな職場の雰囲気を壊し「ゆるい職場」をつくりあげた原因は何にあるのでしょうか。それは、①若者雇用促進法②働き方改革関連法③パワーハラスメント防止法の3つの法律が施行されたことが関係しているようです。

こうした職場環境改善の動き自体は素晴らしいことです。しかし、著者がさまざまな業種の大手企業の新入社員に仕事についてのインタビューを実施したところ、驚くべきことに多くの若手が「正直言って、余力があります」「ゆるい。社会人ってこんなものなんですね」「学生時代に近くて肩透かしです」といった”持て余し感”を抱えていたと言うのです。

さらに、「𠮟られたことは本当に一度もないです」「理不尽なことを言われたことはありません」といったコメントが”ほとんど全員”から返ってきたと言います。 新人1年目と言えば、ミスを連発して怒られたり、慣れない社会人生活が続くことでストレスを多く感じるものかと思います。こうした就職前に想像していた職場のイメージと現実のギャップから、リアリティショックを起こす者もいるようです。

職場環境が良くなっているのになぜ不安になってしまうのか

新入社員を取り巻く職場環境が変化していることがわかりました。さらに調査を進めると、若者たちの認識における現在の職場環境については「比較的負荷が低く、職場環境もサポーティブで、想像を悪い方向へ裏切られることも少なく、会社のことは以前の新入社員より好き」であるという相対的傾向が見られたと言います。

一方で、新入社員の多くが同時に「ストレス実感は決して低くなく、自分は別の会社や部署では通用しなくなるのでは、などの”不安”を抱えている」ということも明らかになっています。ゆるい職場に心地よさを感じている反面、だからこそ自分のキャリアに不安を感じているという、ジレンマを抱えていうわけです。これまでの不満型転職から、不安型転職へ移行しつつあるのです。

若手の不安は解消できない?

仮に若手が抱えているものが、職場や仕事に対する「不満」であれば、これを解消してあげるのは簡単だと著者は言います。

会社や上司に対する不満を晴らすためには、同僚や同期と飲みに行って愚痴を言い合えばたちまちその何割かは解決していたかもしれない。はたまた、上司や先輩が不満を抱えていそうな部下を察して「一杯いくか」と 1対 1で飲みに行き、腹を割って話せば、若手の悶々としていた悩みもどこかへ行ってしまっていたかもしれない。上司の指示や𠮟責が理不尽で納得がいかなくて、それでも飲み込んで働いている若手にはこうした機会こそが解決手段となりえた。深夜土日まで自分だけが残業して不満を溜めていても、上司から「見てるぞ」「頑張ってるな」と言われればその一言で震えるほど嬉しかった、という経験がある読者も多いのではないか。  

『ゆるい職場 若者の不安の知られざる理由』(古屋星斗/中央公論新社)

一方で、「不安」、特にキャリアに関する不安の解消は簡単にできないのは想像に難くありません。

この職場で仕事をしていたら転職できなくなっていくのではないか、同世代と比べて差をつけられているのではないか。こうした不安を抱えている若手がいるとしよう。上司が一緒に飲みに行く、というこれまでの不満解消手段は何の役にも立たないと想像できる。同僚と愚痴りあって飲み明かしても、今日もまた 3時間もいつもと同じ話をしてしまった、と非生産的に感じるだけであろう。また、上司から「見てるぞ」と言われたところで、その瞬間は嬉しいだろうが、上司が少し見て評価してくれたところで、労働市場における自分の価値が上がるわけではない。不満解消型のマネジメント・コミュニケーションは、このキャリア不安の問題に対して何の有効性もない。

『ゆるい職場 若者の不安の知られざる理由』(古屋星斗/中央公論新社)

というわけで、職場や上司は若手のキャリア不安をいかにして解消するのか、というこれまでに日本企業が直面したことのない新たな課題が発生しているのです。

それでは、次回、この話の続きをしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。


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