【ベストセラー解剖】『1分で話せ』
フォレスト出版編集部の寺崎です。
今日は50万部のベストセラーとなっている伊藤羊一さんの『1分で話せ』(SBクリエイティブ)のベストセラーたる所以に迫ってみたいと思う。
まず、タイトル。
『1分で話せ』
シンプルですね。たった5文字。
しかも命令形。
命令形は読者の反発を誘うので危険ではありますが、「○○したいなら○○しろ!」みたいに畳みかけて言われるのではなく、さらっと「1分で話せ」の場合、「え?」と気を引く感じがします。
タイトルの前につく前サブ(タイトルの前につくサブタイトルなので「前サブ」と呼ぶ)はこうです。
世界のトップが絶賛した
大事なことだけシンプルに伝える技術
言いたいことがギュッと凝縮されていて、いい前サブですね。
では、帯を見てみましょう。
「結論」+「根拠」+「たとえば」で=相手の右脳と左脳を動かす
この帯文句は最初から現在の50万部帯までずっと変わってないみたいです。いま手元にあるバージョンは「齋藤孝先生推薦!」が入っていて、「48万部のベストセラー」とあります。
この帯文言はけっこうわかりにくいと思うんですが、どうなんでしょうか。なんかもっとこう、1行ズバーンッ!みたいな帯がベストセラーには多い印象なので、意外だったりします。
売れている本の帯キャッチ変えるのって、勇気いるんですよね。ここは変えないで正解だったのでしょう。
続いて、カバーの袖を見ていこう。
この表紙をめくった右側にみえるカバー袖の部分は出版業界では「表2」というのですが(書店で表に向く面が「表1」)、ビジネス書の世界では表2にどのようなメッセージを込めるかがけっこう重要で、だれもが苦心しているところです。
文芸書とかだと、ここが空白だったりしますが、ビジネス書・実用書の世界ではだいたいここに宣伝文句が入ります。
で、この『1分で話せ』の表2ですが、やはりよくできています。
90%の人は、1分で話せないばかりに、損をしている!
⇒断言によるサプライズ
「論理的な話し方」や「プレゼン」の本だけではつかめない
⇒希少性・限定性の提示
「何倍も伝わり方が変わる」方法を紹介します。
⇒読んでみようと進む気持ちを押す
この本では結局、1分で話すことで、なにがしたいかというと「人を動かしたい」わけです。ここがきわめて重要で、単なる話し方の本ではないところに強い存在価値があります。
コミュニケーションの究極的なゴールは「自分以外の人を自分の思い通りに動かすこと」だと思います。このことが明確にゴールとされていない「話し方本」が多いなか、本書はそこをビシっと貫いています。
本書がベストセラーたる所以はここにあるのかもしれない。
本格的な内容に入る前に、誰かに伝えたり、プレゼンをしたりする前に、ぜひ覚えておいていただきたい考え方を説明したいと思います。
人に何かを伝える際、「そもそも何のために自分はここにいるのか?何のためにプレゼンするのか?」ということを明確に意識しながら、できていますか?
なぜ意識しなければいけないかというと、それは、「聞き手を動かすため」です。聞き手は、あなたが望んでいるところにまだいません。だから、伝えること、プレゼンすることが必要なのです。言葉を使って、あなたが望むゴールに、聞き手を動かしていく、これが大事なのです。
当たり前のことにように思えますが、実際には、それを意識されていない方が非常に多いです。
「上司に報告しろと言われたからプレゼンする」
「とりあえず自分の意図を理解してほしいからプレゼンする」
こんなことでは、いい結果は生まれません。
「相手を動かす」
これをまず、明確に意識しましょう。
こうした「原則」からはじまって、具体的な方法論が展開されていく。
中面にはこのようなページも随所に差し込まれていて、読者が一瞬考える仕掛けがある。
で、もっとも秀逸だなーと思ったのは、書籍冒頭から「まえがき」へのドラマチックな流れです。
当然、後者ですね。
「そんなの当たり前だよ」と思われるかもしれません。
でも、私が見ている限り、95%くらいの方はいらない話を省けないばかりに、伝わらない状態でいます。しかも、そのことに気づかない。
はっきりいって、もったいないことです。
少し不要な話をなくて短く伝えられていたら、あの提案は通っていたかもしれません。
短く報告できていたら、上司も仕事がやりやすくなり、あなたをもっと信頼していたかもしれません。
短く適切に相手の記憶に残せたら、普段会えない経営者に認められ、千載一遇のチャンスをつかめていたかもしれません。
本当にそれだけ重要なことなのに、皆さん、うまくできていない。
それもそのはずで、ちょうどいいテキストがないからだと思うのです。
世にいう「論理的な話し方」や「プレゼン」の本では、何かが欠けているのです。
だったら、伝えるための「根本」を皆さんにお伝えしようじゃないか、というのがこの本です。
読めば、「こんなことで何倍にも伝わり方が変わるんだ」と実感されると思います。
と、このように「ふむふむ、なるほど」と読み進んだところに、こうくるのです。
まえがき 私は、人に何かを伝えることが本当に苦手だった
「ええーーー!」
「そうだったの?」
もう、ここで読者のハート、わしづかみです。
この「まえがき」ではざっくり次の事実がまとめられています。
◎著者は社会人歴28年
◎現在はヤフーアカデミアという企業内大学の学長としてプレゼンの指導などをしている
◎グロービス経営大学院の客員教授
◎新卒で日本興業銀行に入ってから数年はプレゼンが大の苦手
◎グロービスの授業で「ストーリーの作り方」を学んだのが契機となる
◎現場で実践しながら「伝えるスキル」を磨く
で、ハイライトは2011年。
ソフトバンクの孫正義社長の発案で、孫社長の後継者を育てる「ソフトバンクアカデミア」」の募集があり、これに応募。
私にとって決定的だったのは、2011年、ソフトバンクの孫正義社長の発案で、孫社長の後継者を育てるという「ソフトバンクアカデミア」の募集があったことです。特にソフトバンクにも孫社長にもこれといった興味があったわけではなかったのですが、選考はすべてプレゼンにて行うとあり、「最終選考プレゼンは私が見ます」と孫社長が言っている。「あの有名なすごい経営者に会うことができるかもしれない」「それはおもしろそうだ」という軽い気持ちで応募したわけです。
選考は3回のプレゼンでした。1回目と2回目はソフトバンクの幹部の方が審査員でしたが、これを軽く乗り越え、最終予選に進み、孫社長の前でプレゼンしました。そして合格。あれ、ひょっとして自分はプレゼンテーションは得意になっているかもしれないという気がしてきました。
入校して初回のプレゼンは、孫社長やソフトバンクの幹部、他のソフトバンクアカデミア生の前でプレゼンを行い、全出場者中、2位の成績を収めました。出席者からは「プレゼンがすごい!」「熱量がすごい!」と驚かれ、何より孫社長からは「おもしろいね!任せてみたいね!」と特別にコメントをいただき、うれしい経験をしました。何より自分に「伝える力」がついてきて、人に「おもしろい!」と思ってくれるくらいまでになってきたということに特に感激しました。
本書では、私がこの長い時間をかけて得てきた自分のスキルを、余すことなく皆さんに伝授しようと思います。本書は、「伝える力」を世界で一番簡単に習得できることを目指しています。結果として、世界で最も「はっ」とするような気づきを得てもらえたら、と願っています。
さあ、「コミュニケーションで相手に動いてもらう」ことを楽しむ旅に出発しましょう
うーん・・・誠に秀逸です。
これ、絶対に読みたくなるじゃないですか。
「孫正義に褒められた」
こういう圧倒的な実績があるとデカいですね。
もちろん内容も良いから50万部のベストセラーになるわけですが、こうした「導入部分のしかけ」が読者を引きこんでいるという好例だなぁと勉強になりました。
というわけで、ベストセラー解剖『1分で話せ』でした。
ところで、9/18に『ビジネスライブ配信のはじめ方』という新刊が発売されます。タイトル通り、この本は「ライブ配信でビジネスを展開する」内容なのですが、本を告知するにあたってもライブ配信を活用しよう!とのことで、弊社デジタルメディア局のプロデューサー中原拓哉がMCを務め、著者・赤城良典さんをゲストに明日ライブ配信第1弾を実施することになりました。
9/7(火)14:00〜 ライブ配信『今、なぜライブ配信がアツいのか?』
ビジネスライバーの第一人者である赤城さんとコメントで直接コミュニケーションも取れますので、ぜひライブでご視聴ください。上記リンクに飛んでリマインダー設定をクリックしてもらえると、見逃しがありませんので、ぜひ!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?