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少年院に入った子や政治家は本当に犯した罪を反省できるのか? 反省しているのか?

私は過ちを犯しても反省ができないダメな人間です。
できるだけ自尊心が傷つかないように、できるだけ今の立場が揺るがないように、自分の行動の正当性を無理くり考えて自己弁護します。
迷惑をかけた相手には「仕方なかったんです」「悪気はなかったんです」感を出しながら、一応頭を下げつつも上目遣いでベロを出し、「チッ うるせぇな」と思っているような男なのです。
ですので、こういう「反省」をする、このお方の言葉、思考回路には、非常に理解・納得・共感できるわけです(バーベキュー好きなところなんかも一緒!)。

おそらく、最初から「思い」を伝える気などなかったのでしょう。野党をはじめとした反対派の言葉を聞く気もなかったし。同類の人間として気持ちがわかります。ところで、壺の件はどうなったんですか?

そして、こういう「反省してま~す」という方々が少年法の厳罰化について国会で議論をしているわけです。このデタラメさに頭がクラクラするという真面目な人も多いのではないでしょうか。
ちなみに、少年法は少年に罰を与えるのではなく、少年に適切な保護を施すことを目的とした法律です。そこには子どもは大人よりも「立ち直る能力が高い」という考えが基づいているからです。少年は、非行や犯罪などの悪に染まりやすい反面、本人への教育的な働きかけや環境の調整などによって劇的に反社会的な性格や考えが改善される可能性が大きいというのです(受け売りです)。
では、実際に少年院に入った子たちは、本当に自分の犯した罪に向き合い、反省しているのでしょうか? 大人がこの体たらくなので、何をか言わんや……という感じもしますが……。
そんな疑問に答えるために、元少年院の先生での著作で、このジャンルでは異例の3刷と好評発売中の犯罪学教室かなえ先生『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』の中から、少年院での贖罪プログラムに解説した箇所を本記事用に一部抜粋してお届けします。

いじめのニュースなどで、加害者側の「いじめているつもりはなかった。遊びです」「本人は楽しそうだった」「死んだからって、別に何とも思わない」……などの言葉が取り上げられます。なぜ、ここまで他人の気持ちがわからないのかと不思議に思いますし、こんな私でも怒りに震えます。
そんな加害者がどうやって贖罪に目覚めるのか……。
じつは、日々他人に迷惑をかけ、自己弁護と自己憐憫を繰り返す私のような人間にはとても参考になる手法が紹介されています。


少年院に入った少年たちは、本当に反省している?

 さて、「少年院に収容されている少年たちは本当に反省しているのか」という問いについてお答えしましょう。
 これは、私の生放送やSNSに一番多く投げかけられる質問です。
 正直に回答すると、多くの少年は反省しています。
 かれらは、少年院に来て初めて自分の行いを反省する機会を持ち、少年院に勤務する法務教官や篤志面接員(悩み相談や面談、講話を開いてくれる、お坊さんや牧師さんなどのボランティアの方たち)との関わりの中で、犯罪に手を染めてしまう自身の問題点とまっすぐ向き合うようになります。
 また、神戸連続児童殺傷事件後には、それまで個々の少年院で独自に実施していた「贖罪教育」が、改めて「被害者の視点を取り入れた教育」として実施されるようになりました。
 対象者は、被害者の命を奪った者(殺人や傷害致死などの生命犯と呼ばれる人)や被害者の体に重大な被害をもたらす犯罪を犯し、被害者や遺族等への賠償や贖罪等について特に考えさせる必要のある者です。
 具体的な内容としては、おおむね3〜6カ月の間に、ゲストスピーカーによる講演やグループワーク、犯罪被害者の手記の読書感想文の作成などのプログラムを実施します。そして、再犯しない心の土壌の醸成だけでなく自らの罪と向き合うことで過ちの大きさや被害者や遺族等の心情等を認識させて、今後、誠意を持って対応することを目的としています。

 一方で、少年院の中では反省できていたものの、施設から社会に復帰してすぐに悪の誘惑に負けてしまい、再犯をしてしまう者もいます。
 そのため、少年院に勤務する法務教官も、一時的な反省ではなく、施設を離れた際も反省や立ち直りの決意が揺るがないように根気よく指導を継続します。

ロールレタリングで相手の気持ちを考えよう

「被害者の視点を取り入れた教育」のカリキュラムの1つにはロールレタリング(役割交換書簡法)がありました。
 これは院生が家族や被害者に対して手紙を書き(投函はしない)、さらにその手紙に対する返信を院生みずからが家族や被害者になりきって書く、一種のロールプレイングです。昭和50年代半ばに少年院で開発され、現在では少年院の外でも心理療法として活用されています。
 自分の中に鬱積した感情をはき出すことで心の中が整理され、かつ相手の立場に立つことで、その感情への理解や共感が促進され、自身の至らなさや罪の重さ、被害者の心情を改めて実感できるようになります。

「平成17年版犯罪白書」には次のように記されています。

 ロールレタリングが少年院で実際にどのように行われているかを見るため、ここでは、「母親」を相手方とする例について説明します。ロールレタリングの開始当初は、例えば、
「心配をかけてごめんなさい。」(在院者→母親)
「少年院でしっかり反省して更生しなさい。」(母親→在院者)
 といった表面的で無難なやりとりや、あるいは、
「お母さんとは二度と会いたくありません。」(在院者→母親)
「もう、母さんもお前の面倒を見るのには疲れました。悪いけど、引受人にはなれません。」(母親→在院者)
 といった敵意や反感をあらわにしたやりとりに終始することがあります。しかし、次第に、
「小学校の時、お父さんとお母さんが突然離婚してショックだった。学校から帰って、誰もいない家で一人で夕飯を食べるのが寂しかった。」(在院者→母親)
「寂しい思いをさせてごめんね。お前や弟たちにお金の心配をかけたくなかったから、母さんも働くことに精一杯でした。でも、両親が離婚した子がみんな非行に走るわけではないのだから、お前も、楽な方に逃げるのはやめてください。」(母親→在院者)
 といったように、それまで内心にうっ積していた不満や葛藤を吐き出すようになります。その結果、在院者は、少しずつ気持ちが整理され、それに伴って、相手方の感情や立場にも徐々に理解を示すことができるようになります。そして、相手方から自分を見た場合の至らない点や自己中心的だった自分の態度に気付くようになっていくのです。

「自分が加害者だという自覚があり、かつ反省が必要という思いがある」「親との関係がギクシャクしている」「友だちとケンカをしている」……など、何かしら心に強い葛藤がある人は、ぜひ日記に気持ちをまとめるなどして擬似的なロールレタリングを実践してみてください。思いもよらなかった自分の本心を知ったり、解決の糸口を見つけられるかもしれません。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 いしぐろ)

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