見出し画像

【フォレスト出版チャンネル #32】ゲスト|古市憲寿さんも絶賛! ベストセラー「職業別日記」シリーズ誕生秘話

このnoteは2020年12月29日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

社名に込められた3つの意味

渡部:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティの渡部洋平です。今日は12月29日ということで、2020年もあと3日を残すところになってまいりました。今日はすごく熱くパワフルなゲストが来てくださっております。今回のゲストは出版社・三五館シンシャ代表取締役社長にして編集者でもある中野長武(なかの・おさむ)さんに来ていただいております。フォレスト出版編集部の森上さんとともにお伝えしていきたいと思います。お二人ともよろしくお願いします。

中野・森上:よろしくお願いします。

渡部:私たちフォレスト出版と関係が深い三五館シンシャさんなんですけれども、まずは中野さんに自己紹介をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

中野:三五館シンシャの中野長武といいます。三五館はそもそも1992年に創業した出版社で、私が2000年にそこに押しかけて入るようなかたちで入社しまして。その三五館が2017年の10月に潰れちゃったんですね。それで三五館に入って18年やっていましたので、三五館の名前を残したいなと思いまして。ただ潰れちゃったもんですから、流通をどうしたらいいのかっていうことで、いろいろな問題がありまして。トーハン、日販にそれとなく話をしてみたんですけど、三五館が10月に潰れて、そこから数カ月で三五館シンシャとかって言いやがるのは、なかなか問題なんじゃないかというようなことで、流通面をどうしようかなと模索をしていたときに、フォレスト出版の太田さんからお話をいただいて「“発売”という部分で流通面をフォローしてあげるよ」と言っていただいて、うちが“発行”でフォレスト出版が“発売”という形式で、今、本を出させてもらっているというわけです。

渡部:はい、ありがとうございます。

森上:三五館シンシャの“シンシャ”って“新しい社”じゃないんですよね?

中野:“新しい社”と“深く謝る”。これは、倒産して、いろいろな人に迷惑をかけましたので、深いお詫びと、それから立ち上げにあたって、フォレスト出版や、著者の方々も印刷所もそうですし、お世話になったところがあるんで、そこへの「感謝」ということですね。深いお詫び、心からの感謝、それから新しい会社という3つの意味合いで、三五館シンシャとカタカナでやっております。

渡部:三五館シンシャの“シンシャ”はカタカナですからね。3つの意味が込められているんですね! 森上さん、中野さんとはかなり付き合いが長いということなんですけど、どんな仲なんですか?

森上:私が2011年の8月まで三五館シンシャの前身である、三五館という出版社に在籍していまして、中野さんとは同僚の編集としてやっていたという経緯なんですね。その関係でずっとお付き合いさせていただいております。

3社持ち込んで断られた原稿をベストセラーに

渡部:そういうご関係なんですね。では、さっそく具体的なお話を中野さんにしていただきたいんですけれども、三五館シンシャさんと言えば、『交通誘導員ヨレヨレ日記』をはじめ、職業別日記シリーズがすごいベストセラーになっていますよね。

中野:最初に出たのが『交通誘導員ヨレヨレ日記』という本で、この本が出るまでは三五館シンシャがヨレヨレだったんですよ。

渡部・森上:(笑)

森上:これは、いつ(刊行)ですか?

中野:これが2019年の7月に(出ました)。

森上:去年の7月。

中野:まさに暑い時期なんですよね。だから、サブタイトルに「本日も炎天下」と銘打っているのは、まさにこの7月に出たときのタイミングなんですよ。でも、今は冬になっちゃっているんで、新聞広告では「本日も氷点下」と切り替えながらやっています。

渡部:広告とかもすごくユニークですよね。

森上:結構攻めていますよね。

中野:はい。これは、2017年の4月の持ち込みなんですよ。著者の柏耕一さんが編集プロダクションをやっていまして、柏さんの方も上手くいかなくなってしまって、3年ぐらい交通誘導員をやらざるを得なくなって、それを自分の体験としてまとめたものを、実はうちの前に3社ぐらい持ち込んでいるんですよ。でも、「交通誘導員の本なんか売れない」ということでNGが出て、で、4社目にうちに話が来まして。そこで読んでみたら面白い。ぜひやりましょうと、すぐ私はやろうかなと思ったんですけどね。今(2020年12月現在)、7万6,000部まで10刷でいっているんですよ。ここまで売れるとは思ってないですから。まあ重版はいくかな、と。初版5000部で2000部、2000部ぐらいいったら、いいかなぐらい。1万弱までいけば成功かな、というくらいの感じでやったんですよね。そしたら、あれよ、あれよという間に、どんどん刷りを重ねていって部数が伸びていったという経緯がありますね。

森上:あれって、もともと持ち込まれた時点で日記だったんですか?

中野:日記だったんです。

森上:そうだったんですか。柏さんご自身が編集者でもあったんですよね?

中野:そうです。柏さんは編集プロダクションを経営していて、いくつも本を作っていましたので、その経験もあって単に交通誘導員日記ということではなくて、編集的な観点から面白おかしく書いているというところもあり、初めの原稿の完成度が高かったので、編集作業はわりとスムーズに進みましたね。

森上:そうですか。でも、カバーのイラストのテイストというか方向性は、中野さんならではのものですよね。

中野:カバーも見ていただくとわかるんですけど、本当にヨレヨレ感がすごく出ているんですよ。

森上:すごい(ヨレヨレ感)ですよね(笑)。

中野:伊波(二郎)さんというイラストレーターなんですけど、伊波さんには「ヨレヨレの交通誘導員を書いてくれ」と言って書いてもらって、上がってきたのを見たら、本当にヨレヨレだったので。

森上:あのタッチだったんですね!

中野:これはヨレヨレだなと思って、ヨレヨレしましょうって言って、ヨレヨレしちゃった。

森上:なるほど。その“ヨレヨレ”というキーワードは、そのイラストを見ながら決めたんですか?

中野:いや。ヨレヨレはもうついていました。ヨレヨレだったか、他の擬音だったかが最初からついていたんですよ。それで、最終的に“ヨレヨレ”にしたのは、柏さんとの話し合いの中で「やっぱり“ヨレヨレ”でいきましょう!」ということで(決まりました)。

シリーズで、累計20万部突破

森上:なるほど。これは“ヨレヨレ”以外にも、シリーズで何作くらい出ているんですか?

中野:そうなんです。今、“ヨレヨレ”の後に『派遣添乗員ヘトヘト日記』『メーター検針員テゲテゲ日記』と……。


森上:“テゲテゲ”ってなんでしたっけ?

中野:“テゲテゲ”というのは、「いい加減な」という意味合いがあります。これ、舞台が九州の鹿児島なんですけど、鹿児島の方言で、「適当な、いい加減な、雑な」みたいな意味合いだそうで。日記の舞台であるところの方言をタイトルに入れたのですが、ちょっと動きが弱いなというふうに思っていまして。“ヨレヨレ”“ヘトヘト”“テゲテゲ”でだんだん部数が右肩下がりになっていたんですよ。で、その後に『マンション管理員オロオロ日記』というのをやりまして、それで少し盛り返してきたと。

森上:シリーズ4作目で! やっぱりどうしてもシリーズになると、第一弾を超えるのっていうのがやっぱり難しいですよね。

中野:そうなんですよ。第一弾からだんだん右肩下がりになってきて、このままフェードアウトというか、なくなっていっちゃうのかなと思っていたんですけど、ありがたいことに第4弾の『オロオロ日記』少し盛り返してきたので。

森上:やっぱり交通誘導員ぐらいのレベルで、パイはあるって感じですか?

中野:難しい……。どう見るかなんですけど、『交通誘導員』が1番売れていて、それから『派遣添乗員』『マンション管理員』ですね。『マンション管理員』が今『派遣添乗員』を抜こうとしているんですけど。そこから少し離れて『メーター検針員』ということなんで、これは読者の人たちが、ある程度「身近に接している職業かどうか」というところが1つのキーポイントじゃないかなと思っていましてですね。

森上:確かに! そうかもしれないですね。目にする職業ということで言うと、やっぱりそうですね。シリーズは累計でどれぐらいなんですか?

中野:『ヨレヨレ』『ヘトヘト』『テゲテゲ』『オロオロ』、その後に『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』、それから『交通誘導員』の漫画版も出しまして、これ含めて全部で20万部ということになります。

森上:すばらしい! シリーズ20万部になりましたか!

一部の出版関係者は戦々恐々!? 職業別日記シリーズ最新刊

渡部:最新巻が『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』。こちらは「とくダネ!」で古市さんが紹介してくださっていたり、すごく好調みたいですね。

中野:そうなんです! 今まで身のまわりにある職業をやってきたんですけど、出版翻訳家という、あまり皆さんの身近にはいない職業にターゲットを絞ったので、タイトルのほうも『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』と、今までのシリーズから少しアレンジをしまして、カバーデザインのほうもちょっと変えて、それで刊行したんですね。

森上:なるほど。出版翻訳家ということは出版業界にずっといらっしゃった方が著者ですか?

中野:そうです。『7つの習慣』というベストセラーがあるんですけれども、その第2弾みたいなところで『7つの習慣 最優先事項』というキングベアー出版が出している本がありまして、それの翻訳家ですね。それが1番売れた本じゃないかなと思うんですが、その後もたくさん翻訳をやっていまして、自分の本も含めると60冊ぐらいの本を書いてるんですよ。ずっと業界の中で専業の出版翻訳家として食べていた人が、いろいろないざこざの中で、もうこの業界が嫌になってしまって、足を洗うまでというところの喜怒哀楽全部を含めた本というように位置付けています。

森上:いわゆる権利関係とかですかね? いざこざっていうのは。

中野:そうですね。単純に言っちゃうと、例えば印税のことですとか、「出す」って言ったのに延び延びになるとか。延び延びになるだけだったらまだしも、出版が中止になってしまうだとか。

森上:そのときに支払われないとかってあるんですか?

中野:そうです。出版が中止になったものに関しては、印税が支払われない。

森上:えーーー! それはエグイですね!!

中野:エグイ話がたくさんあるんですよ。契約を口約束でしていたんだけども、見本日になったら突然印税の切り下げを持ち出されたというようなことや、そんな話がこれでもかとあるので、私も出版業界にいる者として、「本当にこんなことあるのかな」と思えるような話がいっぱいありますね。

森上:それが意外と知っている出版社だったりするんですよね?

中野:そうなんです! ABCDEFGと全部イニシャルでやっているんですけれど、それなりのヒントを調べ散りばめておりますので、業界にいる人が読むと、このA社はどこで、B社はどこで、C社とはどこでということが、だいたい推測がつくようになっています。

森上:なるほど。やっぱりお金絡みなんですね、結構。

中野:半分くらいはお金絡みです。あとは、「約束を守らない」ということですね。全部翻訳して7割カットになって3割しか使わなかった、と。始めから「これしか使わない」と言ってくれればいいのに「全部やるよ」と言った上で、7割を最後にバサッとカットしてしまうというようなことがあったりすると……。約束を守らないっていうことなんですよね。

森上:約束の変更があったときに、やらなきゃいけないことをやらないで、無視してやっちゃうと! なるほどねぇ。

渡部:フォレストは大丈夫ですか? F社はうちじゃないんですか?

森上:うちは大丈夫です!そこは(笑)。

中野:大丈夫です! F社というのが出てきますがこれは違います!

森上:よかった(笑)! この本は業界においては相当なインパクトはあるでしょうね。

中野:と、思うんです。私も著者の原稿を読むのもそうですし、話を直接聞いても、そのABCDEFG社がなかなかエグいことやっているなと思って、そこについてちょっと言ってやりたいなという思いもあったので、ギリギリのところを攻めましょうということで、読む人が読めば、どこがどの会社だというのはわかるようにしたつもりなのですが。

森上:読者層に業界関係者が結構いるかもしれないですね。

渡部:次のストーリーは出版差し止めされて、それがまた本になるということですね。

森上:(笑)。

中野:そこまでもっていきたいですね。訴えられないかなと思っているんですよ。

森上:表4の帯のところを見れば、ほぼわかっちゃいますよね。あれ、びっくりしちゃいました!

中野:知っている人が見れば、だいたいわかります。

森上:だいたいわかりますよね! ちょっと出版社を知っていればだいたいわかっちゃいますよね。この会社か! みたいな。

中野:1個だけ絶対わかっちゃいけないのがあるんですよ。

森上:あ、そうなんですか。

中野:ええ。あんまり言えないんですけどね。裁判で和解をしたときに、この和解内容を開示しないということで、宮崎さんが某社と和解をしているので。これは、宮崎さんと私とでギリギリ出しましょうということで出してるんで。

森上:なるほどね。

中野:全部わかられちゃうとちょっと困るかなというところなんですけども。でも、8割わかってほしいです。

渡部:めちゃくちゃギリギリ攻めている本ですね。

森上:面白いですよね。でも、逆に文句言ってこないんじゃないかな。

中野:そうなんです。特に後半に出てくる出版社が結構ひどいことやっているんですよ。相当ヒドイなと思うので、なんだったら本当に何か言ってきてほしいなあと。

森上:なるほど。逆に取材したいぐらい?

中野:取材というか、訴えられたいくらいです!

森上:訴えられたいくらい!? なるほどー。攻めてますねぇー。

渡部:次は、“なんとか出版社炎上日記”みたいな。

中野:そしたら、その裁判記録を宮崎さんともう1冊作りたいぐらいです。

森上:なるほどね。裁判日記をね! おもしろそうですねー。

渡部:本当に興味を持ってくださった方はぜひ読んでいただきたいですね。

中野:ぜひ読んでください!

四ツ谷の海老蔵、漫画家に怒る!?

森上:近刊の『交通誘導員ヨレヨレ漫画日記』、漫画なんですか?

中野:そうです!第1弾の『交通誘導員ヨレヨレ日記』を漫画化しまして、『交通誘導員ヨレヨレ漫画日記』ということで出しています。漫画日記にしたのは、柏さんとの相談で。原作の本は、年配の人が読者層の中心だったんですよ。60代、70代。サブタイトルに銘打っている通り、72歳の前後の年齢の方々が読んでくれたんで、それをもう少し若い層にも交通誘導員の苦労ですとか、実態ですとか、そういったことを読んでもらえないかと思いまして。それで漫画にしました。

森上:なるほど。これ、最後に中野さん出てきますよね。

中野:僭越ながら私が登場させていただいておりまして、原作が出た後の反響ですね。さっき言った通り、本がこんなに売れると思っていなくて、ベストセラーになっていって、どういう反応があったのかということも漫画のほうに入れたかったので。そのときに脚本を書いた人間と話をしまして、私がいたほうが話を作りやすいということだったので。でも、もう少しよく描いてくれないかなと……。

森上:そうですよね! 漫画より実物のほうがイケメンですからね。

中野:実物のほうがイケメンなんですよ(笑)。漫画は、非常によろしくなく描いてある。こんな人間じゃないということをここで言っておきたいです! 今日一番言いたいことはここです。この部分です!

渡部:僕、中野さんと今日始めてお会いしましけど、「この漫画の人来た」と思いましたけど。

中野:違います。かなり醜悪にデフォルメされています。

森上:昔、三五館は四ツ谷にあったんですよ。で、(中野さんは)四ツ谷の海老蔵って言われていたんですよ。

渡部:海老蔵さんに似てますね。

森上:似てますよね。

中野:だからもう少しちゃんと描いてくれないと困るなと思ったんですけど、そんな小っちゃいこと言うのもよろしくないなと思いまして、そのまま通しましたけど。ですから、ぜひ皆さんもこれ見ていただきたいと思います。実物と違いますから。

森上:amazonの方のURLも貼っておきますので、気になった方はチェックしてみてください。

渡部:本当に今日は楽しい対談になったんですけれども、中野さん、2021年になりますが、三五館シンシャさん的に来年の抱負みたいなものはあるんですか?

中野:今シリーズをずっと作ってきておりまして、さらにデパート販売員の日記や、介護職員の日記など、いろいろと予定しているものがあります。当然、日記シリーズ以外にも、いろいろと企画がたくさんあります。2020年が非常に良い年だったんですよ、おかげさまで。ですから、それを越えられるような、さらにいい年にしたいなというふうに思っております。

渡部:はい、ありがとうございます。三五館シンシャの中野長武さんに来ていただきました。中野さん、森上さん、ありがとうございました。

中野・森上:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)

▼この記事の音声はこちら



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?