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かつての里山に暮らす動植物 その3 樹木 ~背の低い木々が生き延びる工夫~
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さて、前回からの引き続きでかつての里山に生える中・低木のご紹介。上の写真はなんともユニークで、いろんなものに見えてくる形をした葉だが、”カクレミノ”という木のもの。「天狗の隠れ蓑」からその名が付いたと聞いたが、わたしにはそれがどういったものなのか、残念ながら分からない。ただ、葉の形が、あのゲゲゲの鬼太郎に出てくる”子泣きじじい”が着ている蓑(みの=昔の合羽のようなもの)に見えなくはない。
カクレミノは一年中、葉を付けている常緑広葉樹なので、おもに西南日本の太平洋岸、シイ・カシの林や森のなかに生えていることが多いのだろうが、静岡あたりではコナラを中心とした落葉広葉樹の林のなかで見かけたりする。ちなみに、葉の形は木が大きくなるとただの楕円形になり、同じ木の葉だとは思えないようになる。こういった現象はカクレミノ以外の木でも見られることがあり、木の葉も歳をとると丸くなる、なんて冗談で言うこともあるのだが、おそらく木が若いうちは少しでも葉の形を複雑にしてその表面積を増やし、光合成量を多くしているのではないだろうか。
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花はこんな感じで目立たない。見たことがある人は少ないだろうなあ。
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上の写真では上手く写っていないが、その匂いに誘われてかほんとうにたくさんの虫たちが集まってくる。とくにハチの仲間に好まれるので、頭上でたくさんのハチの羽音が聞こえると、この木の花が咲いていたりする。よほど甘い蜜を出しているのだろう。
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実はこんな感じ。鳥などに食べられているのを見ることはあまりない。ウコギ科なので独特の強い香りがするのだ。
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こちらは”クサギ”。葉っぱをもんだりすると、けっして良いとは言えない独特の匂いがするので”臭木(くさぎ)”だったのかもしれないが、こどもたちに嗅がせて「どんな匂い?」なんて聞くと、”ピーナッツバター”とか”ゴマ”とか、それほど臭くはないものの答えが返ってくる。この木も伐採跡地など日当たりのいい場所に生えることが多く、葉も大きくてたくさんの光を浴びてグングンと成長する”パイオニアプランツ(先駆性樹種)”だ。ただ、大きくなっても3~4メートルの高さで、やがては後から伸びてきた高木たちに覆われてなくなっていってしまう。
写真のとおり、実の色や形が独特。赤紫の部分は花のがくが残ったもので、真ん中の瑠璃色のものが実。こんな色の組み合わせは他の植物であまり見たことがなく、珍しい。確かに遠くからでもよく目立ち、動物たちに実を食べてもらってそのタネを他の場所に運んでもらうのにはいいのかもしれないが、実際に動物たちがこの実を食べるのを見たことはあまりない。ちなみに、この実を集めてぐつぐつ煮ると実と同じ色が出てき、この液で白い布などを染めるとじつに美しい青色になる。草木染で青色が出るのはほかに藍ぐらいだから、藍染めが行われる前にはこの実を集めて布や糸を青色に染めていたことがあったかもしれない。ただ、よほどたくさん集めないと染めるのは難しい。
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花は写真のようにとても可憐。そしてとてもかぐわしい匂いを発する。林のなかを歩いていて、どこからともなく芳香が漂ってくるなあと思ったらクサギの花が咲いていた、なんてことがよくあった。花の奥深くに蜜があるらしく、口の長いアゲハ蝶の仲間やホウジャクというガの仲間がよく蜜を吸いに来ていた。
今回紹介したカクレミノもクサギも、虫たちを誘う花を咲かせ、それらに花粉を媒介してもらって受粉をする「虫媒花(ちゅうばいか」を咲かせる。高さ20メートルにもなるような高木のように、まわりに邪魔をするものがなく、風に吹かれて花粉をまき散らす花(風媒花)を咲かすのではなく、強い匂いや鮮やかな花を咲かせて虫たちをおびき寄せ、受粉を達成するようになったわけである。大きくなれない(ならない)木はこうした進化を遂げ、生き続けてきたのだ。
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