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【データベース】離婚後共同親権/家族法制の見直しに関する要綱案の論点解析(最終更新:2024.2.12)


はじめにー本記事の目的ー

本記事は、2024年1月30日に取りまとめられた「家族法制の見直しに関する要綱案」の各論点について、家族法制部会ではどのように検討されてきたかを資料化することを目的とすることです。
内容は随時更新します。

第1 親子関係に関する基本的な規律

① 父母(親権者に限らない。)の責務等の明確化(第1の1)

<目的>
親権の有無にかかわらず父母が負う責務や権利義務等を明確化するための規律を新設することを提示している。
<趣旨>
◆父母が、その婚姻関係の有無や親権の有無にか かわらず、子との関係で特別の法的地位にあると考えられるとの指摘を踏まえ、親子関係に関する基本的な規律を整備する方向での議論が進められてきた。
◆部会のこれまでの議論では、親子関係に関する基本的な規律を整備する必要がある理由として、例えば、この点に関する現行民法の規律が必ずしも明確でないことが原因で親権者でない父母が子に対して何らの責任を負わないかのような誤解がされることがあり、それが養育費の不払等の一因となっているおそれがあるとの指摘がされ、また、その扶養義務の程度について、父母の子に対する扶養義務の程度が一般の親族間の扶養義務の程度よりも重いものであるとの解釈について、現状民法ではその解釈上の根拠が不明確であるとの指摘がされた。
◆これらの指摘は、いずれも、(親権者でない)父母に対して現状よりも重い責務や義務を課そうとするものではなく、飽くまでも、現行法上負っていると解される責務や義務を「明確化」する必要性を指摘するものと考えられる。また、これらの指摘は、いずれも、子の養育を父母のみに課すことを求めるものでもない。要綱案(案)も、このような議論の流れを踏まえたものであり、現行法の解釈の内容に変更を生じさせることを意図するものではない。
◆そして、父母の子への関わり合いに関する現行法の諸規定は、裁判所の審判を求める権利・権限を父母が有していることなどの意味で、一定の権利性があるものの、これは父母の固有の権利利益を保障する趣旨ではなく、子が心身ともに健やかに成長・発達することができるよう、子の利益のために行使しなければならないことが求められていると考えられる。
◆この部会のこれまでの議論においては、父母が子を養育することについて、それが子との関係での父母の義務であるとともに、父母がその義務を履行するために一定の 権利・権限があるとの意見や、権利性を認めることで、父母による子の養育について、他者からの不当な干渉や妨害を受けず、又は必要な支援を受けることができるとの解釈につながるとの意見があり、また、民法の規定の中には義務を履行するための権限や他者の利益のために行使されるべき権利を「権利」と表現する例もあるとの指摘があった。
◆よって、父母が子との関係で有する法的地位には、権利及び義務の双方の側面があると考えられるが、その権利としての性質は、父母が子に対する支配権のような特別の権利を有することを意味するものではない。 他方で、父母による子の養育が義務や責務としての性質を有するとしても、 その養育の在り方は、各家庭によって様々であり、父母が子と同居しているか別居しているかなどの諸事情によっても異なると考えられるから、その 責務や権利義務の内容を一律かつ具体的に規定することは困難又は不適当であるとも考えられる。
<意見>
◆父母による子の養育が、父母の責務や義務とし ての側面だけでなく、父母の権利や権限としての側面を有している。
◆子を養育する責務は父母のみが負うものではなく、他の親族 や国家及び社会全体で負担すべきものである。
◆父母が子を養育す る責務を果たすためにも社会的なサポートが重要であるとの理解が示された。
◆要綱案(案)において提示された規律はこうした理解を前提に現行法の解釈を「明確化」するものと位置付けられるため、要綱案(案)第1の1の規律を設けることによって子の養育をすべき責務が新たに父母に課されるものではない。
◆民法の家族法が飽くまでも親族間における権利義務を規定するものであり、社会や国家との関係を規律するものではない。
◆父母が子の養育についての権利や権限を有するとしても、それは子以外 の第三者との関係で主張することができるものであり、子に対する支配権を 有することを意味するものではない。
◆子を養育すべき責務を父母のみに課すこととなるわけでもない。

(資料37-2)1頁/(資料35-2)2、4頁/(資料34-1)4-6頁/(資料34-2)1-4頁

② 「養育」という用語の意義(第1の1⑴)

<意義>
父母の子への関わり合いのうち経済的・金銭的な関与(扶養)と精神的・非金銭的な関与の双方を含む広い概念として「養育」という用語を使っている。
<解説>
◆その内容を一義的かつ具体的に定義することを提示しているわけではなく、子の養育に関して父母が有する具体的な権利義務の内容は、民法の各個別の規定によって定めることを想定している。例えば、子の監護及び教育は、親権者の権利義務であり(同法第820条)、また、親子交流については、 父母の協議又は家庭裁判所の手続によって定めることが想定されているため(同法第 766条)、要綱案(案)の記載のような規律を設けたとしても、親権者でない父母が監護及び教育をする権利義務を得ることとなるわけではなく、また、父母の協議等を経ることなく別居親が親子交流の実施を一方的に求めることができるようになるわけではないと考えられる。
◆なお、「養育」という用語は、民法第828条ただし書にも規定されているが、同条 は親権者による子の養育等の費用の計算に関する規律である一方で、要綱案(案)第1の1で提示している規律における「養育」は、父母(親権者に限られない。)によるものであり、また、費用の支出を伴うものに限定するものではない点で、民法第828条ただし書の想定する「養育」と必ずしも一致しないと考えられる。
◆第30回会議では、人格の尊重に加えて「人権の尊重」という観点を盛り込むべき であるとの指摘もあったが、子の人権を尊重することは、人格を尊重することに含まれ ているとの整理もあり得る。

(資料35-2)3-4頁/(資料34-2)4頁

③ 子の意見等の考慮(尊重)(第1の1⑴)

<結論>
要綱案(案)と同様に、子の意見等を明示的には記載していないものの、これは、父母が子の意見等を考慮する必要がないことを意味するものではなく、むしろ、「人格の尊重」には子の意見等が適切な形で尊重されるべきとの考え方を含むものとして提案している。また、この要綱案(修正案)は、将来の検討に基づいて子の意見等に関する規律を民法に新設する余地を排除するものでもない。
<問題の設定>
法体系との整合性の観点から、民法第821条(子の人格の尊重等)の規定との比較で議論する必要があると考えられる。
また、要綱案(案)における父母(親権者に限らない。)の責務等の規律は、民法の規律として設けることが提案されている以上は、それが子の養育を行う父母の行為指針としてのメッセージを有することに加え、それに違反した場合に一定の法的効果が生じ得る裁判規範としての側面もあることを意識し た検討をする必要があると考えられる。
<検討>
部会では、要綱案(案)第1の1⑴ で提示している規律における「子の人格を尊重する」との文言もこれと同様に解釈されることとなるとの意見が示された。このような解釈によれば、新たに新設することとなる父母(親権者に限らない。)の責務等の規律において、「人格の尊重」とは別に、子の「意見」・「意思」・「意向」・「心情」等の「考慮」又 は「尊重」といった用語を追加することは、法規範として必ずしも適切ではないと考えられる。
<意見>
◆具体的な事情の下では子が示した意見等に反しても子の監護のために必要な行為をすることが子の利益となることもあり得る。
◆子の意見等を尊重すべきことを過度に重視しすぎると、父母が負うべき責任を子の判断に転嫁する結果となりかねない。
◆父母の意見対立が先鋭化している状況下において子に意見表明を強いることは子に過度の精神的負担を与えることとなりかねない。

(資料37-2)1-2頁/(資料34-2)5-6頁

④ 扶養の程度の明確化(第1の1⑴)

<解説>
◆父母の子への関わり合いのうち、経済的・金銭的な側面については、これ まで、その扶養義務の程度が他の直系親族間の扶養義務の程度よりも重いものであることを明確化すべきであるとの議論が進められてきた。 そこで、父母の扶養義務の程度について、「その子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなけ ればならない」ものとすることを提示している。
◆この部会のこれまでの議論では、生活保持義務の対象となる子(未成熟の子)の範 囲についての議論もあったが、単に「子」とのみ記載することとしており、これを未成年の子に一律に限定するものとはしていない。また、 父母が子との関係で生活保持義務を負うのが「子の心身の健全な発達を図るため」であるとしている。

(資料34-2)6頁

⑤ 父母相互の人格尊重・協力義務

<解説>
◆民法は、直系血族及び同居の親族が互いに扶け合わなければならないこと(同法第730条)や、夫婦が互いに協力し扶助しなければならないこと(同法第752条)を規定するが、婚姻関係にない父母間の関係については、明文の規定がない。
◆このことに対しては、部会のこれまでの議論において、離婚後の父母双方が子の養育に関して責任を果たしていくためには、父母が互いの人格を尊重できる関係にある必要があることや、父母が平穏にコミュニケーションをとることができるような関係を維持することが重要であることなどの意見が示された。
◆こうした意見を踏まえ、父母がその婚姻関係の有無にかかわらず互いの人格を尊重すべきであるとの考え方を提示している。このような人格の尊重が求められる場面は、父母が子に関する義務の履行をする場面に限られず、父母が子に関して有する権利を行使する場面も含まれると考えられる。
◆また、部会のこれまでの議論の中では、離婚
後の父母の中には、子の養育に無関心・非協力的な親がいるとの指摘があった。こうした指摘を考慮すると、子の利益を確保するためには、父母が互いに協力することが望ましいとの考え方もあり得る。
◆そこで、この資料のゴシック体の記載では、父母が、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならないものとすることを提示している。
◆父母の人格尊重義務や協力義務を規定した場合には、その義務の履行をどのように確保するかが問題となり得るが、例えば、父母の一方がこれらの義務に違反した場合には、親権者の指定・変更の審判や、親権喪失・親権停止の審判等において、その違反の内容が当該父母の一方にとって不利益に考慮
されることになるとの解釈があり得る。
◆父母双方が親権者である場合においても、監護及び教育に関する日常の行為については父母の一方が単独で行 うことができることを提示している。この規律については、父母の一方のみが子と同居している場面においては、当該一方が、他の一方(子と別居する親)から不当に干渉されることなく、日常的な子の監護をすることができるものと解釈すべきであるとの考 え方があり得るが、このような考え方を父母間の人格尊重義務や協力義務と結びつけて整理することもできると考えられる。
◆部会資料32-1の第2の3の注2では、「監護者による身上監護の内容がその自由な判断に委ねられるわけではなく、これを子の利益のために行わなければならないこととの関係で、一定の限界があると考えられる。例えば、監護者による身上監護権の行使の結果として、(監護者でない)親権者による親権行使等を事実上困難にさせる事態を招き、それが子の利益に反する場合がある」との指摘を注記しているが、このような監護者による監護の限界を父母間の人格尊重義務と結びつけて整理することもできると考えられる。
◆DV事案に対する各論的な規律の整備に加えて、父母の責務に関する一般的な規律として父母が互いに人格を尊重すべき義務を負う旨を規定した場合には、子の養育に関 連して、父母の一方が他の一方の人格を否定するような言動をしてはならず、父母の一方がこれに違反した場合には親権者の指定等の判断において不利益に考慮されることとなると考えられる。また、濫用的な申立て(家事事件手続法第271条等)が問題となるケースにおいても、家庭裁判所が申立人の申立てが不当な目的でみだりに申し立てられたものであるかどうかを判断するに当たり、申立人が相手方に対して人格尊重
義務を負っていることを踏まえて判断すべきであることとなるとも考えられる。

(資料34-2)6-8頁

⑥ DV等に適切に対応する視点

<解説>
◆試案の前注2では、「本試案で取り扱われている各事項について、今後、具体的な規律を立案するに当たっては、配偶者からの暴力や父母による虐待がある事案に適切に対応することができるようなものとする」ことが提示されていたところであり、この部会での参考人ヒアリングやパブリック・コメントの手続においても、総論的に又は各論的に、DVや虐待に関連する観点からの懸念や意見が示された。そのため、要綱案のたたき台の取りまとめに向けた議論においても、DVや虐待がある事案に適切に対応することができるような内容とするという検討の視点が重要であると考えられる。
◆また、例えば、具体的な家事事件の手続の中で、配偶者からの暴力や父母による虐待があった旨の主張がされる事案においては、各当事者の認識や主張内容に大きな隔たりがあることもあるとして、各当事者の主張の当否が、適正な手続の下で、適切に認定されなければならないとの指摘もある。
◆こうした指摘を踏まえ、この部会のこれまでの議論においては、民事基本法制の枠内において、父母の離婚後の子の養育に関する規律の見直しに伴って生じ得るDVや虐待に関する懸念に対応するための方策についても、検討が進められてきたところであり、一定の仕組みを提示している。
<単独行使が可能となる仕組み>
◆DVや虐待からの避難をするために急迫の事情があるときは、父母の一方が単独で居所指定権を行使することができるものとするなど、例外的にその一方が単独で親権を行うことができる場合の規律を整備する。
<不適切な合意の懸念に対する仕組み>
① 協議離婚をすること自体とは切り離して、離婚後の親権者の定めのみを家庭裁判所の 手続で取り扱うことができるようにすること
② 親権者の指定・変更に関する考慮要素を明確化することなどにより、DVや虐待等の事情により 父母双方を親権者とすることが適切ではない事案においては、その一方のみを親権者とすること
③ 仮に協議離婚の際の父母の合意形成過程が不適正であればそれを変更することができるようにすること
<養育費に関する仕組み>
◆法定養育費の導入
<親子交流(面会交流)に関する仕組み>
① 「子の心身の状態に照らして相当でない」場合には親子交流の試行的実施を促さないものとすること
② 試行的実施を促す際にも、その交流の方法や第三者の立会い等の条件を定めたり、当事者に対して子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動を禁止したりといった条件を付すこと
<濫用的申立てに対する対応>
◆家事審判の申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときは、その申立書の写しを相手方に送付する必要がないものとされており(家事事件手続法第67条第1項)、また、家事調停の申立てにおいても、当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをした場合には、家庭裁判所は、調停をしないものとして家事調停事件を終了させることができるものとされている(同法第271条)。そして、この場合や家事調停の申立てが不適法である場合には、家庭裁判所は、申立書の写しを相手方に送付する必要がないものとしている(同法第256条第1項)。このように、現行家事事件手続法においては、濫用的な申立てがされた場合に対応するための規律が既に整備されているところである。

⑦ 親権の性質の明確化(第1の2)

<趣旨>
◆民法の「親権」は、親の「権利」のみでなく「義務」としての性質も有し、 その権利義務が子の利益のために行使されるべきものであることに異論はな いと思われる。もっとも、親「権」という表現がされていることや、民法第818条第1項が「成年に達しない子は、父母の親権に服する」と規定していることなどから、それが専ら親の権利であるかのように誤解されるおそれがあるのではないかとの指摘がある。また、この部会の第30回会議においては、複数の委員から、「服する」という表現を改めるべきであるとの意見が示された。 そこで、成年に達しない子が「父母の親権に服する」と規定する民法第818条第1項を改正し、親権が子との関係において義務としての性質を有し、親権が子の利益のために行使されなければならないものであることを明確化することを提示している。
◆親権が純粋な義務として構成されるわけではなく、(主として第三者との関係で)権利性を維持し続けるものと整理することが考えられる。そのため、例えば、民法第820条が「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」旨を規定している点については、この規定を維持することが考えられる。

(資料35-2)5頁/(資料34-1)8頁

⑧ 「親権」という用語の見直し(第1の2)

<結論>
見直しは行わない。
<提案>
パブリック・コメントの手続においても、「親責任」や「親義務」のように、義務としての性質を前面に表現する用語を提案する意見も寄せられた。
<検討>
◆「責任」等の用語を用いることに対しては、それが帰属しない(又はその制限がされる)親が、子との関係で何らの責任をも負わないかのような誤解を与えかねず、そのような親による養育費の不払を助長しかねないのではないかとの懸念がある。
◆例えば、単に「親権」という用語を機械的に「親責任」と置き換えるだけでは、親権喪失(民法第834条)に相当する用語が「親責任喪失」と呼称されることとなるが、この表現が不適切であれば、その概念や法的効果を改めて整理する必要があると考えられる。
◆子との関係での父母の責務を明確化するための規律を設けるのであるとすれば、そういった父母の責務こそが「親責任」や「親義務」に相当するものであるとの考え方もある。
◆親権者の義務を表す趣旨で「責任」という用語を用いることは民事法上の一般的な責任概念と整合しない。
◆親のみに養育の責任や義務を押しつける方向に働き、社会による養育支援を阻害しかねない。

(資料34-1)8-9頁

第2 親権及び監護等に関する規律

① 親権行使に関する規律の整備(第2の1)

<適用範囲>
父母が婚姻関係にあるかどうかを問わず適用されるルールとして提示し ている。

②「急迫の事情」の意義(第2の1⑴ウ)

<総論>
父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時の親権行使をすることができずその結果として子の利益を害するおそれがあるようなケースを想定することが考えられる。どのような場合にこの要件に該当するかは、最終的には個別の事案における具体的な事実関係を踏まえて判断されるべき事項である。
<具体例>
・入学試験の結果発表後の入学手続
・DVや虐待からの避難が必要である場合
・緊急に医療行為を受けるため医療機関との間で診療契約を締結する必要がある場合
<意見>
◆加害行為が現に行われている時やその直後のみに限られず、DV事案においては加害行為が反復継続するおそれがあるなどの特性に着目すると、加害行為が現に行われていない間も「急迫の事情」が認められる状態が継続し得るとの解釈をすることができる。

(資料37-2)3頁/(資料35-2)6頁/第34回会議議事録1-39頁

③ 「急迫の事情」の要件の緩和・厳格化について

【資料34-1より】
<意見>
◆「急迫の事情」の要件をより緩やかなものに修正する観点から、「必要性」及び「相当性」を基準とすべきであるとの意見や、「必要やむを得ない」ことを要件とすべきである。
◆「イ」に加えて、「ウ」として「父母の意見が対立しているとき(であって、裁判所の判断を待てないとき)」を追加すべきである。
<検討>
◆このような急迫の事情(緊急の行為)を要件とする例外規定を 設けることについては、現行法の規定(児童福祉法第33条の2第4項や 同法第47条第5項)との比較において整合的である。
◆「急迫の事情」要件を「必要性」等に置き換 えてしまうと、親権の単独行使が可能となる範囲がこれまでの部会の議論 において想定していた範囲よりも過度に広がってしまう。
◆上記の修正意見を採用した場合に、父母の協 議や家庭裁判所の手続を経ることが可能である状況であるにもかかわらず、 そのようなプロセスを経ることなく親権の単独行使を可能とする規律となり得る余地が生ずるのであれば、それをどのように正当化するかが問題と なり得る。そして、上記の修正意見はその正当化根拠として、「相当性」を 付加することを提案しているものと思われるが、親権を相当な方法で行わ なければならないことは、親権が「子の利益のため」に行わなければならな いものであること(民法第820条)や親権者が子の人格を尊重しなければならないこと等(同法第821条)から当然に要求されるものであり、その相当性が要求されるのは、親権を単独行使する場面に限られるものでもないことからすると、上記意見の指摘する「相当性」については、それが親権の単独行使が許容される範囲を画する要素と位置付けるべきものであるか どうかを含め、議論する必要があると考えられる。
◆「父母の意見が対立しているとき(であって、裁判所の判断を待てないとき)」については、上記2の整理に基づけば、「裁判所の判断を待てない」事情は「急迫の事情」に包含されているものと整理 することができるとも考えられる。他方で、「裁判所の判断を待てない」事情を要求せず、「父母の意見が対立している」ことのみをもって親権の単独行使を可能とすることについては、親権の単独行使が可能となる範囲が広範となることをどのように正当化するかを議論する必要があると考えられる。

【第34回会議での議論】
第34回会議において、石綿幹事から、急迫という要件だと現在認められているけれどもできなくなることがあるのではないかという懸念があるとして、補足説明や例示が必要ではないかという提案がなされ、これを支持する意見も示された。
しかし、
◆本来用意された手続は、裁判所のような中立の第三者が決めるというのが原則であり、急迫の事情は例外である。
◆ただ対立している時だけを挙げるのは望ましくない。子の利益から見て急迫かどうかを判断することが重要。
◆例外事由として、裁判所の判断を求めても意味がない場合(第2の1(1)イ)と、判断を求めていくということが適切でないケース(同ウ)をそれぞれ想定し位置付けているため、狭すぎるということはない。
◆曖昧な基準を採用すると、解釈が広がりすぎる。
といった否定論(主に小粥委員の意見を支持するものが多い)も出され、「第34回会議における議論の経過を踏まえ」要件の緩和は見送られた。

(資料37-2)3頁/(資料35-2)6頁/第34回会議議事録1-39頁/(資料34-1)2-6頁

④ 親権行使についての父母の意見対立時の調整のため、新設する裁判手続における「特定事項」の範囲(第2の1⑶)

<解説>
◆「特定の事項」をどの程度の具体性・個別性をもって特定すべきであるかについては、監護の分掌(要綱案(案)第2の3⑴)と併せて議論することが有益である。
◆特定の事項についての親権行使者の指定は、親権の共同行使の原則の例外として、親権行使について父母の意見対立が生じた場合において、家庭裁判所が、父母 の一方にその単独行使を認める仕組みである。そして、要綱案(案)第2の1⑴及び⑵によれば、①父母の一方のみが親権者であるとき、②他の父母が親権を行うことができないとき、③子の利益のため急迫の事情があるとき、④監護及び教育に関する日常の行為をするときは、父母の一方が単独で親権を行うことができることとなるから、家庭裁判所が特定の事項についての親権行使者の指定をる必要がない。すなわち、家庭裁判所の手続による意見調整が必要となるのは、これらの①から④までのいずれにも該当しない場合であると考えられる。そのため、当該規律における「特定の事項」に該当し得るものは重要な事項(日常の行為以外の事項)に係る身上監護又は財産管理や身分行為に限られることとなり、部会のこれまでの議論の過程では、具体的には、居所の指定又は変更の場合や、親権者が子を代理して高校との間での在学契約を締結する場合等が想定される旨の指摘があった。

(資料35-2)6、8

⑤ 父母間の協議が整わない場合における、裁判所の判断基準(第2の1(3))

<解説>
子の養育方針については様々な価値観があり得ることから、要綱案(案)第2の1 ⑶の裁判手続については、特定の事項に係る親権の行使をする父母の一方をどのような観点から判断するかに関し、裁判所が父母の価値判断の優劣を判断することは相当でないとの指摘がある。この点については、いかなる観点から判断すべきであるかは当該事項の内容・性質や事案の特性に応じて異なるものの、できる限り客観的な観点(例えば、それぞれ父母がその同居中から当該事項に関して子とどの程度、どのように関わ ってきたかなど)から、父母のいずれが当該事項について子の利益に適う形で親権を行使し得るかを判断するなど、父母の価値判断の内容それ自体の優劣を直接に判断するのではない判断手法も考えられるところである。なお、その際には、子の意思等を考慮する必要があることは他の手続と同様であると考えられる。

(資料35-2)6-7頁

⑥ 家庭裁判所が父母の離婚後等の親権者の定めについて判断するにあたり、考慮要素に「マイナスの要素」を明記すべきか(第2の2⑹)

<議論の展開>
◆これまでの議論においては、多くの委員・幹事から、上記のような現行法の規定と同様に、この点について父母間に争いが生じたときは「裁判所」が「子の利益」の観点からこれを定めるものとすることを前提とした意見が示された。
◆個別具体的な事件において家庭裁判所が考慮すべき要素の中に は、「プラスの要素」(父母双方を親権者と定めることを肯定する方向の事情)と、「マイナスの要素」(父母双方を親権者と定めることを否定する方向の事情)があるが、このうちの「マイナスの要素」と位置付けられる事情の中には、父母の一方による虐待の事実のように、その事実の存在のみにより直ちに、父母双方を親権者とすることが子の利益に反するとの判 断に大きく傾く要素があると思われる。部会のこれまでの議論では、父母双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるケース に適切に対応することができるようにする観点から、このような重大な「マイナスの要素」を法律上明確に規定することを求める。
◆「プラスの要素」を法律に列記す ることは困難である。
◆「プラスの要素」と「マイナスの要素」 はいわば表裏の関係にあることからその一方のみを規定すれば足りる。
<結論>
たたき台(2)第2の2⑹では、裁判所が親権者を父母双方とするかその一方とするかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮するものとすることを提示した上で、父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、裁判所は、父母の一方を親権者と定めなければならないものとすることを提示しており、その規律の内容をより具体的に定める観点から、重大な「マイナスの要素」として、父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときや、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、親権者の定めについて父母の協議が調わない理由その他一切の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときを列記するとの考え方を注記している。

(資料34-1)8-9頁

⑦ 家庭裁判所が父母の離婚後等の親権者の定めについて判断するにあたり、考慮要素に「子の意思」を明記すべきか(第2の2⑹)

<資料34-1 9-10頁>
◆家庭裁判所が考慮すべき事情について「父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情」と記載している。この記載のうち「父母と子との関係」や「父と母との関係」が列記されているのは例示の趣旨であり、家庭裁判所が考慮すべき事情をこれらに限定する趣旨ではない(子の意思を無視するとはいっていない。)。子の意思は「父母と子との関係」を認定する際の事情の一つであると整理することもでき、いずれにしても、子が親権者の定めに関して明確に意見を表明していることは「その他一切の事情」として考慮されることとなると考えられる。
◆「子の意思」を明示すると、親権者の定めに関する判断の責任を子に転嫁する結果となりかねない。
◆個別具体的な事案において「子の意思」をどの程度重視するかは、子の年齢及び発達の程度のほか、その事案における事実関係や子が示した意見の内容等によっても様々であると考えられるが、上記反対意見は、「子の意思」が法律に明記されることとなると、裁判所が子の意思を過度に(一律に)重視することとなりかねないのではないかと懸念するものと思われる。
◆また、家庭裁判所が子の意思を考慮することは現行法と変わらないとしても、「子の意思」が法律に明記されることにより、裁判手続に至る前の段階を含めた父母の行動に影響を及ぼしかねないのではないかとの観点からの検討も必要となると思われる。
◆「子の意思」を例示列記に加えるかどうかについては、裁判所が「子の意思」を考慮(尊重)すべきかどうかというレベルでの議論ではなく、これを法律に明記することで裁判手続やこれを前提とした父母の紛争にどのような影響が生ずるのかについて議論する必要があるように思われる。また、そのような議論の際には、現状の親権者の指定・変更に関する裁判実務において、「子の意思」を考慮するものとする旨の規定が現行民法 に存在しないことによって具体的な不都合が生じているかどうかといった観点からの議論が有益であると考えられる。
<結論>
子の意思は明記されていないものの、第1の1⑴で「子の人格の尊重」が明記され、現行法では、一般に、家庭裁判所が子の利益を考慮して定めるべ きであると解されている。また、家庭裁判所は、離婚訴訟の認容判決にお いて親権者を指定するに当たって、子が15歳以上であるときはその子の陳述を聴かなければならず、このほか、家庭裁判所調査官による調査を含めた事実の調査をすることもできるとされている(同法第819条第 2項、人事訴訟法第32条第4項、第33条、第34条等参照)。さらに、親権者の指定についての審判事件においては、家庭裁判所が、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応 じて、その意思を考慮しなければならないこととされており、子が15歳 以上である場合には子の陳述を聴かなければならないこととされている(家事事件手続法第65条、第169条第2項)。

(資料34-1)7-10頁

⑧ 家庭裁判所が父母の離婚後等の親権者について「父母の双方を親権者と定めるにあたり、考慮要素に「父母の合意」を明記すべきか(第2の2⑹)

<意見>
◆裁判所が父母双方を親権者と定めるための要件として「父母双方の合意があること」を必要とする。
◆「子の養育に関して父母が平穏にコミュニケーションをとれること」を要件とする。
<問題の所在>
◆離婚時の親権者の定めを身分関係の変動の内容という観点から改めて整理してみると、この場面における裁判所の判断は、父又は母に対して新たに親権を付与するかどうかを判断するものではなく、その双方が親権者であった従前の状態 を継続するか、その一方の親権を制限する状態に変更するかという判断 をするものと捉えることもできる。
◆民法において、親権者の親権を制限する方向での身分関係の変動を生じさせるためには、「子の利益を著しく害する」(同法第834条)、「子の利益を害する」(同法第834条 の2、第835条)、「やむを得ない事由がある」(同法第837条)など の一定の要件が必要とされている。
◆離婚後の親権者の定めについての考慮要素を検討するに当たっては、現行 法の親権制限の諸規定の内容を踏まえた検討が必要である。
◆このような身分関係の変動を子の立場からみると、自らの身上監護や 財産管理に責任を持つ親権者が2人の状態であるという身分関係に変動を生じさせるかどうかという問題と捉えることができ、民法ではそのような身分関係の変動について子の利益の観点から判断することを求めていると考えられる。
<法的論点>
◆第32回会議では、離婚時の親権者の定めについての父母の争いにはいくつかのバリエーションがあることを示唆する意見も示された。 すなわち、離婚時の親権者の定めについて想定され得る主張としては、①自己のみを単独の親権者とすることを求める主張(=他方の親権を制限することを求める主張)、②他方のみを単独の親権者とすることを求める主張(=自己の親権を辞することを求める主張)、③父母双方を親権者とすることを求める主張(=親権に関する身分関係に変動を生じさせないことを求める主張)が考えられる。
◆このうちの①や③の主張をする当事者は子の養育に責任をもって関わっていく態度を示していると考えられることから、父母双方が①の主張をしているケースや、その一方が①の主張をして他方が③の主張をしているケースにおいて、裁判所が父母の一方のみを親権者とする旨の判断をすることは、子の養育に責任をもって関わる態度を示している者の親権を制限する旨の判断をするものと捉えることができる。
◆そして、父母の一方が①の主張をするケースの中には、当該父母の一方が子の養育に関して他の一方との共同関係の維持を強く拒絶するケースも想定される。部会のこれまでの議論の過程では、このような主張がされている場面を念頭に、共同関係の維持を当事者の意思に反して「強制」すべきではないとの意見があった。このような意見の背景には、離婚後の父母の間に子の養育に関して一定の信頼関係がなければ、父母双方を親権者とした場合に円滑に親権行使することが困難となり、子の利益に反する結果を招くのではないかとの懸念があると思われる。
◆このような意見を重視する立場からは、たたき台(2)第2の2⑹の規 律について、裁判所が父母双方を親権者と定めるための要件として「父母 双方の合意があること」を必要とする旨の修正を求める意見が提示されている。このような修正をすると、父母の一方が①の主張をした際には家庭裁判所が父母双方を親権者と定めることが禁止されることとなり、結果的に一種の「拒否権」を父母の一方に付与する結果となる。
◆しかし、このような意見に対しては、父母の一方が①の主張をする理由 には様々なものが考えられ、その主張を採用することが子の利益との関係で必ずしも適切であるとは限らないとの反論がある。部会のこれまでの議論においては、家庭裁判所は、一方当事者が①の主張をしていることのみをもって特定の判断をするのではなく、その主張の理由や背景事情を含めた様々な事情を総合的に考慮して、子の利益の観点からの判断をすべきであるとの指摘がされた。このような指摘を踏まえ、たたき台(2) 第2の2の注2においては、「親権者の定めについて父母の協議が調わない理由その他一切の事情」を考慮することとしている。
◆そこで、裁判所が父母双方を親権者と定めるための要件として「父母双 方の合意があること」を必要とする旨の修正を求める意見については、結 果的に一種の「拒否権」を父母の一方に付与する結果となることを子の利 益との関係でどのように正当化するかという観点から議論する必要があるように思われる。
◆このほか、第32回会議では、父母双方を親権者と定めるためには「子 の養育に関して父母が平穏にコミュニケーションをとれること」を要求 すべき(又は「平穏にコミュニケーションをとれないこと」を「マイナス の要素」として列記すべき)であるとの意見も示された。この意見に関しては、たたき台(2)第2の2の注2の文言を前提としたとしても、家庭裁判所が「父母が共同して親権を行うことが困難であると認められる」かを判断する際には、子の養育に関して父母が平穏にコミュニケーション をとることができない事情の有無及び程度や、その事情に合理性が認められ得るかどうか等についても、「・・・親権者の定めについて父母の協議が調わない理由その他一切の事情」として考慮され得るとの指摘が考 えられる。

※関連する意見
第33回会議では、たたき台(2)第2の2⑹で提示された裁判所の判断枠組みについて、まず「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害する」事情があるか否かを判断し、これがあれば父母の一方を親権者として定め、これがない場合には裁判所が改めて子と父母との関係や父と母との関係を考慮した上で父母双方を親権者とするかその一方を親権者とするかを判断するという枠組みとすべきであるとの意見もあった。この意見は、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害する」事情がない場合であっても裁判所が父母の一方のみを親権者と定める旨の判断をすることができるようにすることを求める意見であると理解することができるが、このよう
な意見については、子の利益を害する事情がないにもかかわらず親権をめぐる身分関係に変動を生じさせることをどのように正当化するかについて、議論する必要があるように思われる。
なお、このような意見に関して、たたき台(2)第2の2の注2に列記された事情は飽くまでも「マイナスの要素」のうち重大なものを例示したものに過ぎないため、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害する」と認められるかどうかは、注2に例示された事情の有無のみで判断されるのではなく、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮して判断されることとなるとの指摘があり得る。

※執筆途中の記事です。(2024/2/11)

(資料34-1)9-13頁

⑨ 親権者の指定の審判又は調停の申立てがされたものの協議離婚が成立しない場合(第2の2の注)

<方策>
◆審判事件については、家庭裁判所が、親権者の指定の審判の手続において、 申立人に対し、相当の期間を定めて離婚が成立したことを証する文書(戸籍 の証明書等)を提出すべきことを命じた上で、この期間内にその文書の提出 がなければその申立てを却下することができる旨の規律を設ける。
◆調停事件については、現行家事事件手続法第271条によれば事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき等には家事調停事件を終了させることができるため、新たな規定を設けなくても、この現行法の規定によって対応することができると考えられる。
◆(婚姻中の)父母の一方が親権者の指定の調停の申立てをしたものの、その後に何らかの理由により協議離婚が成立しないまま長期間が経過するケースへの対応策としては、事件を終了させることのほか、申立ての変更により離婚調停の手続に切り替えるといった対応等もあり得ると考えられる。

資料37‐2/3-4頁

⑩ 子の監護者指定を必須とすべき修正意見について(第2の3(1))

<意見>
◆監護者の定めを必須とすべきであるとの意見があったが、これに対しては、離 婚後の子の養育の在り方がそれぞれの家庭によって多種多様であることを念頭に、監護者の定めの要否は個別の事案によって異なるため、監護者 の定めを一律に要求する必要はない。
◆監護者の定めを必須とすべきであるとの立場から、その理由として、監護者の定めをしないことにより不都合が生じ得るケースがある。
◆親権行使を父母の一方のみの判断に委ねるよりも、父母双方がその責任を負い、双方の関与の下で意思 決定がされるものとした方が、子の利益の観点から望ましいことが多い。
◆父母の一方のみが子の養育に責任を負い、最終的な決定権限を集約させた方が、監護の継続性や安定性を確保することができる点で子の利益の観点から望ましい。
◆監護者の定めを必須としない場合には、 家庭裁判所において、父母双方が親権者と定められる事案において監護者を定めるか否かが争われたときに、父母双方を親権者とすることにより子の利益を害するとは認められないにもかかわらず、その一方を監護者と指定することが必要となる事由として、どのような事由を想定するかを議論する必要がある。
◆父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるようなケース では、裁判所が父母の一方を親権者とすることが想定されている。また、 紛争解決の手段として、親権行使に関する特定の事項(例えば、子の居所をどちらに定めるか)について父母間の意見対立が生じた場合には、当該事項について親権を行う者を定めるという形での調整を図ることが可能である。なお、「監護の分掌」により各父母の役割分担を定めることもできるとの考え方もあり得るが、監護者の定めを必須としない場合には、これらの規定相互の関係を議論することが必要である。
<要綱案の考え方>
◆離婚後の父母双方が親権者と定められた場合には、監護者の定めの有無にかかわらず、①監護及び教育に関する日常の行為については、父母の一方が単独で(他方の同意等を得ることな く)行うことができ、また、②日常的な行為以外の親権行使についても、 急迫の事情があれば、その一方が単独で(他方の同意等を得ることなく) 行うことができるものとされている。そして、監護者の定めがされた場合 には、③監護及び教育に関する重要な事項(日常的な行為以外の行為)に ついて、急迫の事情がない場合であっても、単独で(他方の同意等を得る ことなく)行うことができるという効果があるほか、④監護者でない親権者が監護者の身上監護を不当に妨害することができないものとされる結果として、身上監護に関する事項(日常的な行為を含む)について父母間の意見対立が生じた際には、監護者の意見が常に優先されることとなる。
◆個別具体的な事案において父母の一方から監護者指定の申立てがされた際に、家庭裁判所がその申立てを認容するかどうかを判断するに当たっては、父母間にどのような事項についての意見対立があるのかを見極めた上で、特定の事項についての個別的な調整で足りるかどうかや、監護の分掌による役割分担を定めることが適切かどうかなどを考慮することが考えられる。また、その判断の際には、監護者の定めの効果(監護者の定めがされた場合には身上監護に関する事項全般について包括的に父母の一方が優先的な地位を獲得することとな る)を生じさせることが子の利益の観点から最善の選択肢であるかどう かを意識した審理をすることが考えられる。
<修正意見の評価>
監護者の定めを必須とすることを求める上記修正意見は、一切の例外なく一律に、身上監護に関する親権行使について父母 の責任に差を設けることを求めるものと整理することができる。
<監護の分掌/身上監護との関連>
監護者の定めと類似するものとして、監護の分掌の定めをすることも考えられるほか、紛争解決手段としては、身上監護に関する事項を含む特定の事項に係る親権の行使を父母の一方に委ねる裁判制度(たたき 台(2)第2の1⑶)の利用も想定され、これらの異同を整理することが有益であると考えられる。この部会のこれまでの議論の過程では、例えば、「監護の分掌」として、子の監護を担当する期間を父と母で分担したり、 監護に関する事項の一部(例えば、教育に関する事項)を切り取ってそれを父母の一方に委ねたりといった定め方があり得るとの指摘がされていた。監護者の定めがされた場合には身上監護に関する事項全般(日常的な行為を含む)について包括的に父母の一方が優先的な地位を獲得することとなるが、監護の分掌として、子の監護の期間等に応じて柔軟に父母間での役割分担を定めることや、父母間の協議又は家庭裁判所の判 断により上記特定の事項の範囲で親権を行う父母を定めることも考えられる。
さらに、監護者の定めがされていない場合であっても、父母の協議により「父母のどちらが子と同居するか」が定められる場合もあると考えられるところ、これも監護の分掌の一つの形であると捉える考え方や、親権のうち身上監護に関する特定の事項に限ってその行使を父母の一方に委ねたものと捉える考え方も成り立ち得るところである。
<検討結果>
第32回会議及び第34回会議では、一部の委員・幹事から、離婚後の父母双方を親権者と定めるに当たっては監護者の定めを必須とすべきとの修正意見(部会資料34-1参照)が示されたが、第34回会議における議論の経過を踏まえ、要綱案(案)では、そのような修正意見を採用していない。

(資料35-2)8頁/(資料34-1)13-16頁

⑪ 父母以外の第三者に監護者指定の申立権を認める修正意見について(第2の3(1))

<解説>
父母の監護能力に問題があるケ ースを念頭に置いた際に父母以外の親族が子の監護に関わることが有益 であること自体は肯定しつつも、そのようなケースに対応する手段とし ては親権制限や未成年後見等の制度を活用する方向での検討をすべきで あるとして、慎重な意見も示された。
そのため、これらの既存の制度との関係をどのように整理するかを議論する必要があると考えられる。例えば、第三者からの監護者指定の申立ての要件と親権制限の要件との関係や、監護者となった第三者による監護の適切性を担保するための仕組みの要否、監護に要する費用や報酬等の要否などが問題となり得る。また、父母以外の第三者が子の監護に関わる必要がある場面は、父母の別居や離婚の場面に限られず、父母の婚姻関係が円満である場合も含まれ得ることを踏まえた検討が必要であると考えられる。
<結論>
第32回会議及び第34回会議では、一部の委員・幹事から、父母以外の第三者に監護者指定の申立権を認めるべきであるとの意見が示されたが、第34回会議における議論の経過を踏まえ、要綱案(案)ではそのような規律は提示していない。
※立法的に難しい旨の棚村委員の説明があった。

(資料35-2)8頁/(資料34-1)17頁/第34回会議議事録1-39頁

⑫ 監護の分掌の範囲・決定方法(第2の3(1))

<解説>
◆この部会のこれまでの議論において、子の監護を担当する期間を父と母で分担したり、監護に関する事項の一部(例えば、教育に関する事項)を切り取ってそれを父母の一方に委ねたりといった定め方があり得るとの指摘がされた。その上で、監護に関する事項の一部を切り取る形での分掌の定めをする場合であっても、部会のこれまでの議論を踏まえれば、その対象は、特定の事項についての親権行使者の指定(要綱案(案)第2の1⑶)における「特定の事項」のように個別具体的な事項を設定することを想定しているわけではなく、ある程度幅をもった抽象的な役割分担が想定される。なお、監護者の定めや監護の分掌の定めの対象は飽くまでも身上監護に属する事項であり、財産管理や法定代理権の行使に関する権利義務の変動を目的とするものではないと考えられる。そのため、監護者指定の審判や監護の分掌の審判がされたとしても、父母の一方が(他方の意思に反して)単独で子を代理して契約を締結することは原則としてできず(ただし、急迫の事情がある場合に単独行使が可能となることは要綱案(案)第2の1⑴ウのとおり)、父母の一方がこれを単独ですることを求めるのであれば、特定事項についての親権行使者の指定の審判の申立てをすべきであるということとなる。その一方で、財産管理や法定代理を含まない身上監護に関する事項についての抽象的な役割分担については、特定事項についての親権行使者の指定ではなく、監護の分掌によって定めることが適切であると整理することが考えられる。
◆父母の協議又は家庭裁判所の調停・審判により監護の分掌(要綱案(案)第2の3⑴)の定めをする際には、身上監護に属する全ての事項についての分掌を定める必要はなく、各事案における父母の意見対立の状況に即して必要な事項についての定めをすることも可能である。例えば、教育に関する事項に限って、父母の意見対立を調整するためにそれを父母の一方の判断に委ねる旨の分掌の定めをする(教育以外の身上監護については特段の定めをせず、親権行使に関する要綱案(案)第2の1⑴から⑶までの規律によることとなる。)という解決もあり得ると考えられる。そのため、申立人が監護に関する様々な事項についての分掌を定める旨の審判の申立てをした場合であっても、家庭裁判所が、審判をする利益のある一部の事項の範囲のみについての分掌の定めをする(その余については特段の定めをしない)旨の審判をすることや、現時点では抽象的な役割分担をする必要がないようなときには分掌の定めをしないという審判をすることも考えられる(なお、監護及び教育に関する日常の行為については、監護者の定めや監護の分掌の定めの有無にかかわらず、親権の単独行使が可能であることにも留意する必要があると考えられる(要綱案(案)第2の1⑵参照)。)。
◆監護者の指定の申立てと監護の分掌の申立ては審判対象を共通にし、一種の包含関係にあるとの理解に基づけば、監護者の指定の申立てを受け た家庭裁判所が、監護の分掌として必要な限度の定めをする旨の審判をすることもで きるのではないかとの考え方もあり得る。
◆「監護の分掌」の決定方法として、①子の監護を担当する期間の分担を定めるほか、②監護に関する事項毎にその役割分担を定めることもできるとの考え方もあり得るが、このうち、②に関しては、父母間で現実に紛争となっている特定の事項については、当該事項に係る親権の行使を父母の一方に委ねる制度による解決が想定される。そうすると、この特定の事項に係る親権を行使する父母の定めとは別に、「監護の分掌」として父母の役割分担を定める場面として、どのような場面を想定し得るかについて議論を深める必要があり、父母双方を親権者とすることが相当な場合に、未だ父母の意見対立が具体化していない将来的、抽象的な事項についてあらかじめ父母の役割分担を定めるニーズがあるかといった観点や、分かりやすさなどの観点から、「監護の分掌」をどのようなものとして位置付けるかを議論することが有益であると考えられる。
<意見>
◆父母の協議や調停によって「監護の分掌」の定めをする際には、当事者の協議等の結果を踏まえ、現に意見対立が生じている事項のみならず、今後の紛争を予防するために様々な取決めがされることも想定される。部会のこれまでの議論の過程においても、諸外国における「共同養育計画」を参考とした取決めをすることもあり得るとの指摘もあった。

(資料35-2)9頁/(資料34-1)16-17頁

⑬ 居所指定権(第2の3(2))

<法的主張の方法>
父母双方が親権者である場合(父母の婚姻中を含む。)において、父母が
別居する際に、どちらの親が子と同居するかについての意見対立がある場
合には、子と同居することを求める父母の一方が、家庭裁判所に対し、
①居所指定権についての親権行使者の指定(要綱案(案)第2の1⑶)を求める申立てをすること。
②自らを「子の監護をすべき者」(民法第766条)とすることを求める申立てをすること。
③子の監護を担当する期間を父と母で分担すること等を求める旨の監護の分掌(要綱案(案)第2の3⑴)の定めを求める申立てをすること。
<申立ての振り分け方法>
◆「どちらの親が子と同居するか」のみが紛争の対象となっており、その他の身上監護に関する重要な事項については紛争化していないケースでは①の申立てをすることが相当
◆居所指定だけでなく、様々な身上監護に関する重要な事項について父母の
意見が対立していることなどにより、監護者を定めなければその身上監護に支障が生じるようなケースでは②の申立てをすることが相当。
◆父母が分担監護をすることが可能な関係であり、その中で申立人が解決を望んでいるケースでは③の申立ての中で処理することが相当。
◆申立人の申立てが事案の内容に即して適切でないと判断される場合には、家庭裁判所からの手続教示等により、申立人がその申立てを変更するなどして柔軟に解決することも考えられる。

(資料35-2)10-11頁

第3 養育費等に関する規律

① 要綱案第3の1の本文及び注で提示した規律と、民事執行法第152条の2第1項各号との異同

<解説>
要綱案(案)第3の1①から④ま でに掲げる各義務の範囲のうち法定養育費に係るものを除いた部分は、民事執行法第151条の2第1項各号に掲げられた各義務と同内容であり、いわゆる 婚姻費用分担義務、養育費支払義務及び扶養義務である。

(資料35-2)11-12頁

② 法定養育費の規定の準用(第3の2)

<解説>
民法第766条は、婚姻取消し、裁判離婚 及び認知の場合にも準用されていることから、法定養育費についてもこれら の場合に準用する。

(資料35-2)11頁

③ 法定養育費の請求主体(第3の2⑴)

<解説>
◆法定養育費の行使主体を、「離婚の時から引き続き子の監護を主として行うもの」としている。ここでいう「監護」は、子の身の回りの世話を現実に行っているという事実的な概念を指し、その者が「子の監護をすべき者」(民法第766条参照)として指定されていることを要しない。
◆子の監護の分掌の定め(要綱案(案)第2の3参照)がある場合や、監護に関して父母間に何らの取決めもされない場合であっても、父母の一方が主として子の監護を行っている場合には、その者が法定養育費の行使主体となる。
◆子の監護を主として行う者が変動した場合には、法定養育費請求権が発生する根拠を欠くこととなる。

(資料35-2)12頁

④ 法定養育費の始期(第3の2(1))

<解説>
離婚の日。

要綱案第3の2(1)

⑤ 法定養育費の終期(第3の2⑴ウ)

<解説>
◆次に掲げるいずれか早い日まで。
ア  父母がその協議により子の監護に要する費用の分担についての定め をした日
イ 子の監護に要する費用の分担についての審判が確定した日
ウ 子が成年に達した日
◆第3の2⑴ウは、「子が成年に達した日」を法定養育費の終期と定めることとしているが、これは、飽くまでも「法定」養育費の終期に関するものであり、養育費(父母の協議又は審判によって定められる養育費)の終期に関する現行法の解釈や実務運用に影響を与えるものではない。一般に、養育費の取決め等がされる際には、その支払期間が必ずしも子が未成年である間に限定されるわけではなく、その支払義務の有無や程度は、子が自ら稼働して経済的に自立することが期待できない場合に、両親の経済状況等の個別の事情を踏まえて判断されることとなるとされている。
<意見>
◆実父母の離婚後に子について養子縁組がされた場合には、養親が子に対する一次的な扶養義務を負うものと解すべきであり、法定養育費の終期に「子について養子縁組が成立した時」を追加すべきである。

(資料37-2)4-5頁/(資料35-2)12頁

⑥ 法定養育費の支払いタイミング(第3の2(1))

<解説>
毎月末。なお、始期および終期が属する月が1箇月に満たない場合は、日割計算となる。

要綱案第3の2(1)/(資料35-2)15頁

⑦ 法定養育費の請求のための要件

<解説>
◆父母が子の監護に要する費用の分担についての定めをすることなく協議上の離婚をした場合。
◆子の監護 に要する費用の分担についての定めがされていない理由等は問わない。
◆法定養育費の請求のための要件は「子の監護に要する費用の分担 についての定め」がないことのみとし、債務者がその請求を不当と考える場 合には、債務者側から養育費を定める旨の家事審判又は家事調停の申立て をした上で、家庭裁判所の手続において調整することで対応するものとせ ざるを得ない。
<意見>
◆例えば、 養育費について父母が協議をすることが「できない」ことを要件とすべきで ある。
◆請求者がこの協議を拒絶している場合や親子交流の実施を拒絶している場合には法定養育費の請求をすることができないこととすべき。
◆法定養育費の請求のための要件等が複雑なものとならないようにする必要がある。

要綱案第3の2(1)/(資料35-2)12-13頁

⑧ 法定養育費の額

<解説>
◆子の監護に要する費用の分担として、父母の扶養を受けるべき子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案して子の数に応じて政省令で定めるところにより算定した額。
<"最低限度"の趣旨>
法定養育費の支払義務は、(父母が養育費の定めをすることなく離婚した という事実により)債務者の実際の収入等を離れて生じるものであること から、債務者に実際の支払能力を超える債務を負担させる可能性があり、調整の仕組みを設けたとしても、資力の乏しい債務者にとって支払能力に見合った養育費の設定を求める裁判手続の負担は大きいとの懸念もあるため。

要綱案第3の2(1)/(資料35-2)13頁

⑨ 債務者の資力を理由とする支払拒絶の規律(第3の2⑴ただし書)

<解説>
◆法定養育費の債務者は、支払能力を欠くために法定養育費の費用の支払をすることができないこと又はその支払をすることによってその生活が著しく窮迫することを証明したときは、その支払を拒むことができるものとする。
◆飽くまでも債務者側の資力を理由として「法定養育費」としての支払を拒むことができる要件を定めるものであるため、この要件に該当する場合であっても、同居親側の資力その他の事情を考慮した結果として、父母の協議又は家庭裁判所の審判等において、別居親に一定の「養育費」の支払義務を負わせる旨の定めがされることはあり得る。
<一部の支払拒絶の可否>
第33回会議においては、債務者の資力を理由とする支払拒絶の規律(要綱案(案)第3の2⑴ただし書)について、債務の全部の支払拒絶の可否のみを問題とするのではなく、債務者の資力の程度に応じて債務の一部の支払拒絶をすることもできるものとすべきであるとの修正意見が示された。このような修正意見は、債務者の収入等によれば法定養育費の全部を支払うことはできないもののその一部を支払うことが適当であるケースを念頭に、このようなケースにおいて債務者に法定養育費の全部の支払拒絶を認めた上で当事者に対して改めて家庭裁判所の手続によって養育費の額を定めることを求めるのは迂遠であることをその根拠とするものと考えられる。他方で、一部の支払拒絶を認めると、債務者の資力に応じて法定養育費の額が減少することとなり、一定の要件の下で一定額が生じるという法定養育費の性質に反するし、執行手続における債務者の資力に関する審理が長期化・複雑化し、権利の簡易・迅速な実現という制度趣 旨に反するという懸念がある。

(資料35-2)13-15頁

⑩ 執行手続における債務者の手続保障について(第3の2の注2)

<解説>
 通常の債権差押えの手続においては債務者審尋を経ずに差押命令が発令さ れることとなっており、差押命令に対する債務者の不服申立ては、差押命令の 発令後の執行抗告等によることが想定されている。
 このような執行手続に関し、この部会のこれまでの議論においては、養育費 等に関する債権に一般先取特権を付与した場合には、債務者の手続保障等に与える影響の観点からの検討を要する旨を指摘する意見があった。 
 もっとも、養育費等の支払が家庭裁判所の手続により取り決められた場合 のほか、裁判所外の協議によって養育費の額を取り決める書面が作成された 場合にも、債務者はその取決めの過程に関与する機会があったと評価し得る ほか、この部会のこれまでの議論では、担保権実行としての債権差押の手続において差押命令の発令前の段階で債務者に事前の手続保障が与えられていないのは担保権実行全般に共通する事象である旨を指摘する意見があった。
 そのため、養育費等の債権に先取特権を付与した場合においても、その担保権実行の手続全般において差押命令の発令前に債務者の手続関与を要求することについては、慎重に検討する必要があると考えられる。
 他方で、法定養育費の支払義務は、父母が養育費の定めをすることなく離婚したという事実により生じるものであるから、債務者に対する事前の手続保障を図る必要が高い。特に、離婚から相当期間が経過した後に債権者が担保権実行を申し立てたために法定養育費の負担が一度に現実化する場合や、別居開始から離婚までに相当期間が経過していて債務者の収入等が減少している可能性がある場合には、法定養育費の額が比較的低額に定められたとしても、差押えを受ける債務者にとっての打撃は大きくなる可能性がある。 
 そこで、要綱案(案)第3の2の注2では、民事執行法を改正して、債権者が法定養育費を請求する場合を対象として、執行裁判所が、(差押命令の発令前に債務者を審尋しないものとされている債権執行における一般的規律と異 なり)債務者を裁量的に審尋することができるものとする規律を提示している。
 執行裁判所が差押命令の発令前に債務者審尋を行うかどうかは個別具体的な事案 における事実関係等を踏まえて判断すべきであるが、例えば、離婚成立から差押命令の申立てまでの期間の長さやその間の法定養育費の一部支払の有無、差し押さえるべき 債権の内容等を考慮して、債務者に反論の機会を与える必要性の程度と債務者による 財産隠匿のおそれの程度を踏まえて判断することになると考えられる。

(資料35-2)14-15頁

⑪ 家庭裁判所の手続による減免等の処分(第3の2⑵)

<解説>
◆家庭裁判所の審判 による法定養育費の減免や支払猶予その他の処分を可能とする仕組みを提示している。
◆なお、この規律の運用について、第33回会議では、この規律は債務者の「支払能力」を考慮して離婚時から当該裁判時までの過去の期間に対応する未払の法定養育費の減免等を想定したものであり、債務者が法定養育費の一部を支払った後に当該既払部分の支払義務を減免してその返還を命ずる旨の判断をすることについては慎重な検討を要するとの指摘があった。この点については、法定養育費の請求権が実体法上の権利として発生することからすれば、債務者が法定養育費の全部又は一部について支払った場合には、法定養育費に係る債務はその範囲で消滅し、家庭裁判所がその後の審判において裁量により既払部分の減免等を命じる余地はないのではないかとの指摘もあり得る。

要綱案第3の2(2)/(資料35-2)14-15頁

⑫ 裁判手続における情報開示義務(第3の3)

<解説>
◆離婚についての調停事件に拡張して適用がある。

(資料35-2)15-16頁

⑬ 裁判手続における情報開示義務違反の制裁(第3の3及び第6の3)

<解説>
◆10万円以下の過料とすることが考えられる。
◆部会のこれまでの議論においては、「制裁」ではないものの、この情報開示命令を受けた当事者がこれに従わない場合には、家庭裁判所が、手続の全趣旨に基づき、その収入や財産の額等を認定することができるものとすべきであるとの指摘があった。要綱案(修正案)の中ではこの点に関する特段の記載はしていないものの、家庭裁判所が養育費等の算定の基礎となる当事者の収入や財産分与の対象となる財産の額等について判断するに当たり、 情報の不開示や虚偽情報の開示といった手続経過をも手続の全趣旨として考慮して事実認定をすることは、新たな規定を設けるまでもなく、当然に行うことができると考えられる。

資料37-2/5頁

⑭ 執行手続における債権者の負担軽減(第3の4)

◆養育費等の請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者が①財産開示の申立てをした場合には、開示された財産(給与債権に限る。)について、②給与債権に係る情報取得の申立てをした場合には、情報が開示された給与債権について、債権者が反対の意思を示したのでない限り、差押えの申立てをしたものとみなされるものとしている。(第3の4⑴)
◆①の手続において、財産開示期日に出頭した債務者が財産を開示しなかった場合には、債権者が反対の意思を示したのでない限り、執行裁判所が市町村等に給与債権に係る情報の提供を命じなければならない。(第3の4⑵)
⇒これにより情報提供がされた給与債権に対する差押命令の手続に移行することができるものとしている。
◆養育費等に係る一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者についても準用する。(第3の4 ⑷)
◆財産開示手続等を実施したにもかかわらず差し押さえるべき債務者の財産を特定することができなかった場合には、差押命令の手続を実施することができないことが問題となる。そこで、第3の4⑶では、この場合において差押命令を発令することなく執行手続を終了させるための規律を設けることを提示している。

※給与債権に限定した趣旨
第33回会議において、預貯金債権をその対象に含めた場合に生ずる懸念等が示されたことによる。

(資料35-2)16-17頁

第4 親子交流に関する規律

① 親子交流の原則的な申立権者(第4の1)

<解説>
「父又は母の請求」が原則とされ、父母以外の親族が請求可能となるのは例外とされる。

(要綱案)第4の1/同第4の3/(資料35-2)17頁

② 子の意思を明記すべきか(第4の1)

<解説>
◆親子交流に当たって、子の意思に関する事情を正確に把握することが重要であることについてはおおむね異 論はないものと思われる。
◆もっとも、裁判所が子の意思等を考慮(尊重)すべき旨を民事実体法に明記することについては、これまでも、様々な論点において、慎重な意見があった。また、現行法の下でも、子の監護に関する処分の審判事件(養育費に関するものを除く。)においては、家庭裁判所が、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないこととされており、子が15歳以上である場合には子の陳述を聴かなければならないこととされている(家事事件手続法第65条、第152条第2項)。こうした議論の経過等を踏まえ、要綱案(案)でも、子の意思等を明記することとはしていない。
◆家事審判事件において子が意見表明をする方法としては、事実の調査の過程での陳述のほか、家事事件手続法第42条の利害関係参加をする方法があり得る。
<資料34-1 9-10頁>
⇒本記事の第2の⑦参照。
<資料34-2 4-6頁>
⇒本記事の第1の③参照。

(資料35-1)17頁/(資料34-1)9-10頁/(資料34-2)4-6頁

③ 裁判手続における親子交流の試行的実施(第4の2)

<解説>
◆家事事件手続法によれば、家庭裁判所は、家庭裁判所調査官(以下「調査官」という。)に事実の調査をさせることができ、調査官は、事実の調査の結果を書面又は口頭で家庭裁判所に報告するものとされている。また、調査官は、その際に意見を付することができるとされている(同法第58条)。要綱案(案)において提示している親子交流の試行的実施の仕組みも、「事実の調査のため」に行われるものであるから、その状況について調査官による調査をさせることができることとなる。
◆たたき台(2)第4の2⑶では、家庭裁判所が「試行的実施の状況について、家庭裁判所調査官に調査をさせ」ることができるものとする旨の規律を提示していたが、このような調査は、その旨の規律を新たに設けなくても、家事事件手続法第58条の規定によって行わせることができることから、要綱案(案)ではこの部分の記載を修正している。
⇒規定は削除。要綱案は「家庭裁判所は、上記アの試行的実施を促したときは、当事者に対して その結果の報告(当該試行的実施をしなかったときは、その理由の説明) を求めることができる。」となった。(第4の2(1)ウ)

(資料35-2)18頁

④ 試行的実施における調査官の関与を必須とすべきか(第4の2(1))

<解説>
◆第33回会議では、調査官の関与を必須とすべきであるとする意見もあった。確かに、親子交流の実施をめぐって父母間の意見が大きく対立しているような場合には、調査官が関与してその知見を踏まえた検討・調整が行われることが望ましいと考えられる。
◆もっとも、現在の家庭裁判所の実務においては、葛藤がそれほど高くない事案について、必ずしも調査官が関与せずとも、当事者同士で調整して期日間に親子交流を実施することを促すことがあると指摘されており、そのような運用も事案に応じた調整の方法として有益であると考えられる。
◆また、要綱案(案)において提示している親子交流の試行的実施の仕組みは、交流の方法として直接交流だけでなく間接交流(ビデオ通話、電話、手紙等による方法)も含むことを前提としているところ、全ての交流について調査官の関与を必須とすることは必ずしも相当でないと考えら れる。
◆このようなことから要綱案(案)では調査官の関与を必須とすることとはしていない。

(資料35-2)18頁

⑤ 「子の心身に有害な影響 を及ぼす言動を禁止すること」等に違反した場合の効果等(第4の2(1)イ)

◆例えば、親子交流の試行的実施において、条件に違反して父母が子の心身に有害な影響を及ぼす言動をした場合には、そのことが、最終的に家庭裁判所の審判に当たって、子の安全に関する事情の一つとして、当該違反をした者に不利益に考慮され得ることになると考えられる。
◆再度の試行的実施の可否が問題となった場合には、「子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情」の有無の中で同様の考慮がされ得ることになると考えられる。このように、その後の手続において違反行為が不利益に考慮され得るということが違反に対する抑止になると考えられる。

(資料35-2)18-19頁

⑥ 親以外の第三者と子との交流に関する規律(第4の3)

<制定の経緯>
父母以外の第三者と子との交流の定めに関し、第33回会議では、家庭裁判
所に対する申立権者を原則として父母としつつ、一定の要件の下で、父母以外の第三者も申立てをすることできるような規律を設けることについて、基本的にこれに賛成する意見があった。他方で、応訴の負担や濫用的な申立てに対する懸念等から、慎重な検討が必要であるとする意見や、上記のような規律を設けるとしても、その範囲には一定の限定が必要であるとする意見もあった。
<限定>
◆申立権者となり得る第三者の範囲を限定(子の直系尊属及び兄弟姉妹以外の者にあっては、過去に当該子を監護していた者に限る。)
◆補充性(その者と子との交流についての定めをするため他に適当な方法がないときに限る。)
◆子の利益のための特別の必要性を家庭裁判所が認めるとき

(資料35-2)19頁

⑦ 今までの実務のとの差異(第4の3)

<解説>
「親以外の第三者と子との交流に関する規律」は、父母以外の第三者が主体となって子との交流を実施する場面に対応する規律であり、実体的要件も、第三者が主体となる交流を実施する場合の要件として整理されることになると考えられる。他方で、これまでの実務では、親子交流についての定めをするに当たって親族等も含めた第三者の関与について定めがされる場合があるとされているが、これは飽くまで親子交流を円滑かつ適切に実施するための実施方法や条件として定められるものであって、本文記載の実体的要件が必要とされる場面ではないと考えられる。

(資料35-2)21頁

⑧ 「子の利益のため特に必要があると認めるとき」とは(第4の3(1))

<解説>
家庭裁判所が父母以外の第三者と子との交流を実施する旨を定める場面は、基本的には、父母間又は当該第三者と相手方となる父母との間に意見対立があるケースが想定されることになる。そうすると、家庭裁判所が(少なくとも一方の)父母の意思に反してでも子と当該第三者との交流を実施する旨を定めることが相当であるといえるのは、例えば、子と当該第三者との間に親子関係に準じた親密な関係が形成されているなどして、子の利益のために特に交流を認める必要性が高い場合に限られると考えられる。そこで、第三者の申立てにより、子との交流に関する事項を定めるに当たっては、子の利益のための特別の必要があることを要件とすることが考えられる。

(資料35-2)20頁

⑨ 「その者と子との交流についての定めをするため他に適当な方法がないとき」(補充性の要件)(第4の3(2))

<解説>
 父母以外の第三者がその申立てをすることが子の利益の観点から必要となるのは、父母の一方の死亡や行方不明等の事情によって、父母間の協議や子と別居する父母からの家庭裁判所に対する申立てが不可能又は困難である場面が想定される。そして、応訴の負担や濫用的な申立てへの懸念等を踏まえると、父母間の協議や父又は母による申立てなど、他の適切な手段によって当該第三者と子との交流についての定めをすることができる場合には、当該第三者自身による申立ては認めないこととすることが相当であると考えられる。
 そこで、父母以外の親族による申立てができるのを、父母の一方の死亡や行方不明等の事情によって父母間の協議や父母による申立てが期待し難い場合に限定する趣旨で、「その者と子との交流についての定めをするため他に適当な方法がないとき」に限ることとしている。

(資料35-2)20頁

⑩ 申立権者の範囲(第4の3(2)イ)-祖父母等の直系尊属について、監護要件を必須としないのか-

<解説>
◆第三者と子との交流を実施する目的は、既に形成されていた愛着関係を離婚後等も維持することにあると考えられる。そうすると、申立権者の 範囲は、そのような関係性が築かれる素地があるといえる一定の範囲の近親者や、その他の親族であって過去に子を監護していた者に限ることが考えられる。
◆一律に同居を要件とするのではなく、「子の利益のため特に必要があると認めるとき」という実体的な要件の中で、当該第三者と子との従前の関係性、過去及び現在の交流状況、子の意思等を踏まえ、個別具体的な事情に応じて、交流をすべきか否か等を判断すべきであると考えられる。
<意見>
◆祖父母等の直系尊属についても、過去に監護していたこと(監護実績)を要求すべき。
◆子と祖父母等との関係性には様々なものがあり得ることから、一律に同居を要求することは相当でない。

(資料35-2)21頁

⑪ 申立権者の範囲(第4の3(2)イ)-事実上の養親や里親に申立権を認めるべきではないか-

<解説>
親族以外の者であっても、例えば、過去に子を監護していた「事実上の養親」や里親については、申立権を認める余地があるという指摘もあった。もっとも、民法上、親権や子の監護に関する事項について、「事実上の養親」 や里親に家庭裁判所に対する申立権を明示的に認めるものはなく(同法第819条第6項、第834条等)、子との交流についての定めについても、これらの者に申立権を 認めることについては慎重な検討を要するものと考えられる。

(資料35-2)22頁

第5 養子に関する規律

① 未成年養子縁組の代諾に関する規律について(第5の2(1))

<解説>
◆そもそも、民法第797条第2項により監護者等(=親権を行う権利義務を有していない者)が養子縁組の代諾についての同意権を有していることとのバランスを考慮すれば、父母双方が親権者である場合における養子縁組の代諾についても、本来であれば、その双方の同意がなければ、養子縁組の成立に慎重であるべきであるとの考え方があり得る。このような考え方は、要綱案(案)第5の1の規律によれば、養子縁組の成立は、養親と養子との間に法律上の親子関係を生じさせ、養親に親権を付与するという効果にとどまらず、実父母が親権者としての権利義務を失う点で、実質的に親権喪失や(父母の離婚後においては)親権者の変更に類似する効果をも有することを重視するものと整理することができる。
◆このような考え方を重視すれば、養子縁組の代諾については、一律に、要綱案(案)第2の1⑶の規律(父母の意見対立時に裁判所の判断により父母の一方のみが単独で親権を行うことができるものとする規律)を適用しないものとする規律を設けるべきであるとの考え方があり得る。このような考え方によれば、父母の意見対立時において、父母の一方が、他の一方の同意なく単独で養子縁組を成立させるためには、当該他の一方について親権喪失の審判を得た上で、養子縁組の代諾をすることや、父母の離婚後の場面では、親権者の変更の手続(要綱案(案)第2の2⑴カ及びク参照)により父母の一方のみを親権者とする旨の審判を得た上で、養子縁組の代諾をすることが想定される。
◆もっとも、養子縁組の代諾の場面における要綱案(案)第2の1⑶の適用の余地を完全に排除すると、本来であれば養子縁組をすることが子の利益の観点から望ましいにもかかわらず、結果的にその実現が困難となる事態が生じかねないとの反論が考えられる。
◆そこで、要綱案(案)第5の2⑴では、父母双方が親権者である場合にお ける養子縁組の代諾についての父母の意見対立時においては、養子縁組を することが子の利益のため「特に必要がある」と認められるときに限り、家庭裁判所が要綱案(案)第2の1⑶の規律による裁判(=父母の一方が単独で養子縁組の代諾をすることができる旨の裁判)をすることができるものとする規律を提示している。
【参考】
(資料35-2)22-25頁

(資料35-2)22-25頁

② 家庭裁判所が未成年養子縁組の代諾する規律における「特に必要がある」の意義(第5の2⑴ア)

<解説>
養子縁組が成立すると実父母が親権者としての権利義務を失うことを考慮してもなお養子縁組を成立させることが子の利益の観点から必要である事情が必要であると考えられる。
<意見>
◆それまでの実父又は実母による子の養育(親権行使のほか、親子交流の実施状況や扶養義務の履行状況等も含まれると考えられる。)の状況等も考慮されるべきであり、例えば親権行使の適切性については、不適切な親権行使(又はその行使の懈怠)の有無といった観点での考慮があり得るものの、しかし、実父母の親権喪失事由や親権停止事由が絶対的に要求されるというわけではなく、この必要性の判断に当たっては、実父母による養育と養親による養育とを比較して相対的に判断すべきである。
◆親権者と監護者等との意見が対立した場合においても、家庭裁判所が監護者等の同意に代わる許可の審判をすることで、親権者が監護者等の同意を得ることなく養子縁組の代諾をすることができるような規律を設けるべきである。

資料37-2/6頁

③ 離縁の代諾に関する規律(第5の2(2))

 第31回会議においては、養子が15歳未満である場合の離縁の協議の当事者に関する規律を整備する必要があるとの意見があった。民法第811条は、養子が15歳未満であるときは、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをすると定めており、養子の(実)父母がすでに離婚しているときは、その協議又は家庭裁判所の審判により、その「一方」を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めることとしている。このような現行法の規定は、父母の離婚後はその一方のみが親権者となる旨を定める同法第819条の規律を前提としているが、同条を見直し、離婚後の父母双方を親権者とすることができるようにするのであれば、同法第811条についても同様に、離婚後の(実)父母の「双方」を「養子の離縁後にその法定代理人となるべき者」と定めることも可能とする旨の整備をすることが考えられる。
 要綱案(案)第5の2⑵では、このような議論を踏まえて民法第811条第3項及び第4項を見直す旨を提示している。

(資料35-2)25頁

不明点・宿題

第32回会議及び第34回会議では、一部の委員・幹事から、たたき台(2)第2の2の考慮要素についての修正意見(部会資料34-1参照)が示されたが、第34回会議における議論の経過を踏まえ、要綱案(案)では、そのような修正意見を採用していない。

(資料35-2)7頁

第34回会議においては、特定の事項についての親権行使者の指定(要綱 案(案)第2の1⑶)の規律と、監護の分掌(要綱案(案)第2の3⑴)に ついて、それぞれの規律がどのような事案で適用されることが想定される のかを整理する必要があるとの意見が示された。

(資料35-2)8頁


レファレンス

以下のものは、参照用メモであり、具体的内容を紹介するかどうかは未定のものです。

DV・虐待
「第13回会議では、現在の実務の紹介として、家事事件や人事訴訟事件の中でDVや虐待に関する主張がされた場合のほか、(明確な主張がなくても)DVや虐待が疑われる場合には、同居親や子の安全を最優先に考慮するという観点から、手続のどの段階においても優先的かつ慎重な検討等がされているなどの紹介がされたところである。この点に関し、個別の事案の中には必ずしもDVや虐待の主張に対して十分な対応が行われていないケースもあるのではないかとの指摘があった一方、例えば、調停委員や家裁調査官の研修等を通じて、上記方針に沿った対応が実践されるように浸透を図るなどの運用上の取組も紹介された。」のウソについて。(35-2 17頁)


親権の共同行使
親権の「共同行使」とは、例えば、父母の一方が、他方の同意 を得て、単独名義で親権の行使をする場合も含まれており、この場合の他 方親権者の同意は黙示的なものも含まれると解されることから、部会の これまでの議論においては、父母の一方が他の一方に対して親権行使に 関する相談の連絡をしたもののそれに対する反対がないといった場面に おいては、黙示的な同意があったものと整理することもできるであろう との意見があった。
(34-1 3)
日常の行為以外の事項(すなわち、重 要な事項)について親権者である父母の意見が対立する場合に対応する ための方策として、たたき台(2)では、この場合の意見調整をするため の裁判手続を新設することを提示している。このような規律によれば、あ る重要な事項について、父母の意見が対立する場合の親権行使の方法は、 (a)まずは父母の協議により当該事項についての親権行使の内容を定 めることとする(この協議は、父母のみの協議のほか、家庭裁判所におけ る家事調停や各種のADRによることも考えられる。)が、(b)この協議 が調わないときは、家庭裁判所の審判により、父母のいずれが当該事項に ついて親権を単独で行うものとするかが定められることとなる。このよ うな当事者間の協議や裁判所の判断による解決方法は、現行民法の他の 規定とも整合的であると思われる。また、このような裁判手続には一定の 時間を要すると考えられるものの、緊急性が要求されるケースにおいて は、例えば、審判前の保全処分を活用することも考えられる。
(同)
一般に、親権行使を父母 の一方のみの判断に委ねるよりも、父母双方がその責任を負い、双方の関与 の下で意思決定がされるものとした方が、子の利益の観点から望ましいこ とが多いとの価値判断を踏まえた意見が示されていた。
(同)

法定養育費
└始期及び終期等の規律の表現について(37-2)
└一部免除について(同)
└認知の場合における法定養育費の発生始期(同)
└執行手続における債務者の手続保障について(35-2 14)
└減免等の処分(35-2 14-15)

執行手続における債権者の負担軽減
└財産開示手続等と差押命令の手続を連続的に行うことができる仕組みうな仕組みにおいて、財産開示手続等を実施したにもかかわらず差し押さえるべ き債務者の財産を特定することができなかった場合の取扱い(37-2)

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【分野】経済・金融、憲法、労働、家族、歴史認識、法哲学など。著名な判例、標準的な学説等に基づき、信頼性の高い記事を執筆します。