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対馬で見えた海洋ごみ問題が解決されない理由について

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皆さんこんにちは!ごみの学校の寺井です。
先日長崎県対馬市にお邪魔して、海洋ごみの状況を色々と視察してきました。
その中で改めて海洋ごみ問題の抱える複雑さを感じたので、書き連ねていこうと思います。

対馬の海岸部の様子

対馬での海洋ごみの実情

対馬では年間20,000m3~30,000m3の海洋ごみが沿岸部に漂着しているとされています。
 ※1㎥(立法メートル)=1m×1m×1mを表します。
その中で実際に回収できているのは7,000m3ほどで、それ以外の海洋ごみは波にさらわれ、他の沿岸部に漂着しているようです。
年間7000m3という量は小学校の25mプール13杯分だそうです。とりあえずすごい多いということですね。

回収された海洋ごみ この黒い袋が年間7000袋回収される

海洋ごみはどこから来るのか?

対馬市の調査では多くの海洋ごみは中国、韓国由来のものが大半だという結果になっていました。
海流の流れや季節風などの関係で、大陸から日本海に流れてきているようです。
ただ、これはあくまで対馬の特徴で、日本のその他地域では日本発生の海洋ごみも数多く漂着しています。

環境省)海洋ごみとして流れ着いてペットボトルの由来調査結果

対馬ではどのように処理しているのか?

対馬では主に漁協組合に委託して、海洋ごみを回収しています。そこは人件費がかかる部分なので、市から漁協組合にお金を支払われて回収が行われています。
その後、回収されたごみですが、おおよそ以下のような内訳となっています。

2021年度に対馬で回収されたごみの内訳

回収されたごみのうち、発泡スチロールや、漁業系のプラスチックは資源として活用すべく、選別、破砕などをされています。

綺麗に切断された発泡スチロール
破砕された漁具などのプラスチック

ちなみにこちらの海洋プラのチップは1円/Kgで販売されていますが、まだまだ在庫が多く、色々な企業に活用してもらうようアナウンスされていたりします。
逆にリサイクルできないごみは大半を埋立処理している状況で、海洋ごみ=埋立処理が基本となっていました。島内に埋立処理施設があるので、基本島内で処理されている形です。

海洋ごみの何が課題なのか?

海洋ごみの課題①
誰がお金を負担するのか?

対馬市の場合、海洋ごみ回収にかなりの予算を割いています。
全体で、約3億円近い予算をかけて毎年海洋ごみを回収しているのですが、現状は国からの補助金を9割活用していますが、自治体普段でも3000万円弱の負担額となっており、地方自治体の費用としてはかなり大きい額になっています。
そもそも対馬市の方が出したごみでも無いものに年間数億円の費用をかけており、回収すればするほど、予算が膨らんでいくという構造。
これはどの自治体でも同じような構造ではあるのですが、これでは予算をかけて回収するモチベーションにはなりにくいですよね。

海洋ごみの課題②
海洋ごみはリサイクルが難しい

じゃあ、回収にコストがかかるのなら、リサイクルして売却しお金にすればいいじゃない!という話になりそうですが、これまた難しい課題がありまして。
対馬でも海洋プラを選別して、洗って、チップにしたりしてますが、それでもなかなかリサイクルが進まない。
海洋ごみ由来のプラスチックを活用する上での課題が大きく2つあります。

1.品質の課題
対馬に漂着するプラスチックは基本的に海外製のため、どんな素材が使われているかも分からない状態で、素材別に正確に分別もできず、リサイクル後の資源の質がなかなか安定しないのです。
加えて海洋プラは塩水に揉まれて塩素分が高くなり、製品にする際に悪影響を及ぼしてしまうという構造です。
そのため、メーカーが使おうにも使いずらいのがネックです。

2.コストの課題
コスト面を考えても難しいのは、対馬の場合離島という立地の兼ね合いもあり、プラスチックを活用しようにも、本土からフェリーに乗ってトラックで回収するしかなく、通常のリサイクルプラスチックよりもコストがかかってしまいます。また、メーカーが視察に行くにもなかなか気軽にいける距離ではないので、商品を企画する際にも、手間がかかってしまうこともネックに感じます。

海洋ごみの課題③
調査がなかなか進んでいない。

海洋ごみに関してはこれまでも問題視されてきており、「回収」の部分に関してはかなり色々なデータがありました。一方で、資源化や活用に向けてのデータや調査はなかなか進んでいないように感じます。

■知りたいデータ
・海洋プラはどんな強度でどんな用途に使えるのか?
・海洋ごみ由来の木くずやプラスチックは燃料などに活用することができるのか?
・海洋ごみはどんな設備を入れれば効率的に選別、洗浄、再資源化することができるのか?

考えるだけでも色々出てきます。
どこかの自治体や企業がもしかすると調査しているのかもしれませんが、これらの情報をもっとオープンにして出していき、色んな自治体や企業が参考にしていくことができないと、いつも海洋ごみ問題の入口から進まないように感じます。

まとめ

世界全体でプラスチック使用量は年々増していくばかり、少子化の影響もあり自治体もどんどん財政難になっていくことが予想されます。
これまでのような国や自治体が予算をかけたり、ボランティア団体が頑張って海洋ごみを回収するような構造ではなく、企業なども巻き込んだ仕組みの設計が不可欠のように感じます。
もちろん企業側でも解決に向けて多くの取り組みがなされていることは全体ですが、「海洋ごみリサイクル法」のような、善人任せにしない日本全体として海洋ごみ問題の解決に取り組める仕組みづくりができればいいなと思います、
個人的にも色々と取り組みや調査を進めていますので、うまく何かできればまたこのnoteに書きたいと思います。

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