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#2 20代で海外生活、起業、結婚。牛に会える牧場カフェを経営する社長馬上温香さんに聞いた20代のターニングポイント。大事なのは「"生"の経験を積むこと」

for 20's第2回目のインタビュイーは株式会社牛かうVaca社長馬上温香さんです。20代で海外生活、起業してお店をオープン、そしてご結婚。「今の私を作った経験は20代に詰まっている」とおっしゃる通り、濃密な20代を過ごされた温香さんに、20代の羅針盤となるような経験談やマインドセットを聞いてきました。

【馬上温香さん】
1989年生まれ。高秀牧場の長女。地元の高校を卒業後、カナダ、トロントの George Brown College Tourism Manegementを学んだ。ナイアガラの滝の現地ガイド、飲食店のスーパーバイザーを経て帰国した後は高秀牧場「チーズ工房」にて勤務。その後、高秀牧場「ミルク工房」を開業し、ジェラート製造、「牛が見える牧場カフェ」の経営に着手。2021年に法人化し、株式会社牛かうVacaを設立。同年、千葉市内に高秀牧場のアンテナショップである「牛かうばっか 高秀牧場のじぇらーと屋さん」をオープン。 酪農の魅力伝道師として、酪農体験を実施しながら食と命の大切さを伝える活動をしている。

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<聞き手・ライター:桝井孝一>


1. 20代前半のご経歴

"大学入学を機に海外へ"「すべてが変わったカナダ生活」


for20's第2回目のお相手は株式会社牛かうVaca社長馬上温香さんです!本日はどうぞよろしくお願いします!(インタビュワー・桝井)

よろしくお願いします!(馬上温香さん)

早速ですが温香さんは20代前半の頃どのように過ごされていましたか?

23歳までカナダで暮らしていました。20歳で大学は卒業して、その後は向こうの飲食店で働いていました。仕事自体は楽しかったのですが、とても忙しくて・・・17時オープンなのですが、オープンと同時に席が埋まって2時間待ちみたいな(笑)そこでホールリーダーをやらせてもらっていました。社員まではいかなかったですが、社員とアルバイトの間みたいな形で。お給料はそんなに高くなかったのですが、向こうはチップの文化があるので、手取りで40万円くらいもらっていました!笑

そうだったですね。そこの飲食店ではどのくらい勤務されていたんですか?

大学を卒業して21歳までなので、1年半くらいですね。そのあとは、ナイアガラの滝で日本人向けのバスガイドをしていました。通っていた大学がツーリズム系の学校で、もともと興味はあって。このお仕事も楽しかったんですが、海外ってすごく適当で、バスが来ないとか日本では考えられないトラブルが多発したんですよね。何十本とツアーを回りましたが、何事もなく終わったのが5本くらいで(笑)この経験をしてから多少のことでは動じなくなりましたね。

海外とかは噂ではラフとは聞いていたものの、バスが来ないは流石に大変ですね(笑)バスガイドのお仕事はどれくらいやられていたんですか?

半年くらいですね。そのあとは、元の飲食店に出戻りしました(笑)21歳から23歳まで働いていましたね。やっぱり、そこの職場が楽しすぎて忘れられなかったんです。しかも稼げるし。働いていたメンバーは日本人で、お客さんとかは海外の方と多様な職場でしたが、今でも当時のメンバーやお客さんの中で親交がある人が多くて。

当時のメンバーといまだに交流しているのは素敵ですね!20代前半の海外生活は今の温香さんにとても影響を与えている気がします。

そうですね。18歳から23歳までカナダに住んでいたので、ここで私の人格形成が行われたといっても過言ではないです。元々はあまり喋るのとかは得意ではなくて、人見知りも前よりしていて、高校時代もおとなしくて誰の印象にも残らないような子だったんですけど。かなり変わりましたね。カナダに行っていなかったら、お店なんて開いていなかったと思います。

かなりのカルチャーショックだったんですね。そもそもなんですが、なぜ大学からカナダに行こうと思ったんですか?

実は両親がカナダ留学経験者で、なぜか我が家の家訓に「1年以上海外に行きなさい」というのがあって・・・。父も母もある程度英語が話せたので地域の通訳ボランティアをやっていたんです。それを見て「英語話したい」と思うようになって。そもそも私は「牛アレルギー」なので、はなから実家を継ぐ気がなかったんですよ、全く現場で戦力にならないので。それもあって英語が話せるようになるために最初は「神田外語大学」に行こうと思ってたんです。それを母に伝えたら「日本の大学で英語勉強して本当に英語喋れるようになると思ってるの?アホちゃうか」と言われて(笑)じゃあ、海外に行ってみようと思い、カナダ留学を決意しましたね。

牛アレルギーだったんですか?!それは初耳でした。話を少し戻しますが、23歳までは飲食店でその後の24〜25歳のときは何をされていたんですか?

23歳で1ヶ月南米に旅に出て、その後に一文なしで帰国しました。帰国した理由が父が「チーズ工房」を作ったタイミングでちょうど戻ってこないか?と言われて「えーー」と言いながらも戻りましたね。本当は永住権をとろうと思っていたんです。40代くらいで牧場に戻って何かしようかなーとぼんやり思っていたんですけど、まあそれが早まったと思えばいいかなと思って。なので24〜25歳はチーズ工房で働きながら、他にも小学校でアルバイトとかもしていました。

かなり濃い20代前半を過ごされたんですね。

あと私、牧場育ちなので牛がいることが当たり前すぎて初一人暮らしのときに喉乾いたから牛乳飲もうと思って冷蔵庫開けたら牛乳がなかったんです。そのときに「牛乳って買いに行くものなんだ」と初めて知って(笑)あとは牧場にいると色んなものがもらえたりするから、そもそも買いに行くというのが非日常で。そんなことがあり、帰国してからも牛に対してそこまで何も感じていなかったんです。チーズ工房の仕事も主に販売がメインだったのでどちらかいうと楽しくなかったんです。そんなある日に知り合いがやっていた「わくわくモーモースクール」というイベントに参加した時に、そこで聴いた酪農家のお話で雷に打たれたような衝撃が走って、「牛すげーー」ってなったんです。その後から、チーズを販売しているときもせっかく牧場に来てるのに「誰も牛見てくれないじゃん」と思うようになって。なんかそれがとっても悔しかったんですよね。それで26歳でお店をオープンすることになるんです。

2. 20代後半のご経歴

"帰国、起業そして結婚"「今に繋がる酪農家との出会い」


激動の20代前半のお話からさらに激動の20代後半になりそうな締めくくりでしたが、お店を26歳でオープンされたんですね。

「牛を見ながら」牛乳を飲んだり、あとはアイスを食べたりできたらいいなと思って「牛が見えるカフェ」というコンセプトで高秀牧場「ミルク工房」を作りましたね。カフェではチーズもアイスも売っていますけど根本にあるのは「牛を見てほしい」という想いがあります。店内にも牛の掲示物とかがたくさんあるのもそういった理由ですね。

たしかにチーズもミルクも牛さんがいないと食べられないですもんね。

一つエピソードでいうと、お店のオープンのときに「オープンニングパーティー」をやったんですけど、そこで私は代表なのでスピーチをしたんです。だけどその挨拶が結婚式の挨拶みたいになってしまって(笑)「お父さんお母さんありがとうみたいな」。そのときに本当に「結婚式みたいだな」というツッコミが入ったんですけど、それを機に急激に彼氏が欲しくなって。カナダ時代もそんなに恋愛はしていなかったので。それで26歳から婚活を始めましたね。途中で変な人とも付き合ったりして約3年ぐらい苦労して28歳のときに今の夫と出会い、29歳で結婚しました

3.大切にしている価値観や考え方

「勢いも大事」


20代後半も濃いエピソード満載ですね。そんな濃い20代を過ごされてきた温香さんがこれまで生きてきた中で大切にしていることなどありますか?

「勢いも大事」ですかね。「度胸一番」というのもあるかもしれないです。勢いだけで生きてきたなと思います(笑)今経営しているお店もそうですけど、思いついたら即行動みたいなところがあるので、ほぼ勢いですね。私考えすぎると行動できなくなってしまうんです。根拠がない自信ってあると思うんですけど、私はそれが結構あるんだと思います。でも根拠がないから苦労することもあります(笑)

とりあえず行動してみるというのは言葉では簡単に言えたりしますが、意外とできない人が多いですよね。

私、自分で経験しないと人から何を言われても聞かないんです。そこはすごく頑固で。自分で経験したものでないと信用しないというか。

4.今の20代のメリット

「必要な情報へすぐアクセスできる」


それってすごく大事ですよね。ちょうど聞こうと思っていたところで20代は情報があるからこそ頭でっかちになりがちなだと思うんですが、温香さんが思う今の20代のメリットって何だと思いますか?

良し悪しだと思うんですけど、情報に簡単にアクセスできることは羨ましいです。今考えると、留学とかも留学エージェントとかを使えばもっと楽にできたんですよ。当時は情報があることも知らなかったから全部書類とか見ながらやりましたし。言語も今だったら翻訳機とかもありますけど、当時はなかったのでとても苦労しました。

5.今の20代のデメリット

人とのつながりが薄い


今だったら検索したら何かしらの情報が出てくるし、ほとんどの問題は解決できちゃいますもんね。逆にデメリットは何だと思いますか?

人とのつながりが薄いことですかね。自分もそうですけど、迷子になった時に道とか聞かなくなったなと。ちょっと駅とかで道聞いたりしてもすごい嫌な顔されたりとか。「ググれカス」みたいな風潮がある気がして(笑)あとは20代くらいになると急に突き放された感があります。女の子は、高校卒業したり社会人になると化粧をすることがマナーみたいになったり。

たしかに変に自立できちゃうのかもしれないですね。本来人間は社会的な生き物でつながりというのは本能的に求めている気がしますが。

つながりがオンラインなんですよ。SNSとかの繋がりは増えたのかもしれないけど、対面での人と人との会話みたいなのが少なくなったと思っていて。オンラインやSNSでの会話って一方通行感がある気もするし、生の人とのつながりは薄いなと。濃ければいいというわけでもないかもしれませんが。でも、薄くなりすぎて人との関わりも持つことを諦めてしまった人が多い気がします。そうなると自分のことしか考えられなくなったり、他人のことがどうでもよくなってしまったり。

6.20代に伝えたい人生設計における羅針盤

「生」の経験を積むこと

技術の発達によって、煩わしいことが解消されるのは良いことではあると思いますが、人とのつながりという人間に必要な煩わしさみたいなものを放棄するきっかけになってしまったのかもしれないですね。そんな世の中を生きる20代にこれをすると少し楽になるかも?といったアドバイスみたいなものがあれば教えてほしいです。

「生」の経験を積んでいくことですかね。何でも良いと思うんです。旅行とか友達とLINEじゃなくて面と向かって喧嘩をするとか。あとは、底辺の仕事と言われていることも実際にそうなのかやってみるとか。人と対面で会話をすると時として他人の経験が自分の経験値になったりするじゃないですか?そういうことで知見を広めて、他人の感情とかに敏感になっていけば、もっと人に優しくなれたり、生きやすくなると思うんですよね。

人は良くも悪くも喜怒哀楽があるからこそ、悩んだりしますもんね。それをなくすことは難しいからこそ、人とのつながりみたいなものを安易に避けようとするのは、余計苦しい道に進むことになる気がします。

牧場に就職したい人で「人と関わりたくない」という方がたまにいるんです。でもそういうところでも最低限つながりはあるわけで。そういう理由で入ってきた人は結局うまくいかないことが多いと思います。嫌な思いとかしたりとか色々あるけど、人とのつながりから逃げてはいけないんだと思います。

自分が変わることで解決できたり、環境を変えたら解決できたりすることもありますもんね。

人とのつながりは無理に持つ必要はないのかもしれないけど、持たないでいいやと思って諦めてしまうのはとてももったいないことだと思います。自分を傷つける人とかからは逃げていいし、むしろ逃げたほうがいいと思います。でも、その逃げ道がSNSだけになってしまうのは、危険なのかなと。やっぱり「生」って大事なんだと思います。

7.困難な壁にあたったときの対処法

私は壁を乗り越えるんではなく砕くんです!

「生」の場所から生まれる関係は本当に大事ですよね。少し話は戻りますが、色々20代にも壁に当たったと思うんですが、そのときの温香さんなりの対処法などあったら教えていただきたいです。

よくわからないけど、とりあえず思いついたことをどんどんやるですかね。10個やって1個当たればいいやくらいの気持ちで。私は壁を乗り越えるんではなく砕くんです(笑)

今のお話聞いていると旦那さんとは真逆な感じですよね(笑)

なんでそんなに無謀なのとかはよく言われます(笑)戦略といえるかわからないですが、とにかく当たって当たって当たるまでやります(笑)お店立ち上げたときも周りから「すごいね」と言われたんですが、私からすると「やっただけなんだけど」と思ってしまうんです。SNSの話に戻りますが、情報が入ってきすぎてデマとかも含めて真にうけてしまう人が多いと思うんです。そういうのを見てしまうとやりたいと思っていたこともやりたくなくなってしまうと思いますね。挑戦を恐れる世の中になってしまったなと

たしかに情報だけを見てわかったつもりになってしまうのはありますね。しかもその情報は一次リソースから程遠い六次くらいになっていたりしますし。

成功した人の体験をいくつ聞いてもやらないし、失敗した人の意見を1つ聞いただけで怖くなってしまったりするのをみてるとあれは何なんだろうと思いますね・・・。他人の体験が自分の体験になるのは、「生」の体験にしてくれって思ってしまいますね。成功体験って「楽しかった」とかでも良いと思うんですよ。そういう小さいことを積み重ねていって少しずつやっていけばいいと思うんです。

成功というものがあたかもすごいものでなくてはいけないという思い込みはあるのかもしれないですね。

旅行行ってパスポートとかも盗まれたりして、当時はめちゃくちゃ落ち込みましたけど、その経験があったからこそ旅先で同じような人がいたときに「大使館行きな!」とか言えるんですよ。私、義務教育にコンビニ勤務を入れたほうがいいんじゃないかと思っていて。理不尽に怒られたりするのを全員わかっておいたほうがいいと思っていて(笑)ゴミの収集の人とかもそうですけど勝手に自分より下にみたりして、勝手に決めつけていたりする。もしかしたらやっている人はやりがいをもってやっているかもしれないのに。圧倒的に想像力が欠如している気がします

8.もし今20代に戻れるなら

もうちょっと○○する

これまで20代のお話をたくさん伺いましたが、もし20代に戻れるなら何かしたいことはありますか?


もうちょっと貯金することですかね(笑)当時は一文なしになったり、本当に計画性みたいなものがなくて。もうちょっと考えて行動すればよかったなと(笑)やったことを後悔はしていないですけど、バカだったな〜と思いますね(笑)

9.バイブルのような音楽

「FUNKY MONKEY BΛBY'S/悲しみなんて笑い飛ばせ」

いよいよ最後の質問なのですが、20代にオススメしたい本やサブカルチャーなどありますか?あるいは温香さん自身のバイブルようなものなど。

「FUNKY MONKEY BΛBY'S/悲しみなんて笑い飛ばせ」という曲が好きで、落ち込んだ時とかによく聴きますね。特に歌詞が好きで。「越えられない高い壁はぶつかってぶっ壊して」とか「眠れない長い夜はベッドから這い出して朝を迎えちまえばいい」とか。フレーズをすごく覚えていて、ポジティブになれるんです。あとはウユニ塩湖(ボリビア)がおすすめです。あそこは結構ハードなので若いうちにしか行けないと思います。4日間滞在したんですけど、電気もガスもないし、お風呂は入れないし。電波もないから連絡もできない。言葉も通じないからもう大変でした。でも、景色が雄大で「人間なんてちっぽけだな」と思いましたね。

自分を不自由なところに投じるというのは大事かもしれないですね。

トイレとかもないし夜は周り真っ暗だし。ほんとに自分の悩みとかがどうでもよくなるんですよね、スケールがでかすぎて(笑)もう一度行きたいかというとちょっと悩むぐらい過酷でしたけど、あの経験は大きかったです。やっぱりこれも「生」の経験が大事なのかなと。

やっぱり「生」の経験が大事なんですね!今日のキーワードができた気がします!本日は、お話聞かせていただきありがとうございました!

20代前半の海外生活のお話から帰国してお店開店、結婚、そして20代へのアドバイスやマインドセットなど、20代にとって勉強になる情報をいくつも教えてくれた馬上温香さん。

個人的には、「生」の経験・体験の大切さを改めて考え直すきっかけになりました。新世紀エヴァンゲリオンの中で「ハリネズミのジレンマ」という言葉が出てきましたが、まさに現代の若い人はこれに陥っているのかもしれません。「近づきたいのに、お互いを傷つけあってしまうがために近づくことができない」。そんなに簡単に人間関係の問題は解決はしないのは、シンジくんやエヴァという作品からもわかると思います。この記事が誰かの「逃げちゃダメだ」と思えるようなきっかけになれば嬉しいです。


〈取材・文・編集・写真=桝井孝一〉

馬上温香さんのSNS

馬上温香さんのX(旧Twitter):https://twitter.com/takahidemilk

馬上温香さんのFacebook:https://www.facebook.com/haruka.takahashi.5201

高秀牧場ミルク工房/牛かうばっか各種SNS

Facebook:https://www.facebook.com/takahidecheese

Instagram:https://www.instagram.com/takahidebokujou/

ネットショップ:https://www.takahide-dairyfarm.com/shopping/

note:https://note.com/ushicowvaca/



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