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遅刻する先輩

僕が所属している会社の先輩が、必ずと言っていいほど待ち合わせに遅れてくる。

それが、取材であろうがレギュラーの生放送であろうが、飲み会であろうが、すべての局面において遅刻する。

ある日、請け負っている雑誌連載の取材があって、先輩から「遅刻するから現場へ先に行っててくれ」と連絡がきた。この場合、先に現場に到着した僕が、先輩が遅刻していることに対してのお詫び、謝罪をすることになる。納得がいかなくて、ゆりかもめのなかで怒りに震えていた。

別の日は、出演者との打ち合わせのため、待ち合わせをしていると「自転車で向かっているから遅れるわ!」と連絡がきた。そもそも遅刻理由が意味不明だ。あのチャップリンが載っていたみたいな自転車でくるつもりなのか? 困惑と苛立ちで待っていると、先輩は街にある、docomoかなんかが運営しているあの赤いシェア自転車で登場した。なんでそんなものに載っているのか尋ねると、「なんか前から気になってて乗ってみたかったんだ!」ということだった。

また別の日は、某TV局での打ち合わせのために、待ち合わせをしていると「雨だから子どものせいで10分遅刻する」というこれまた謎の遅刻理由の連絡がきた。これに対して、「こっちも電車が止まっているので、到着の見通しがつかないです」と、返事をしたら、現場には時間通りに先輩が到着していた。

また別の日は、クライアントとの打ち合わせで待ち合わせをしていると、「電車が遅れている」との連絡。もはやデフォルトなのでそれを考慮して時間を伝えていたので余裕で待っていると、口の周りに赤と白のソースをつけた先輩が登場した。満足そうな笑顔でひとこと「おまたせ!」。その言葉と同時に発せられた息の匂いは完全にケバブだった。

遅刻をする人はおおよそ、「自分がいなくても誰かがいるから大丈夫」という安心感のもと、ゆったりと時間を使い、途中でタバコをすったり、乗ってみたかった自転車を試乗、腹が減ったらケバブを食べる、さらにそれを息子のせいにするなどして、遅刻行為を行なっている。そして、それを繰り返すうちに「時間を守る」という感覚が、どんどん鈍くなっていっているように見える。

一度、我慢ができなくなって先輩に遅刻を注意したことがあったが、「先方に怒られるくらいなんともない」みたいなことを言っていた。いや、そのあいだに俺がいるんだけどな……。このような人物に囲まれていると、「おかしいの自分なのではないか?」という疑念が沸いてくる。

どちらかというと、僕ものんびりマイペースに生きていきたい人間なので、遅刻する気持ちがわからないでもないが、自分の行動で誰かをイラつかせたり、困らせたりしている。という状態がとても心苦しいのである。

時間を守る人vs遅刻する人。この論争はいつまで続くのだろうか。面白い遅刻を食らうたびに、これからもここに記録していこうと思う。 


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