見出し画像

サッカークラブ世界売上番付~ファンドと協働は当たり前に~

欧州サッカー界におけるクラブの売上規模は、トップクラスともなれば1,000億円を優に超えてきます。欧州サッカーのクラブ間ビジネス競争とは、Jリーグトップの浦和の80億円と比べると、10倍以上デカい者同士の超Z級な闘いなのです。

このような世界級のクラブビジネスの争いから、日本にも波及するであろうサッカービジネスの流れを妄想を交えながら本日は読み解きます。テーマは「もはやファンドなくしてサッカービジネスはなし」です。本日のお品書きをどうぞ!


いつも通りのランキング結果??

クラブ売上ランキングで有名なMoney Football Leauge2024を見ると、昨シーズンはレアル・マドリードがマンチェスター・シティとの争いを制しトップに立ちました。コロナ禍前はトップ座に君臨していたバルセロナは、一時7位まで後退していましたが、22/23は4位まで復活してきました。

と、順位の入れ替えはややあるものの、総じて上位陣の顔ぶれはいつも通り。上位30位の内、約半数がプレミア勢で占められるのも恒例行事です。

フランス勢が躍進!裏にファンドの存在

だがしかし、細かーく見ていくと今回のランキングにおいて変化が見られます。それは「フランス勢の躍進」です。フランス勢で上位に入れるのはパリサンジェルマン(PSG)のみ、PSGなかりせばランクインできるクラブがあるのか怪しい、というのが近年におけるフランスのリーグアンのクラブの立ち位置でした。ところが、今回はマルセイユとリヨンを含めて計3クラブがラインクイン入りし、ドイツ勢と同数となりました。

しかも、PSGは例年5~7位辺りをウロウロしていたのが、今回は名門バルセロナ、マンチェスターユナイテッド、バイエルンを抑えて堂々の3位です。一体全体フランスのクラブに何が起きているのでしょうか?

デロイトが集計しているPSGとマルセイユの売上高とその内訳を集計してみました。両クラブとも「放映権」の伸びが売上高を大きく伸ばした主要因であることが分かります。

後述しますが、欧州全体で見ると「放映権」は伸び悩んでいる分野になります。ところが、フランスでは伸びている。なぜか?そう、英国籍のファンドであるCVCに放映権を売却したからです(2022年4月に公式発表済)。

PSGは8,350万ユーロ(133億円相当)、マルセイユは4,250万ユーロ(68億円相当)をそれぞれ放映権売却の取り分として受け取っています。これがフランス勢が躍進したカラクリです。

クラブ運営は巨大資本が必要な時代に

CVCとフランスのプロリーグが提携した理由としては、クラブの近代化が理由として挙げられています。全く同じ理由でスペインのラ・リーガは同じくCVCに50年分の放映権の1部を売却しました。
ドイツのブンデスリーグでも昨年12月に放映権の一部をファンドに売却する案が可決され、各地でファンによる抗議が発生。ボーフム vs. ウニオン・ベルリン戦(23年12月)ではファンがチョコレートを投げる抗議を行い、それをなぜか食べた浅野選手がなぜか今季5ゴール目を挙げるという、いつもながら謎のタイミングで活躍するタイミング・ファンタジスタ振りを披露してくれました。

【動画】【ブンデス】チョコを食べた浅野拓磨、今季5ゴール目をあげる - スポーツナビ「ブンデスリーガ公式」 (yahoo.co.jp)

浅野選手はさておき、スペイン、フランス、ドイツで発生していることは、トップクラブとして留まるにはより巨大な資本が必要とされている現在の情勢だと考えます。求められる資本規模が大きくなっている背景にあるのは、人件費の高騰、それを補うために若手育成インフラの整備が必須になったことが挙げられます。

スタジアムの近代化がファンド依存を強める

直近、資本が必要な理由として新たに加わったのは「スタジアムの近代化」です。ジャーナリストの小澤さんがスペインにおける放映権料の高騰が海賊版の横行を招いていることをリポートされていましたが、裏を返せば放映権料の引き上げに消費者はもうついていけなくなっていることを示しています。それは、クラブのセグメント別売上高を見ても明らかで、放映権は19/20シーズンを境に伸び悩んでいます。代わって急速に伸びているのがチケット代・周辺の屋台施設など「観戦」に関する売上です。

一般消費者がリアルによりお金を払うようになっている訳なのですが、受けて立つクラブのスタジアムは、ビッククラブと言えども新しいとはとても言えないのが実情です。
そこで各クラブはスタジアムの近代化に励んでいるのですが、これがえげつない金額がかかります。2002年のマンチェスターシティのスタジアム改築費は2.4億ユーロでしたが、2011年のアーセナルは倍以上の5.7億ユーロとなり、2019年のトッテナムは更に倍以上の13.8億ユーロかかったと言われています。今年に新築ではなく、改築するレアル・マドリードのサンチャゴベルナベウですら10億ユーロ(1,600億円相当)は最低かかっていると報道されています。

(出所)各種報道よりフットボール経営分析マン作成、為替レートは完成時の年末水準を使用

さすがにビッククラブと言えども、売上の1~2年分吹っ飛ぶような金額は一気に出せません。そこで登場するのがファンドです。レアル・マドリードはSixth Streetというファンドにスタジアムの収益の一部を20年間分売り渡すことで3.6億ユーロと改修費の1/3を負担してもらいました。このようにリスクを分散する相手としてファンドは欠かせない存在となっています。単にあいつらはハゲタカだから、と毛嫌いしていてはやっていけない規模にサッカー界は突入しているのです。

Jリーグは幸い、日韓W杯の際に新設・改修されたスタジアムが多いと聞いています。まだ、10年位は大丈夫なのでしょうが、2030年代になると多くのスタジアムが改築必須となってくるでしょう。その際に資金の出し手として、ファンドとしてうまく付き合うことがきっと求められるようになってくると考えています。
皆様の推しのクラブのスタジアムが、グローバルマネーと上手く付き合いながら、よりよく発展していくことを願っています。では本日も良いサッカー生活を!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?