メキシコ ベネズエラに歴史的敗北
チャンスを活かせなかった。
この一言に尽きる90分となった。
メキシコが放ったシュートは18本、コーナーキック7本、支配率は62%。
ほとんどの数字でベネズエラを上回った。
足りなかったのは、得点のみ。
メキシコがベネズエラに公式戦で負けたのは、初めてのことだ。
この歴史的敗北を喫した試合を振り返るとともに、選手、現地メディアやファンが現状をどう受け止めているのかをまとめてみた。
決めきれない90分
試合は、立ち上がりからスピーディーな展開となった。
開始早々の1分、アントゥーナのクロスをヒメネスが滑り込むも、あと一歩届かず。
このプレーをきっかけに、毎分のようにお互いにチャンスを作り出したメキシコとベネズエラ。
メキシコは、ボールを奪うとすぐさま両ウイングに繋ぎ、サイドを切り口に攻撃を組み立てる。
20分には、キニョネスのフィードをヒメネスが抜け出し、キーパーと1対1になるも、キーパーに阻まれ、ゴールネットを揺らせなかった。
ベネズエラは、パチューカ所属のFWロンドンを中心にカウンターを狙った。ロンドンのシュートがポストに当たるなど、メキシコがヒヤリとする場面も少なくなかった。
結果的に、両チーム無得点で折り返した前半。
ゴールが決まりそうで決まらないもどかしい45分となった。
後半も、同じような展開となった。
待望の先制点を取ったのはベネズエラ。
57分、ファールで得たPKをロンドンが落ち着いて決めた。
対するメキシコも反撃開始。
攻撃的な選手を次々と投入し、猛攻を仕掛けた。
しかし、引いた相手の牙城を崩すことはできない。
87分には、相手のハンドでPKを獲得するも、ピネダのキックはキーパーに阻まれた。
結局、最後まで得点を取れず、痛恨の黒星。
ベネズエラは、決勝トーナメント進出を決めた。
監督・選手の受け止め
この敗戦に、メキシコ代表の選手、監督はどう受け止めているのか。
現地メディアに応じたコメントを切り取っていく。
ロサノ監督
フル出場のMF チャベス
と決定力不足について言及した。また、チャベスは別のインタビューで
"nos faltó contundencia…" 「強引さが足りなかった」
ともコメントした。
GKのゴンザレスは、
グループステージ突破の可能性は十分にあるメキシコ。
他の選手のコメントを見ても、結果を悲観するよりも、次のエクアドル戦に向けて切り替えようとする姿勢が見られる内容が多かった。
ストライカーの不調
現地メディアは、歴史的敗北を厳しく評価した。
特に、目が向けられたのは、ストライカーの不調とチームの決定力不足。
"SANTI GIMÉNEZ Y LA SEQUÍA GOLEADORA CON LA SELECCIÓN MEXICANA NÚMEROS DE MIEDO"
「得点力不足のサンティ・ヒメネス 代表での恐ろしい数字」
これは、現地メディアによる記事の見出し。
記事では、ヒメネスの代表戦でのゴールが、昨年のゴールドカップ決勝以降、524分間ゴールが生まれてないことを指摘。
ストライカーとしての結果が出ていないヒメネスについて、起用すべきか、戦術が合っていないのでは?といった声も挙がっている。
また、後半ヒメネスに代わり、プーマス所属のマルティネスが出場するも得点できず。
この現状に、現地メディアの解説者であり、ヒメネスの父であるクリスティン・ヒメネス氏は、このようにコメントした。
実の父からも苦言を呈されたサンティ・ヒメネス。現地メディアやファンから批判は、ヒメネスへの期待の大きいからこそ起こっているもの。
いち早く不調から抜け出し、本来の実力を大舞台で発揮したい。
”きっかけ”を掴めるか
ヒメネスの復調は、チームにとって重要だが、とは言え、ヒメネス1人に頼るわけにはいかない。他の選手の活躍にも期待がかかる。
国内組が多いメキシコ代表であるが、強豪クラブの選手も多く選出されている。
プーマスのマルティネス、ウエルタ、チーバスのアルバラード、モンテレイのコルティーソ、ティグレスのフローレス...
リーグ戦でレベルの高い戦いを繰り広げた選手たちが、今大会の2試合いずれもベンチで出番を待っていた。
ニューヒーローの登場が、何かチームに大きなものをもたらすかもしれない。
そのために、これまで出番の少なかった選手の活躍が求められる。
指揮官の進退について
そのきっかけを生み出すには、選手だけでなく、指揮官の手腕も問われる。
ベネズエラ戦の敗因は、ロサノ監督の采配だったという声があったのも事実。
結果が求められる代表監督に、批判の矢が飛ぶのは当然と言っても過言ではない。
一部ファンやメディアからは、コパ・アメリカ後の新監督を求める声もあり、この数日間で、クラブ・アメリカで指揮を執るアンドレ・ジャーディン監督の名前も登場した。(ちなみに、ジャーディン監督は2020東京オリンピックでブラジル代表を金メダルに導いた名将である。)
しかし、この報道に対してジャーディン監督本人は否定しており、可能性は極めて低いと思われる。
また、別の報道では、コパ・アメリカの結果に関係なく、ロサノ監督の続投が確実というものもある。
記者のルベン・ロドリゲス氏によると、メキシコサッカー協会(FMF)の会長フアン・カルロス・ロドリゲス氏が、ロサノ監督の進退について語ったとのこと。
この報道だけを見ると、監督の続投が濃厚だと言えるだろう。
世代交代の佳境にあるメキシコ代表。
自国開催のW杯に照準を合わせるため、ロサノ監督の長期政権に託すようだ。
試合内容と現地メディアの評価を見ると、ネガティブな内容が多かった。
しかし、悲観的になるのはまだ早い。次戦のエクアドル戦は、勝てば決勝トーナメント進出が決まる。
ここがメキシコの見せ所。
"Resultado difícil de aceptar, pero esto aún no termina… Vamos con todo por el pase." 「受け入れがたい結果となりましたが、まだ終わってない。(トーナメント)進出に向けて全力を尽くします。」
ヒメネスは X の投稿でこのようにコメントした。
メキシコ代表の意地に期待して、エクアドル戦を見届けたい。
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