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テゲバジャーロ分析 #8

4試合勝ちなしの無得点が続いている宮崎。ホームに戻って勝利を掴み再スタートを切れるのかという今節。
チャンスがあるもののゴールを決めきれないことが続いてしまっている。ゴールを取れないことから勝利を掴むこともできていない。
下が追い上げてくると降格ということも視野に入ってきてしまうため、結果を求めたい。

対する松本。J3生活も2年目に突入し、昇格はマストであるはず。
ここ最近5試合は、2勝1分2敗とトントン。勝ち点を積み上げるにはどうも不十分に取れてしまうような成績。昇格圏内では6差とチャンスはあるため、ここから昇格に向けて負けられない戦いが続く。


前節の分析はこちらから↓




前半

宮崎のスタメンはトップの一角に高橋が入る。南野が実に5ヶ月ぶりのベンチスタートとなった。得点が取れない中で変化を加えていく。

ビルドアップの仕方

ここ最近ではビルドアップでの悪い奪われ方が散見される中で、取り組み方を変化させながらビルドアップを構築している。
今節も繋ぐことだけに固執せず、リスクを感じたなら放って前線で起点を作っていく。松本は前からプレスをかけて高い位置で奪うことを狙っているため、宮崎は後方から前線にロングを放ることでシンプルに押し込む。自陣で失うリスクを避けてFW高橋をターゲットに当てる。上背のある高橋をスタートから使う意味がここで分かる。
FWだけでなくサイドであれば山崎に入れるボールもあり、スペースを見つけながらボールを入れることに取り組んでいるよう。ボールの長さや強さを使い分けながら適切な選択をする。

ポゼッションからや相手が構えている中でミドルサードまで侵入できると、中盤での狭い空間での繋ぎ・出し入れなどのコンビネーションで局面を打開しサイドへ展開する。そしてここからサイドアタックを仕掛けてゴールへ迫る。起点を作り攻撃を繰り返しクロスからフィニッシュを狙っている。フィニッシュのゾーンとしては、ボックス内のポケットよりのゾーンかペナ角付近が多い印象。ペナ角付近では、サイドからの持ち込みや切り込みでシュートを撃つ。

全体的に保持時の離すタイミングやサポートの仕方は前節同様によくなっている。ビルドアップ時を狙われている中でも”繋ぐ”というコンセプトを変えずに、ロングだけに頼らずに敵陣侵入を目指す。ゴールという目的への手段をガサツにしない。丁寧さも捨てない。

アタックへの工夫

サイドアタックでひとつの傾向として、外と中の使い分けから崩してチャンスメイクするシーンがあった。

①起点はサイド。
※ 桃:宮崎  緑:松本
②外で受けてから中に一度持っていく。サイドのスペースを一旦空ける。
③中央に集結させ、サイドを意識外のものとして存在させる。
④再び外に預けてチャンスへ。


この一連の流れが多く見られ、右サイドだけでなく左サイドでの同じような動きもある。得点の確率を上げるためにはチャンスを作らなければならない中で、工夫を仕掛けながら決定機を生み出すことができる。ブロックの切り崩しとしても効果的な動きになっているように感じられる。アイディアとしてもひとつの策である。

この崩しではボールを大きく動かしながらDFの目線をずらすことができる。外からボールを動かし中央に相手を集結させ、引き付けてスペースを自らから空けると同時に相手も釣られて空けてしまうことになる。

自分たちが最終的に使いたいスペースを空けるために逆算するようにしてボールを動かす。時間が勝手に潰れるようなポゼッションではなく、ゴールへのアプローチためのものになっている。得点が奪えない現状でスタイルや強みを活かしながら工夫している印象。
だが、やはりネットを揺らすことができずゴールの可能性は低いよう…。シュートの意識とそのタイミングを考えながら、早い段階やコースが空いているなら撃ちに行きたい。シュートを撃たないことにはゴールは生まれない。


松本の戦い方と対する宮崎

まずは守備から見ていくとする。
前プレ時に関しては敵陣から強度高くしサイドに追い込むハイプレスを敢行。中を閉めてから外へ限定し、外で奪うかライン割らさせる。高い位置で奪いに行きたいという感じ。高い位置での回収やセカンドを収めることができればチャンスになるので、とにかくできるだけ高い位置で奪取・回収を目指す。ハイプレスの目的を果たし、攻撃のための守備を取り組む。
これがコンセプト的なものであると考えられるが、宮崎のビルドアップでのミスを狙うということも関連していそう。

プレイヤー単位で気になったのは菊井。広いプレーエリアと早い段階で芽を摘むプレーが目立った。良いカバーとプレスでチーム全体の守備強度アップを掻き立てている印象。敵陣でファウルで止めて自陣に入れさせないプレーもあり、未然にピンチや前進を防ぐことができていた。

しかし、時間が進むにつれてサイドに逃げられたり中央で剥がされチャンスを作られてしまうことが多くなる。サイドで狙えていなかったりボールウォッチャーになりすぎるとそうなってしまう。ホルダーに出るタイミングがひとつひとつ遅れていることも関係している。
敵陣のサイドを狙い目にしていたが、そこに出なかったりスペースを突かれてしまうというウラ返されるような事象が起こってしまっている。高い位置や球際で回収できる時は特に不安はないのだが。


攻撃に関しては、速いスピード感のある攻撃が有効的である。序盤こそは遅攻が目立っていたが、だんだんと速攻へ移行できていた。

序盤のことを書くとすれば、保持の時間が多かったが持たされているような形だった。持たされる=相手はブロックを組んで構えている なのでなかなか崩すには時間がかかってしまう。また、守備で高い位置で奪った・マイボールのスローインにしたとしてもそこからやり直すことになり、結局ブロックを組まれてチャンスを作れない。

遅攻になると宮崎のブロックを崩すために労力が多くかかってしまい、チャンスメイクできることも少なくなってしまう。なので、序盤以降はブロックを組まれる前にカウンターのような形で攻め込んでいった。前線に当ててから素早く仕掛けることが大事になる。その中で、トップの小松に当てるシーンが多く見られ、GKやCB陣から一本で当ててポストプレーから数的優位のチャンスを作ることができていた。カウンターだけでなくロングや長めのボールでチャンスメイクしようとする回数も多かった。


という攻撃に対して宮崎の守備は段々と遅れをとるような形になってしまう。

先ほど書いているように、序盤は構えぎみな形でブロックを組むか慎重にしながら狙いをはっきり決めてプレスをかける。セットし構える形から出るタイミングを伺う。わかりやすい場面として、GKにバックパスした瞬間にラインアップしその次のホルダーに1stプレスを開始しそこから連動する。松本が繋いでくるところで狙いを決める。

対応できていたが、松本が自陣やミドルサードから放ってペナ前などで収めるプレーを増加させてくると、ピンチを迎える回数が増加。ホルダーに対するチャレンジをもっと厳しくすることや蹴らせない体勢をとることが重要になる。相手のターゲットのところでは正直勝機が見えていない…。
蹴らせないようにするか、または引いて守るのかはっきりしなくてはならない。蹴ってくる相手に対して前がかりに守備をしていてもウラ返されるだけ。相手は最後方と最前を使うことだけにし、その間の真ん中のゾーンを省略してくる。相手の傾向を見ながら対策を打つべき。


試合が動く

33分、先制したのは松本。再三のクロスからゴール前で押し込んだのは村越。波状攻撃から先制する。

攻撃方法を変更してから敵陣への侵入のための中盤省略からチャンスを作り続け、早い段階でのクロスや何度も入れ直す形から先制点に結びつけた。
攻撃方向への意識を強く持ち、勢いを殺さずにゴールへの最短距離で仕掛ける。ブロックを組まれる前にバイタルへ侵入する意識を持ってゴールへ。

アーリークロスに関しては相手の陣形が崩れやすくマークも逃しやすい。セットができないということ。二次攻撃のための回収も取り組み、クロスの跳ね返しを拾い切ることやクリアを相手に収めさせない。押し込む中でクロス+再回収を繰り返しチャンスを逃さない。

自陣やミドルサードからの放り込みで起点を作り、サイドの空いたスペースに展開して切り崩してクロスからチャンスへ。という流れをスピード感を持ちながら、相手に置き去りにするようにしてゴールへ向かった。ピッチ全体でウラ返しからゴールへ向かうための巨大ロンドを行うことができていた。プラスして、同サイドでの崩しに拘らずに仕掛けて敵陣に入ってからは枚数・勢いをかける。


宮崎は遅れをとった守備を行い続けていると、失点に繋がってしまった。得点を奪えないという状況下で追いかけるという形になり、またしても難しい状況を生んでしまう。
守り方に問題があるとも言えるが、それ以外においても跳ね返し後の回収は相手ばかりになっていたり球際で競る・収めることができないということもあった。クリアも大きく蹴らずに、”繋ぐ”という意識が変に出てしまった。
保持するチャンス(=相手のチャンスを作らせない)というところで勿体無いミスが絡み最終的に相手がボールを持つことになってしまった。それが失点の原因とも言えてしまう。

前線で起点を作れないから相手のボールになりロスト。失ってからまたひっくり返され槍のような相手の攻撃を受け続けるという負のループに陥ってしまった。
逆に、起点を作ることを意識せずに敵陣にボールを送り込むことを優先してラインアップからセットしもう一度守備をするという明確な動きがあれば多少はピンチを防げたのかとも思う。中途半端に収めようとしたり無理にマイボールにしようとすることでミスが生まれる。ミスが続けば失点につながる。最適なプレーを選択したい…。


後半

松本が1点リードで後半へ。宮崎はまず1点を取ることだけを目指す。

松本の守備時アプローチの変化

松本は前半はハイプレスを施行し高い位置からボールを回収しようと試みていた。ただ、後半はリードもあるためか少し引きぎみで守備をするようになる。ボールに対しては前線からは規制しながら、サイドに入ったところをカットしようという動きへ。トラップする瞬間やルーズになったところをすかさず狙う。自陣に入り込まれる前に脅威を消すことができている。

放ってくる相手への対応を確立し、1stホルダーへの寄せよりもその後のターゲット(次のホルダー・受け手)への寄せを厳しくする。収めさせない・プレー切ることでターゲットになるところの守備強度を高める。

スタートから終盤まで構える時間がほとんどになり、リードをしっかり守るために構えて堅く。ボールへの飛び込み・ハントはミドルサードから。
前半の攻撃の変化のように、守備もここで変化を加えて適切な守備を完了していく。


活力を上げたい宮崎

まずは1点を奪いたい宮崎は、サイドアタックの厚みや雰囲気を高めていく。松本の守備に封じられる回数が多いが、保持の時間が多くチャンスへ仕掛ける回数自体も多いので、割とチャンスになることはある。

クロスの数も多くなってきているがシュートへはやはり至らない。チャンスの雰囲気がある中でクロスからゴールの匂いがしないような時間が続く。クロスを上げれることは良いことだが、中の入り方やボールを入れる位置は工夫をしていないといけない。
例えば、ニアは相手が全てブロックされているからファーを狙う。で、ファーに枚数を1枚でもつけてニアでおとりの1枚が引っ張る。など、他にもいろいろな入り方や入れ方はあるのでバリエーションを増やしてサイドからの得点の確率を上げたい。

しかし、サイドから起点を作っていくためにロングを多用するシーンが多く見受けられたが、相手は構えているため対応しやすい。それだと引き付いていないのに放ってもロストの可能性が上げるだけになる。収められるわけがないのだ。そこで、ようやく下から繋ぐことにシフトする(使い分ける)ことを考えたい。繋いで安全に侵入できるし時間もまだある段階だ。

だが、繋ごうとしてもホルダーに対するサポートは少なく、引き出そうという動きもない。前線に入れようという意思しかなく、前へ前へと急ぎすぎている。時間があるなら慌てずに繋いで揺さぶりながら崩していきたい。繋ぐ意識は途絶えさせてはならないはずだし、それをスタイルの一環としてチーム(宮崎)として持つべきなのは今までの試合を通して見ても当然であるように思える。


もうひとつの懸念

サイドアタックのためにサイドで起点を作ることがほとんどになっている中で、前半から気になるのがサイドのホルダーが持った時の関わりが少ないということ。(他のエリアでの繋ぐ際の関わりが薄いというのもあり、全体的に関わり・サポートが希薄になっている。)
サイドアタックの厚みがないとサイドを攻撃の起点にするには難しいところがある。孤立して囲まれて奪われればそれで攻撃は終わってしまうからだ。タテにスペースがあったり、1vs1を仕掛けるなら周りがコースを消さないことが優先されるので関わりはそこまで過剰になるべきではないが。後ろ向きになった時や中を向いて持った時は関わりをつけるサインになると考えれらる。孤立させないようにしたい。また、相手との駆け引きという意味ではどの場面でもボールに少しでも関わろうとするのは必要。

という関わりの意識が希薄になっている中で、サイドでのグループでの崩しや出し入れしてからの崩しの場面が少ない。一時期はこのプレーからチャンスを作れていたが最近の試合では少なくなっている。サイドでの崩しは1,2枚のみになり他のプレイヤーは放任的になっている印象。3人目の動きやサイドでのオーバーラップもない。


終盤

宮崎は攻めに出るも決定力を欠きチャンスを生かせない、決定機を作れないで苦しい時間が続いてしまう。繋ごうとしてもロングを入れてもブロックを崩すことができなくなってきている。松本は中央を堅く守り外で持たせる。飛び込まずにしっかり対応、押し込まれても慌てない。

ミドルサード付近(ハーフくらい)から繋ぐことに取り組もうとするもブロックを崩すには苦しい。繋ぐ中で引き付けて離してを繰り返して剥がしにいくのが最善となりそう。きつい時間帯ではあるがそこで楽に点を取ろうとすると点は取れない。ポジショニングを調整したり動きに工夫し続けてチャンスを作らなくてはならない。スタイルの継続と同時に、インポゼッション時の基準を高く持つことで質も上がってきてできるプレーの範囲も広がるのでは…。

松本の保持時は自陣〜敵陣の中盤では、引き付けてリリースを繰り返しボールを安全域に逃がす。相手のいる・いないところを見つけてそこへ逃がすイメージ。サイドチェンジなどで逃がすと同時に揺さぶるというプレーも見える。相手のスライドが遅れてきている中で、さらにスライドを促すようなボールの動かし方で体力を消耗させる。有効的な時間の使い方ができている。

宮崎は守備時のプレスのかけ方や狙いがはっきりせず、スライド・圧縮も不十分。狙いがはっきりしないのでどこへ動いていけば良いのか、予測して動けば良いのかがわからなくなる。自由に持たれて揺さぶりについていくので精一杯か。

という展開が続き、松本が優位に時間を使いながら(宮崎は時間を潰してしまう)そのまま逃げ切る。0-1で松本がアウェイ宮崎という遠い地で貴重な勝利を掴んだ。


総括

宮崎はこれで5試合勝ちなしのゴールも生まれていない。負の雰囲気がある中でもチャンスの数が増加していたり、そのためのアプローチの工夫は前半から見えていたのはポジティブなこと。しかし、それが時間が経つにつれて見えなくなっていたり、負けているのに足が止まり始めたりと不安な要素も多い。

ここ最近は1点に泣くことも多いので、序盤や前半のうちに先手を打つことやゴールをとっておくことが勝利に近づくためになりそう。ゴールがないことには勝利という結果もついてこない。どうにか脱却したいが…。

守備においても序盤こそは良い対応ができているが、段々と強度が落ちてしまうことが多い。序盤に失点することがなくなっているが、強度が落ち始める時間帯の30分以降や後半中盤以降に失点してしまう。試合の中で継続して狙いを持つことやどこを優先的に圧力をかけるのかなど、統制の取れた守備をしていきたい。攻撃のための守備であることを意識し、良い守備から攻撃に繋げることがベストである。

次節はグルージャとの下位対決。勝てば順位が逆転する重要な試合。
上位相手に良い流れを披露できているところもあるので、下位にも同じような良い攻撃を見せつけ、まずはゴールを奪うことを第一に。そして久しぶりの勝利を掴み取りたい。東北でのアウェイと大変だが魂の戦いを見せて欲しいところだ。

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