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EURO2024 Grp.C ~Slovenia vs. Denmark~

グループCのスロベニア vs. デンマークの一戦。
ワールドカップにも出場したデンマークと、EUROへのチャレンジのスロベニア。


スタメン

デンマークは4年の時を経て、EriksenがEUROのピッチに復帰。HøjiundやHøjbjergなどのタレントも擁し準備万端。
スロベニアはGKにOblak、その他は親善試合からは大きくメンバー変更はなし。


スロベニアのコンセプト

守備から入るスロベニアは、守備時は4-4-2,4-1-3-2の形でミドル~ローブロックで構える。相手の3+2のビルドに対し、2CHを監視しトップとサンドしている状態で構える。4-2での6人(3-2での5人)で相手の2CHを囲い込んでいる状況である。中盤のスペースを前後圧縮しサイドに流させて外を狙い目にする。最終ラインで持たせること自体はいいのだが、CHに入れられ組み立てが始まると2ラインを一気にはがされてしまう。ポゼッションのうまさのあるデンマークに自由に前進させないように規制をかける。

ベースが4-3-3ではあるが、守備時は2トップの形になる。この可変時には、SeskoとSporarが2トップのユニットになり左WGのMlakarが左SHになる。そのため、中盤の3枚は右へスライドして左SHの位置を空けて、そこへMlakarが入るようになる。この変化でブロックを構築する。

スロベニアの4-2での囲い込み


しかし、デンマークのトップ下 Eriksenがライン間に降りようとムーブする。そこも捕まえないとフリーになり、前線6人が圧縮していることも絡んでその背後のライン間で受けられることも考えられる。そこで対策として、中盤4枚から1枚降ろしてErilsenを見る形へ。そうなった際には4-1-3-2のような形になり、2列目の3で相手の2CHを見る。

全体的に間(中央)を閉めて外へ追い出すことで狙いどころであるサイドで奪取しようとする。または、奪おうとしなくても前進させない守り方で相手を焦らす。

4-1-3-2になると

ちなみに、相手のビルドの3センターに対してSHが出るなら同サイドのSBも前に出てスペースを埋めるという連動性も見られた。中央を守りながらもサイドに出たときにプレッシャーをかけるというコンセプトを体現できるようにする。

最終ラインもスライドしてそれぞれのマークを見つける。中盤もしっかりスライドすることでサイドでの数的優位で奪取かバックパスを促すことができる。

サイドの守備での連動性


スロベニアの保持は2+1=2-3-2-3でビルドアップを開始する。
出口はSBのところでそこから前へ出ようとする。または割り切ってロングで一発を狙う。

序盤、デンマークは5-2-3での隊形を構築するのでビルドの時にはアンカーがフリーになっている。ここも出口に繋げることができそうだが…。しかし、スロベニアのやり方としてはビルドに凝らずロングやドライブで前進を試みる。早急に敵陣に入り、そこで勝負したいという狙いがありそうだ。ロングを入れるとしても前線はウラをしっかり狙っており、一発でのチャンスを目論む。

スロベニアのビルド

守り方に関連しても、奪ってからはカウンターを狙っているようで速攻を意識している。カウンター時も引き出しもSeskoが足元で受ける形で、相方のSporarがウラを狙う担当になっている。ここが前線のアクションを担当し、そのなかでプレースタイルを分断することでバランスをとれている。
Seskoが足元で受けようとするなら背後にスペースを空けてSporarが走れる。Sporarがウラへ走れば、足元に空いたスペースでSeskoが受けてチャンスメイクに繋げられる。


デンマークのコンセプト

保持する時間の長いデンマークは3+2でのビルドの入り口。両ワイドは高さを駆け引きしビルドのサポートをする。しかし、形を変えない限りは相手の2トップ+2列目の4枚に囲まれることでCHにスペースを与えることができない。というなかでワイドが適度に位置を変えながら出口になることで打開からの前進を試みる。

デンマークのビルド入り口

アタックに関しては、両ワイドが高い位置をとり攻撃の厚みを出す。=サイドアタック主流。ながらも、前線3枚は流動的にポジションチェンジし、中盤圧縮を喰らう中で空いたライン間にEriksenを降ろしたりしながらチャンスメイクに繋げようとする。

ライン間への差し込み方としては外逃がしから斜めにライン間に差し込むなど。直接タテパスを狙うよりも角度を設けて、遠回りながらもライン間を支配する。このプレーで相手の守備ライン2列を無効化することにも成功する。

ただ前提として、全体的にポゼッション時の回しがうまいので狭い空間でも逃がすことはできている。そういう意味では囲まれても圧縮されても前進や打開には問題はなさそうではある。密集地帯での「あてて逃がす」がうまく、数人でのロンド的感覚が備わり、相手が引きつけばダイレでスペースへはがすなど。
それがあってこそ、押し込んでからブロックを崩すときには、高さをとれる両ワイドとうまい回しからの揺さぶりでチャンスを探る。


守備時は序盤は5-2-3、相手のビルドに対しては前線の3枚でプレスしSBに出るところへは3のワイドを出して追わせる。前線は行っているが後ろは待ち伏せする。後ろ固めで飛び出るよりも跳ね返しを優先しているようだ。相手が繋いで組み立てるビルドアップに凝らず、タテへのパワーをぶつけてくる中で待ち構える体勢をとった。

5-2-3での守備

しかし、5-2-3では上図のように相手のアンカーが空いてしまう。ここを自由にすると相手の前進がスムーズになり、アンカーが前線3枚の背後にいるのでアンカーにボールが通ると最前線3枚が一瞬で無効化されてしまう。幸いにも、スロベニアがビルドにこだわらず放り込むことやサイドを使ったりするので恐れていたことは起きなかった。

というなかで、20分過ぎくらいからデンマークは守備時の隊形を5-3-2に変更しアンカーをちゃんと捕まえられるようにした。(下図)
やられる前に修正し、マークもすべてかっちりハマるようになる。

5-3-2への変更

このシステムではトップ下を務めていたEriksenがアンカーのマークに徹し、1stプレスは2トップで追うことにした。大外に対しては5バックのWBが出るようにした。懸念としては3枚で追っていると3のワイドが大外に出ることで後方のリソースを割かずに待ち構えることができていた。しかし、5のうちの大外がプレスに出ることで最終ラインはスライドしないといけなくなり、チャンネルを空けてしまうことや背後のスペースを空けてしまうことが考えられる。現に、変更後、スロベニアはロングで背後を狙うプレーが増加し何度かチャンスになることがあった。

前が追ってくれていれば5バックは最終ラインの壁をコントロールするだけで、その壁で跳ね返して…だけでよかった。しかし、2トップになり限定のみになってしまうと最終ラインからリソースを割いて壁を削りながらプレスにいかないといけなくなった。そうなると壁は薄くなり、プレスに出たことに釣られてライン全体が上がりすぎることも考えられるのである。


動かしたのは

そんな前半で先制点を奪ったのはデンマーク。17分、スローインでのリスタートからボックス内でのこぼれをEriksenが流し込んだ。前回大会で倒れた男が復活のゴール。素晴らしい。

という展開から進み、デンマークは優位に進めながらチャンス創出するもなかなか追加点には至らない。逆にスロベニアはワンチャンス狙いでゴールを伺うもいまいち遠い。Sekskoのミドルシュートなどパンチを見せてはいるが得点にはならず。


後半に入り

後半に入ってもペースを握るのはデンマーク。スロベニアはチャンスを作ろうにもリズムを作れない。奪ってから保持したとしても雑さが見え始め、繋ぐことができていない。奪ってから数本繋げばリズムを作れそうだが、奪った数秒後にはロストしてしまう。ボールを大事にしたいができないという悪循環。

デンマークはロストした後にはやることが決まっていそう。
バックパスが出るならばプレスをかけて相手を焦らす。そしてGKやCBにロングを吐かせて回収を試みる。逆に、前向きで持たれるなら帰陣を優先し1stプレスは設ける。とにかく5-2-3,5-3-2のブロック構築へ。
このロスト後数秒でのネガトラに力を入れる。数秒パワーを使えばその後の数分・数十分に余裕が生まれてくる。

デンマークの守備ブロックは前半と同じくらいのライン設定で3ラインの距離感・バランスを保つ。前半よりかはプレスよりも構える形にシフトしたか。


スロベニアの流れ

小さなミスがある中でチャンスメイクはできていないスロベニアだったが、デンマークが引いていることで押し込める時間も増えてくる。

すると、75分ごろ、ロング一発でボックス前にボールを供給すると収めたSeskoがミドルシュート。強烈なシュートがポストを叩くと一気にムードが変わる。
そして直後のCK、ファーにながれたボールをJanzaが振りぬくとゴールに突き刺さり同点。持ち直したムードから同点に持ち込んだ。

デンマークは引きすぎた故のロストシチュエーションで失点。ロングフィードを蹴らすための自由・考える時間を与えてしまったか。


その後も数分はスロベニアは押し込むも逆転弾とまでには行かず。一方のデンマークもチャンスメイクしシュートを放つもゴールへは飛ばず。最後まで1-1でスコアは動かずタイムアップ。


総評

スロベニアにとっては大きな勝ち点1。デンマーク相手に同点に追いついたという点においてはポジティブ。ビルドなどにこだわらずロングなどで端的・シンプルなアタックでチャンスを作り続けた。特に2トップ SeskoとSporarの役割とそれぞれのパンチ力はこれからも活かせそうだ。
守備に関しては、工夫をしながらどこに重きをおくのかポイントを絞るのかを明確にできていた。ただ、その裏側にある落とし穴を修正できるかが重要。ピンチばかりで危険ということではないが、穴を少しでも埋めれずにいると破られて崩れてしまう。これからの戦術の変化はあるか。

さすがに勝ちたかったデンマークだったが、ドローに終わってしまった。先制するまでは良かったしペースも保てていたが追加点が遠かった。という決めきれなかったのか。そういう状況で引いている中での失点で追いつかれてしまった。相手のストロングをどう対処するのか、狙いはどこなのか。
ワールドカップに出たとはいえ、穴もありそうなチームであると思ってしまう。そういう中で戦い方をどう修正するか。


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