スポーツアナリティクスの民主化への取り組み 〜ファジアカの紹介〜
これは「スポーツアナリティクス Advent Calendar 2022」の1日目の記事です。
1.スポーツアナリティクスは誰ものか?
昨年のちょうど今頃のnoteで、こんなことを書かせていただきました。
私はこれまで、Jリーグクラブやスポーツデータを取り扱う企業でサッカーアナリストとして活動してきました。そのなかで、「する」スポーツでのスポーツアナリティクスがトップレベルだけでなくアマチュアや学生、愛好家にも浸透してきていることは実感していました。また、「みる」スポーツや「ささえる」スポーツでの映像やデータを使ったアプローチ事例もよく目にするようになってきていました。
一方で、スポーツへの入り口を広げたり関わりを深める道具としてもスポーツアナリティクスを活用することができれば、もっと多くの人がスポーツの新しい魅力を知って楽しめるんじゃないかという気がしていました。
そこで、それを実現させる取り組みの一つとして、アドバイザーを務めるJリーグクラブ ファジアーノ岡山で「ファジアーノ岡山 アナリティクスアカデミア(略称:ファジアカ)」を今年の4月から開講しました。
2.ファジアカとは?
ファジアカの開催目的はこんな感じです。
サッカーの分析を楽しみながら学んでもらう
学びをきっかけに、サッカーの魅力をさらに味わってもらう
ファジアーノ岡山をより身近に感じてもらう
スポーツへの新しい関わり方を普及させていく
また、特徴はこんな感じです。
ファジアカに関心があれば誰でも大歓迎
参加者のプレーや分析の経験は問わない
プロサッカー現場でのアナリスト経験者(久永)が指導
活動内容はこちら。
3ヶ月間/期(2022年 0期:4ー6月、1期:10ー12月)
※1期はエンジョイコースとスキルアップコースの2コース週ごとに分析課題が設定され、各自で取り組んでくる
週1回の4人組グループワーク(オンライン)でお互いの分析を共有
グループごとに4週間でアウトプットを作って、発表会で披露
全グループメンバーが顔を合わせるオンライン会も週に1回
例えば0期の3回目のアウトプットは、J2第24節の熊本戦に向けた対戦相手分析でした。受講生には、次のような大まかなアウトラインを提示したのちに分析に取り組んでもらいました。
4週間のグループワークを経て作り上げたアウトプットを披露する場として、クラブスタッフ向けやクラブ公式YouTubeチャンネルなど、期中に2〜3回程度の発表会を行いました。
3.ファジアカで大切にしていること
先ほど、「参加者のプレーや分析の経験は問わない」と書きましたが、むしろ、この違いを大切にしてもらっています。そして、以下のようなスタンスでの参加をお願いしています。
4.参加者の声
サッカー分析の経験がない参加者からは、以下のような感想がありました。
相手チームの情報を知ることでスタジアム観戦の楽しみが増えた
今まではシュートを打つ選手にしか目がいっていなかったけど、自陣から攻撃を見るようになった
分析した相手チームにも情が湧いてきて、ファジ以外に応援するチームが増えた
フォーメーションも大事なんだなーと分かった
サッカーをしている息子との会話ネタが増えた
グループメンバーで集まってスタジアム観戦し、自分たちの分析の答え合わせを楽しめた
自分の関心のある情報を詳しく調べるだけでグループの分析の役に立てることが分かって嬉しかった
プレーや分析の経験がある人からの感想も紹介します。
これまでは起こった事象ばかり見ていた。「なぜ?」を繰り返し考えるようになることで要因の分析ができるようになってきていると思う。
要因の分析が他の人と同じで、自分の分析に自信が持てた
グループワークでは自分以外の視点をもらえるので、一人では気づけなかったことに気づけた
プレーしたことがない人のフィードバックから、選手をしている自分には選手目線という視点があることに気づけた
もっと教えてもらえると思っていた
プロの視点でフィードバックがもらえるので、分析の基準が高くなったと思う
アウトプットの場があることで、相手に伝わるような表現を考えるようになった
5.ファジアカの成果
今回の取り組みは、以下のような成果があったと考えています。
参加した方々には、ここで学んだことを活用してファジアーノ岡山を盛り上げる役を担っていただけるとありがたいと思っています。例えば、今シーズン終盤には、地元新聞社が運用する「さんデジ(山陽新聞デジタル)」のご協力のもと、0期修了生が試合の見どころを発信する機会をいただきました(vs長崎、vs仙台、vs秋田、vs東京V)。
今後もこのような場を増やしていきたいと思いますし、個人発としても分析をキーワードとした様々な活動が見られることを期待しています。
一方で、運営の都合上、参加者の人数が限られてしまうことが大きな課題となっています。来年も可能な限り多くの方に参加していただけるように準備をしていくつもりですが、別の方法でサッカーの分析を楽しんでいただける機会も検討しています。
最後に、3月にファジアカ0期の募集を始めた際にいただいた反響の一部を紹介します。
引き続き、スポーツアナリティクスの民主化にチャレンジしていきたいと思います!
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