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#vol.6 キューバ危機に学ぶ意思決定の本質

 学生時代に一度読んだことがあった「決定の本質」を社会人になり、改めて読み直してみた。

 当時も文章から伝わってくる迫力を感じていたと思うけれど、今回改めて絶対に戦争は起こさないという強い意思を本書から感じ取った。

 組織のリーダーやこれから担っていく人にとって必読書であると思うので、強くオススメします。

 本ブログでは簡単に概要をさらった上で、僕なりの学びがあった項目を3つの切り口からご紹介していこうと思う。

 いつか誰かと本書について話せる機会があったらとてもうれしいなーと思いつつ書き残すことにする。

意思決定の過程には曖昧で錯綜した拡大解釈が伴うものだ。それは決定に最も深く関与している当事者にも不可解なことなのである。ージョン・F・ケネディ

●本書の概要

ほとんどの研究者は、①合理的アクター・モデルと呼ぶ基本的概念モデルによって中央政府の行動を説明(および予測)する。重要なのは国家や政府が実際に起こした行動を選択できた過程を示すことである。国家が何をするだろうか、または何をしたであろうかと予測するには、特定の目的があることを前提に起き、一定の状況のもとでなすべき合理的なことを推定すればよい。(p.43)
②組織行動モデルと③政府内政治モデルの二つのモデルは、よりよい説明と予測のための基礎となる。組織行動モデルでは、どのような組織の事情や圧力によってこの決定が下されたのか、既存の組織や既定の手続きと計画の特徴が反映された傾向を見極めることができればよい。政府内政治モデルは、政府部内の政治に焦点を当てる。(p.44)

  有事に直面した国家の意思決定を、3つのモデルで紐解くことを目指している。想定しうる3つのスコープで物事を捉えることで、今まで見えなかった側面で物事が見えてくるようになる。
 
 国家の危機という貴重な歴史的事実を基に、とても重要な学びを得られる一冊になっているのである。

●組織の規則や手順を整備し、「決定」のリスクを最小限に。

組織が規則、規範、所定の手続きというものを導入しているのは、正常な判断に基づいて実行するためである。規則に納得するならば、選択肢が提案されるときには、その順番が極めて重要になる。組織は比較的安定的で連続した調査作業を通じて選択肢を作り出す。その結果、選択肢は極めて限られたものとなり、選ばれる可能性が高いのは単純に関連規則を順守している選択肢である。(p.325)

 想定外の判断や意思決定にはリスクを伴うため、ある一定の手続きに乗っ取って決定がなされる。
 企業であっても同様の手順を踏むであるし、国家の意思決定であればなおさらであろう。

 組織の意思決定を考えるとき、その組織における規則や手順を理解しておくことは最終的な結論の予測であり、改革の際にも参考になると考えられる。
 さらにいえば、なにか組織で意思決定をする立場になった際に、その組織やチームの意思決定の手順をどのように引き上げるのか、規則を手順をどう整備するかは最重要課題になることが容易に想像できる。

●各組織や権限(立場)上による提案内容の差異を理解する。

外交政策問題は、その性格上、良識ある人間の間でも解決の方法に関して根本的な意見の相違が生ずる。(中略)各人は自らが関与する分野の課題から波及した問題に対し、注意を喚起しようとする特別な責任感を覚えても何ら不思議なことではないからだ。すなわち、権限上や実際面において、大半のプレイヤーは所属組織が仕える利益団体や支持層の意向に沿った部局や機関の「代弁者として行動する」。彼らの優先順位や信条はその代弁している各組織に関係しているために、彼らは分析結果に基づいて相反する提案を出してくる。(p.133)

 国家や外交政策に限らず、各人の立場における問題意識が全体における議論の中でも提案内容に影響を与えることを理解しておく必要がある。
 これは、各人の意見や提案がそれぞれ何が良くて何が悪いという話ではなく、プレイヤーが代弁者として行動することがありうることを理解する必要があるということなのだ。
 
 一見もっともらしい見解においても、上記を理解した上で、提案に当たるのとそうでない場合では返答する内容にも大きな変化が起こりうるはずである。

●意識を組織内で合わせる。仮説の建て方に最新の注意を。

そもそもグループが対処するべきか否かは、その問題に対する見方とそのグループの「アジェンダ」に与える影響度に左右されるものだ。(中略)まず、政策における事象には三つの流れがあると特定する。人々は「問題の流れ」のなかで問題を理解し、「政策の流れ」のなかで公共政策変更の提案を考え出し、「政治の流れ」のなかで圧力団体のロビー活動や選挙活動などの政治活動に従事する。大衆が関心を寄せる「大衆的アジェンダ」から政府の実施予定リストとなる「決定アジェンダ」へと考えを展開していくには、これらの流れを合流させる必要がある。(p.195)

 組織のリーダーであろうと、政策立案の立場であろうと、どのような問題設定をするか、そしてその問題設定がどのような「問題の”流れ”」を汲んでいるかは大切な指標になる。

 特に、本書に記載されているように「大衆的アジェンダ」(僕は多くの人の問題の関心事項と解釈)をいかに解決しなくてはならない問題と紐付け、解決策を提案できるかが、現代におけるリーダーの条件になっているのではないかと思う。
 
 常に、自分自身ですべての問題にあたることはできない。だからこそ、チームが問題意識を共有し、全体で解決に当たっていくために、”流れ”を合流させる力が多方面で求められているように感じるのだ。

 「決定の本質」は歴史的名著であり、とても示唆に富んだ一冊だと思う。組織やチームで働いたり、リードしていく人物になっていく人こそ一度手に取って読んでみてほしいな〜と思ったり。

 それでは。

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