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◇盗みの露呈① ~ 犯行の目撃者 ~

今日も気分が憂鬱だ。たいしくんに命令され、お菓子を買わないといけない。もうお小遣いは残っていないのに…

いつもの駄菓子屋に入る。薄暗い店内でおばあさんが1人で店番しているところだ。

胸が張り裂けそうになる。お母さんにお小遣いをもらおうとしたがダメだった。たいしくんが怖くて怖くて、今日もやってしまう。

おばあさんが他のお客さんの接客をしている時に、素早く棚からお目当てのお菓子を取り、ポケットに入れる。そして怪しまれないように一番安いお菓子をひとつ購入してお店を出た。

するとどこからか視線を感じた。もしかしたら何回も盗みをする僕のことを警察が監視していたのかもしれない。

焦った。捕まえるならひと思いにやって欲しいと思った。そしたらたいしくんから解放される。

キョロキョロと視線を走らせていると、向かいの電気屋の陰からあやかが僕を見つめていた。僕というより、僕のポケットに目線が集中している気がする。

何もなかったかのように、そのままたいしくんのところに向かおうとしたその時

「それ、どうするの?このまま持って帰るの?」

「えっ?何のこと?」

ごまかそうとした。あやかは今度は僕の目をじっとみつめた。その目は人を蔑むような馬鹿にするようななんとも言えない目だった。

「はぁ~。素直に認めたら見逃そうと思ってたんだけどな~」

あやかはそう言ってから、スマホを取り出して見せてきた。そこには僕の犯行の一部始終が動画されていた。

「ちょっと来て!」

あやかにそのまま公園に連れて行かれた。手入れのされていない廃れた公園だ。

公園に唯一あるベンチにあやかは座ったが、僕はその前に立ち尽くしていた。

「たいしくんでしょ?」

「え?知ってるの?」

「だいたい分かるよ。もうこんなの嫌でしょ?私が助けてあげようか?」

「えっ?でも…」

あやかは学校にいつもかわいらしい小物を持ってきているので、お小遣いをたくさんもらっているのかもしれない。盗みの動画をわざわざ録画して証拠を押さえたのに、助けてくれる理由が分からなかったが、このまま頼れるものなら頼りたい。

「その代わり条件があるの」

僕が長い時間沈黙していたら、あやかがそう声をかけてきた。今度のあやかの目は先程の目とは違い、ちょっとだけうれしそうな何かを試そうとしているようなそんな感じだった。

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