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ことわざ:『足の小指』          ――――――――――――――――――                 【意味】不幸というのは、後から考えると幾らでも回避できたように思えるが、それは未来から見て言えるだけのことであって、回避することなど出来ないということ。             ――――――――――――――――――                  【例】「昨日タバコを吸わなかったら確かに火事は防げたかもしれないが、結局の所それは『足の小指』だ」


 足の小指って脆すぎる。俺がそう強く思ったのはついさっきの事だ。

 ぶつければ痛みが走るのは当然だし、その衝撃が強すぎれば普通に血が出たりする。クソザコだ。
 なんでこんなにクソザコなんだ小指って、ふとそう思った。
 下手したら爪がはがれる場合もあるぜ、衝撃の強さによってはさぁ。
 
 なんで足の小指をどこかしらに人間という奴はぶつけたがるのだろうか。
 それは人間が二足歩行を選択したから仕方が無い、という結論に辿り着くほか無い。稚内。

 “歩く”という事は足を前に蹴り出すと言う事だ。
 そしてその前足に体重を乗せて、更に後ろ足を引っ張り、また蹴り出す……つまり小指をどこかにぶつける。 必然だ。

 俺は諦観の念を抱きながら、小指を見つめなければならない。
 人間に生まれ落ちると言う事はどこかしらに足の小指をぶつけるという事である。いつかは。

 ここで疑問が湧いてくる。

 何故、お釈迦様は足の小指についてなにも言わなかったのだろうか?――と。

 人間という存在を儚み、あらゆる欲求に対して敢然と挑み、四諦を説いた仏陀が足の小指についてなにも言っていない、と言うのは片手落ちじゃないか? という疑問を持つのは至極当然である。



 言うまでも無いと思うが、もちろん言って無いということは無い。
 それが現代に伝わって無いのは散逸してしまったからに他ならない。なんせ2500年前の人物の言行録だ。そりゃ伝わって無い重要な説教とかもある。
 永遠の覚者であるブッダが足の小指をどこかしらにぶつける――という事象に目を留めない訳があろうはずも無い。『言ってないだろそんなこと……』そんな事を思う奴は畜生道に落ちるだろう。

 そして、仏がそう言ったのだから避けられないのだ。
 足の小指をどこかしらにぶつけるという事は。
 現代の最先端技術を用いても絶対に。宿命なのだ。

 つまりゴウタマ・シッダールタ曰く、「人間として生まれるという事は、いつか足の小指をどこかしらにぶつけると言う可能性を内包しながら歩き続けることである」――らしい。

 はぁ……やれやれだぜ……そういうことは生まれる前の段階で、インフォームドコンセントしてくれるべきだと思う。
 俺は老いたり死んだりすることは許せても、足の小指をどこかにぶつける事だけは許容できない。


 まぁ、それはいい。……いや、全然よくは無いんだが、まぁよしとしておく。 

 ……では何故、小指はクソザコなんだ?
 おかしいだろどう考えても。

 親指は頑丈だ、見りゃわかる。太い
 でも親指はぶつけたりしないだろ!!!!!!!????
 何でテメェが一番デカいんだよ!?おかしいだろ親指よぉ???
 つーか同じくらい強くなっとけよ小指。そこにリソースをケチるなぁぁ!!!!
 親指並みのリソースを投入しろよ!!どうして面倒くさがるんだよおい!!
 何で一番ぶつけやすい小指がもっとも直径が一番小さいんだよ!!!??
 テメェは子供を不平等に育てる親かよ!おいッ!!!!!


 ……まぁ、足の小指にリソースを注ぎ込んでも、確かに生存という点においては無意味ではある。そこは認めよう、渋々。
 でもQOLという点に関して言えば素晴らしいことである。それは論を待たない。

 想像してごらん? 小指をタンスや曲がり角にぶつけても痛くない世界を。
 ジョンレノンだってそう言った。確かそう言う曲だったと思う。

 だから、これから人類は進化していくべきだと俺は思う。
 つまり小指の強くなる方向に

 人間が食べ物を食べて、美味しいと感じるのだって、腐ってるものを食べて何も感じない奴が食中毒で死んで淘汰されたからこそだ。
 なら、小指をぶつけても平然としているような力強い遺伝子を後世に残すべきだとは思わないか?

 うん……淘汰していこう。

 具体的には小指をぶつけて痛がっている奴を淘汰していけば、将来的には強い小指を持つ種へと移行できる――

 えっ? まぁ……そうね……うん……

 …………優生思想だね。


 ……でも仕方なくないか?
 そうしないと足の小指をどこかにぶつけた時にめっちゃ痛いままだぞ人類??
 一万年経過して、星間戦争やってる最中に足の小指をタンスの角にぶつけたらどうすんだよッッ!! 恒星間航行できねぇだろ!!(?)
 第一、現生人類は様々な淘汰された後の恩恵に浴している。なのに、『自分たちは淘汰されたくは無い』って我儘だ。 だから、そんな風に俺をヒトラーでも見るような目で見られても困る。


 ……うん、殺そう。
 やっちまおうぜベイビー。
 足の小指の弱い奴らをジェノサイドだ。
 ファッキンクールな進化の始まりだぜ!!

 小指の強さを後世に残すためにも、人為的かつ社会的に、足の小指の貧弱な奴を淘汰をして行くべきなんだ!!!!

 俺がやらなきゃ誰もやらないんだから!!!!!!!

 うぉおおおおおおおおお!!!!!!!!!

 いくぞおらぁあああああああああ!!!!!!!!!!!!
 





 ……さて、なんで俺は今こんなことを書いているのか?
 ……まぁ、言うまでも無いだろう。

 そう、小指をぶつけたのだ。血が出るほどに。変な場所に置いてあったゴミ箱に、フルパワーで。

 
 ……クソが

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