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日本料理「一灯」料理長 長田勇久の味わうゼミ noteレポート③_2022年5月25日

おはこんばんちは。校長の平井です。今回はわたしが、ゼミ3日目のレポートをお届けします。「味わう」についてたくさんの考え方に触れて、みんなで思考がグルグルする日になりました。

「味わうゼミ」は、早いものでこの日で3回目を迎えました。オンラインにはなりますが3回目ともなると、メイトのみなさんもリラックスして参加いただいている気がしています。

前回のゼミでは東北大学の坂井信之さんを案内人に、「味覚」について勉強しました。そのときのnoteレポートはこちらをご覧ください。

坂井さんから教えていただいて、「味覚」「味」「味わいの”あじ”」の違いについて心理学や基礎医学の観点から知ることができたので、ここからはいよいよ「“味わう” について自分が探求するテーマ」を深掘りしていきます!

この日の冒頭、ゼミ長の長田勇久さんからみなさんへのメッセージ。「ゼミも3日目を迎えて、みなさんのこのさきの研究が俄然たのしみになってきました! 味わうというのは、方法も捉え方も人によって違います。きょうこの後のみなさんの発表で、味わうについていろんな意見が出ると思うので、多角的にみなさんと考えていきたいですね!」


自分の探求テーマを発表してみよう!

この日は、おひとり6分間の持ち時間で、いま考えている探求テーマについて発表しました。

発表された内容すべてをここで取り上げると、ものすごく長文になってしまいますので、おもしろかった視点、これを読んでいただいているみなさんに気づきとなるような視点を抜粋して、紹介していきたいと思います。

「味わう」と「味を感じ取る」との違いについて。
1)食べて、味・匂い・食感・温度・味の継続時間(味の刺激を時間軸でみる)を、感じ取ること。感じ取ること事態は、急いでいても、会話に意識を集中させていても、一部分はできる。
2)エネルギー補給のように「かき込むように食べる」場合は、「味わう」とは言わない。
3)会食等で、「会話」「相手への気配り」等が、主たるときは「味を感じる」ことはできるであろうが、「味わう」領域に達していない。

スコーレメイトさんの発表より

天気の良い日に外で食べたカップラーメンが、なんであんなにおいしかったのか。

スコーレメイトさんの発表より

お店の味も食材の味も変化する。年齢を重ねて、自分の舌も変化していく。好きなものを味わいたい。おいしいもの探しをしている。変化に負けないようにしている。

スコーレメイトさんの発表より

味わうことに関して、自分がつまずいているのは「未来」について。 仕事で昆虫食に関わっているが、個人的にはこれをどう味わえば良いんだろう? と躊躇してしまう。味わうことを楽しむためには未来に対して挑まないとならないのでは、と考えている。

スコーレメイトさんの発表より

小さいころ、おばあちゃんに「50回噛んで味わって食べなさい」と言われてた。味わう→咀嚼(よく噛む)→唾液アミラーゼが分泌して甘みがでる。消化吸収が高まり、胃腸の働きを助ける。そういう意味でも、ゆっくり時間をかけて食べるということは大切。

スコーレメイトさんの発表より

「味わう」ことを探求するにあたって、あらためて「郷土の味」について考えてみた。生まれたところの「郷土の味」ってなんだったのかな? その地域の歴史から「味わう」を深掘りすると気づくことがありそう。

スコーレメイトさんの発表より

今回のゼミで、「味わう」を考えてみて新しく気づいたこと。それは、目の前の食べ物の背景を想像することの面白さ。自分が知り得た情報でストーリーを考える。

スコーレメイトさんの発表より

味わうとは、「空腹を満たす」「栄養補給のために食べる」の一歩先。いくつかのSense(五味・五感) と Intelligence(思想・文化) といった人間らしいプロセスではないか。

スコーレメイトさんの発表より

味わうことは、食に対する人間の進化のひとつなのではないか。味わうことを学び、他の人と共感し楽しみたい。ではポジティブに楽しむには何が必要か? このことを深掘りしてみたい。

スコーレメイトさんの発表より

ゆっくりと食べる時に「味わう」を意識することが多いので、どなたかのつくってくださった料理を、事前の説明も含めてどんな食材か?はたまた、事前の情報がない時には何でできているのか?を考えつつの、味の複合をたのしむ。これを一番に大切にしています。

スコーレメイトさんの発表より

こんなふうに、「味わう」についてたくさんの考え方が飛び出して、そのひとうひとつの考え方に共通性もありながら、個性もあって。驚いたのは、「味わう」という抽象的な言葉ひとつを深ぼるだけで、こんなにもいろんな食への向き合い方に出逢えるのかと。

ひとりの発表が終わるたびに、長田さんはじめ、聴いている人たちから意見や質問も出て、お互いの考えをごちゃ混ぜにする良い学びの時間になったと思います。これからもゼミでは、こうしてひとりで逡巡する学びと、他人と対話する学びを、行ったり来たりしたいと思います。

この日の最後、長田さんより。
「味わうというのはある意味、確認作業なのかもしれませんね。こんな味がした、こんな経験をした、というように。味わった結果は自分にとっては正解で、他人にとっては決して正解とは限らないわけで。食の経験というのはひとりの中で脈々と繋がっているんだと思うんです。日本人だからみんな共通の味わう結果をもっているのか、というとそうではなく。個人として経験していないものは、やっぱり味わうための判断材料にはならない。そういった意味でも、今回みなさんの発表を聴いて、味わうというのは、多様で深いものなんだとあらためて思いました。ありがとうございました」

(フードスコーレ校長/平井)

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