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企画と流通の力で、漁業に関わる人たちがサステナブルに働ける社会に【sakana bacca事業部 地方創生ディレクター 山本久美恵さん】

フーディソンでは、「生鮮流通に新しい循環を」というビジョンを掲げています。“食”をめぐる世界をより楽しく、持続可能なものにしていくために、その領域はこれからもっともっと広がっていくはず。

そのために欠かせないのは、一人ひとりが実現したいビジョンを大切にすること。「わたしのビジョン」は、社員メンバーたちのこれまでの経験を踏まえて、フーディソンで目指したいビジョンを語る連載企画です。

第2回は、sakana bacca事業部で地方創生ディレクターをつとめる山本久美恵さん。もともとウェブマーケティングの会社でデザイナーとして働いていた山本さんは、お酒のメディアづくりに関わったことをきっかけに「大好きな食の領域で仕事がしたい」とフーディソンに入社。インハウスデザイナーを経て、産地とより密接に関わる地方創生ディレクターとして活躍しています。

「食の世界の役に立つために、できることをしたい」。
そう話す山本さんのこれまでと、これから叶えたいビジョンを聞きました。


【プロフィール】山本久美恵
子どもの頃から食や料理に関わることが好きで、ウェブマーケティング会社のデザイナーを経て2016年にフーディソンへ入社。インハウスデザイナーとしてさまざまなコンテンツづくりに携わったのち、2022年の12月よりsakana bacca事業部の地方創生ディレクターに。災害を受けた地域など、さまざまな産地の食文化に貢献する企画・流通のディレクションを手がけている。

企画、流通、宣伝、デザイン。「食に役立てる仕事」なら何でもやりたい

ー 山本さんがフーディソンに入社したきっかけはありますか?

山本:前職がウェブマーケティングの会社だったのですが、そこでワインメディアの立ち上げに関わったことがあったんです。もともと料理が好きだったので、ワインにまつわるコンテンツの制作や、料理家さんなどと一緒にワインに合うレシピづくりをした経験がすごく楽しくて。「こんなに楽しいなら、もうこのまま食領域に絞った仕事をやっていきたいな」と思ったことが、転職につながりました。

ー 食領域の会社はたくさんありますが、どうしてフーディソンに?

山本:実際にものを扱って、流通させている事業会社であるというのが自分にとって大きなポイントでした。「sakana bacca」という魚屋をやって、卸をやって、そういう市場に通じるようなことをやっている企業にはなかなか出会えない。なんだか面白そうだなと思って、2016年にデザイナーとして入社しました。

ー デザインチームでは、どんな仕事をされていましたか。

山本:「sakana bacca」や「魚ポチ」のコンテンツ、プロモーション動画、お店で配布するフリーペーパーなど、社内の制作物は何でもつくっていました。写真を撮るところから、デザインに起こしてコンテンツを流すところまで、インハウスデザイナーとして色々やれる環境だったので楽しかったですね。黎明期みたいな時期だったこともあり、「できることは何でもやってみよう」という感じでした。

ー 現在は、地方創生ディレクターとして働いているんですよね。

山本:そうですね。もともとディレクター的な動きはちょっとずつしていたこともあって、自然な流れで2022年の12月ぐらいから今の形になりました。フーディソンでは「sakana bacca」や「魚ポチ」で食材を流通させていくなかで、産地の自治体や企業からプロモーションや販路の拡大など色々なご相談をいただくので、そういうものを総括して地方創生事業と呼んでいます。地方創生ディレクターは、実際に産品のフェアやイベントをやるときの企画立案と進行役のような役割ですね。

こちらから役立てることを考えることもありますし、災害を受けた地域から「復興のために産品の流通を回復・拡大させたい」と相談いただくことも多いんです。

ー デザイナーだった山本さんが、地方創生ディレクターとしての仕事をやってみようと思った理由はありますか?

山本:「食が好きだから、それに役立てることなら何でもいい」というのが私の仕事のスタンスなので、そんなに深い理由はないんです(笑)。でも、デザイナーの仕事はプロジェクトの準備がメインなので、ディレクターとして最初から最後まで関わっていくというのは自分にとって大きな変化でした。

もちろん成果への責任も増しますし、今までよりずっと大変な仕事ではあるのですが、そのぶん産地に近い立場で関わることができる。見えるものも変わってきますし、より“自分ごと”として取り組めるようになったと思います。今までより一歩踏み込んで役立てるようになったのは、大きなやりがいですね。

福島や能登など、災害を受けた地域の魚食文化にできること

ー これまで手がけてきたプロジェクトで、印象に残っているものはありますか?

山本:いちばん大きいのは、「発見!ふくしまフェア」の仕事です。東京電力ホールディングス株式会社が取り組む活動の一貫として、2021年から「sakana bacca」や「魚ポチ」で福島県産品のフェアをやり始めて。風評被害などもあって販路がなくなってしまった水産品や農産品を、その魅力を発信することで販路を回復させていこうっていう枠組みの企画で、今年で10回目になりました。

長い期間を継続して関わるなか、2023年はALPS処理水の放出のタイミングなどもあって「福島どうなるんだろう」ってメディアや世間の注目も高まっていました。でも、お客さまの「福島を応援したい」という気持ちもすごく大きくなっていたときで、「sakana bacca」でのフェアに大きな反響があったんです。「きちんと検査したものだとわかっているから、頑張ってください」と発信してくださって。

ー ネガティブな意見などもあったのでしょうか。

山本:そういう意見はほとんどなかったんです。みなさん自分で情報収集をされて、私たちも驚くぐらい、前向きに捉えて買ってくださる方が多くて。実際に、国の基準よりもかなり厳しく検査して出荷するということを福島県ではやっています。それからは取材や報道の方向性もだんだんポジティブなものに変わっていって、「フェアをやって本当によかった」と感じました。

ー 今年は「能登応援フェア」も開催していますよね。

山本:そうですね。フーディソンは生鮮流通のプラットフォーム事業者なので、そもそも流通させる魚がないと力になれないというのがあって、震災後すぐは、能登の漁業が止まってしまったなかで何ができるかと話し合っていたんです。その後、3月末に一部で漁業が再開されたというニュースがあって、すぐに石川県の担当者の方を訪問して「sakana bacca」でのフェアを進めていきました。

やっぱり数ヶ月が経つとニュースで取り上げられることも減って、まだ復興も進んでいないのに忘れられてしまうという現実がある。漁に出られないので、漁業から離れてしまう漁師さんもいます。「能登のお魚が食べたいです」という声を東京から届けることで、漁業に関わる人たちに「じゃあまた漁に出よう」と思ってもらい、復興につながるよう取り組んでいました。

ー 漁業は災害の影響を受けやすいですよね。そういった地域の生産者の方々と関わるとき、どんなことが大切になってくるでしょうか。

山本:独りよがりにならないことが大切なのかなと思います。産地に何が必要なのかは、こちらがあれこれ想像するよりも直接聞いてしまった方が早いので。

私自身は流通分野での知識がすごくあるわけではないのですが、社内の仕入れ部門のバイヤーたちと話していると、「産品を流通させるのがどれだけ重要なのか」ということが、本当によくわかります。プラットフォームを持っていることで、私たち独自の支援ができるというのはあるので、それを大事にしていきたいです。

まず信頼関係がなければ、どんなプロジェクトも進まない

ー 山本さんが地方創生ディレクターになってから2年ほどが経ちますが、振り返ってどんなことを感じますか?

山本:関わる人の数が多くなりましたし、立場もさまざまなので、大変なことばかりですね(笑)。産地の方々、仕入れ部門のバイヤー、店舗のスタッフなど、それぞれのバランスを取って、みんなが納得して関われる環境をつくることが大事なんだなと実感しています。

そのなかで学んだのは、コミュニケーションをしっかり取って、信頼関係を築くことの大切さでしょうか。それがないと、どんなプロジェクトも進めていけないですし、成果にもつなげられないのかなと思います。

ー 手応えがあったのは、やっぱり「発見!ふくしまフェア」の仕事でしょうか。

山本:そうですね。いちばんインパクトを感じられたプロジェクトだったと思います。売り上げなどの成果というよりも、「誰かの意識を変えることができたんだ」という喜びが大きかったです。おこがましいかもしれませんが、そういうところにアプローチできたのが嬉しかったですね。

ー 山本さんにとって、地方創生に関わることの魅力ってどんなところですか?

山本:フーディソンでやっている地方創生事業では、水産品を仕入れて販売していくなかで、さまざまな産地の課題に直面するタイミングがあって。販路が広がらなかったり、漁業の担い手が減っていったり、海の環境変化で漁獲量が低迷したり、あとは逆に今までになかった魚が獲れはじめてどう扱ったらいいのかわからないとか、本当に色々あるんです。

そういう課題に一緒に取り組んでいける企業って少ないと思うので、そこは魅力だなと思いますね。広告などを通してイメージアップさせる、という取り組み方じゃなく、実際にものを流通させていけることにやりがいを感じます。

ー 自然のことはコントロールできないぶん、できることはすべてやっていかないといけないですよね。

山本:漁業はこのまま放っておくと衰退していってしまう産業なので、そこに何か寄与していけたらというのはいつも考えています。イベントやフェアだけじゃなく、獲れすぎてしまった魚や、あまり利用されていない資源で商品開発をしたり、もっと色々な方向からアプローチできたらいいなと。

低利用資源を加工品にすれば通年で流通できて、漁業者さんの収入も安定するので、そういう提案もしていきたいですね。産地でたくさん獲れるけれど廃棄されてしまっているようなものって独自性が高かったりするので、クローズアップしたら面白いと思うんです。産地に興味を持つ人を増やして、交流を促すようなことができたら嬉しいですね。

生産者がもっと幸せに、持続可能な環境で働ける社会を目指して

ー 山本さんが「こんな世界になったらいいな」と思うビジョンを教えてください。

山本:一次産業というか、生産に関わる人たちの収入がもっと上がったり、担い手不足に陥ったりしないで、持続可能になっていくといいなと思います。それぞれの仕事に誇りを持って、幸せに取り組んでいけるような世界になってほしい。そのためにも、ひとつひとつのプロジェクトを積み重ねて、さまざまな方向からアプローチしていきたいです。本当に色んなやり方があると思うので。

ー そう思うのは、やっぱり「食が好き」という原動力からですか?

山本:そうですね。仕事にするなんてまったく考えてなかったですが、子どもの頃から料理が好きで、前職で仕事を通して関わったことで「こんなに好きなんだな、食のことならいくらでも考えていられるな」と気づいたんです(笑)。

人の役に立ちたいなんてあんまり思ったことはなくて、ただ食の世界の役に立ちたい。食をとりまく世界がもっと魅力的になって、みんながそれを楽しめるように、という思いが強いんです。

ー 自分の好きなことに役立てるって、最高ですね。

山本:そうですね。どうせ働くなら、やっぱり好きなことに関わっていきたいなと感じました。デザインチーム時代は、プロモーション動画で使うレシピや料理に関われるのもすごく楽しかったです。マーケティングの会社にいた頃はさまざまな業種を扱っていましたが、フーディソンでは関わるものがすべて食なので、自分の興味に直接つながっている。それが大きな原動力だと思います。

うちの社員は魚がすごく好きなので、「魚のこと全然わかってない!」って怒られることもあるんです(笑)。学びたいと思ったとき、市場や出荷現場に立ち会ったり、店頭に立って販売したりと、勉強できる環境が社内にあるというのもフーディソンの良いところ。これからも色々なことを吸収して、できることを増やしていきたいです。


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