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熱中症3 〜飲料図解〜

さて、こちらの図解かバズりまして、やっぱりわかりやすさって大事だよねと思う今日この頃。

しかし、しかしです。

バズるということは受け入れやすくわかりやすい、つまり詳しい説明を削ぎ落とした結果真実を伝えきれていないという葛藤と表裏一体、諸刃の剣、禁断の果実etc。

ということで、
☑︎この図を作るにあたり何を考えたか
☑︎誤解を生む表現もないのか
☑︎もっと読み取れることはないのか
あたりをまとめてみました。

糖と塩

さて、改めて眺めてみますが、まずはなぜこの二軸で切ったのか?

他にも色んな切り口はあるんですが、私がこの二軸にした思惑は、
☑︎「熱中症対策」と表示するための基準が食塩
☑︎スポドリを選ぶ基準として糖質が大きな要素
☑︎浸透圧に影響する因子としてこの二つが大きい
☑︎栄養成分表示が義務付けられ定量化が容易
から選びました。

軸を二つに単純化すると言うのはそこにメッセージがあるわけで、悪く言えば恣意性が生まれます。

例えば容量別とか、味の濃さ別とか、他の切り口も考えてみたら面白いかもしれないので、暇な人はやってみよう。

熱中症対策表示

実は「熱中症対策」と飲料で謳うようになったのはここ10年くらいの話。「症」という字が病気を連想させ、薬機法や景表法上問題になることから、以前は各社「熱中対策」と冷静に見ると意味不明な訴求をしていました(飲料以外ではいまだに「熱中対策」の訴求を見かけます)(何に熱中してるんですかね)

10年くらい前に業界団体(全清飲)が以下の範囲で「熱中症対策」と訴求しても良いだろうという基準を制定しました。

1.趣旨
夏場の熱中症予防対策として、厚生労働省のHPなどでも、水分だけでなく塩分を合わせて摂取することが推奨されていることから、「熱中症対策」とPOPなどで表示できるスポーツドリンクなどの飲料の範囲を明確にすることにより、正確な情報伝達と市場の混乱防止に寄与する。
2.適用
ナトリウム濃度として、少なくとも、飲料100ml あたり40~80mg※含有する清涼飲料水。
(※この値は、厚生労働省HPのマニュアル記載の値に基づく。食塩相当量として0.1~0.2g。)
3.使用許可
前項の基準を満たしたもののみ、「熱中症対策」の用語を使用することができる。

http://www.j-sda.or.jp/manufacturing/regulations_and_guidelines05.php

つまり、食塩相当量0.1〜0.2 g/100 mlの配合量でナトリウムを含めば、「熱中症対策」と訴求しても良いですよ、というわけ。

では改めてみてみよう。

ね、みんな乗っかってるでしょ??

飲料や食品は基本的には効果効能を謳うことはできないので、「熱中症対策」はかなり踏み込んだ表現とも言えます。

とはいえ「対策」ってことばも曖昧なんですけどね。熱中症には予防の観点と治療の観点がありますし、もとの厚労省のマニュアルでは「熱中症予防」と書いてありますが、それはどうも訴求できないようです。

経口補水液とは何ものか

さて、そうやって眺めると一人だけ食塩がやけに多い子がいます(オーなんとか)

この製品は先のガイドラインに則れば、「熱中症対策」と書くことができません。とはいえ熱中症対策にならないわけでは決してなく、厚労省の推奨する予防ガイドラインの範囲ではないというだけで、熱中症などに伴う脱水状態への対策として使用できます。

その証拠に消費者庁に「特別用途食品 病者用食品」として認可されており、以下の表示が許可されています。

電解質と糖質の配合バランスを考慮した経口補水液です。軽度か ら中等度の脱水状態の方の水・電解質を補給・維持するのに適した病者用食品です。感染性腸炎、感冒による下痢・嘔吐・発熱を伴う脱水状態、高齢者の経口摂取不足による脱水状態、過度の発汗による脱水状態等に適しています。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/assets/food_labeling_cms206_201218_03.pdf

つまり、お国のお墨付きを持って脱水状態に使えると言えるわけなので、業界団体のガイドラインなんて特に気にしなくてもいいわけです。

逆にいえば予防のためにこまめに飲むにはちょっと食塩濃度が高いとも言えるかもしれませんね。

なお蛇足ですが、経口補水液と名乗っているものがこの図には三つあるのですが、そのうち特別用途食品であるものは二つ、残りの一つは・・・普通の飲料。

経口補水液とはそもそも何ものなのか、詳しくは調査中なので追ってご報告します。

横軸は甘さではない

さて縦軸(塩)の話はこのくらいにしておいて、横軸の話に移りましょう。

横軸は炭水化物と表示されたものの値を示していますが、これらの飲料の場合ほぼ糖質と同義。炭水化物と糖質の違いがわからない方は過去記事をどうぞ

では右の方が糖が多いなら甘いはず・・・と思ったら大間違い!!

「PカリとAクエが同じくらいでDカラが薄いと思ってたのに、AとDが同じくらいなのか・・・」とコメントされた方、なかなか鋭い。この表から甘さ(甘味度)は分かりません。

というのも甘みにはブースターとも呼べる存在、甘味料があります。アセスルファムK、スクラロースなど人工のものからステビアなど天然由来のものまで様々。

さて、この図の中で甘味料を配合しているモノの色を変えてみました。

はい。ほとんどの製品で使っていますね。

甘味料を使うと栄養成分表示にはその値が出てこないので、どの程度入っているかわかりません。つまり甘さの比較はできないので、ぜひ購入してお好きな甘さのものを探してみてください。

ちなみに、甘味料を使わないとクソまずいことこの上なしです。試しに塩水を家で作ってみるとわかりますが、飲めたものではありません。

塩を美味しく摂るには甘酸っぱくする(つまり甘味と酸味を足す。おそらく全ての製品に酸味料が含まれる)か、旨味と合わせる(味噌汁や出汁)かのいずれかが必要になるはずです。

熱中症対策に糖は必要か?

味の観点で、飲み続けるために甘味が必要なのはわかったものの、糖質は本当に必要なのでしょうか?

これについては、シーンによって(運動中、平時など)も対象者によっても異なるため、はっきり言って断言することは難しいです。

これもまた別の機会に詳しく話します。

なお、食品表示基準ではゼロカロリーや低カロリーと記載ができるので、塩の範囲との交差点を狙っている製品も多いですね。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_180615_0003.pdf

アイソトニックとハイポトニック

水分補給系飲料でお馴染みのアイソトニックとハイポトニックという言葉の解説です。

アイソトニック(等浸透圧)とハイポトニック(低浸透圧)は端的にいえば濃さの話で、アイソトニックは体液と同じ程度の濃さ(260mOsm/L程度)、ハイポトニックはそれより薄い(220mOsm/L程度)もの。

この数値に明確な基準は調べた限り無いので、大体なんですかね(詳しい人教えてください)

実際は溶けている物質の数によって決まるのですが、塩の量は大体どの製品も同じで溶液中の成分の大部分を糖質が占めている現状から、この図の横軸≒浸透圧と表記しました。

なので、厳密に言えばこの矢印は右上がりに書くのが正確。

これらがなぜ分類されているかというと、水分補給(体に取り込まれるの)をいかに早くするかという指標になっている、、のですが詳細はまた後日。

結局どれを選べばいいのか?

この図に入っているものなら熱中症対策にはなりうるし、ほぼ全ての水分補給系飲料は食塩がこのくらい入っているので、乱暴に言えばどれだっていいです(怒られそう)

とはいえ色々と差別化しているポイントはあったので、図では表せてないことも含めて最後にまとめてみます。

糖質が気になる人は左側を

飲料での糖質摂取は血糖値を急激に上げることが多いので、気になる方は栄養成分表を確認してできるだけ左寄りを選ぶべし。「低カロリー」や「カロリーゼロ」なども目印

特に糖尿病の方や境界型の方は一気に飲んでしまうとペットボトル症候群の恐れもあるので特に注意です。

スポーツの際には糖質有りの選択肢も

これはまた後日詳しく書きますが、日本スポーツ協会では4−8%の糖質を含むものをエネルギー補給の観点で勧めているようです

ただし、糖質が必須というわけでもない(飲料以外の手段もある)し、運動パフォーマンスを高めるのに糖があると良いこともあるかもしれませんが、糖は必須!というほど気にすることもないかなというのが個人的な印象(運動強度にもよるしね)。

甘味料が入っているか

糖質以外の甘味料(アセスルファムKなど)はごく微量ですし安全面ではなんら問題はありませんが、一方であの味が苦手という人は結構いるはず。

なので、甘味料の有無で決めるのも一つの選択肢です。そうなると糖質が最低でも4%にはなっちゃいますが、正直これ以上薄いと不味くて製品化が難しいんでしょうね。。

なお、甘味料が嫌いとおっしゃる方も、もしかしたらアセスルファムKが苦手でもスクラロースは大丈夫とか、種類によって許容レベルが違う可能性は大いにあります

カロリーゼロのものはいろんな甘味料を使っているものばかりですが、糖度2-4%程度の製品なら甘味料の量も種類も少ないので、試してみる価値あり。香味特性は甘味料の種類によってかなり違います。ぜひこの機会にお試しあれ。

なお、香りはほとんどが柑橘(グレフルが多い)系で、たまにりんごもあるといった感じ。香りと味の好みを探すのも面白いよ。

他の機能性成分が入っているか

糖、塩、酸以外にも原材料見るとなんやかんや入ってますよね。

ロイシンなどの筋肉の生合成を促すと言われるアミノ酸が入っていたり、脂質代謝を高めると言われる成分が入っていたり。それらにどこまでエビデンスがあるのかも要検討ですが、「どうせ水と塩を体に入れるならこれも一緒に」というレベル感でいいので、興味があればチェックしてみよう。

脱水状態なら経口補水液

ここまではライトな感じでしたが、脱水が疑われるレベルの時(詳しくは後日)は特定用途食品にもなっている経口補水液を迷わず選びましょう

ご参考までに許可品目一覧も貼り付けておきます(経口補水液以外もあるけど)。

こうやって眺めると、熱中症以外にも下痢や発熱時、高齢者や乳児などいろんなところで大活躍!

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/assets/food_labeling_cms206_201218_03.pdf

手に入れやすいという価値

さて、熱中症は誰にでも起きうると同時に周囲が助けることも併せて大事なので、シーン別にたくさんのガイドラインがあることは前述した通り。

つまり、ここまで5000字くらい御託を並べてきましたが、私が最も重要だと思っているのは「グタグタ考えたり調べる暇があったら、どれでもいいから一番近くのコンビニか自販機で買え」ってこと。

大丈夫、多分それの食塩濃度はいい感じです(雑)

確かにスポドリの糖質が気になるのもわかりますが、手に入りやすさや飲みやすさ(=好んで飲み続けられる)を考えるとどう考えても経口補水液よりスポドリに軍配が上がります。

もちろん一気に大量に飲みすぎるのは避けるべきですが、それは別にスポドリに限った話もでもないので、うまく付き合っていければいいかなと思っております。

というわけで、一枚の図解を長々と解説しましたが、「詳細は後日」をたくさん作ったように、さらに分岐した話がまだまだあります。

熱中症シリーズはまだまだ続くはずなので、次回作にご期待ください!


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