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ビタミンCサプリは肌に良いのか?

最近TLでビタミンCサプリと肌の話がたくさん流れてきていたので、私の思うところをまとめてみたいと思います。

ビタミンCサプリは肌に良いのか?

答えは・・・YesともNoともいえない。

はっきりしろと言いたくなる気持ちはわかるけど、だいたいの事象はこんなもんです。

では、「ビタミンCを摂取すると肌にいいよ!」と主張する人のどこに問題があるのか、逆に「ビタミンCは無意味だ」という主張にもどこに問題があるか

前者の人がハマる「罠」と後者の主張に対する「疑問」を順番に、その両面を解説しつつ、結局どうしたらいいのかも書いてみたので、是非最後までご覧ください。


ビタミンCとは何か?

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ビタミンC(アルコルビン酸)は、このような構造を持つ酸。酸というだけあってなかなかに酸っぱい化合物です。食品添加物(強化剤、酸化防止剤など)にも登録されています。

機能としては、抗酸化作用があったり皮膚や細胞のコラーゲン合成に必須だったり、非常に重要な成分。体に必須だからビタミンという名を与えられているわけです。

第1の罠:栄養機能食品としてのビタミンC

このビタミンCが不足するとコラーゲンが不足して壊血病になり、疲労倦怠、歯茎からの出血などの症状が出ます。

抗酸化作用に関しては、生体内でビタミンEと協力して、活性酸素を除去して細胞を保護するとも言われていますね。

このように皮膚や細胞に取ってビタミンCが足りなくなると悪影響があるので、健康増進法に基づき、栄養機能食品としてビタミンCを35−1000 mg含むと以下のような表示をすることが可能になります。

「ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です。」

栄養機能食品って何?というかたは僕が以前書いたこちらの記事をどうぞ。

これの一文は事実であることはこれまでの解説からわかるはず。欠乏するとヤバいし、皮膚の健康を守るのは間違いない。

さて、ここで誤解してはいけないのが、「皮膚や粘膜の健康維持」とはあるけど「ビタミンCを取ったら美肌になれる」なんて一言も書いていないこと。

これが一つ目の罠。

ビタミンCが足りないと皮膚にとって良くないことと、摂れば摂るほど美肌になれることは似て非なるものと認識すべきです。

第2の罠:単一成分か複合成分か

え、でもビタミンCってサプリはともかく医薬品だってあるじゃん!

以前薬局に行ってビタミンCを含む医薬品(ハイチオールC、シナール、その他たくさん)を調べたことがあるのですが、おおくのものは何かしら複合的に配合されていました。

医薬品の場合漠然と「肌に良い」ではなく、何に良いかちゃんと書いてあるので、いくらか事例をあげてみます。

シナールEx
成分:ビタミンC、ビタミンB2、ビタミンE
効果効能
1. 次の場合の補給:肉体疲労時、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時、老年期
2. 次の諸症状の緩和:しみ、そばかす、日やけ・かぶれによる色素沈着
3. 次の場合の出血予防:歯ぐきからの出血、鼻出血
(※シナールには何種類かあります)

ハイチオールC
成分:Lーシステイン、ビタミンC、パントテン酸カルシウム
効果効能:しみ・そばかす・日やけなどの色素沈着症 、全身倦怠、二日酔、にきび、湿疹、じんましん、かぶれ、くすりまけ

両方に共通しているのが
・ビタミンC単独ではなく、複合成分であること
・効果効能として、しみそばかすや色素沈着
・効果を感じられないなら漫然と使わず医師に相談すること

の記載がありますね。

つまり、ビタミンC単独ではなくそれを補助するようなものも同時に配合されているようです。

追記1:普通にビタミンC単独で第三類医薬品になっているものありました・・・!これは完全に私の調査不足です。訂正します。後述の「疑問2」パートでビタミンC単独で効くとは言われていると記載しているので、そこの立証になった形かと思います。失礼いたしました。

第3の罠:外用と内服

これはコメントをいただいて気づきましたが、確かにビタミンCを用いた美容液があり、シミそばかすに対する効果が知られているそうです(あまり詳しくないので間違ってるかも)

外から塗って効果があるのと中から効果を出すのは同じとはいえない(違うともいえない)ので、その罠にハマった事例も確かにあるかもしれない。

第4の罠:臨床と非臨床

(このパートは私の記憶の中の話なので、話半分で)

美容関連の機能性データを結構たくさん過去に見たことがありますが、in vitroやin vivo (今はもう見ない)のデータが参考として載せられています。

セラミド、コラーゲン、カロテノイド・・・いろいろありますが、その中でとても多くの試験で陽性対照(こいつは効くぜという物質)としてビタミンCが用いられています。

それだけビタミンCは古典的に用いられたり、試験系が成り立っているかを確認できるレベルで、いつもちゃんと活性が出るものとおそらくこの世界では認識されています。

なので、細胞や動物レベルではポテンシャルがあるのでしょう。そう、細胞や動物レベルなら。

でもね、ヒトで効くかはまた全く別なんです。

細胞などのデータを見てビタミンCやるじゃん!という罠に陥ったパターンもおそらくあると思います。

疑問1:結局効果があるのかないのか

ということで、きちんと情報があるものという観点では、
✔︎効果効能を見て、医薬品がとりあえず安心
✔︎効かない場合は一旦中止して医師に相談しよう

というのが一旦の答えでしょうか。

サプリメントの中には、上記に倣って複数成分を混ぜているものもあるみたいです。その場合、ビタミンE、ビタミンB2などが配合されているようです(上記の医薬品と同じですね)が、効果効能の言及には至っていません。食品なので。

それが効くか効かないかは私にはなんともわかりません。。

疑問2:ビタミンC単独では効かないのか

しかし、第四の罠を見た時に思った方もいるでしょう。そんだけポテンシャルがあるのならヒトでも効くんじゃないの?

現に、シナールのインタビューフォームを見ると以下の記述がありました。

アスコルビン酸投与時に少量のパントテン酸カルシウムを併用することにより,血中及び副腎中濃度が単独に比べて 増大することが明らかにされた。また,皮膚機能に関する薬理試験において,少量のパントテン酸カルシウムを併用することにより,皮膚機能に及ぼす効果が単独に比べて有意に増強され ることが明らかにされた

つまり、ビタミンC単独でも効果があるけど、ぞれが増強されるよという記述。おそらく遠い昔に単独で何かしら試験はされたものと考えられます。(なお、ビタミンC+パントテン酸カルシウムのデータも1960年代の模様)

ですので、ビタミンC単独で効果がないというのは言い過ぎでしょう。ただ、複数成分が含まれ、かつ薬理的に増強されている上記のような場合と比べると弱いというのが実情ではないでしょうか。

追記2:追記1で書いた通り、単独の医薬品が(第3類も医療用医薬品も)あるので単独でも有効というのは間違いなさそうですね。

疑問3:他の美容成分と比べてどうなの?

「ビタミンCより◯◯の方がいいよ」という比較によるビタミンCディスを見かけますが、それを言い切れるデータが他の素材にもあるとは思えません。(◯◯に実名を入れたいけど、語弊があるので伏せ字で)

ビタミンCより優れていることは横並びで比較してデータを取らないと断定できないし、ビタミンCより良いことを示すためのヒト試験がない限り、比べてどうか断定は不可能。

比較するなら第四の罠に書いた通り、やっても細胞レベルなどでしょう。そして、前述の通りビタミンCは指標によっては陽性対象に使われるほどのポテンシャルの持ち主なので、そこでもビタミンC以上のものはそこまで多くないはず。

ただ、肌に良いと一言で言っても、保湿、シミそばかす、美白など目的によっても全然違うので、結局一概に言えないというのが答え。

試してみて自分に合えば続けたらいいし、効果がなければやめるというが大切。

疑問4:なぜビタミンC単独のデータが少ないか?

機能性表示食品のうち美容の成分もたくさん出ていますが、ビタミンCはありません。

それはなぜでしょう?効かないから?違います。

実は、ビタミンやミネラルは機能性表示食品の対象から外されている(=使えない)のです。

なので、今後も制度が変わらない限り出てくることはありません。栄養機能食品があるからというのが理由のようです。

また、今更ビタミンC単独で効果を見る研究なんてやったところで、それを押して訴求できるわけでもないですし、結局企業にとってデータを取るメリットがないことも原因だと思われます(私の感想です)

なので、ビタミンCがどの程度ヒトでポテンシャルがあるのか、データがこれから出てくることも少ないでしょう。

あるとすれば、ヒト試験で陽性対照として設定するような奇特な研究者が出てきたときと、疫学的に確かめられた時くらいではないかと思われます。

疑問5:ビタミンC豊富な食品を摂っても無駄なのか

ビタミンCを多く含む食材としてパプリカ、ブロッコリー、アセロラ、キウイ、いちご・・・いろいろあります。

ここまでビタミンCの話をしてきましたが、美容のためにこれらを摂ってもあまり意味がないか?

と言われるとそう断言もできません。

これらは食物繊維など他にも重要な栄養素を含む場合が多く、それらを統合して体内に取り込まれていくわけで、特定栄養素で語るのはなかなかに困難です。

しかも完全にイメージですが、ビタミンCの多い食材は野菜や果物など、トータルで健康に寄与しそうなものも多いので、これら食材を摂ることは結果的に体に良いことも多いでしょう。

最後に

事実と感想がまじって見にくいかもしれませんが、一意見としてご覧ください。

「罠」パートでは、ビタミンCが本当に肌に良いのか誤解させる要因を整理し、「疑問」パートでは、逆張りでビタミンCに効果がないという説について整理してみました。

結論はこれ系の話でお決まりのパターンなんですが、ビタミンCなど特定成分の機能性に頼るより、食生活などを見直して栄養全般に目を向けた方が大変だけど近道かもしれませんね。

そう、食事のバランスという(一番確かだけどわかるようなわからん)やつです。

【出典】

食事摂取基準
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

栄養機能食品
https://www.mhlw.go.jp/topics/2002/03/tp0313-2c.html

シナールのサイト
https://www.shionogi-hc.co.jp/wellness/medicine/cnlext.html

シナールのインタビューフォーム
https://www.info.pmda.go.jp/go/interview/2/343018_3179115D1096_2_011_1F.pdf

ハイチオールCのサイト
https://www.ssp.co.jp/uploads/product/all/hc/package_inser_hc0822t.pdf

消費者庁、機能性表示のサイト
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/kinousei_kentoukai_161125_0002.pdf

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