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お茶の科学 〜カフェインの旅〜

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カフェインはどこから来たのか カフェインは何者か カフェインはどこへ行くのか(ゴーギャン)

今回はお茶と科学の第三弾。冒頭に見覚えがあるけど忘れた人はこれを読もう。

カテキンと同じくらいかそれ以上有名な成分でもあるカフェイン。

避けられたり過剰摂取されたり。人類史に大きな影響を与えているというと言い過ぎかもしれないけど、誰しもがカフェインとのお付き合いを考えたことがあるでしょう。

そんなカフェインを今回は生化学的な観点でまとめてみました。

お茶のカフェインのことをソフトに知りたい人も、科学的にハードに知りたい人も、ぜひ最後までご覧ください!

そもそもカフェインとは何ぞや

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カフェインは化合物名です。アルカロイドの一種ですが、アルカロイドの定義が広すぎるので、特徴としてはプリン環を持ったキサンチンと類似。この構造的な特徴からさまざまな薬理作用を持っており、覚醒作用が特に有名ですね。

薬理作用や神経への影響などは、「薬理学」パートのところなどでお話ししていきます。

コーヒー(coffee)から単離されたのでカフェイン(caffeine)と名付けられたそうですが、後々お茶やカカオなどからも見つかったので、その時にみんな戸惑ったに違いなかろう。

このコラムはお茶がメインですが、化合物レベルの話になれば別に由来がコーヒーだろうがマテだろうが関係ないので、途中からお茶は無関係にカフェインの話として捉えてください。

カフェインの作り方

カフェインを作ることのできる植物は限られていて、以前話したようなチャノキ(camellia sinensis 、ツバキ科)のほか、コーヒーノキ(Coffea arabica、アカネ科)などピンポイント。

生化学的に表すとこう

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うまく説明できる自信がないので、この図を持ってきたサイトの言葉をそのまま引用

カフェイン生合成経路を図に示す。カフェインはプリン環をもつキサントシンから3回のメチル化を経て合成される。プリン環がメチル化される順番は決まっていて、N-7位、N-3位、N-1位の順である。当研究室では、N-3位とN-1位をメチル化するカフェインシンターゼとその遺伝子をチャノキから世界で初めて単離した。カフェインシンターゼ遺伝子の構造から、カフェイン合成能は、チャノキやコーヒーノキなどのプリンアルカロイド含有植物において、独立に獲得されたことがわかった。https://www-p.sci.ocha.ac.jp/bio-kato-lab/research.html

カフェインの生合成に関わる「カフェインシンターゼ」を有していることがこれら植物の特徴のようですが、ただし一つ上の「テオブロミン」を含む植物も限られています。

このテオブロミンもカフェインと似たような作用(覚醒作用など)を有しているので、カフェインを含む植物はカフェインシンターゼ以外にも何か特徴的なもの(キサントシンが多いとか、プリン環をメチル化する酵素発現が多いなど)があるんでしょうね。

その辺がはっきりしてくれば、遺伝子改変でカフェインを作れる他の植物もできたりして。

逆に、これらの酵素発現を抑制するような遺伝子導入をすればカフェインを合成しない(つまりデカフェの)お茶やコーヒーの栽培ができる訳で、そういう取り組みも昔はあったようです。

お茶の加工とカフェイン量

カフェインを含むか否かはチャノキ由来がどうかという話を以前しました

では、同じチャノキ由来で加工が違うと増えたり減ったりするのでしょうか?こんなサイトを見つけました。

茶とカフェイン量

http://www.ocha.tv/components_and_health/benefits_greentea/caffeine/

これをみて、何が分かるかというと、実は違いはよくわかりません。ほうじ茶はお茶を高温で焙じるからカフェインが昇華されて少ないという話もあるみたいですが、これを見る限り抽出条件でいくらでも変わりそうなので、あまり差がないと言っても過言ではないでしょう。

玉露だけは多いですね。若い芽を摘むからという情報もあるようです。ただ、玉露を500mlごくごく飲むことはまずないので、結局量としては他とあまり変わらない気がします。

ちなみに、玉露入り緑茶というペットボトルの製品は玉露を含むだけで、カフェイン濃度は薄まっています。

ペットボトルのお茶であれば工場で厳密に品質管理されていて、カフェイン量もブレることはほとんどないはずなので、気になる人は製品ごとに検索してみましょう。

カフェインの表示義務はありませんが、各社公開しているところは多いです。

カフェインの血中濃度

いよいよ人との接触。体に入るとどうなるのでしょう?

カテキンは小腸で吸収された後、肝臓を経て血中に入り、約30分程度でピークを迎えます。グルコースなどと同様比較的速やかかな。半減期は3ー4時間程度と言われています。

参考までにカフェインを含む医薬品から

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https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1180109F1034_2_15/#180

そこから脳に行くまでにどれだけかかるかわかりませんが、割と早い段階で(良くも悪くも)効き目を感じると考えられます。

カフェインの代謝

さて、吸収されたカフェインは血中から少なくなっていくわけですが、カフェインは脱メチル化されてパラキサンチンという物質に代謝されます

パラキサンチン

この他テオフィリンなどにも代謝されるのですが、これらの物質はパラキサンチンも含めてカフェインほどではないものの同様の作用があるので、カフェインがなくなっても覚醒作用は持続します。寝る前は気を付けよう。

ちなみにこのコレスポンディングオーサーは「オクスフォード式最高の睡眠」でおなじみの西野先生

パラキサンチンは植物体には存在しないと言われているので、これの機能性食品はそうそう出てこないと思われます。

こうしてカフェインは代謝され、尿とともに排泄されていきます。カフェインには利尿作用もあるので、カフェイン目線でいう「人の中にずっといるのが嫌だ!はよ出せ!尿意およおせ!」といったところでしょうか

カフェインの旅

ということでまとめると、カフェインは特定の植物の中で生合成されるものの、加工や抽出の過程で大きく変化することもなく、摂取後も体の中でもさほど大きく変わることなく外に出て行く。

カテキンが日光で変換されたり、発酵で重合化されたり、体内で抱合化されるのと比べると、比較的安定した一生かもしれませんね。

カフェインについては、薬理作用から類縁体までまだまだ語れることがたくさんあるので、このお茶の科学の中でもたくさんフォーカスしていきます!


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