〈〇〇フリー深堀シリーズ4〉そもそもアルコールフリーって何だろう?

1 アルコールフリーとは

アルコールフリーは文字通りアルコールを使用していない、含まれていない食品(主に飲料)のことです。日本においては「アルコールフリー」よりも「ノンアルコール」という言葉の方が浸透しています。酒税法第2条でアルコール飲料を「アルコール分一度以上の飲料」と定義しており、「ノンアルコール」は「アルコールの含まれる量が1%未満の飲料」といえます。ただし、近年は飲酒運転の厳罰化も相まって、アルコール分0.00%の飲料も登場しています。また、「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」(※1)によると「ノンアルコール飲料とは、アルコール度数 0.00%で、味わいが酒類に類似しており、満20 歳以上の成人の飲用を想定・推奨しているものとする。」と定義されており、ノンアルコールがアルコールフリーと同義的な意味合いになりつつあります。

(※1)「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12205250-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kokoronokenkoushienshitsu/s_1_18.pdf
(閲覧日:2024年1月15日)

2 アルコールフリーが広まった背景

アルコールフリーというとノンアルコールビールを想像する人が多いと思います。世界で初めてアルコール分0.00%の完全なアルコールフリーのビールテイスト飲料を開発したのは日本のキリン株式会社です。(※2)そして現在では、ビールだけではなくワインやチューハイなどでもアルコールフリーの商品が続々と登場しています。また、近年では「モクテル」と呼ばれるイギリス発祥のノンアルコールカクテルも人気を集めています。モクテルはお酒を一切使わず、果実やお茶をベースにしたシロップ、旬の果実やミント、トニックウォーターやソーダなどカクテルと同じ手法で作られるドリンクです。

(※2)「キリン流CSV経営学 6ノンアルコール飲料のパイオニアとしてアルコールに関する社会課題を解決」(日経ビジネス電子版 閲覧日:2024年1月15日)参照
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/ONB/23/kirinholdings0921/

3 アルコールフリーのメリット・デメリット

(メリット)

①    お酒に代わる新たな選択肢
宗教や体質、病気など様々な理由によりアルコールが摂取できない人、アルコール摂取を控えている人たちの選択肢の幅が広がります。選択肢が増えることで「お酒が飲めなくても、お酒を飲む気分を味わえる」「お酒が飲めなくても、お酒を飲む場に参加しやすい」などお酒が飲めないことを理由に疎遠になっていた機会に参加することができます。また、運転を控えている、休肝日などアルコールを飲めるけど飲めない、あるいは飲まない際にもお酒を飲んだ気分になれ、満足度が上がります。

②    アルコール摂取に伴う健康リスクを下げる
アルコールフリー飲料によってアルコールの摂取量が大きく減ること(※3)により、脂肪肝や肝機能障害、糖尿病、高血圧、ガンといったアルコールに起因する生活習慣病等のリスクを抑えることにつながります。また、アルコールの大量摂取による急性アルコール中毒やアルコール依存症の危険性を下げます。アルコール0.00%のものであれば、妊娠期や運転を控えている場合においても、安心して飲むことができます。また、アルコールフリー飲料の中には特定保健用食品や機能性表示食品になっているものも多く、より健康を意識して選択することもできます。

(※3) ノンアルコール飲料の提供で飲酒量が減少することを世界で初めて実証
(筑波大学 2023年10月5日掲載)(閲覧日:)
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20231005140000.html

(デメリット)

①    アルコールフリー、ノンアルコールの定義の違い
日本の中でもノンアルコール、アルコールフリーと記載されていても全く含まれていないのか、1%未満でも入っているのかは商品によって様々です。特にアルコール禁忌の場合には表示だけではなく、成分表を確認し、実際に0.00%か否かを確認する必要があります。また、日本と海外でも表記の意味合いに差異があるため、国内の商品と同じく成分表の確認をする必要があります。

(海外の基準例)

(イギリス)英国保健省 Low-alcohol descriptors: guidance(2018年12月13日)
https://www.gov.uk/government/publications/low-alcohol-descriptors
(アメリカ)FDA CPG Sec 510.400 Dealcoholized Wine and Malt Beverages – Labeling
      (2005年11月改訂)
https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/cpg-sec-510400-dealcoholized-wine-and-malt-beverages-labeling

②    アルコールフリー飲料の価格帯
アルコールフリー飲料はアルコールではなく、あくまで清涼飲料水にカテゴライズされています。しかし、それにも関わらずアルコールと同等の価格設定がされています。健康食品としての付加価値がついていることも要因の1つではありますが、価格帯が高い食品といえます。

4 日本での広がり

若者を中心に「酒は飲めるけれど、あえて飲まない」という生活スタイルがじわりと広まっています。 「ソバーキュリアス」とも呼ばれ、Sober(しらふ)とCurious(好奇心が強い)という英単語を組み合わせた造語です。このような若者のアルコール離れの他に新型コロナウイルスの流行に相まって消費者の健康志向への高まりがアルコールフリー食品やノンアルコール食品の市場拡大につながっています。(※4)近年では、飲食店でもノンアルコールビール以外のアルコールフリードリンクが愉しめるようになったり、ノンアルコール専門のお店ができたりと人々の生活の中に定着してきているといえます。

(※4)「酔わなくてもゴクゴク幸せ ノンアル飲料市場グイグイ拡大」(産経新聞2023年12月20日掲載)(閲覧日:2024年1月15日)
https://www.sankei.com/article/20231220-JOL7ICNBPVOYXKSROVGJDVO6FE/


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