「ニューノーマルのコーポレートテック部門における評価制度・組織の在り方とは?」コーポレートテック会議 2021 winter 【イベントレポート後編 】
働き方が激変する今「企業の土台を支えるコーポレート部門の改革なくして明るい未来はない」
そんな思いから2021年2月、4日間にわたって開催されたオンラインイベント「コーポレートテック会議2021winter」。
SaaSベンダー企業を迎え、さまざまな視点でコーポレート部門の“これから”を考える時間となりました。
その様子を、前後編でレポートしていきます。
今回の後編では、コーポレート部門の「人事評価」や「バーチャルオフィス」「チームビルディング」など、組織の在り方にフォーカスを当てた以下2回のトークセッションの様子をお伝えします!
「人事総務・コーポレートから変える会社の未来」
「環境変化に強い組織とバーチャルオフィスの作り方」
バックオフィスに対する評価制度の最適解とは?
リモートワーク移行にともなって、これまでの評価制度を見直そうという企業の動きが強まっています。
従業員一人ひとりの業務プロセスが見えにくくなったリモートワーク下で注目されているのが、成果につながる具体的な行動特性を評価する「コンピテンシー評価」。
抽象的な業務スキルや、「売上」といった数値を評価する従来の評価制度とは異なる考え方です。
2日目のトークセッションに参加した3社は、もれなくコンピテンシー評価を採用しているようです。
コンピテンシー評価の意義を捉える、株式会社うるる 執行役員 fondesk事業部管掌の脇村瞬太氏(写真左上)
脇村氏
「我々はコンピテンシー評価をもとに『問題解決力』『コミュニケーション力』『会社のカルチャーに準拠したバリューを発揮する力』という3つの軸でメンバーを評価しています。『業務知識』という評価項目も一部ありますが、メンバー間の比較ではなく“個人の能力が発揮できているか”という観点で見ていて、比重はあまり大きくありません。抽象度の高いレイヤーで、我々が求める人材であるかどうかを評価しています」
成長中の企業ならではの評価設計について語る、株式会社ラフール 執行役員 事業開発室長の大塚友広氏(写真右上)
大塚氏
「弊社は今まさにIPOを目指している段階で、会社は目まぐるしいスピードで変化しています。そんな中、人事や総務といったコーポレート部門の負担が大きくなっているのが現状。私たちと同じような状況で苦労しているスタートアップは少なくないでしょう。成長段階の組織では、コーポレート部門にも柔軟な感覚が必要になります。セールスやマーケティングなど、フロントに立つ部門に近い感覚をもっている人がコーポレート業務を担うことで、会社全体のパフォーマンスが上がるのではないでしょうか。評価制度を設計するうえで、そうした視点も大切にしています」
現代の働きがいとは?エンゲージメントの高い組織に共通していること
従業員のエンゲージメントを高めるためには、各企業が自社にフィットした評価制度を採用することが重要。同時に人事視点では、働き手がどんなところにやりがいを感じるのか、時代による変化を捉えておくことも大切です。
自分の仕事と社会を結びつける考え方が強まっていると感じている、株式会社OKAN 取締役COOの佐々木勇介氏(写真右下)
佐々木氏
「以前は『どんな職種・業種で、自分がどんなパフォーマンスを発揮できるのか』と、“個”を中心に考え、仕事にやりがいを見出す考えが一般的だったと思います。しかし最近では、職種や業種にこだわらず、『自分が仕事を通して社会にどんなインパクトを与えたいか』といった広い視点で考える人が増えているように思いますね。同時に『誰と、どんなふうに働くか』、環境面における心理的安全性への関心も高まっているのではないでしょうか」
一方、大塚氏は別角度から働きがいの変化を感じていました。
大塚氏
「さまざまな企業の組織診断を行なってきた経験のなかで、昨今の『エンゲージメントの高い組織』に共通していることは『自社のビジョンのコンセプトがしっかり尖っている』ということと、そのコンセプトに沿った人材採用ができているということだと思います。今までは、企業がビジョンをもち、それを浸透させることで組織がつくられていくという概念がありました。しかし最近では、働き手の関心は企業のビジョンよりも、サービスそのものに移っているように思いますね。今後はますます“プロダクトファースト”が加速していくのではないでしょうか。」
脇村氏
「お二人が言うように、仕事に対する考え方ってどんどん変わってきていると、僕も思います。今はユーチューバーで暮らしている人がいたり、国によってはベーシックインカムがもらえたりする時代。そうなったときに“働くこと”が人生のなかで占める割合って下がってきているのではないかなと思うんです。「食べるために働く」その必要性が薄くなって、自己実現や成長の手段として、または社会貢献や、自分の名前を残す手段としてなど、働く目的が多様化しているわけです。こうした現代における組織づくりで重要になるのが『価値観を揃える』ということ。弊社では全員が同じ価値観のもと共通の目標に向えるよう、コミュニケーションの時間を意識的に増やし、徹底的に話す時間を設けています」
環境変化に強い組織とバーチャルオフィスの作り方
トークセッション最終日のテーマは「環境変化に強い組織とバーチャルオフィスの作り方」。
リモートワークにより企業は「紙文化」や「電話」といったオフラインのやりとりから脱却し、バーチャルオフィスの環境を整備することが急務となっています。それと同時にお客様対応のデジタル化も喫緊の課題です。
自社のソリューションの価値を体現すべく「全社で完全リモートワーク化を実現している」と語る、株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員 セールスデベロップメント本部 本部長の鈴木淳一氏(写真左下)
鈴木氏
「我々は2020年の3月からテレワークを本格的にスタートし、今日の時点でもオフィスには一人も出社していないという状況を実現しています。それでも営業の生産性は落ちるどころか20%向上し、無駄な時間やコストもなくなってシェイプアップされました。バーチャルオフィスの環境を整えるときに重要になるのが、『お客様を中心に捉えて業務設計を行う』ということ。適切なSaaSを導入することで、フロントもバックエンドも関係なく、全部門の業務の繋がりが可視化されます。そして、自分の仕事がお客様のサクセスにどのように貢献できたかというところまで把握できるようなり、従業員のエンゲージメントも向上します」
顧客接点がデジタル化されたことにより「今までは訪問したついでに聞けていた担当者の声が拾えなくなる」といった弊害もありますが、そうした問題もツールを導入することで解決できます。
WEBアンケート作成システム「クリエイティブサーベイ」を提供する、クリエイティブサーベイ株式会社 取締役の菊地孝行氏(写真右下)
菊池氏
「当社のアンケートシステムは企業が従業員満足度を調査するときや、採用面接の後で応募者に対して面接官のアンケートを取るときなど、さまざまな用途でご利用いただいています。珍しい例として、株主総会の後で株主に対して「先ほどの起案はどうでしたか?」といったアンケートを実施するケースもあります。こうしたアンケート調査は紙で行うと膨大な時間とコストがかかってしまうため、あまり頻繁にはできません。かといって年に1回、50問のアンケートを実施しても、回答の鮮度が落ちてしまいますし、回答者の負担も大きくなってしまいます。オンラインアンケートを採用することで、パルスサーベイとして活用でき、定期的に2〜3問のアンケートを実施し、鮮度の高いお客様の声を集めることが可能です」
営業やマーケティングをはじめとするフロント業務に比べ、バーチャルオフィス化が一歩遅れているのがコーポレート部門。
バックオフィス業務のデジタル化では「ノンコア業務をいかに自動化していくか」という点が重要になります。
脇村氏
「電話代行サービス『fondesk』のお客様から聞いて分かってきたことですが、従来のオフィス業務において、電話をとることは“当たり前にやること”という感覚が根付いていました。データ化するという発想がそもそもなかったと思います。しかし、fondeskをお客様に導入いただくなかで、会社にかかってくる電話の大半が営業電話であることがわかってきました。特にITベンチャーなど、伸びている会社の場合は8割から9割が営業電話というケースもあります。さらにそのうち8割は自社にとって全く不要な電話。それを取り次ぐ時間は、会社にとって無駄になっているということです。このように、従来見えていなかった業務が可視化されるようになった点が、デジタル化による重要な価値だと思います。従業員数が100名を超える企業さまの事例として、fondeskを導入してからオフィスにあった固定電話を2台だけ残して全てなくしたケースもありました。業務量が可視化されるとともにコストも浮き、コーポレート部門のバーチャルオフィス化が進んだと聞いています」
バーチャルオフィスの「組織づくり」と「環境づくり」は、生産性を大きく左右する重要なファクター。
最後に、第4回目のセッションに登壇した御二方の言葉をご紹介します。
菊池氏
「快適なバーチャルオフィスの環境を整えることで、フロントとバックオフィスの壁はなくなります。全員が等距離で、フラットに付き合えるような構造になっていくのではないでしょうか。立場に関わらず、従業員一人ひとりが事業に対して貢献する素晴らしいチームビルディングができると思います。変化をポジティブに捉えて、我々も企業さまの組織づくりをお手伝いしていきたいです」
鈴木氏
「この1年間でビジネスのデジタルシフトはドラマティックに進みました。これが元の状態に戻ることはないでしょう。私たちはコロナをきっかけに『本気で生産性を上げなければいけない』というところに直面できたのだと思います。ぜひいろいろなサービスを使いこなし、全員がお客様を向いて仕事ができる状態を実現していただきたいです。フロントとバックオフィスが垣根を超えて顧客満足のために尽力する、このマインドが、今後日本が成長するうえでキーポイントになるのではないでしょうか」
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4日間で登壇いただいたみなさま、視聴いただいたみなさま、ありがとうございました!
これからもコーポレート部門から社内改革を進めていきましょう!
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(文章:下條信吾)