虚像の春

好きだけど今は付き合えないと言う男は存在するし、今日だけだから!と言って毎日マクドナルドを食べる女もいる。そんな矛盾だらけの時間の中で、私はいつも右往左往。自分では処理できないほどの孤独感に襲われて夜を待てず、夏を待てない春の夜を早足で駆け巡る。戻って戻って戻って、どれだけ戻っても追いついてはくれないし、進んで進んで進んで、どれだけ先に進んでも追い越してもくれない。結局私は1人でひたすら暮らしについて考えながら生活をするしかないのだ。やっぱり屈強とは程遠く、それでも貧弱とは疎遠で、いつしか境界線さえも見えなくなっていた。自我を見つめながら、隣の芝生はやっぱり青いな。とは声に出せずに、ひたすらに芝生を抜き続けるしかないのだ。私がそこで生活をするだけで暮らしになれば1番良いのだが、そんな楽をさせてくれないのが社会だった。君のことが好きだと言ったあなたは、やっぱり君の相手はできないと鍵を置く。結局春はなかったのかもしれない。冬は確かにそこにあったけど、春なんて元々存在しなかったのかもしれない。ああ、気付けば桜は葉桜となり、緑緑しさを増して私の隣で生い茂る。

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