傘持たずの水無月

土砂降りから始まる1日の音を想像して欲しい。出来るならば香りも想像して欲しい。もちろん雨音がBGMだ。




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「傘持ってきてないよ私!」
「俺んち、傘やってないんだよね」
「なら2人で走って車まで行こっか」
「いいよいいよ、濡れちゃうから、俺が車取ってくるから待っててよ。」
「え、やだ!2人で走った方が楽しいよ!」
「転けるなよ〜」
「よーい、どん!」

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朝9時を迎える前に2人で土砂降りを駆け抜けた。雨は枝豆くらいの大きさで服の上からもしっかり判を押してきた。6月を終える雨はぬるい空気の中細やかな冷気を纏って降りてきた。



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「辛い時はプラネタリウムに行くのがいいよ」
「ちっぽけに感じる?」
「そ、私なんてまだ21歳なのに、この地は138億年も生きてるんだって。全然勝てねえじゃん!て思うの」
「確かに、まだまだ俺らってぬるいね」
「そ、だから、辛くなったら私に連絡するかプラネタリウムに行くかにして」
「なら、お前を誘ってプラネタリウムに行くのがいいね」
「欲張りだねぇ、」

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その日のプラネタリウムは少し退屈で大きく眠かった。映像が動いているのだろうけど、座席がゆらゆらと動いている気がして、気持ちのいい酔いを感じた。俺の手の中に収まる君がとても愛おしくてこの時間が少しでも長く続いてほしいと願った。帰り道を引き延ばしたくて、コンビニでパピコを買った。パキッと二つに割って2人で土砂降りの中、パピコを食べた。湿度の高い夕方、頸を伝う汗がいつになく綺麗に見えた。七夕に何を願うかは聞けず、7月を迎えた。

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