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3DCGをフォトリアルに見せるには?〜写真撮影の知識 編

フォトリアルな3DCGを制作するための要素として、前回までに『モデリング』『テクスチャ』についてお話ししてきました。今回は3つ目の要素、『写真撮影の知識』についての解説です。

まず、モデリングでは素材の物性に基づく動きまでを踏まえたリアリティのある形状の作り込みをしました。次に、テクスチャでは、素材の構成や表面の質感を現実の物理法則に基づいて表すためのテクスチャマップのパラメータ調整を行いました。そして最後の仕上げに『写真撮影の知識』です。
せっかくリアルな3Dモデルを制作しても、レンダリングの場面で写真撮影の知識が無いことで最終出力のクオリティが下がってしまっては元も子もありません。作り上げた3Dデータをワンランク、ツーランクアップさせる写真撮影の知識は、是非とも身につけておきたいところです。

私たちは普段どうやってモノを見ているでしょうか。
私たちが対象物を見る時、そのモノには光が当たっています。光がない空間で、光が当たっていないモノは見ることができません。3DCGでもそれは同じです。
これは、照明の設定をしていない、明かりのついていないスタジオに似ています。
フォトグラファーは、そんな空間の中に、照明を配置し、どのように光を当て、どのような構図で、どのような画角で、どのようなカメラ設定で撮影したらその被写体が最も魅力的に見えるかを考え、撮影プランを練っていくのです。

写真撮影の知識には、カメラの設定に関するものと、照明の設定に関するものがありますが、カメラの設定に関しては、露出(f値)の設定と、レンズの焦点距離による画角(画面に映る広さ)の違いを覚えておくと良いでしょう。露出(f値)は値が小さいほど絞りが開いて明るくなり、被写界深度というピントが合う奥行きの幅が狭くなります。被写界深度が浅くなるとピントが合っているところ以外はボカシがかかったような状態になります。これは、写真に写っている主役に自然と視線を誘導する効果があります。撮影プランを組む場合、構図を決め、被写界深度を決めて、画面のイメージを作り込んでいくことが多いです。これらが決まれば自然と使用するレンズや適正なシャッタースピード、ISOなども決まってきます。

照明の設定、光の作り込みでは、被写体にどれくらいの量の光をどの方向から当てるかで印象が変わってきます。これも最初にどのような写真を撮りたいのかイメージを固め、それに応じて使用する照明機材、灯数を決めていきます。
キーライト、フィルライト、バックライトの3灯照明のセッティングなどは参考資料も多いので、基本設定として把握しておくのも良いでしょう。被写体に光を当てると、光が当たっている反対側は影になります。その影を強調するのか、弱めるのか、どこに影を落とすのか、写真を撮る、レンダリングするということは、光と影をデザインすることです。
照明の配置場所や灯数ももちろんなのですが、この時見落としがちなポイントが、配置する照明のサイズと被写体までの距離です。

3DCGの空間の場合、被写体の周りに光を反射するオブジェクトを配置しない限り、壁や天井からのバウンス(反射光/環境光)は帰ってこないので、直接光が当たっているところしか明るくなりません。したがって、被写体全体を照らそうと思ったら被写体を覆い隠す大きさの発光面を設置しなければなりません。その上で、影を弱めたい部分やハイライトを追加したい部分に補助光を入れたりしていきます。また、面発光の照明と被写体の距離は、近ければ近いほど影の輪郭はぼやけます。一見、被写体から照明を離した方が光は柔らかくなりそうなイメージですが、被写体と照明の距離を遠ざけると、光量は落ちますが影の輪郭は逆にはっきりしてきます。

ひとつひとつ照明を設置する以外にも、HDR画像を照明として利用するこれら全体の画像のデザインを設計し、場合によっては背景まで作り込み、グローバルイルミネーションという環境光の拡散反射まで計算してレンダリングの設定を行えるようになれば、みなさんの制作する3DCGは非常にクオリティの高いものになるでしょう。

文責:木内潤一


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