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知財業界での夢と希望

本noteはドクガクさんの弁理士の日記念ブログ企画2021への参加エントリです。

たぶんドクガクさん的には貴方の夢や希望を語ってくれ、ということだったのでしょうが、私自身は特に夢を持っているわけではなく、淡々と、でも楽しんで仕事をしているだけなので、題意把握ミスを敢えてして、特許事務所の仕事はたくさんあって、夢も希望もある業界だよーという話をしたいと思います。

この業界の未来を悲観している人を見ることがあるのですが、私は全くそうは思いません。

私がおいしい思いをしていない世代だから業界の凋落を知らないだけ、という悲しい事情があるかもしれませんが、それを悔しがっても仕方がないので前を向いていきましょう!

事務所弁理士、地方で開業の立場でのポジショントークも大いに含まれるかもしれませんが、そこはご容赦ください。

■見込み客・仕事は無限にある

(1)特許
ひたすら同じ物を作り続けている会社であっても、工夫・改善を一切行わない製造業は無いはずです。したがって、全ての製造業から発明が生まれています。

中小企業は381万社、そのうち製造業は66万社です。これにIT系企業等を考慮すると、特許出願する可能性がある企業は少なく見積もっても80万社程度はあるのではないでしょうか。

一方、中小企業による特許出願の件数は4万件弱(平成30年)なので、1社あたり0.05件/年です。要するに中小企業は全然特許出願していません。

ほら、大企業から仕事を依頼してもらわなくても、仕事はかなりありますね。

(2)商標
特許と異なり、商標は全ての業種が関係します。それだけでも裾野が広いのに、コロナ禍において「このままでは死を待つだけになってしまう」と考えた人・会社が、知恵を絞って新しいビジネスを始め、それをブランドにしようとして特許事務所の扉を叩くことが増えています。

このように、商標の仕事もたくさんあります。

■弁理士の絶対数が少ない

潜在的な仕事がこんなにあるのに、弁理士は全国で1.1万人しかいません。そのうち特許事務所経営・勤務の弁理士は8400人です。

パテントサロンの求人欄を見ても特許事務所がずっと求人を出していますね。

こんなにも特許事務所が人手不足だと、特許事務所からクライアントに請求できるフィーが上昇してもおかしくはないです。そう単純なものではないかもしれませんが、どこかのタイミングで変化が起きるのではないでしょうか。

また、私が事務所を構えている広島県に主たる事務所を置いている特許事務所経営・勤務の弁理士は33人(令和3年)です。

一方、広島県の弁護士は613人(令和3年)、税理士は1535人(平成30年)だそうです。
この状況下では弁護士さんや税理士さんが私以外の複数の弁理士と知り合いということはレアケースなので、彼らのクライアントをどんどん紹介してもらえる人数比となっています

■情報の非対称性はなかなか埋まらない

弁理士に限らず専門職は情報の非対称性で稼ぐ商売ですが、なかなかこの非対称性は埋まらないと考えています。

まずは、この非対称性が埋まる前段階として、上述のように知財についてほとんど手当てができていない中小企業各社の知財リテラシーが上がるという段階が存在するはずです。

この段階では「あれ?うちの会社、特許とか商標とか取ってないけど、それってヤバくね?」と多くの人が気付くので、特許事務所の仕事が増えます。

このようにこれからは特許事務所の仕事が増える方向に向かって、情報の非対称性が無くなるには相当に期間が必要と考えています。

■出願業務だけではない

出願業務を軽んじるわけでは決してありません。しかし、自分で弁理士/特許事務所の業務を狭く定義する必要も無いです。

特許事務所の弁理士の業務として、パッと思い付き、取り組むハードルがそんなに高くないものとして以下のようなものがあります。

(1)出願業務
これは外せませんね。従来型の業務であり、特許事務所の屋台骨となる業務です。

(2)契約書のレビュー
自社以外の会社と共同で何かやる場合には、共同開発契約書等が必要になってきます。

「特許法73条の例外ばかり書いているな」という共同開発契約書や共同出願契約書はよく見るので、73条を知らない会社さんを助けてあげましょう。
会社間のパワーバランスがあるので契約書の大幅な修正は難しいかもしれませんが、原則はこうなんだよ、と教えてあげるだけでも中小企業は「え?マジっすか」となります。

(3)特許情報の活用
世の中の人は「特許といえば発明を保護するもの!」というイメージを持った方が多いですが、特許法の法目的は保護利用の2本柱です。

他社の出願情報を自社のために利用していいんだよ、とクライアントに知ってもらい、活用するお手伝いをする業務は重要です。
開放特許の活用とか言っている場合じゃなく、部分部分ならパクってもいいことを伝えると、目をまん丸にして驚かれます。

特許情報を利用できるようになった会社が、利用するだけで終わるはずもなく、当然出願案件も増えます。

(4)顧問業務
上記(2)及び(3)を顧問業務の一環としてやるのも一案です。

顧問業務は特許事務所の業務において貴重なストックビジネスになりますし、顧問業務を行うことで自然と出願の掘り起こしになるので、特許事務所も顧客企業もみんなが幸せになります。

■まとめ

こう書いてみると、特許事務所業界が暗い要素は全く見つからないですね。

もちろん、濡れ手に粟の仕事では決してありません。でもそんな仕事なんかどこにも無いですよね。

特許事務所の潜在的な仕事はたくさんあるけど、仕事を発掘することが大変。でもその発掘を頑張れば、仕事はいくらでもあるわけです。

また、出願業務ではわかりやすい報酬体系がある一方、それ以外の業務ではマネタイズ・値付けが難しいという面は確かにあります。

このように、口を開けて待っていれば仕事が手に入る時代ではありませんし、マネタイズが難しい分野は敬遠してしまいがちですが、守備範囲が広く、提供できる価値も高い我々弁理士の未来はまだまだ明るいのではないでしょうか。



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