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地方弁理士の独立開業の一例として

地方の特許事務所って仕事はあるの?どうやって仕事を取っているの?という疑問に答えるため、私の事例を赤裸々に紹介します。
このnoteは知財実務オンライン登壇用にせっかく書いた下書きを成仏させるべく、それに加筆修正したものです。

■自己紹介・事務所紹介

2014年弁理士登録、2017年10月開業に独立したペーペー弁理士の松本文彦と申します。
広島市中区の原爆ドームの向かいに事務所を構え、私とパート事務員さんの2人でやっています。

■このnoteの目的

近年独立者の独立開業のリアルを知ってもらうことです。決して成功していない、現在進行形で苦しんでいる私の様子を見てください。
今から独立する人にとって、10年選手、20年選手の先輩方の話よりもリアルな話だと思います。

それに加え、地方にも特許事務所の仕事は十分にあることを知ってもらうことも1つの目的です。
私はむしろ地方でよかったと思っていて、競争相手が多い東京大阪の人達はマジでどうやって生き残っているんでしょうか?

特許事務所業界の現状は弁理士が足りていませんまた、この業界はゼロサムゲームではなく、仕事はたくさんある(作れる)ので、若い人にどんどん参入してほしいという思いも持っています。

特許事務所の仕事ってやり甲斐があるし、楽しいよ。さぁ、みんなも特許事務所の弁理士になろう!

■注意

(1)あくまでも独立開業の一例で、私の場合はこうだったというだけです。
地方弁理士の皆さん、「こんなの普通じゃねーよ」と石を投げないでください。
そして、私は開業弁理士として全然成功していません。藻掻いている最中です。先輩方、アドバイスをください。

(2)そもそも何故私がこのように赤裸々に話をする羽目になったのかわかりません。知財実務オンラインの主催者2人に唆され、肉を切らせて骨まで断たせた内容になっています。

(3)異なる立場の弁理士をディスる意図は全くありません。大事務所には大事務所の役割があるし、知財部には知財部の役割があって、それぞれが重要な仕事だと思います。

(4)このnoteで紹介する方法の中にはコロナ禍では採れなくなったものが多くあるので、今から独立する人にとってはどれだけ参考になるかはわかりません。よく言われることですが、環境が変化するのだから自分も変化しないと生き残っていけません。

■広島ってこんなとこ

では、まずどういう地域で私が事務所を開いているのかを知っていただきたいと思います。※2020年12月現在

・広島県内の特許事務所の数:22

・広島に主たる事務所を置いている弁理士の数:52人(全弁理士の0.5%未満
 →そのうち特許事務所勤務:32人
 →半数の弁理士の顔と名前はわかる
・東京や大阪の特許事務所のブランチがいくつかあるけど、基本的には地場の事務所

・地場の事務所は所属弁理士が多くて2人(3人の事務所は無かったはず。たぶん。)

・よく「広島ってことはマツダの仕事とかあるんでしょ?」と言われるけど、零細事務所では大企業から「毎月10件、特許出願をお願いします」と依頼されてもマンパワー的に受けることができません
つまり、優秀な弁理士か否かに拘らず、所属弁理士が1〜2人の特許事務所は構造的に大企業を顧客にすることが不可能です。大企業もそういう事情がわかっているから零細事務所へ依頼してきません。

■開業すると

(1)上記理由から、弁理士1人の特許事務所では中小零細企業の仕事がメインとなります。

弊所にお声掛けいただける会社さんの中には「初めて出願します」という会社も多いです。
また、「知り合いに”実用新案なら取れるんじゃないん?”と言われてて来ました」という人もいます。
そういう方々へサービスを提供するわけですから、知財部がある会社へ提供するサービスとは異なるものを提供する必要があります。

(2)スペシャリストよりジェネラリストが求められます。
私は独立前には特許だけやっていましたが、独立後は商標もやれないと始まりません。特許を出願する会社は技術系に限られますが、商標は全ての業種に必要ですので、自然と商標の案件が集まります。
特許の太いクライアントを抱えていないのに「いやー、うちは商標をやってないんですよ」と言っていたのでは事務所経営が厳しくなるので、商標もできるほうがいいでしょう。
また、開業直後にはご祝儀的な仕事も来ますが、友人知人が良かれと思って商標の案件を持ってきてくれたのに、それを断るとその後の紹介にも影響してきます
また、特許と商標を1つの特許事務所で対応してもらいたいというニーズもあります。複数の特許事務所と付き合うのは面倒ですよね。

それに加え、著作権とかまで質問が来てしまいます。当然、勉強して対応する必要があるでしょう。商標とは異なり著作権については「弊所では扱いません」としてしまっても経営的には問題無いし、むしろ著作権を勉強するのは弊所ではコスパが悪いのですが、せっかく私にお声掛けいただいているし、私は著作権も知っておかねばと思うので対応しています。
でもこれは既存顧客へのサービスの面は大きいので、紹介者のいない新規顧客から著作権に関する依頼があったときに受任するかどうかはそのときの忙しさ次第かもしれません。

また、共同開発契約書等をレビューすることも独立してから増えました。爆増しました。弁護士さんから「知財の条項だけチェックして」と依頼があったりもします。
中小零細企業が大企業と契約する際に、社長さんが契約書の内容を正確に理解していないまま押印することは非常に多く、問題点を指摘すると「えっ!?そんなつもりじゃなかった」ということは日常茶飯事です。

それと、地味だけどとても重要なこととして、事務もできないと事務所が回りません。
今、これを読んでいる特許事務所の弁理士さん!例えば、住所変更できますか?出願中と登録後は別の手続って知っています?出願中(識別番号に紐付いた住所の変更)は「特願◯◯の代理人である」って書けば委任状を省略できるとか知ってます?
特に、大事務所勤務の弁理士さんが独立する場合は要注意です。
私の場合、勤務時代に事務も結構やっていたので開業しても何とかなりました。

こんな感じで、自分で何でもやれないと事務所が回りません。事務員さんにやってもらうとしても、まずは自分が事務員さんに特許事務を教える必要があります。

■独立時は色々とチャンス

独立したら、当たり前だけど何でも自分の好きなようにできます。私がやったのは以下の通り。

(1)ペーパーレス化
開業時にMicrosoftのOneDriveSharePointに全てのファイルを置くようにしました。紙の包袋は作っておらず、極力プリントアウトをしません。
一度紙の包袋を作った後でペーパーレス化するのは非常に大変です。開業のタイミングでは管理案件がゼロですから、このタイミングでペーパーレス化してしまいましょう!
私は開業時に購入したA4のコピー用紙の束(500枚)を使い切ったのは開業から10ヶ月後でした。

これにより、非常事態宣言時に一切の障害無く、自宅勤務に移行可能でした。そもそも、打ち合わせの予定が入っていない日に雨が降ったらその日は自宅勤務ということはよくやっています。
また、案件ファイルの検索が非常に楽になりました。

紙を扱わない代わりに(?)トリプルディスプレイで仕事をしています。

(2)「うちの事務所はこういうスタンスなんです」が意外と通じる

(2-1)確認せずに請求書をメールで送る
弊所では基本的には紙を扱いません。クライアントへの請求書もメールで送りたいのですが「請求書をメールで送ってもいいですか?」と聞くと「郵送でお願いします」と言われる可能性が上がるので、私はクライアントにそのような確認をせずに勝手にメールで請求書を送りつけます。
その上で「郵送でもお願いします」と言われた場合には大人しく郵送します。

(2-2)チャットでやり取りを行うよう頼んでいる
「お世話になっております。弁理士の松本です。」というおまじないを最初に書くメールのお作法がダルいし、何往復もしていたらメールの左端が引用符で盛り盛りになるので、クライアントにはチャットでのやり取りをお願いしています。
導入のハードルは低くないのですが、いざ導入してもらうと好評です。

チャットではやり取りが時系列にきれいに並ぶので後から経緯を追いやすいというメリットもあります。

(2-3)顧問契約
顧客も事務所弁理士も「弁理士の仕事はスポット」が普通だと思っています。仮に毎月仕事をいただいている顧客であっても、普通は「毎月複数のスポット業務がある」というのが現状です。だからこちらから顧問契約を提案しないと、顧客から提案してくれることなんてありません。

一方で、既存客に「顧問契約はどうですか?」と言っても、今まで出願案件の間で無料で質問して、それで済んでいたわけなので、なかなか顧問契約には至りません。

ここで、開業して間もない事務所にとってはほとんどの顧客と付き合いが浅いので、その段階で「弊所では顧問契約サービスを提供しています!」と言うと、「そうなんだ。良いね!」と言ってくれる会社さんは存在します。だから新しい事務所ほど顧問先獲得のチャンスがあります。

顧問契約をして弁理士とコミュニケーション量が増えることでヒヤリ・ハット段階の気付きがあり、顧客側の顧問契約のメリットは大きいはずです。
一方、事務所弁理士としては、顧問料をもらいながらしっかり相談に乗り、それに伴い自然と出願案件も増えるので、顧問契約があると事務所経営が非常に安定します

税理士、社労士、弁護士と顧問契約をしている規模感の企業に「次のステージでは弁理士と顧問契約だ!」と思ってもらえるくらい、弁理士を顧問にするという風潮が広まってほしくて、こういうことを書いています。

なお、こんなことを書いている私がどうなっているかと言うと、全顧客のうち8%が私と顧問契約をしてくれています。8%が多いのか少ないのかは想像におまかせします。

顧問先獲得のためのノウハウについては別のnoteを書いたのでそちらをご覧ください。

■私のスタンス

次に、仕事における私の主義とかスタンスのお話をします。

(1)同業者とは戦わない
(1-1)弁理士は優秀な人が多いので彼らと競争したくない
周りの弁理士を見るとみんな凄い人達ばかりなので、正直言って私が彼らと競争して勝てるとは到底思えません。したがって、ランチェスターの弱者の戦略を取る必要があります。

J-PlatPatを見て出願数が多い会社へ営業するという手法はよく聞きますが、優秀な弁理士と競争したくないので、私はこの方法は取りません。

(1-2)ディスカウントしたくない
弁理士業は労働集約型なので、ディスカウントすると単純に時給が下がり、それに伴い品質が低下するし、疲弊します
つらいのでそんなことはやりたくありません。

(2)ターゲット顧客は出願したことが(ほとんど)無い会社

顧客の知財への取り組みについて100点満点で点数を付けたとして、私のターゲット顧客はその点数が80~90点という層ではなく、X点→65点まで引き上げることができる層です。
つまり、優・良・可・不可でいうと、不可から可を目指すような会社が対象です。

出願したことが(ほとんど)無い会社ですから、これらの会社を"可"まで持っていく支援は、弁理士試験に合格した人であればみんな可能でしょう。

そして私としては、顧客企業に知財部を作れたらその会社は弊所を卒業でも構わないと思っています。
また、知財部が無い会社だからこそ、外に顧問弁理士がいるとコスパがいいので、顧問契約に結び付けやすいです。

(3)生殺与奪の権を他人に握らせるな

せっかく独立開業したわけですから、生殺与奪の権を他人に握られていたんじゃ面白くないので、それは避けるようにしています。
つまり、事務所の売上げが特定の会社に集中することを私は望んでいません。仮に大企業から仕事をいただいたとして、その顧客の仕事が事務所全体の仕事の5割以上を占めていたら、個人事業主なのに雇われているのと何ら変わりません。

■このスタンスの辛い点

(1)最初の1件を出してもらうまでが大変
出願したことが(ほとんど)無い会社がターゲット顧客ですから、今まで掛けてこなかった知財に関する費用を捻出してもらうのは大変です。
出願だけでも大変なのに顧問契約となるとさらに大変になります。
また、仮に1件目の出願をしてもらっても、2件目がいつになるかわかりません。

仕事が無いところから仕事を発掘するイメージなので、なかなかしんどいです。

(2)クライアントの数を多くせざるを得ない
そのクライアントの2件目がいつになるかわからないような状況では、次々と新規クライアントから依頼をいただかなくては事務所を維持できません。
クライアントの数が増えると、何度も何度も同じ説明、例えば審査請求の説明を新たなクライアントに行わなければいけません。これは非常に手間が掛かります。
また、顧客の数が増えると案件のジャグリングになり、1つの仕事になかなか集中できません。

そして不思議なことに、顧問先の相談や出願依頼のタイミングがカチ合うものでして、そうなるとアワアワします。

■このスタンスのいい点

一方で、いい点もたくさんあります。

(1)頼ってもらえる
知財について詳しくない会社さんが顧客ですから、自分がその顧客に与える影響が大きく、承認欲求が満たされます自己肯定感が爆上がりです。
決して「先生」と呼ばれたいわけではありませんが、そのように扱ってもらえると悪い気はしません。

(2)社長とやり取りできるから話が早い
知財担当者=社長という場合も多くなります。社長と直接やり取りできると、意思決定が早いので楽です。

(3)ディスカウントする必要がない
その会社独自の料金表なんて無いので、掛かった労力に応じて自分が納得した金額の請求できます。
もちろん、顧客には費用について事前に納得してもらう必要はあります。

(4)顧客数が多いのでリスク分散になり経営が安定する
コロナ禍においてこのことは非常に大きなメリットになります。
昨年の弊所最大顧客の売上は全体の11%でした(一昨年は7%で、最大顧客は昨年とは別の会社)。仮にこの弊所最大顧客がうちから離れていったとしても、事務所が潰れてしまうことはありません。
大企業から仕事を受注することが不可能な状況が、結果的に生殺与奪の権を他人に握られていないことになっており、健全な精神状態で仕事ができます。

■開業してみると

実際に開業してみてわかったことがあります。

(1)自宅開業はNG
開業している税理士の先輩が私の独立前にそのようにアドバイスをくれました。
しかし、特許事務所はどこに近くないといけないか、というのは今はありません。敢えて言うと郵便局くらい。結局、自宅でもいいやん、と開業前の私は考えていました。

また、自宅開業の場合、弁理士ナビで自宅を晒すことになり、逃げも隠れもできないのだから本来であれば信用力が上がってもいいはずだし、無駄な家賃という経費を掛けなければ報酬額を低くできるかもしれないのに何故自宅開業はダメなんだ、とその先輩に少し反発してみたりもしました。

しかし世の中の顧客や見込み客は自宅開業だと何となく頼りなく感じるらしいです。
また、経営者とのやり取りが多くなりますが、経営者の視点では自宅開業だと腹を括ってない、覚悟が見えないと判断する方もおられるとのこと。

つまり、自分がどう考えるのかはビジネスにおいてはどうでもよくて、顧客・見込み客がどう考えるかが重要なようです。

(2)中間が発生するまでは安定しない
当たり前ですが、出願案件の中間対応が無く新規出願のみに売上を頼る状況は結構きついです。

(3)特許弁理士なのに明細書を書く時間が本当に無い
意味がわかりませんよね。私も意味がわかりません。
でもこれは顧客数を多くしなければいけないことが影響しています。様々な会社の案件のジャグリング状態になってしまい、まとまった時間が必要となる明細書作成がなかなかできません。

(4)前金制にしていたけど今はやめた
印紙代の立替えがある仕事ですから、費用の取りっぱぐれが非常に恐ろしかったので、前金制にしていました。

しかし、前金をもらっているにも拘わらず、なかなか着手できないと本当につらいという理由で、金払いが危うい人以外は前金制はやめました。前金をもらって着手できずに苦しむくらいなら、費用を取りっぱぐれたほうがましなくらい、お金をもらった上で着手できないことは精神的にキツいです。
また、前金をもらってから仕事をやると、借金を返すために仕事をやるような気分になってしまい、テンションが上がりません。

■私の営業方法

次にどうやって営業活動を行っているかの説明をします。まずは士業の正攻法の(?)紹介です。
(1)紹介
(1-1)誰に紹介してもらうか?
・弁護士
・税理士
・社労士
・金融機関
・商工会議所
上記のような士業等からの紹介が多いです。

経営者から既に信頼されている弁護士や税理士から紹介してもらうことで、自分を信頼してもらえた状態から始められるので非常に楽です。

(1-2)人脈の作り方
大抵の人にとって弁理士というのはレアキャラなので、知り合いをたくさん作っておけば、よっぽどその弁理士に対する印象が悪くない限り、知財案件が発生したときに仕事がその人に回ってきます。

(1-2-1)士業の勉強会(各士業1人ずつのグループ)というのがあり、そのような集まりに参加している弁理士はほとんどいません。そのような勉強会では弁護士や税理士の枠は当然に埋まっているのだけど、弁理士の枠だけは空いているので枠を埋めるべく色んなグループから誘われます。
現在私が所属している勉強会は4つです。誘われるまま断らずにいたらこんな数になってしまいました。

(1-2-2)大学のOB会にも参加しています。こちらも驚くほど弁理士がいません。途中からOB会で役員にもなっています(現在進行系)。
正確に言うとOB会に弁理士はゼロでは無いのですが、続けてOB会に参加する人はなかなかいません。

お酒が提供されるOB会で顔を合わせたときにはいつも酔っ払って顔が赤いおっちゃんが、私がコンタクトを取りたい会社の親会社の社長だったので、その子会社を紹介してもらったこともあります。正攻法じゃ営業がうまくいかなくても、バックドアを叩くことができればかなり楽です。

(1-2-3)ロータリークラブ
一業種一人が原則なので同一クラブ内には弁理士がおらず、仕事があれば自分に集まります。ロータリークラブには紹介者が2人必要なのですが、紹介者の一人は大学OB会の会長でした。

(2)直接営業
こちらは知り合った本人が直接依頼してくれたパターンです。別に飛び込み営業しているわけではありません。

(2-1)イベント参加
開業してからスタートアップ系の色んなイベントに参加していました。スピーカーではなくオーディエンスとして参加しても十分です。様々なイベントに遊びに行って名刺交換したり懇親会でわいわいしていたら、県外の出願案件はもちろん、県外の顧問先も数社できました。

(2-2)大学のOB会
やっていることは「紹介」のところで書いたものと同じで、親しくなっておくと案件があれば最初に相談してもらえます。

(2-3)ロータリークラブ
同上。

(3)事務所ホームページ
本当は変更したい箇所がたくさんあるんだけど、時間が無くてそのまま放置になっています。

(4)それぞれの比率
上記(1)~(3)のうち、既存クライアントが最初に依頼していただけたきっかけの比率は以下の通りになりました。改めて今回集計してみましたが、紹介が思ったよりも多かったです。

紹介:60%
直接営業:25%
ホームページ:15%

本当はホームページからもう少し集客できるようにしたほうがいいんでしょうね。特にコロナ禍での営業的にはそう思います。

■この営業方法のデメリット

人間関係を構築して仕事を得ているわけですから、自然とウェットな人間関係になります。苦手な人は苦手でしょう。でも私はこういうの、好きです。

また、仕事になるまでに非常に時間が掛かり、種まきから芽が出るまで平気で2~3年掛かります。当然、どの種から芽が出るかなんてわからないので、ひたすら種をまき続けなくてはいけません。効率は悪いです。
でも2~3年前にまいた種で今日(3月1日)、1件受任しました。当時はまだコロナなんて無かったときですけど、しっかり種まきしておいてよかったです。

■この営業方法のメリット

一方で、メリットも大きいです。

(1)「弁理士の知り合いは松本しかいない」という状況を構築できるので、よっぽどやらかさない限り、案件があったら紹介してもらえます。
弁理士のレアキャラ属性を存分に活かしましょう。

(2)顧客ポートフォリオだけでなく、紹介元ポートフォリオも分散しており、コロナ禍においてリスク分散できているのはありがたいことです。
コロナ禍においてはウェットな営業活動がなかなかできませんが、今までの人間関係の貯金のおかげで紹介は続いています。

(3)変な人を紹介されないので、報酬の取りっぱぐれリスクが低いです。私の場合、紹介案件で報酬の未回収はありません。

■弁理士1人事務所の不安な点

次に、弁理士が自分だけという事務所の不安な点です。
(1)不慮の事故で執務不能となると困る
これはその通りですよね。クライアントも気にする点だと思います。
私はこの対策として、他の事務所の弁理士と提携していて、出願時にお互いの名前を選任した代理人として記載しています。
こうすることで、私に不慮の事故が起きたときでも提携弁理士が委任状をもらうことなくそのまま執務続行することができます。弊所事務員にも、私に何かあったときには直近の期限モノを確認し、すぐにこの提携事務所へ連絡するように伝えています。

(2)情報不足になりがち
1人で何でもやらねばならず取扱業務の幅が広いのに、相談相手がいないという状況です。
しかしコロナ禍のメリットの1つとして、オンラインで同業者と交流できる機会も増えました。
また、地方弁理士は修習の同期を大切にしてください。事務所内に何人も弁理士がいるような事務所に勤務されている人達とは、同期の重要さが全く異なります。私は2013年の合格ですが、未だに同期会をやっています。

■将来の展望

最後に、開業4年目の私が今後事務所をどうしたいのかをお伝えします。

広島という地方でこのように特許事務所業務を行うのは非常に楽しいので、あとは弁理士3人の事務所にして、今抱えている問題を無くしたいです。

この事務所、面白そうと思ったら是非一緒にやりましょう。
また、広島へUターンを希望している優秀な弁理士をご存知の方がいれば教えてください。

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