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イジメとは


わたしは今、35歳。

まだ子どもはいないが、そろそろかと、妻と話をしたりする年頃。


もし子どもが出来たら、いろいろ大変だろう。

お金、住む場所、お金、ライフスタイル、お金、お金、、、


ただ、それらと同等かそれ以上に

「どう育てるか」を考えることは重要で

向き合うべき親の務めじゃないかと思う。



・・・

「育てる」なんて言葉を使うのは、おこがましいのかもしれない。


子どもは勝手に育つ。

「親ができることは、しっかりごはんを食べさせて、元気に遊び、熱心に学べる環境をつくることくらい」

そんなことを母が言っていた。


母とは、小さい頃からいろいろな話をした。

とりわけ「子育て論」についてはよく聞かされ、共感したり、反論したりしていた。


その母親と、今でもたまに話す「ある出来事」がある。

わたしの身に起きた「イジメ」に関する話なのだが、25年ほど経った今でも「正しさ」がわからない。


あのとき、わたしはどうすべきだったのか

子どもが同じような境遇に置かれたとき、どう接するべきなのか


わたしの中での答えは、10歳だった当時から変わらないのだけれど、もう少し考える余地がある気もしている。


少し長くなりますが、紹介させてください。


✏️__________



(以下、仮名です)

「たかし」という友達がいた。

彼とは幼稚園から一緒で、家も近く、よく遊んでいた。


たかしはこだわりが強く、わがままなところもあったけれど、ひょうきんで面白いやつだった。

末っ子同士で、気の合うところもあった。


たかしの家に行くと、彼が大好きなミニカーがたくさんあった。

わたしは車系のおもちゃに興味がなかったけれど、彼のミニカーへの愛はすごく伝わっていたし、その話を聞くのは楽しかった。


たぶん、彼は変わり者だった。

そして、僕もそうだった。


3年生になると、友達を一人誘って「お笑いトリオ」を結成した。

担任の先生に煽られ、クラスの行事で披露した「ボンバーマン」のコントは、面白さが理解できないまま思い出の一番下の方にしまっている。

あのときの先生、本当にいい先生だったなぁ。。。


そして時は流れ、わたしたちは5年生になり、ある事件が起きた。

その事件をきっかけに、わたしは彼と距離を置き、わたしから彼に話しかけることはなくなった。


🚗__________


学校のグラウンドで、野球をしていた。

バッティングよりも守備が好きだったわたしは、いつも泥だらけだった。


突然、監督がいつもと違う雰囲気で、わたしを呼んだ。

少しだけ心当たりがあるものの「まさか」と思った。


バックネット裏に行くと担任の先生がいて、監督はグラウンドに戻っていった。

「たかしが泣きながら〇〇と△△と□□にイジメられたって言ってるんだけど、本当?」


わたしの悪い予感は、的中した。



☁️________


その日は、いつものように下校していた。

野球の練習に遅れないよう、急いで帰宅し、急いで着替え、急いでグラウンドに行く。


ただ、一つだけ違うことがあった。

「たかし」が追いかけてきた。


そして、わたしたちは笑いながら逃げた。

という遊びをやった。


つもりだった。


🤔__________


クラスでは当時、トランプや将棋が流行っていた。


たかしは、自分の負けが続くとトランプを投げたり、叫んだり、そういうことをしてしまうタイプのやつだった。


クラスの中には、あからさまにたかしを嫌う人もいたし、良くないイジり方をする人もいた。

わたしも「めんどくせーな」とは思っていた。

みんなのものを大切にしないことや、楽しい空気を壊してしまうことに対して、苛立つこともあった。


それでも、ところどころで彼のことをフォローしていたつもりではある。

それはたかしのため、というよりも、みんなで楽しくいたい

クラスの雰囲気を壊したくない

そんな気持ちだった。


🏫__________


なぜ、たかしは追いかけてきたのか。

たぶん、一緒に帰りたかったんだろう。


しかし、わたしたちは一緒に帰らなかった。

わたしたちが走り出したら、彼は追ってこなかった。


「うわー、たかしがきたー!」

「逃げろー!」

そんなことを言いながら走った。

そこには、蓄積された彼への苛立ちがあったかもしれないし、ただの悪ふざけだったかもしれない。


たかしとは、何度も一緒に帰っていた。

この日も、学校で普通に遊んでいた。

「おまえとは遊ばない」みたいなハブきをしたことは一度もない。


それでも、この帰り道は、誰が言い出したわけでもなく、それが面白いと思った。


🤔___________


走り出したあのとき、わたしに悪気はなかった。

「イジメ」だったり「悪質なイジリ」のつもりはなかった。

単純におもしろいと思ったし、追いかけてくるだろうと思っていた。


彼が追いついたときには「ついてくんなよ〜」とか言いながら、一緒に帰るのかな、と思っていた。

それが「おれたちのノリ」だと思っていた。

そしてやはりどこか「めんどうだな」とも思っていた。


笑いながら、100mくらい走った。

振り返ると、たかしが遠くで立ちすくんでいた。


泣いているのかな、と思った。


胸が「キュッ」となったけど、気にせずに走った。

わたしたちはすでに笑っていたし、野球に行かなきゃいけないし、たかしに対して思うこともいろいろある。


言い訳をする材料は、いくらでもあった。


⚾️__________


担任の先生は

「なんでそんなことをしたのか」

「たかしがかわいそうだと思わないのか」

「今後は、そんなことはしないように」

というようなことを言って、職員室に帰っていった。

その間、わたしは一言も反論しなかった。


小学5年生のわたしは、大人という存在が好きだった。

通信簿に書かれる「クラスのまとめ役」という言葉が誇らしかった。

勉強も、スポーツも、ふだんの遊びも、すべて全力でやってきた。

人並み以上の成績を残し、みんなとずっと仲良くやってきた。


そのすべてが、傷つけられたと思った。

反論しなかったのは、先生が怖かったからでも、言うべきことが見つからなかったからでもない。


わたしは怒っていた。

心の中で泣きながら、人生で初めて、怒りに震えていた。


練習に戻り、おそらく、いつものショートの守備位置についた。

その日の練習のことは1mmも覚えていない。


🤔___________


以上が、わたしが小学5年生のときに起きた出来事です。

記憶が定かではありませんが、たかしには形式的に謝ったと思います。

それから、彼は普通に接してきたけれど、わたしの中ではもう元に戻ることはありませんでした。


✏️__________


これはイジメなんでしょうか。

わたしはどうすればよかったんでしょうか。


「走り出したとき、悪気はなかった」と書きましたが、7割は本当だと思います。

多少「ちょっとやばいか?」とは思ったかもしれませんが、それよりも「たかしも含めたお笑い」だと思う気持ちの方が大きかった。


でも、振り返ったとき、たかしが泣いているのが見えて、胸が苦しくなりました。

きっと正解は、そこで歩み寄っていくべきだったんでしょう。

そこで「悪気」が生まれているはずだから。


でも、それが小学5年生にできるでしょうか。

むしろ、今のわたしに同じことが起きたとき、わたしは歩み寄るでしょうか。

ふだんから面倒に感じている相手に対して、わたしは歩み寄っているのでしょうか。


そんなわけはないです。

わたしは面倒な相手に対して、意識的に距離を置いています。

そのときに、丁寧に説明したりはしないでしょう。

臭いものには蓋をして、見てみぬフリをします。



子どもは、歩み寄らないといけないのでしょうか。



「子どもに対して、子ども扱いをせずに、大人として向き合う」というのがわたしの信条です。

なので、子どもが誰かを面倒に感じていて、距離を取りたいと思ったとしたら、わたしはその行為を否定しません。

それが「イジメ」だと言われても。


みなさんは、どう思いますか?


🤔__________


どうしても、このことを考えると熱くなってしまいます。


ただ「イジメだと思っていなかった」は通用しません。


受け取った側が「イジメ」だと感じたら、それはやってはいけない言動なのでしょう。

それに対する反省や、謝罪はあるべきだと思います。


しかし、その結果、二人の関係はどうなるか。

たかしは、普通に接していたつもりかもしれませんが、わたしは上辺の会話しかしなくなりました。

わたし以外の友人も、きっと同じだったと思います。


「あいつと絡んだら、厄介なことになるよ」


✏️__________


そのまま中学を卒業し、それ以降は会うことも、彼の話を聞くこともありませんでした。

たかしにはたかしのコミュニティができていたように見えるので、それで幸せだったのかな?

よくわかりません。


わたしは意識的に、たかしを周りから排除しました。

もちろん、不必要に傷つけるようなことはしていないつもりです。


勝手な解釈かもしれませんが、それは「差別」ではなく、健全で幸せな学生生活を送るための「区別」でした。

毎日やってくる思春期の心と対峙した上での、決断でした。


今回、初めてこの出来事を文章にしてみて、細かい部分で言えば「もっとこうすべきだった」というのはありますが、大きな流れとしては、自分なりに向き合い切ったのかなと思います。


あれ、なんか懺悔というか、供養するためのものになってない?笑

まぁ、無計画に書き出す文章なんてそんなものか。

でも、こうして文章にすることで、自分の中でもう一つ、整理がついた気がします。


🤔__________


でもやっぱり一つだけ物申したいや。


先生、あのときの対応、おれは間違っていたと思うよ。

先生はこっちの話をあまり聞かなかったよね。

おれがそんないきなり人を傷つけるような人だと思ったの?

背景とか聞かないの?

おれの気持ちには、興味はなかったの?


そのあと、一回もこのことについて触れなかったよね?

おれが35歳になっても、こうやって整理するくらい

よくわかんないものを抱えたのが、あの瞬間だったんだよ。

そのくらいの覚悟、先生にあった?

覚悟もないのに注意したの?


先生のこと、今でも好きだし、また会いたいなと思うけど

このことだけは、納得してないし、許してないからね?

この出来事、先生は覚えてる?

先生にとっては、なんでもない出来事だった?


まぁ、難しいよね。先生、忙しいしね。

たかしの親、モンスターチックだしね。

今なら、多少は立場を汲んであげられるかもしれないけど。


でも、許してないからね。

今度、会うことがあったら、美味しいもの奢ってね。


✏️__________


そして、これを読んでくれたあなたへ。


こんな稚拙な文章を、最後まで読んでくれてありがとう。

もし、嫌な気持ちになったり、つらい気持ちにさせてしまっていたら、ごめんなさい。



ただ、これがわたしに起きた出来事で、わたしなりの整理なので、それは許してね。

この世界から、イジメによって苦しむ人がいなくなることを、心から願っています。

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