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住友本邸を飾った木島櫻谷の華麗な大屏風@泉屋博古館東京

  2023.6.03-7.23に泉屋博古館東京で開催された木島櫻谷の特別展がとても良かったので、あの時見たキツネの屏風がまたあるかな?と「ライトアップ木島櫻谷ー四季連作大屏風と沁みる『生写し』」へ。

  写真撮影は1枚だけ・・・そ、そんな・・・と思いつつ、その分集中して見ましょう、とじっくり拝見。ここは小ぶりな展示室×4部屋なので、ゆっくり見ても1時間かからない。今回は更に1室が目玉の大屏風5セット+掛け軸1つで占められているので、展示数は少なめ。人によっては「え、これだけ?」となるかも。テーマと作品を絞っているということで、気楽にのんびりと楽しみました。

  まずはこちらが、大阪茶臼山の住友家本邸を飾った四季連作大屏風のうち、1枚だけ撮影OKだった琳派風の「燕子花図」。6曲一双でかなり大きいです。以前、この本邸を彩った屏風等が展示された時にあった本邸間取り拡大図が今回もありましたが、これが入る大書院か・・・と毎回趣旨と違うところに感動。金屏風でも緑の葉がしゃっきりと品が良くて、風薫る5月頃に見たくなる。

木島櫻谷「燕子花図」

  全部で5種類。四季と言いつつ、なぜか5種類。なぜ?展覧会サイトにも写真ありませんが、燕子花に下の3種類(梅・桜・菊)に加え「竹林白鶴」がありました。3月末なのに寒の戻りでダウンを着るくらい寒い日だったので、「雪中梅花」が当日の気分と合いましたが、「桜柳図」は桜が咲いたらもう一度見たい優美さでした。柳の緑と曲線が春らしく、大好きな小村雪岱の「青柳」と同じくらいに柳が印象に残ります。

左から「菊花図」、「雪中梅花」、「柳桜図」。展覧会サイト作品紹介より引用

  今回のサブタイトルは「四季連作大屏風と沁みる『生写し』」ということで、何のことかと思いきや、木島櫻谷の油絵の技法を取り入れたリアルな動物達も展示されているから。

大正期の櫻谷は、独特な色感の絵具を用い、顔料を厚く盛り上げ、筆跡を立体的に残し油彩画のような筆触に挑戦しています。そのために櫻谷は、「技巧派」などと称されましたが、櫻谷の真骨頂は、それに収まらない極めて近代的なものでした。リアルな人間的な感情を溶かし込んだ動物たちは絵の中で生き生きと輝きはじめ、とりわけ動物が折節にみせる豊かな表情は、観る者の心に沁みます

展覧会サイトより引用

  以下の展覧会サイトにあるフライヤーの裏側に画像がありますが、ライオンがびっくりするほどリアル。そして以前見た、「葡萄栗鼠」もさらっとした筆致でありながら、尻尾のふさふさ感が良い感じ。柔らかそうで実は硬めのリスの毛という感じがよく出ています。

https://sen-oku.or.jp/wp-content/uploads/2024/02/flyer_LIGHTUP.pdf

  木島櫻谷の動物は、若い頃は写生の力が前面に出た緻密な質感。それが後半になると、さらっと描いているのに、その動物のシルエットが完璧です。子犬も狸も力が抜けていて可愛い。自宅に600冊も保存されていたという写生帖の一部も展示されており、猪の顔のアップはもものけ姫の乙事主みたいな禍々しさあり。

  ということで、見逃してはいけない、というタイプの展覧会ではありませんが、木島櫻谷の品の良い作品群が、忙しい毎日をちょっと癒やしてくれます。

  <余談>昨年の泉屋博古館東京は、リニューアルオープン直後ということで、見逃せない&複数回通いたい企画が多かったので、年間パスポートを持っていました。「不変/普遍の造形 住友コレクション中国青銅器名品選」、「特別展 大阪市立東洋陶磁美術館 安宅コレクション名品選101」、「特別展 木島櫻谷 ― 山水夢中」は、全て3回くらいずつ通いました。2024年はどうしよう・・・と迷っていましたが、期限切れ直後がこの木島櫻谷だったことで、えいっと更新。さてアタリとなるか?


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