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雪の中の展覧会ー奈良美智: The Beginning Place ここから

  この瞳に映るモノと涙が気になり、根性を試されている?と(勝手に)思いながら、展覧会の最終週末2024.2.24に、東京から青森への日帰り訪問を決行。どうしても見たい、という気持ちが勝った!奈良美智が故郷青森でのみ開催した「The Beginning Place ここから」を見てきました。

  昨年10月から開催していたのですが、この後、巡回するんだろうな、と高をくくっていました。新春になって2024年展覧会情報雑誌(今年はぴあと日経大人のOFF)を買ってふんふん、とチェックしていたら、何と青森のみ、ということに気づきショック。

  しかし、この展覧会は青森開催が良かったのかも。雪のちらつく新青森駅からタクシーで美術館に着いた時から、もう気持ちがぐっと来ます。

美術館まで本当に来た!うう、ホントに見られる!という嬉しさがじわっと。

  そして雪景色の中に見える白い美術館・・・

白い角張った建物が、雪のような角砂糖のような美術館。想像していた景色そのもので幸せ。

  と、中に入る前から盛り上がっていましたが、最終週末、しかも三連休ということで、チケット買う所から並ぶ、ミュージアムショップも並ぶ、という盛況。そして今回は全て撮影可能ということで、見るのも撮るのも忙しい。撮影できるのは嬉しいのですが、ちょっと集中力欠いてしまうのが課題(未熟者です)。会場を3周して、じっくり見るだけの時間も確保。

  せっかくなので、展覧会の構成を感想含めてご紹介した後は、お気に入り画像をせっせと記録しておきたいと思います。ただ・・・きゃーっという勢いで撮っては見て、撮っては見て、を繰り返していたためか、気が逸っていたのか、全体的に斜めという。まあ、落ち着け、と自分に言いたい・・・

1.家
初期作品を集めた部屋。「奈良作品にしばしば現れる『家』のモチーフの意味を初期作品の変遷をたどりながら考えます」とあります。後半は小さくなりますが、確かに家が描かれているものも多い。人物の等身ももう少し普通なものが多い。でも、アイコニックなキャラクターも見られます。

「Merry-Go-Round」1987:展覧会系サイトで必ず紹介されていた初期の作品。確かに家がある。
淡い水彩画。少女と火はこの頃から何かテーマだったのでしょうか。
やっぱり少女と火がモチーフ。「Romantic Catastrophe」1988
「Fire」2009。少女と火と家の三つ揃い!

2.積層の時空
近年の絵画作品やドローイング等を通じて奈良作品におけるレイヤー(積層)の重要性を浮き彫りに、ということで、ポスターになっている作品もここに。太くシンプルな線が特徴の、初期の人気作品と違うのは、色・面で女の子が表現されているところ。不思議な淡い色調が儚い夢のよう・・・

やはりポスターになるだけあって秀逸な最新作。よく見るとちょっとだけ歯が見えているのが、きゅっと食いしばった感じで胸が詰まる。「Midnight Tears」2023
「Slight Fever」2021
他のとちょっと違う瞳の少女。まだ線が強いタッチだけど淡い色の重なりが見える作品 「Invisible Vision」2019

3.旅
近年の感性の起源を求める旅から生まれた多様な表現(写真、陶芸等)が紹介されています。私は絵の方が好きなので、写真はちょっとさらっと行ってしまいました。

写真よりも毎回登場するこの子が気になった・・・

そして、この「旅」には、アイコニックな女の子像が揃った部屋です。ドイツ留学した頃の作品が含まれます。それはそれは・・・いい目つき。

「The Last Match」1996。線も色も目つきも完璧。
「The Last Match」と対になって展示されていた「Mumps」1996
「Abandoned Puppy」1995
「深い深い水たまりⅡ」1995

4.NO WAR
「反戦」のテーマと音楽との関係性や社会に浸透する奈良作品の力について考える部屋。キース・ヘリングにも感じましたが、アーティストが伝える社会派メッセージって、たくさんの言葉を尽くすのとは違うカタチの雄弁な表現が1枚の中に詰まっている。ひねた可愛い少女が、NO WARを呟く、そのニヒルさにやられます。逆にPEACEを表現しているのに、何か、本当に平和なのかな、と思わせるような。

うーん「Peace Girll」かな・・・?これはリンゴ木箱の板でできたハガキあったので買いました。
「From the Bomb Shelter」2017:可愛らしいのに、実はシェルターから出てきた女の子とは!
カレンダーの上に描かれた?「NO WAR」の絵
めちゃめちゃラブリー!でもシニカル。

5.ロック喫茶「33 1/3」と小さな共同体
高校時代に通い詰めたというロック喫茶の店舗を再現し、創造の「はじまりの場所」の風景について考える部屋。この再現店舗模型に入るのに行列ができていたので、私は窓から眺めるのに留めました。展示室の壁一面にあるレコードジャケットが良かった!アートをレコジャケから学んだと「2.積層の時空」の展示室にも書かれていましたが、確かにレコジャケはあの四角形の中に、世界が、ストーリーがありますよね。

往年のロックレコードのジャケット大集合。あ、デヴィッド・ボウイだ。
これがロック喫茶「33 1/3」の再現模型。中にちゃんとバーボンボトルやレコードが。
みんなこの前で記念撮影していた「Peace Flag」

  これ以外にも第2会場があり、有名な「あおもり犬」が見える広い展示室には、青森出身の棟方志功の板画と奈良美智の作品を並列に置いた興味深い展示になっていました。部屋の広さも生かし、大きめな展示品もあり。「あおもり犬」は、TVで見た時のように雪帽子ほどには雪が積もっていませんでしたが、うっすらでも頭に雪が載っていて嬉しかった。

「あおもり犬」

  この後、八角堂に行って「森の子」を堪能。「森の子」は室外にあるので寒いですが、その寒い空気と白い立体作品が妖精のような雰囲気を作り出してくれています。一人でひっそりと静かに鑑賞できるのもよきかな。昔、TVで見た時は、夜の映像だったのですが、雨の滴で森の子が泣いているように見えて幻想的だった・・・!是非次回は夜に見たい。

「Miss Forest/森の子」

  ところで、この「森の子」ですが、これで見るのは3体目というご縁が。昨夏、LAのカウンティ美術館が最初出会い。そして昨年大晦日に麻布台ヒルズにオラファ・エリアソン見に行ったら、お庭にいました。あるとは知らずに出掛けた先で出会っているのですが、これが、別人のよう。いや、すぐ「森の子だ!」ってわかりますが、違う森に生まれた子みたい。

猛暑の2023.7撮影:陽射しが西海岸!カラッとした場所に椰子の木と一緒にいるLAの森の子。
2023.12.31撮影:麻布台ヒルズの森の子。背景に建設中のHERMESがあるのが麻布台らしい。

  これ以外にも、朝ドラのブギウギ主役笠置シズ子のライバル淡谷のり子さん(青森出身)の展示があったりと、郷土色がありつつも、話題性を取り入れた意欲的な美術館でした。最後はそのあたり、諸々を・・・

第2会場にあった巨大オブジェ。つやっとしているのが不思議なオーラ。
これも奈良美智
雰囲気違うがこれも奈良美智。「旅」のエリアにありました。等身大くらいの絵。
これも奈良美智。いろんなインスタレーションがありました。
笠置シズ子と淡谷のり子。仲良しだった?どちらもファーがすごい!

最後はやはり奈良美智の作品で締めたい、ということでこちら、ロックアルバムのタイトルからきた作品。

「I Want to See the Bright Lights Tonight」2017

「今夜は輝く街の明かりが見たい」という意のタイトルは、イギリスのフォーク・ロック・ミュージックの名盤であるリチャード&リンダ・トンプソンのアルバム『I Want to See the Bright Lights Tonight』(1974年)からの引用。同アルバムのジャケットには、曇りガラスにタイトルの文字が指でなぞられている。赤、黄、緑など色とりどりの街明かりを滲ませたガラス窓の印象が、絵画全体の色調を支配し、少女の澄んだ瞳は窓の向こうに広がる街の灯を映し出すようだ。

展覧会の会場作品紹介より引用
「I Want to See the Bright Lights Tonight」のアルバムジャケット

  青森から東京に戻ったら23:30でした。でも、行って良かった・・・

  後日談:偶然、新聞記者の友人が「好きそうだから」と、くれた2月10日付「日経プラス1」の「何でもランキング」のお題が「景観に溶け込む美術館」だったのですが、見事、青森県立美術館が第8位に。「真っ白な外観、雪景色と一体に」として掲載されていた写真が自分のとそこそこ似ていたので、あ、あれがベストショットの角度?よし!と思いました。そしてまだ訪問できていない美術館がいくつもランキング入りしていて、次なる野望が・・・次はちゃんと計画的に行こう。


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