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拳唸る!会心の尺上イワナ

#62|フライフィッシング/FlyFishing 
2023年9月9日(土)/新潟県上越地方/午前4時30分~午後4時過ぎ/水温14~17℃

初秋を代表するハギ

過去に類を見ない猛烈な日照りの夏が、ようやく終わりを告げようとしていた。秋の気配が見え隠れし始めたころ、乾ききった大地が恵みの雨に打たれ、わずかばかりに潤いが戻ったようにも感じる。この夏は、猛暑と渇水を理由に、川へと足を運ぶ時間を自ずとセーブしてしまっていたよう。この週末は台風13号(インニョン)の動きが心配されたが、新潟は洪水被害を受けた関東近郊とは正反対の天候。それならばと強引に山籠もりを決めた。

まだ薄暗闇の午前4時半、ライトを片手に笛を吹きながら、獣に怯えつつ入山した。いくどもアップダウンを繰り返し、釣りを開始したのは午前6時過ぎ。山のうえは既に秋の様相。なんと心地よいことか。

今週久々に降った雨で、イワナの活性は上向いているに違いない。そう祈って決めた山籠もりであったが、渇水時と比べて水位にさほど変化は見られなかった。幸いにも、水温だけは猛暑日の20度超えから、適温に落ち着いていた。

シーズン終盤、神にもすがる思いで釣り始めたわけだが、魚の気配はまったくもって芳しくない。魚が浮いていない。イワナがフライを見に寄ってききたかと思えば、直前で引き返してしまう負のループ。連日の猛暑に加え、入れ代わり立ち代わりの人的プレッシャーの影響は甚大なようだ。無心で釣り上がってみたものの、機運が高まる気配は見られない。さらには、追い打ちをかけるかのように川が濁り始めた……。雨が降っているわけでもないのに、釣り上がれば釣り上がるほどに色濃く、ついにはカフェオレ色に。退散を余儀なくされた。

しかしながら、釣り欲は募るばかり。どうにも諦めきれず、少し下って支流を釣り上がることにした。

ハイプレッシャーの呪縛に頭を抱えながら、徘徊すること7時間30分余り…。

小さな落ち込みからの瀬尻に目を奪われた。偏光グラス越しに目測尺超えのイワナが映り込んだ。中層で体を左右に揺らしながらエサをついばんでいる大物。この日最大のチャンス到来だ。

ラインブレイクしたテグスを結び直し、間をおいて舌なめずり。結んだフライはアントパターン。この一投で釣れなければ、きょうは諦めようと覚悟を決めた。

イワナは変わらず捕食旺盛のよう。毛鉤に興味を示してくれるか否か。一か八かでターゲットの1メートルほど上流へダウンクロスキャスト。毛鉤がふわりと着水すると……イワナはすぐにその存在に気付いたようだ。

目の色を変えて中層から表層へと猛接近。疑う様子もなく毛鉤を呑み込み、反転して深みへと潜り込んだ。ドンピシャでロッドを煽ると、ものすごい勢いで暴れ狂ったイワナ。一投一撃。すぐに尺超えだとわかる手ごたえだった。落ち込みの岩下へ逃げ込もうと勇ましい抵抗。バンブーロッドがひん曲り、冷や冷やの攻防が続いた。岩下から強引に引きづり出すと、今度は方向転換し、猛スピードで瀬尻から落ち込みの下流へ。暴れイワナとの格闘にドキドキが止まらなかった。

35センチ 鼻割れの雄イワナ

ネットからはみ出る35センチの雄イワナに拳が唸った。記録と記憶に残る1尾。己を信じ、足で釣った結果のたまものだ。

この後、空模様は霧雨へと変わり、急ぎ足で退渓することに。途中、動植物の写真をとりつつ、車止めに戻ったのは午後4時過ぎ。歩き始めてから12時間ほどが経過していた。

ヒキガエル
ヤマカガシ
ツリフネソウ
ツリフネソウ 白花
ノコンギク
ハギ
アザミ

汗滴り、体はくたくた。それでも清々しい気分。

まだシーズンを振り返るには早すぎる。迫る禁漁へ、攻めの姿勢で実釣あるのみ。

さてさて、次週はどこで釣り糸を垂れようか……。


FF.BUM(エフエフドットバム)
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Profile
1979年生まれ。2007年に新潟県上越地方に移住。自由と孤独を愛する西洋式毛鉤(フライフィッシング)釣師。いかにして豊かな人生を歩むか、模索の日々を邁進中。

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