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ボヘミアン・ラプソディ

2018/12/03 映画館で鑑賞 HP

※ネタバレ有

まず一言。

最っ高。


私が生まれた時には既にフレディマーキュリーは亡くなっていて、リアルタイムな出来事や事実は全くと言っていいほど知らなかった。
知っているのは楽曲だけ。彼の生きた時代や人生なんて全くと言っていいほど知らないのに、その楽曲たちには1人前に魅了され、いつのまにか音楽プレーヤーには彼らの曲が入っていて、カラオケで歌うことも多かった。

"伝説のロックバンド"

「ボーカルの死をもって伝説となった有名なバンド」そんな軽い認識でいた。今となっては失礼なことだと思う。
実際に彼らのことを心から愛した人たちは、史実との違いに違和感を感じたりするかも知れない。
ただ私はよく知らなかったからこそ、ずぶずぶと映画の世界に入り込めて、登場人物たちそれぞれの感情が駆け巡って、震え上がるほど感動できた。本当に最高の映画だった。

全てのシーンがラストのLIVE AIDのシーンのためにあり、全ての描写が最後の感動のために欠かせない伏線となっていた。
移民である引け目や父親の期待に反する自分の心の内にある苦悩、自分でも認めたくない性のこと、愛するメアリーとの別れ、バンドからも距離を置き、孤独に溺れもがいた末に全てを乗り越えて迎えた最高のパフォーマンス。気持ちが良すぎる終わり方に、かっこよすぎて幸せすぎて、夢を見ているようだった。

彼は音楽については絶対的な自信と実力があった。その才能に驕るように身勝手でわがままでやりたい放題の言動ばかり。
それでもその奇抜なパフォーマンスと魂が震えるような歌声に観客は魅了され、彼のカリスマ性を前にすれば周りの人間も何も言えず彼に従った。
まさに女王陛下。彼こそがQueenという名の所以なのだと知った。

彼はメアリーを本当に心から愛していたはずで、かけがえのない存在であることも確かだったのだと思う。
しかしそれに矛盾して湧き出す同性への興味。でもメアリーを愛している。僕はバイセクシャルだと思う、とメアリーに告白すれば「あなたはゲイよ」と答えを突き付けられる。
気付いていたけど気づかないふりをしていた。いつもこうよ。でもあなたは悪くないから余計につらい。とメアリーは涙ながらに、これまで抱えていた葛藤を吐露する。
ここで既にメアリーの中ではフレディとの関係は終わり、多忙なフレディを友人として気にかけつつも自分の幸せも見つけていった。

メアリーに友人として扱われるようになってから、落ちるように孤独になっていくフレディが痛ましかった。メンバーも恋人や妻子を持ち始め、家庭に居場所を据えるようになっていく。それでも毎晩のようにパーティを開き、華やかさの中に溺れていく姿が自傷行為のようだった。
彼のしていたことは褒められたことではないけれど、孤独を紛らわせるためにそうせざるを得なかったのだろうと、納得もできてしまったから余計に切なくなった。

あの雨の日、メアリーの幸せとフレディの幸せが別の場所にあるのだと悟ったとき。ようやくフレディは自身を見つめ直し、立ち直っていった過程が美しかった。
フレディとメアリーは本当に愛し合っていたけれど一緒に居られない、幸せになれないどうしようもない理由があったから仕方がなかったのだと、第三者目線で見れば思う。別れを選ばざるを得なかった。それをフレディ本人はずっと受け入れられず、孤独にもがき苦しんでいた。
その孤独を受け入れたとき、星のように小さく煌めく希望を見出して、素直に掴んでいったフレディを愛おしく感じた。
メアリーが幸せで、フレディが幸せで、その幸せを大切にしながらお互いを愛していられる関係を持てたことが、悲しくもあり美しい。最後の「メアリーとは生涯友人であった」という一文にも救われる思いがした。

映画を見てからLIVE AIDの動画を見たけれど、それはもうこの映画のおかげで大変に感動した。
私もリアルタイムでLIVE AIDを見たかったな〜という思いはそんなになくて、本当にこの映画を見たからこそ。映画『ボヘミアンラプソディ』という伏線があったからこその感動だった。
まあこの映画を見る前にLIVE AIDの動画を見ていたとしても、

うっわやっべかっこい!!唯一無二すぎるわ伝説ってこういうことだよほんともうえっ何、か、かっこいい〜〜!!!!

くらいの感想は抱いたとは思うんだけど、
この映画を見る前と見てからでは感じ方や感動のレベルがまあ凄まじく違うのだろうと思うので、少しでも悩むなら絶対に見た方がいい。劇場で。高音質の劇場で

LIVE AIDの動画を見て、フレディ役のラミマレックの生き写しのような演技にも気付かされた。
初めは目がちょっとでかいな〜とか思ったりもしたけれど、その挙動や目線の動き、声。フレディやファンを失望させないよう研究をしたのか、まさに生き写しのようだった。
あと他の出演者も本人たちに似てる似てる。バンドのメンバーもフレディの家族もまあそっくり。最後にフレディの恋人のジムのご本人の写真が出ていたけどこれは本人なんじゃないかと思うほどの激似。どうやって見つけてくるんだろう。普通に感心してしまった。

何度も何度も最後にももう一度言うが、ラストシーン、終わり方が最高すぎてあまりにも後味爽快。手放しで「良かった!!拍手!!」と涙を流しながら言える最高のラストだった。
きっと、晩年までにも辛い闘病生活や苦しく悲しいことがたくさんあっただろうに、映画としてこの最高のシーンで終わらせたのはもう、ずるい。死というバッドエンドにせず、全てを乗り越えて華麗に成功したハッピーエンドにしたのが本当に最高。
でも、そうよね、亡くなったことは事実だから。わざわざ悲しく描かずに、彼の苦悩の末の栄光を描いた方が同情じゃない、意味のある悼みを抱けるよね(自問自答)
フレディもきっとこんな素晴らしい映画に仕上げられた方が喜ばしいのではないかなとか。死者の気持ちを推し量るなんてナンセンスだけど。
洋画って「もうわざわざそんなとこまで描かんでよろしいよ」ってとこまで全部の伏線を回収することに躍起になって終盤が退屈になってしまってるのをちらほら見るから、これは英断。ずるい、と思ったけどやっぱり正しい。
最高の映画だった。何度も何度も映画館で観たい作品。


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