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ハリーポッター翻訳チャレンジ⑦ みぞの鏡

ハリーポッター翻訳チャレンジ7回目は、ハリーがみぞの鏡を見るシーンです!

▼前回までのハリーポッター翻訳チャレンジ

※日本語版は15~20年ほど前に読んだっきりで、おぼろげな記憶があります。すでに松岡佑子大先生翻訳の影響は受けていて、潮永翻訳は自力翻訳とは言い切れません。

1巻目「ハリー・ポッターと賢者の石」(原題Harry Potter and the Philosopher’s Stone)から。

深夜のホグワーツ城。見回りの先生からハリーが逃げ込んだ部屋には大きな鏡、「みぞの鏡」がありました。鏡を覗くと、ハリーの背後にハリーの親族が映ります。1歳で両親を亡くしたハリーの「家族に会いたい」という強い望みを鏡は映しました。

<英文>
 The Potters smiled and waved at Harry and he stared hungrily back at them, his hands pressed flat against the glass as though he was hoping to fall right through it and reach them. He had a powerful kind of ache inside him, half joy, half terrible sadness.

J.K. Rowling , Harry Potter and the Philosopher's Stone

<潮永翻訳>
 ポッター一族はハリーに笑いかけ、手を振った。ハリーはそれを食い入るように見つめ、手をぴったりと鏡に押しつけた。鏡を通り抜けて彼らのもとへ行きたかった。ハリーの胸の中が、強烈にうずいた。その半分は喜びで、もう半分は耐えがたい悲しみだった。

<翻訳しての感想やメモ>

・このHe had a powerful kind of ache inside him, half joy, half terrible sadness.という一文がこの巻で一番美しくて好きです。感傷的に訳さなきゃですね。

・「一族」の使い方合ってる?「ポッター家」だと苗字が変わった人を除いたりしない?そんなことより「ポッター家」の方が分かりやすくていいのか?

・一文目が長い!訳す順番迷うな……感傷的……感傷的になる語順とは……


正解はこちら!


<日本語版>
 ポッター家の人々はハリーに笑いかけ、手を振った。ハリーは貪るようにみんなを見つめ、両手をぴったりと鏡に押し当てた。鏡の中に入り込み、みんなに触れたいとでもいうように。ハリーの胸に、喜びと深い悲しみが入り混じった強い痛みが走った。

「ハリー・ポッターと賢者の石」松岡佑子 訳

<日本語版を見ての感想やメモ>

・やっぱり「ポッター家」の方が分かりやすかったか。あと「ポッター家の人々」の方が沢山いる感じが出てて具体的ですね。

・his handsって言ってるし、「両手をぴったりと鏡に押し当てた」の方が動作が分かりやすい!何度か言ってるけど映像が浮かぶって大事!読者を感傷的にする以前に場面をくっきりイメージできなきゃだよなあ……

・「鏡の中に入り込み、みんなに触れたいとでもいうように。ハリーの胸に、喜びと深い悲しみが入り混じった強い痛みが走った。」やっぱり美しいですね。


映画ではハリーと両親の3人だけが鏡に映り、両親がそっとほほ笑みかけるとても静かなシーンです。原作だとハリーの親族が「少なくとも10人は」ぞろぞろ鏡の中にいて手を振ったりしてきます。映画よりも賑やかですね。


みぞの鏡については英語で読むとさらに面白い発見があります。

英語でthe Mirror of Erised。Erisedは逆から読むとdesirE。desire, 「望み」です。日本語でも逆から読んで「みぞの」鏡にしたんですね。「溝の鏡」だと思ってました……。

そしてみぞの鏡の枠には英語版ではErised stra ehru oyt ube cafru oyt on wohsi.と彫ってあります。何語?って感じですが、逆から読んで整えるとI show not your face but your heart’s desireになります。日本語版だと「すつうを みぞの のろここ のたなあ くなはで おか のたなあ はしたわ」になっています。これも逆から読んでみましょう。


スピード感、臨場感、感情の前にくっきり場面をイメージできる訳が大切!大事な発見でした!


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