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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 4/8号」


日経平均は反発、米雇用統計後の株高好感 中東情勢への警戒緩和も(ロイター)

雇用統計、就業者大幅増もNY株高
5日の東京市場は4日のNY市場大幅安(後述)を受けて、さらに中東緊迫に動揺、日経平均も一時900円安。イスラエルを抑えきれない米国の指導力のなさ、国内も政治の衰退を見せつけられ、あっさりと4万円、3万9千円割れ。そもそもこの程度の調整は予想されていたが、筆者は決算発表が中盤を過ぎたあたりから6月にかけてと想定していた。

5日発表の雇用統計では、米金融当局に利下げを促すようなデータはほとんど見られなかった。その結果、9月より前の利下げを完全に織り込む動きは消えた。

ただ、雇用統計では労働参加率が上昇し、国債価格の下値を支えた。労働参加率は62.5%から62.7%に上昇し、コンセンサス予想の62.6%を上回った。労働参加率の上昇は賃金上昇を抑制する可能性があることを示している。

米FRBの元理事の中には、今回の統計で重要なのは労働参加率だと指摘する専門家もいる。参加率の上昇は良いニュースとし、雇用者数の大幅な上振れにもかかわらず、債券市場の反応がやや控えめなのはそのためだと指摘している。

この日のNYダウは就業者大幅増にもかかわらず、上述したように労働参加率の上昇、平均時給は前月比+0.3%と市場予想と一致を好感して307ドル高、週明けの東京市場も5日の行き過ぎた下げの買い戻しが起こると予想。

方向感無き調整、原油高も圧迫か
4日の米株市場は午前と午後で様相が一変した。ナスダック総合指数は午前に16468ポイントと最高値を更新したと急落に転じ、終値は16049ポイント、高値から2.5%の急落となった。同様にNYダウは2%安。強基調だったSOX指数(フィラデルフィア半導体指数)は3.01%安。VIX(恐怖)指数が16.35,昨年11月1日以来の水準に撥ね上がり、新たな売り仕掛けの可能性もなくはない。ただ、時間外のNYダウ先物は下げ止まっており、続落ムードではないので、雇用統計前の(よくある)ポジション調整かも知れない。

嫌気ないしは警戒材料の一つは原油相場。地政学リスクから強含みにある原油相場は、4日北海ブレント90.65ドル/バレル、WTI86.59ドル/バレル。ともに昨年10月、ハマステロ勃発時以来の高水準。イスラエルが各国大使館に厳戒態勢を敷いたとの報道を受け、イラン攻撃への緊迫感が高まった。
利下げ期待も後退した。ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁が「インフレ率が横ばいで推移するなら、利下げを行う必要があるのか疑問視される」と発言。

ただ、債券利回りは低下した。米10年債利回りは3日の4.429%と4ヵ月間の最高を記録した後。4日は4.301%に急低下。週間新規失業保険申請件数が22.1万件(市場予想21.4万件)と2ヵ月ぶり高水準となったこと、前日3日発表のISM非製造業指数が予想外に低下したことなどが要因と伝えられている。FRBのバー副議長(銀行監督担当)が「銀行は苦境にある商業用不動産セクターからのストレスに長期に渡り直面し続ける可能性が高い」と警告したことも影響した可能性がある。

5日の米雇用統計(非農業部門雇用者増は20万人予想)は30.3万人の増加、失業率も3.8%と前月の3.9%~改善。利下げのタイミングが遠のいている。今週の物価統計でさらに揺れ動く素地がある。米国債利回りは昨年10月に16年ぶり高水準となった後、急低下し、年初からは再び上昇に転じているが、まだ「利上げ懸念」はなく、「利下げ期待」の範囲での幅での攻防にある。

半導体関連の調整が大きくなったのは、”上がっていたから”と言う所か。3月月間の上昇率はエヌビディア+14%、台湾TSMC12%。テスラ―13%、アップルー5.1%と対照的。エヌビディアの年初来上昇率は8割を超えていた。
キッカケは、ロイターが「来週、バイデン政権は蘭ASMLに中国向けサービス業務打ち切り要請へ」と報じたことと見られる。ファーウェイの「国産」先端半導体での躍進を問題視しているようだ。材料錯綜で方向感は無く展開しそうだ。

何かキナ臭い。バイデン再選戦略か、動き慌ただしく
1日に発生したイスラエル軍によるシリア・ダマスカスのイラン大使館周辺攻撃で緊張が高まっている。2日、イランのライシ大統領は軍司令官等7人死亡を受け、イスラエルに報復すると表明した。7人の中にイラン革命防衛隊のザヘディ司令官が含まれた。対外工作部隊コッズ部隊の司令官で、20年に米軍が行ったソレイマニ司令官暗殺以来の大物暗殺。

「何年も前からシリアとレバノンでのコッズ部隊の活動を指揮してきた」と言われ、レバノンのヒズボラの動向に注目が集まっている。米ホワイトハウスのカービー戦略広報報道官は「米国は関与せず、イスラエルから事前通告なし」と言明したが、矛先が米国に向かう可能性もある。緊張への対処か、「180億ドル規模のイスラエルへの武器移転検討」との報道が出ている。

2日、NATOのストルテンベルグ事務総長が突然「ウクライナに対し向こう5年間で1000億ユーロの軍事支援をNATOが行う」提案をした。「トランプ復活への備え」と解説されているが、5月にもと予想されるロシア大攻勢への牽制もあると見られる。NATO首脳会議は7月にワシントンで開催される。ロシア―ウクライナ双方のエネルギー施設攻撃が激しくなっているが、2日はウクライナによる1300km離れたタタールスタンのロシア最大級製油所へのドローン攻撃が伝えられた。原油相場は、北海ブレント一時89.08ドル/バレル、WTIは85.46ドル/バレル。

バイデン-習近平電話会談が行われた。会談は昨年11月以来。台湾、ウクライナ情勢、貿易慣行など協議と伝えられているが、イエレン財務長官の訪中3-9日との発表もあり、何か急いでいる感が強い。大統領再選に向け、ロシアと中国の分断など何等かの仕掛け的動きの可能性がある。

岸田首相が国賓待遇で訪米するが、バイデンに呼び出された感が強い。昨年のLGBT法以来、引き回しが強い。「7月米国で日米韓首脳会談」と報じられ、北朝鮮や中国で何かが起こり、その見返りは日本に要請されるのか、短にNATO軍事支援への参加を求められるのか、良い流れとは言えないムードがある。最近話題となった「岸田首相、電撃訪朝」説や北朝鮮による”拒否”攻防も「バックはバイデン」と囁かれている。
なお、7日から日米豪比の初の軍事演習を行う。フィリピン・パワラン島沖で対潜訓練の予定。中国軍の反発が予想される。

上昇エネルギーには時々市場の売り崩しが必須
少々古い話だが、2月にアジア太平洋地域で最も空売りされた銘柄はトヨタ株だったそうだ(金融サービス会社ヘーゼルツリー調べ)。米州ではテスラ、欧州では高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)。中型株では、仏鉄道車両大手アルストム、米半導体ウルフスピード、アジア太平洋ではダイフクを抜いてイビデンが空売りトップだった。

日本株上昇にはトヨタが原動力の一つだった。世界的HV人気が背景だが、グループ不祥事(ダイハツ、豊田自動織機)が鉱工業生産統計や日銀短観に影響を与え、グループの保有株見直し(先週はデンソーが豊田自動織機保有株を2年半かけて全株売却を発表)で、株式市場に影響を与えている。昔は「トヨタが動けば一相場終わり」と言われた万年割安株だったが、その殻は脱出している。資本効率改善の大きな課題に取り組む代表となっている。

3月29日に第一生命が「保有株を3年間で1.2兆円削減する」と発表し、持ち合い解消売り、期初売りが意識される4月相場スタートとなった。短期筋の売り仕掛けも加わったと見られる。トヨタ株が3月に終値ベースで4.7%上昇の日もあったように、上昇エネルギーには空売りの買い戻しエネルギーが必要と見られるため、時々の売り崩しの動きは必須と見られる。

1日発表の3月ISM(米供給管理協会)製造業景気指数が1年半ぶりに拡大に転じたこともあって債券利回りが上昇。この時点で「6月利下げ開始」期待確率は一時50%を下回った。年内利下げ幅期待は0.65%を下回り(大勢は0.75%だった)、利下げ期待が後退した。つれてドルは強含み展開。基調変化には至ってないと見られるが、引き続き、原油、為替動向に神経質な地合いと考えられる。

先週はイースターからの休み明けでスタート、米市場はNYダウ下落、ナスダック上昇で始まった。最も目立ったのは原油相場の強含み展開。WTI相場は83.71ドル/バレル、5か月ぶり高値、北海ブレントは87.42ドル/バレル、フシ目の90ドル大台が視野に入ってきた。ロシア・ウクライナが双方にエネルギー施設を攻撃し、ロイターがロシアの石油供給が90万バレル/日減と伝え供給難が出ていることが背景だが、この日は「3月OPEC産油量、前月比日量5万バレル減」(ただし減産目標を19万バレル未達)、「メキシコ石油公社(ぺメックス)、原油輸出を一部停止へ」(重質油のマヤ原油のようで、ガソリン増産などへの取り組みの一環とされる)の報道が加わった。

材料錯綜の4月、原油相場攻防から企業決算へ
先々週末の米PCE(個人消費支出)統計を巡っての攻防は、拍子抜けするぐらい無反応だった。市場休場のせいか仕掛け的な動きも発生しなかった。多少、イスラエルのヒズボラ空爆のせいか、WTI原油相場が83ドル台/バレルと強含み、ドル円は151円台で膠着感、この辺りの注意から4月相場は始っている。今週には米企業決算発表が始まる。

29日に発表された3月東京都区部消費者物価指数は(生鮮食品除くコア指数)は前年同月比+2.4%、2月の+2.5%から小幅低下、市場予想と一致した。数値だけ見ると日米の差が無くなりつつある。金利差のギャップ感にどう響くか。ただ、4月は値上げラッシュ。いよいよ24年問題で、運輸、建設、医療現場で働き方改革が本格化する。食品値上げは2800品目を超える。医療・年金制度・再エネ賦課金など”岸田増税”が6月所得税減税に先行する。ただし、運輸業界を中心に、荷物作業の自動化、農産物(おにぎりも)冷凍化輸送革命など、様々な対応策が始動している。何が評価を高めるか注目したい。なお、政府の外国人労働者82万人受け入れ計画には反発の声が強い。

1~3月の世界的な株高は周知の通りだが、意外にも3月はグローバル国債指数が上昇に転じた。アルゼンチン債のリターンが25%を超え、パキスタン、ウクライナ国債も同水準。取り残されているのは中ロぐらいと言われるほど、活況感が広がった。循環物色の一環なのか、短期的な投機攻防の広がりなのか、投資家心理の拡散に驚く。それだけ焦点が無いと言うか、何かに一斉に驚く状況も懸念される。

期替わりの株式需給変動も注目点だが、3月第3週の最大の売り手は個人投資家・現物8727億円だった。機関投資家の運用計画規模を上回る勢いがあるので、市場ムードの方が影響が大きいと思われる。引き続き、日経平均4万円台値固め展開の4月相場スタートと思われたが、前述のようにどうやら仕切り直しのスタートのようである。

■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。

一般社団法人FLSG
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