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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 7/8号」

英総選挙は事前予想通り、日本株は物色広がるか
英国総選挙は、出口調査の段階で、労働党410議席、保守党131議席だったが、結果は事前の世論調査通り労働党圧勝、14年ぶりの政権交代へ。政権安定化を好感し、英ポンドは堅調推移。選挙当日の4日の英株は+0.86%。

7日決選投票の仏総選挙は、中道・左派の候補者調整が進み、RN(国民連合)の過半数獲得は困難との世論調査。マクロン与党は3位に転落するので政権は不安定化すると見られるが、RN政権よりはマシと見ているのか、同じ日の仏株も+0.83%。5日のイラン大統領選決選投票も注目点。

英スナク首相は何故、この時期に敗北承知で総選挙を行ったのか?天皇陛下を大歓待したことと連動しているのか(外国人が6週ぶりに日本株買い転換したタイミングと重なる)、米政治の混乱を想定しているのか、様々な憶測が湧く。妄想の域を出ないが、まさかEU復帰を目指す?東京を香港の代わりにするべく動き始めた?(狡猾なイギリスなら香港奪還も有り得る??)、世界的に問題になっている移民問題、人権問題、脱炭素などに大ナタを奮う可能性はあるのか(トランプ再登板に備える)、米国が薄くなる中で、印豪日との連携を強化してくるのか、などをイメージしながら見て行くことになろう。

TOPIX、日経平均ともアッサリと高値を更新してきたが、未だ活況感はない。東証プライムの値上がり銘柄数が8営業日連続1000銘柄に届かず、新高値銘柄数はTOPIXが高値更新した4日でも142銘柄に止まる、6月最終週の最大買い越しは「証券自己」4194億円で、如何にも期末要因、先物・オプション要因。先週の相場続伸で、先月頃にあった日本株取り残され感は一掃されてきているが、物色の広がりが課題と考えられる。

ステート・ストリート・グローバルの発表によると、今年上半期の米ETF(上場投信)への資金流入は4110億ドルに達した。年間見通しは9500億ドル、1兆ドルに達する可能性もあるとした。テクノロジー特化ETFや成長株ETFが中心で、ボラティリティーが低いETFからは資金流出とされ、やや偏った相場形成の一因と見られる。また、規模的には小さいがアクティブ運用型ETFに1300億ドルが流入、昨年比倍増の勢い。物色動向を左右する可能性がある。

バイデン撤退論再び強まる。政治リスクヤマ場に向かう
再び,NYタイムズ紙が「近日中に世論を動かせられなければ断念せざるを得ないかも知れないとバイデン氏が側近に漏らした」と報じ、ワシントンポスト紙がオバマ陣営でも同様の話がされていると報じたことで、バイデン撤退論が再び強まってきた。週末辺りはヤマ場かも知れない。

市場は様子見ムードを強めている様だ。米投資信託協会が発表した7月2日現在のMMF残高は6兆1500億ドル、1週間で過去最大規模の512億ドルが流入した。ほとんどが安全性の高いガバメントMMFで、CP(コマーシャルペーパー)などを含み相対的にリスクの高いプライムMMFは45億ドル増に止まった。どう展開するか読めず、リスク回避姿勢が強いと思われる。

先週は英総選挙を皮切りに、5日イラン大統領選決選投票、7日仏総選挙(200余の候補者調整で国民連合の過半数得は難しくなったとの見方。ただ、中道派と左派で過半数を維持したとしてもマクロン政権の基盤は弱体化、混乱が待っていると言われている)。

ほとんど話題にならないが、3-4日カザフスタンで上海協力機構(SCO)が開催されている。SCOへのベラルーシの新加盟、カザフスタンのBRICs加盟推進など中ロを軸とする欧米対決軸の拡大を推進しているが、印モディ首相は欠席した。

プーチン露大統領としてはイラン大統領選に気が気でないと思われる。北朝鮮と同様の同盟協定を結ぶべく年初から交渉していたが、ライシ前大統領の死亡で頓挫している。保守強硬派選出で一気に協定締結に持って行きたいところと思われる。

トルコ・エルドアン大統領とも会談。トルコの思惑は中東でイスラエルのパワー強化を抑え込む狙いと見られる。5月に行ったばかりの中ロ首脳会談も開催。5月の人民元・ルーブル取引高が3年ぶり高水準と報じられ、ロシア経済の中国依存が一気に強まっていると見られる(中国の銀行は対ロ制裁に警戒的で、取引に慎重と見られて来た)。

中国も経済対策に躍起。G7などで中国の過剰生産-安値輸出攻勢に警戒的となっているが、EV、ソーラーパネル、鉄鋼などに続いて「次はプラスチックか」と報じられている。20~27年にかけ、エチレンプラントなどに大規模投資を続けているため。米大統領選などの混迷が続けば、表面化する恐れがある。

下期入りで、ややポジション調整的、方向感模索
1日夜のNHK「映像の世紀バタフライエフェクト」はドイツ・ワイマール共和国を取り上げていた。第一次世界大戦敗北で皇帝制が倒れ、当時としては画期的リベラル国家が誕生した。米国資本導入で好況、8時間労働制導入、住環境改善した。自由を謳歌し、退廃的でLGBTQもこの時から始まった。ただ、1929年世界大恐慌で一気に破綻、ヒトラー・ナチスの台頭を招き、再び暗黒の局面に向かった。ワイマール共和国を主導したのはユダヤ人で、排斥運動の一因となった。

欧州で台頭する右派勢力を「極右」と呼び、ほとんどのメディアが警戒姿勢で報じているのは、この歴史が一因かも知れない。フランス総選挙の1回目は、ほぼ事前予想通りで国民連合(RN)は第一党ながら33%で過半数には届かなかった。7日の決選投票では、左派連合(28%)とマクロン与党(20%)が連携を強める姿勢で、依然として混沌としている(500余の議席が争われるようだ)。相場的には一旦買い戻し。仏株は1.09%高。

米国では、民主党がバイデン氏で強行する姿勢。大統領選候補決定を7月21日に繰り上げる動きと伝えられた。また、最高裁がトランプ氏の免責特権を一部認めた。これによりトランプ訴訟4つのうち3つは11月大統領選以降に先送りされると言う。異例の前大統領裁判は事実上棚上げ、トランプ引き摺り下ろしの仕掛けは争点にならず、トランプ有利に働くと見られる。
米株は薄商いながら上昇。テスラとアップル主導で如何にも買い戻し的。市場の一部には「トランプで財政悪化、高インフレ継続」との見方が流されているが、やや煽っている印象。

ブルームバーグによると、米GS、モル・スタ、バークレイズなど大手金融機関が一斉にトランプ政策の見直し作業に入った。目新しい主張では、モル・スタが示した「イールドカーブはスティーブ化」。長短金利差は今は逆ザヤだが、金利差は無くなるか、長期金利が短期金利と逆転し景気減速の見方が転換する可能性を指摘した。
1日の英国債取引で一足早く逆イールド(長期債利回りが短期債より低い)を解消。トランプ云々ではないが、長期金利高止まり観が続く可能性がある。

米GSは「ヘッジファンド、値上がり期待ポジションを手仕舞い、機を逸す」と指摘。FRBストレス審査を終えて銀行株は一斉に増配、JPモルガン株は最高値を更新した。ポジション調整は失敗を含むことを示唆。
原油相場が4月下旬水準に上昇。イスラエルとヒズボラの緊張が続いていることが主因のようだ。

【米大統領選2024】 バイデン氏、撤退しないと強調 圧力強まる中(BBCニュースジャパン)

波乱含みの7月、バイデン撤退論一気に表面化
27日の米大統領選TV討論会は「トランプ圧勝、バイデン惨敗」。既報通り、バイデン撤退論が一気に噴出した。バイデン氏はまだ固執しているが、替わりの候補としてミシェル・オバマ夫人、ジル・バイデン夫人などの名前が取り沙汰されている。タイムリミットは7月一杯程度と見られている。異例の展開なので予想が立て難く、市場が「トランプ再登板」で、どの程度動くかが注目される。

好き勝手な予想が乱舞する可能性があり、早くもトランプ減税継続で景気は底堅く推移とか、インフレが強まるとか、S&P500指数は年末に向け2割程度下落するとか、乱れ飛び始めている。
チョット予想外なのはソーシャルメディア運営会社トランプ・メディア株。17%急伸後一転して売られ終値は11%安。トランプ返り咲きで恩恵を受けるかどうかの評価も割れているようだ。

イラン大統領選は予想外の結果となった。5日の決選投票を見ないと分からないが変化する可能性がある。予想外の点は、40%の低投票率にも関わらず欧米対話路線の改革派が1位を取った点。一般的に国民の不満が爆発して改革派が優勢になると見られていた。保守強硬派の支持層に不満が溜まっていて投票に向かわなかった可能性がある。「イスラム革命推進、イスラエル殲滅」の革命防衛隊が支持を失えば、紛争リスクは低下する。

25日にイスラエルの国家安全保障顧問が「ヒズボラとの紛争解決に努める。外交的解決を望む」と発言しており、イランの体制転換可能性を見越したものだったのか注目される。
先々週末に仏国債は3.33%まで売られ(インフレ率が高かった昨年11月以来)、警戒ムードが強かったが、週初ユーロが対ドルで買われているようで、売り方が買い戻している可能性がある。RNは単独過半数は無理なので、どういった連立内威嚇になるのか、混乱が激しくなるのか、見通しは立っていない。

4日投票の英国総選挙で圧勝予想の労働党のスターマー党首が「銀行増税はせず、経済成長重視」を表明したことで、英国は比較的スムーズに政権交代が行われるとの見方になっている。労働党はマニフェストで、エネルギー会社超過利潤税延長、PE投資会社のボーナス課税、私立学校授業料に対する付加価値税免除措置の廃止などを並べ、銀行や投資家を増税対象にするとの懸念があった。一応、打ち消した格好で、政策自体は保守党と大差ないかも知れない。ただ、英エネルギー大手BPが脱化石燃料路線を修正している。新たな洋上風力発電プロジェクトを停止、新規採用を停止、低炭素プロジェクトへの投資を減速させる方針を示した。トランプを意識しているのか、労働党を意識しているのか分からないが、広がる可能性がある。

米市場は独立記念日明けの5日、最大イベントだった6月雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数は前月比20.6万人増と、健全な伸びを示した。失業率は前月の4.0%から4.1%に上昇し、2021年11月以来の高水準となった。昨年7月に付けた低水準の3.5%から0.6%ポイント上昇した計算となる。非農業部門雇用者数の予想増加数は19万人増、失業率は4.0%だった。5月の非農業部門雇用者数は27.2万人増から21.8万人増に、下方改定された。また、時間当たり平均賃金は前月比0.3%上昇。5月の0.4%上昇から減速した。
雇用統計発表後、金融市場が織り込む9月の利下げ確率は約72%。市場関係者には12月に2回目の利下げが実施される可能性があるとの見方が強まっている。



<お知らせ>
【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 7/29号」は都合によりお休みさせていただきます。


■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。

一般社団法人FLSG
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