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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 6/24号」

ウクライナ支援巡って様々な駆け引きとの見方
ジャーナリストの長谷川幸洋氏が「日本のウクライナ支援は一体幾らなのか」を解説している。
それによると、先般のG7時の45億ドル(約7000億円)は昨年12月に10億ドル支援時に表明していた「45億ドル追加支援の可能性」を実行したもの。
独キール研究所が集計している各国の支援額で日本は第5位78億ドルと合わせ、合計123億ドル(約1.93兆円)。

長谷川氏は4月岸田訪米時の米国のウクライナ支援(融資が中心と言われる)に日本が債務保証したとの説には言及していない(米国はトランプが賛成に回り600億ドル支援を急に決めた)。一般的に支援は無償援助、融資、債務保証の3パターンがあるとされるが、内訳は公表されていない。長谷川氏は岸田首相が全く説明しないことを強く批判している。日本のメディアも同様、記事にしない。
長谷川氏は指摘していないが様々な憶測が飛ぶ。

1)日米金利差が縮小しているにも関わらず、根強い円安が続くのは、日本の財政事情悪化を見越したもの。資産負債両建てで国債発行額の大きい日本は利上げし難い構図にあり、ウクライナ巨額支援は利上げさらにし難い環境を作る。実際、日銀は6月に利上げに動けなかった。

2)仏が急遽7月総選挙に踏み切ったのは英国のマネをしたのではないか。英国はしばしば政権交代を政策方向転換に使う(親中だったキャメロン政権崩壊など)。スナク首相落選説も出ている情勢で労働党政権への交代は必至。現在、米、EU、独に続いて第4位の支援額にあるが、新政権で絞ろうとしているのではないか。ケチ臭く支援順位10位に止まるフランスも財政悪化を理由にウクライナ支援を絞ろうとするための方策との見方がある。

3)ロシアメディアのインターファックス紙が妙に日本のウクライナ支援をかなり詳しく報じていたようだ。プーチンは北朝鮮を使って日本に圧力を掛けに来たのではないか。

情勢はウクライナの戦闘状況で変わる。米国やスウェーデンなど欧州各国からの武器支援が届き始めており、ウクライナ劣勢。ロシア攻勢が止まるかも知れない。電力インフラなど破壊され、ウクライナの経済状況は厳しい状況にあり、「ウクライナ・デフォルト」説が飛び交う。
日本としては非軍事的支援で日本企業により多く回収させる手立てしかない。経済再建に動けるかどうかで日本の評価は変わるものと考えられる。代表的動きは電力インフラ、地雷除去、住宅・道路再建、農業支援などが有力分野と思われる。

ロシア脅威高まる
24年ぶりに訪朝したプーチン露大統領は北朝鮮と包括戦略条約を締結した。一言で言えば、北朝鮮を支援するとの口実で軍事行動に介入する布石となる。北朝鮮が公式な後ろ盾を得たことで、イランをバックとするハマス、ヒズボラ、フーシ派のような行動を起こすリスクが高まったと受け止められる。北朝鮮はウクライナ戦争でのロシア支援を梃子に経済立て直しを目論んでいるものと見られる。

増長姿勢の表れは、対韓国で汚物風船を飛ばしたり、38度線付近での地雷埋設、塀建設など。ただし、地雷爆発で数名の死傷者が出ていると報じられ、お粗末さは相変わらず。
最近報道されることはほとんどないが、金体制打倒を目指す勢力「自由朝鮮」と「新朝鮮」があると言われている。前者は17年に暗殺された金正男氏の家族を囲っているとされる。後者は北朝鮮内部の組織とされるが、実態は不明。テロ活動を誘発するかも注目点となる。

プーチン訪朝団に宇宙開発公社ロスコスモスの社長等が参加したことで、ロシアの宇宙・ミサイル技術の供与も注目される。北朝鮮は5月末に新型エンジンによる軍事偵察衛星打ち上げに失敗した。レベルアップが進めば脅威となる。

ロシアの野望は昔から”不凍港”を求めての南下作戦と言われる。太平洋戦争終結時に狙った北海道占領を諦めていないと言われる(日本軍が占冠島攻防で守った)。黒海のクリミア半島と同じ位置付けと見られている。アイヌ問題を含めた工作支援活動を折に触れて展開しているとされる。案外、都知事選で「朝鮮学校無償化」、「横田基地(朝鮮戦争時の国連軍司令部がある)撤廃」などを主張する蓮舫氏陣営に不利な材料となるかも知れない。

BofA(バンクオブアメリカ)の6月アジアファンドマネージャー調査(18日発表)で「日本株の活気失われつつある」と報告された。
「日本株は既にピークに達した」との回答は5月調査の10%から29%に撥ね上がった。「12か月後の期待リターン」は20%がマイナス予想(5月調査13%)。ただ、「オーバーウェイト」は34%(同44%)で、依然アジア市場でトップ。関心の高い為替や日銀政策に加え、東アジアの安全保障問題が加わるか注目される。リスク回避にも日本の安全保障能力評価にもつながる材料だが、台湾有事リスクを含め、日本の軍事力を中心とする安全保障能力評価につながる展開を期待したい。

日本株取り残され感
米休場(19日奴隷解放記念日)前でも米株上伸基調が続き、日本株に出遅れ感が出ていた。明確な理由と言うより、何かモヤモヤ感がある。景況感や何かシナリオと言うより、需給調整要因が背景と思われる。
日本のGDPはマウイナス成長で、企業不祥事が相次ぎ、岸田政権は風前の灯火状態で、買い材料がなかなか見当たらない。株主総会シーズンで、通過後に企業の積極姿勢転換待ちと言ったところか。

農林中金の今期最終赤字が3倍の1.5兆円に膨らみ、今期中に米欧債10兆円売却と報じられた。運用失敗を小手先で乗り切ろうとしたが、フランス波乱などが追い打ちを掛けた可能性が考えられる。日本全体の23年末の仏債(社債を含む)保有規模は25兆円、米債159兆円に次ぐ規模とされる。農中がどの程度保有しているのか分からないが、投信や生保など広範囲にポジション調整に追われている印象がある。なお、4月の米国債保有高は1兆1500億ドル、3月比380億ドル減少しているが、これは日本のGW為替介入に絡む動き(外為特会?)と見られている。

日米10年債利回り差が5月以降ジリジリ縮小している。それにも関わらず、ドル円相場は156円から158円処で膠着相場(21日に159円台突入)にあるのでギャップ感が広がっている。CFTC(米商品先物取引委員会)の円売りポジションが膨らんでいるためと見られ、潜在的に一気に円売り解消圧力が掛かるリスクがある。このところの米10年債利回り低下に反応していないが・・・。

世界最大級ハイテクETF・ステート・ストリート「テクノロジー・セレクト・セクターSPDRファンド」(運用資産723億ドル;11兆円規模)がリバランスを行い、エヌビディア株100億株購入と伝えられたことでエヌビディア株が急伸、マイクロソフトを抜いて時価総額トップに躍り出た。調整前の保有比率はマイクロソフト22.5%、アップル21%、エヌビディア6%。21日の完了後はマイクロソフトとエヌビディアが21%、アップルが4.5%。アップルが売られる展開。

AI革命で、「エヌビディアは単なる半導体株ではない」と言われるが、エヌビディア株上伸で半導体株全般が買われる展開(昨日のSOX指数は+1.35%)。アジアでは台湾加権指数が追随しているが、日本の半導体関連株は連動性が今一。半導体関連株高で米株に追随しても如何なものかと思うが、市場ムード改善インパクトが出ると見られる。

仏売り一服、S&P500指数最高値更新
仏国民連合(RN)のルペン氏が「RN勝利でもマクロン大統領を追い出すつもりはない」と発言したことをキッカケに仏売りは一服した。レーンECB専務理事が仏国債救済の必要性はないと述べたことも沈静化に働いたと見られる。レーン氏は「最近の市場混乱は無秩序ではない」とした。無秩序な市場崩壊を狙う売り方にとっては一旦様子見材料となる。

仏株はジリジリ値を上げ週明けは+0.91%、伊+0.74%、独+0.40%。ただストック600欧州指数は+0.1%と横ばいで積極的に買うムードにはない。
直近の世論調査でRNは33%、連立希望の共和党と合わせ37%。左派連合が28%、マクロン与党連合は18%。過半数を押さえるために、ルペンーマクロン連携は有り得る。1回目投票は30日、決選投票は7月7日。

一足早く7月4日投票の英国では、最新世論調査で労働党46%、保守党21%と差が拡大。「リフォームUk」は12%ほど。22年のトラス・ショックのような混乱は予想されていない。

元々の政治不安定化は米大統領選の老老対決にあると思うが、米市場はどこ吹く風、むしろ逃避資金を招いている観がある。週明けからナスダック17857ポイント、S&P500指数5473ポイントと終値ベースの最高値を更新、S&P500の高値更新は今年30回目。米GSを皮切りにS&P500指数の年末予想引き上げが相次いでいる。GSは5200ポイントから5600ポイント、エバーコアは4750から6000ポイントに。ハイテク大手5社の好調やAI革命を要因に挙げているが、現状追認観は否めない。下期の運用計画を立てる時期で、株売り姿勢は陰を潜める。

中国の5月経済統計が発表されたが、強弱交錯。むしろ。先週来中国南部で豪雨となっており、福建省、広東省などで水害が多発している。1日に102回、大雨警報が出された15日がピークだったようだが、雨雲の一部が沖縄、九州から日本に流れ込み始めており、そちらの方が警戒要因か。

■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。

一般社団法人FLSG
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