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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 1/29号」


トランプ氏支持、バイデン氏をリード 新たな候補者望む声も ロイター

トランプ優勢、EV関連業績悪化でEV逆風
米2州での共和党予備選後、初の米世論調査が発表された。
22-24日にロイター/イプソスが行ったもので、トランプ支持40%対バイデン34%で、拮抗状態から水が開いた。第三候補ケネディ氏を入れると、トランプ36%,バイデン30%,ケネディ8%。もっとも、老老対決批判は約67%と依然高い。バイデンは再選を目指すべきでない70%、トランプは出馬すべきでない56%。ただ、トランプ対抗馬のヘイリーはトランプ64%に対し、19%の支持しか得られていない。トランプ批判からか、政策が民主党と変わらないと評判が悪い。まだ波乱含みと言える。

イエレン財務長官が「第2次バイデン政権はトランプ減税を一部延長する(年間所得40万ドル未満の個人対象。17年成立のトランプ減税は25年に期限を迎える)」と表明するなど、トランプ吸引力が出始めている(「国境の壁」などでもトランプ追随の公算。

トランプ有力で、パリ協定離脱実績から再エネなど脱炭素に逆風が吹くと見られている。とりわけ、EV化率70%を目指すバイデンに対し、トランプは目標・補助金などを廃止すると見られている。折しもの北半球悪天候もあって、世界的にEV逆風の波が広がる公算が大きい。EVが生き残るためには、充電時間、航続距離、一気の低価格化、自動運転一体化など大幅な革新が必要と見られている。

例えば、日本でも昨年10月から千葉県柏市、東大が中心になって公道充電実験が行われているが、都市内交通手段としてのブレークスルーが求められている。トヨタの全固体電池への期待も大きい。

足元でEV関連の業績悪化が目立っている。24年見通しの悪化を受け、25日のテスラ株は12%下落。日本市場では「取引先皆赤字」(永守社長)のニデック(旧日本電産)が一時6%超下落。米株市場全体はIBMの2013年6月以来の高値などAIブーム、半導体株活況(ただしインテル除く)などでS&P500指数の連日高値更新が続いているが、EV関連は取り残される公算が大きい。また、EVで世界制覇を目論む中国経済への逆風要因になるとも見られている。

中国急伸、米金利上昇も株は高値攻防
24日の東京市場で新発10年物国債利回りは0.74%と前日比10.5bp上昇、12月12日以来の高水準を付けた。日銀のマイナス金利解除観測の高まりと解説されているが、決定会合前の金利低下思惑(円安進行思惑)のポジション調整の印象を受けた。23日の会合後の会見で植田総裁が「物価上昇確度が高まった」と述べ、タカ派姿勢が強まったと受け止められているようだ。

米金利も上昇している。24日の2年債利回りは4.376%、10年債は4.178%、最も目立つのは30年債4.412%、2年債と逆ザヤを解消している。ドル指数は0.2%安であまり反応せず(年初来約1.7%上昇)、債券市場でのポジション調整の色合い。

余談だが、”強いドル政策(裏で大幅円高)”で知られるルービン元財務長官がブルームバーグテレビジョンに出てきて「米財政赤字は酷い状況、増税が必要」と述べたと伝えられた。おそらく、減税志向のトランプ政策批判と見られる(2000-2022年に膨らんだ連邦債務の約60%は共和党政権としている)が、イメージ的には円安派に心理的圧迫を与えよう。

24日、前日に続き中国株が急伸した(前日の市場テコ入れは後述)。香港ハンセン指数+3.56%、上海総合指数+1.80%。前日に馬氏等5000万ドル取得と報じられたアリババ株が+7.3%と急伸、異例の中国人民銀行総裁が預金準備率0.5%引き下げ(2/5から。通常は国務院が先に表明する。過去は0.25%引き下げで今回は大幅、20兆円規模の資金流動性を高めると見られている)などが背景。

最も効いた可能性があるのは、ヘッジファンドに対する空売り規制。詳細は伝えられていないが、ロイターは「株価指数先物市場での空売りを制限するよう一部のヘッジファンドに要請した」と伝えた。投機目的や無謀な空売りとしているが、既存の空売りポジションの手仕舞いに発展した可能性はあろう。

一方で中国金融当局は「外資誘致強化、法的権利保護へ」と表明しているので、相変わらず、言っていることとやっていることの落差が大きい。
23日付ロイターは「中国を見限る国際投資家、当局の対策表明にも冷淡」との記事を配信している。ドイツ連銀は24日、中国経済危機はドイツ成長率1.5%押し下げとの試算を発表した。秩序だった撤退も相当な打撃を受けると警告した。中国経済ダメージ議論が始まる可能性がある。

中国株急反発も持続性懐疑的
23日、日銀現状維持を確認した後、やや円高を伴って日本株反落場面となった。為替を伴ったことからCTA(商品投資顧問業者)の一部手仕舞いが有力視されるが、中国株が急反発し、香港のファンドなどが中国市場に一部資金を戻した可能性も考えられる。

24日はカナダ、25日はECBの金融政策会合で据え置き。そして週明け30-31日が米FOMCと金融政策の見極め局面が続く。米国はその前に10-12月GDPが発表された。GDPは年率換算で前期比+3.3%、事前予想を上回りドルが買われドル指数は6週間ぶりの高値を付けてたが、金利先物市場が織り込む3月利下げ確率は47%に低下(2週間前80%)した。商務省が朝方発表した12月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比2.6%上昇した。伸びは前月から横ばいで、3カ月連続で3%を下回った。これで金利先物市場では5月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)で最初の利下げが決定されるとの見方がなお大勢となっている。市場が織り込む5月1日までに利下げが実施される確率は約90%。  

米GS(ゴールドマンサックス)によると、米ハイテク株高は6日までの週に売っていたヘッジファンドが18日現在で買い転換したことが背景。ハイテク株、金融株、工業株を買い、ヘルスケア、公益、エネルギー株を売ったと報告している。金融ラリーや決算ラリーで変化が出るかが焦点。

23日、中国当局の市場テコ入れ策が伝えられ、23日の香港ハンセン指数2.63%高、上海総合指数0.53%高。ただ、香港は一時3%超の上昇から、やや伸び悩んだ。インパクトのあったのは、安定基金として約2兆元(41兆円)用意と伝えられたことと見られる。香港市場を通してとのことで香港の反発が大きくなった(当座、3000億元確保との報道もある)。 

他にも、韓正副主席がHSBC会長に香港金融センター強化で協力要請、国家統計局は経済統計改ざんの捜査・処罰強化、株売り越し規制の指導対象を保険会社などに拡大、ジャック・マー氏等がアリババ株5000万ドル購入(10-12月期の話だがNYタイムズ紙が報道)などに広がっている。ただし、ブルームバーグは「低迷経済を根本的に修復しなければ短命に終わる」と冷ややかな見方を伝えている。

蛇足だが、中国株でのけが人ニュースが出ている。一つはシンガポール拠点のヘッジファンド、アジア・ジェネシス。中国ロング+日経平均ショートが裏目に嵌まり、1月だけで-18%となり、マクロファンド閉鎖を発表した。もう一つは韓国で中国H株指数連動債。ノックイン価格を下回り、損失発生が続出していると言う。市場規模は115億ドル、大半は個人に販売されている。中国株への投資マインド復活はなかなか難しいものと受け止められる。

一転、トランプ期待、デサンティス撤退、トランプ支持へ
驚いたことに、米共和党予備選からフロリダ州知事・デサンティス氏が撤退、トランプ支持を表明した。先に撤退したサウスカロライナ州選出の唯一の黒人上院議員スコット氏などもトランプ支持を表明、一騎討ちながらヘイリー氏は一気に苦しくなった。トランプ氏が抱える4つの刑事裁判も、米国ではトランプ追い落としの策謀、バイデン勝利の前回大統領選は不正によるものとの見方が根強く、「共和党有権者の大多数がトランプにもう一度チャンスを与えたいと思っているのは明らか」(デサンティス氏撤退表明)との認識。

トランプ対バイデンだとトランプが勝つとの世論調査も後押しになっていると見られる。背景には、「トランプなら戦争を止めさせられる(財政負担も含め)」、「中国の世界制覇の野望を止めたのはトランプ、正しかった」、「米株の上昇はトランプ勝利の16年末から始まった」などの漠然としたトランプ期待があるものと思われる。人事(ペンス前副大統領は離れている。ポンペイオ前国務長官は戻るかも知れない)を含め、トランプ発言が揺れている(株価上昇は富裕層が富むだけで良くないと言いつつ、前回は富裕層減税を行った)ので、”米国第一”の基本路線以外は未知数な面がある。ただ、足元のS&P500指数の2年ぶり高値に波及している可能性はある。

バイデン・べったりと揶揄される岸田政権は苦しくなると見られるが、日本企業はトランプ対応に動き始めている可能性がある。先の日本製鉄-USスチール買収に続き、積水ハウスが米戸建て住宅事業のMDCの買収に動いた(約7200億円)。既に米国内事業の強化に動いている企業も含め、北米事業の成否が企業評価を左右すると考えられる。

先々週のダボス会議は話題性も元気もなく終了した印象だ。代表例として、サントリーHDの新浪社長は「インド事業の拡大進める一方、中国は慎重にならざるを得ない」。グローバリストの集まりで反トランプと思われるが、対抗姿勢は見られなかった。新浪氏は「3月か4月にも岸田首相の訪中に期待」と述べているが、首脳会談で打開できるものではない。トランプ圧力に中国がどう動くかに焦点が移りつつある(習主席が独裁体制を変えるとも思えないが)。トランプはパリ協定脱退など、反環境派。EV失速などに拍車が掛かる可能性がある。これもダボス会議が元気の無かった一因と思われる。

19日、BofA(バンクオブアメリカ)は17日までの週間データを発表。日本株には18億ドルが流入、12週ぶりの大きさと発表。日本側データから見ると少ない印象も受けるが、「海外勢が中国株を引き続き売却、中国以外ならどこでもと言う状況の恩恵を受けている」と説明した。ただ、「日本の真の強気は円高、株高だ」としており、円安相場には懐疑的な姿勢も示した。中国株がユックリ沈みながらの米株連動相場が想定される。

■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。


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