【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 7/22号
トランプ銃撃、ユックリとトランプラリー。シフトか
日曜朝に飛び込んできた「トランプ銃撃」ニュースに覆われた。トランプ氏は左右に向く時、少し首を傾げる。映像解析で2秒前に右に向き、コメカミ辺りを狙った銃弾が耳に逸れ、難を免れた様だ。星条旗をバックに拳を突き上げた画像がTIME誌表紙などを飾り、トランプ優勢が一段と強まっていると見られる。
民主党には「バイデンの失敗」論調が重荷になると見られる。
”トランプを標的にしろ”のキャッチコピーは直ぐに取り下げたが、警護の不備としてシークレットサービスのチートル長官への批判が強まっている。同長官はバイデン氏の友人(前歴はペプシコ)で「黒人女性」優遇人事の象徴の一つ。カマラ・ハリス副大統領と言い、比率だけを重視した無理なバイデン人事が行政執行能力の低下を招いていると批判が高まっている。チートル長官が直ぐに記者会見しなかったことが火に油を注いだ。
”確トラ”で、大統領選でのトランプ優勢が強まった。焦点は、勢いを増した共和党が上下院とも支配する構図。トランプ政策の確度が高まる。副大統領候補に2世代も3世代も若いバンス上院議員(オハイオ州、39歳)を選んだことも勢いを増す要因と受け止められている。同氏は当初のトランプ批判から強いトランプ政策支持に転じた。ウクライナ支援に批判的な事でも知られる。米国内のトランプ政策よりも欧州などとの摩擦懸念が強まる可能性はある。
金融市場の「トランプトレード」が強まる可能性が指摘されている。初日は材料株物色的な動き。トランプ・メディア株が一時50%急伸、石油掘削関連、仮想通貨関連、民間刑務所運営株なども買われ、再エネ関連などが売られた。
もっとも、株高には好材料が並んだことが大きい。金融株決算の先陣のGSは第2四半期利益が前年比倍増強、トレーディング収益などが押し上げた。モル・スタが買い推奨したアップル株が史上最高値更新、資産運用大手ブラックロックの第2四半期末運用資産は10兆6500億ドルと過去最高、ETFへの資金流入などが背景。アマゾンが16-17日に開催する有料会員向けセール「プライムデー」の売上高見通しを140億ドル、過去最高見通しと発表、ベンチャーキャピタリスト出身のバンス氏を好感してか、ラッセル2000指数の上伸も目立った。
トランプラリーの一環か、小型株急伸
米株式市場の中小型株指標とされるラッセル2000指数は16日+3.56%の急伸。上昇が目立ち始めたのは先週の米CPIで利下げ期待が戻り始めた辺りだが、5営業日の上昇率は10%強、ブルームバーグによると2011年以来とのこと。
朝方、海外からまとまった買いが入ったと言い、対応する可能性があるのは仏CAC40指数1.87%下落。内閣が総辞職したが新内閣のメドは立っておらず、オリンピックは暫定内閣で対応すると言う。欧州からのシフトが考えられる。また、CPI発表前に「ヘッジファンドとトレーダーはCPIに先立ち、小型株ショートポジションを記録的に積んでいた」とされ、買い戻し相場の可能性もある。なお、日本株でラッセル2000指数に連動し易いのはグロース指数、次いでスタンダード指数。
小型株買いの大きな要因は利下げ期待が戻ってきたことと解説されている。16日の債券利回りは2年債が一時4.409%、10年債は4.167%、3月中旬以来の低水準。トランプ政策は減税や高関税でインフレ懸念が高まるとの見方がある一方、「石油増産でガソリン価格を引き下げる」と主張しており、原油相場の低下に連動している可能性がある。WTI相場は80ドル/バレルを割り込んできた。16日発表のカナダ6月CPIが前年同月比+2.7%(5月+2.9%、市場予想+2.8%)となり、7月24日の政策会合でカナダ中銀は6月に続き、連続利下げに動くとの見方が強まったことも、利下げシナリオを強めたと見られる。
拍車を掛けたと見られるのが、副大統領候補にバンス上院議員が選ばれたこと。同氏は巨大テック企業規制強化で知られるカーンFTC(連邦取引委員会)のカーン委員長を支持。2月にX(ツイッター)に「延び延びになってきたグーグル解体を実現する時が来た」と投稿。社会の情報独占的管理を批判した。バンス氏の経歴は、エール大卒業、弁護士で企業法務を手掛けるシドリ―オースティン法律事務所に勤務経歴がある。シリコンバレーでベンチャーキャピタリストで、トランプ氏の資金集めに協力してきた。
もっとも、トランプラリーは「いいとこつまみ食い」の様相がある。早くも「トランプ氏、パウエルFRB議長の解任求めず、新財務長官にJPモルガンのダイモンCEO検討」と報じられ、早くも組閣ムードだが、ロイター/イプソスの世論調査で、有権者の80%が「米国は制御不能なカオス」を懸念。混沌とした不透明感も続いている。
半導体関連崩れ、円安基調に変化
上半期決算の6月末を高値圏で通過すると、7-9月相場で崩れるパターンがある。いわゆる”年央高”パターン。9.11やリーマンショックのような歴史的事件の場合もあれば、単なる需給調整の場合もある。今年の場合、米政権交代を睨んだ政策転換の様相となりつつある。
17日、アジア市場から半導体関連が崩れた。ブルームバーグが「米政府は同盟諸国に対し、中国に先端半導体技術の提供を続けるなら、最大限の厳しい規制適用を検討している」と伝えたことが背景。
バイデン政権は「中国に甘い」との批判があり、トランプ攻勢に対抗せざるを得ないとの見方が背景。その規制適用の代表は、この日決算発表を行った蘭ASML(最先端露光装置で独占的)、日本では東京エレクトロン、台湾TSMC、英アーム、米エヌビディアなどが総崩れとなった。
ASMLの中国ウェイトは49%、東京エレクトロンで約40%。半導体好景気は中国の猛烈投資が支えていた面があり、その崩壊リスクが意識された。先に、主に欧州高級ブランドが中国需要不振で崩れており、類似のパターンと受け止められる。
トランプ氏が「台湾は我々のチップビジネスの約100%を取った。台湾は我々に防衛費を支払うべきだ」と述べたことが伝わった。台湾行政院長は「防衛により多くの責任を負う用意がある」と表明した。対日政策も同様と思われ、対中制裁強化、同盟国の防衛強化トレンドが背景にある。
ドル円相場が一時、NY時間で156.09円に円が急伸した。11-12日の日本政府の介入と見られる動き、FRB関係者が利下げが近づいていると発言したこと、河野デジタル担当相が「日銀は利上げすべき」と発言したことなどがこじ付け的に材料視されているが、思惑的な円安シナリオが崩れ始めたと見られる。
円安は4月岸田訪米後に加速した。4月末GWから防衛的為替介入を実施。岸田首相が米国に巨額ウクライナ支援(融資分)の債務保証を行ったとの思惑が背景。支援はドル建てで、日本政府は巨額ドル手当てを行わなければならなくなるとの思惑だ。当時は「ウクライナ8月デフォルト説」もあった(6月にJPモルガンが否定し、円安圧力が弱まっていた)。表面上の円安理由とされる日米金利差は縮小気味にある。
16日夜、共同通信が「ロシア凍結資産活用のウクライナ支援で日本が33億ドル負担する方向で調整に入った」と報じた。総額500億ドル規模の支援で、EUと米国が200億ドルずつ、残り100億ドルを日、英、加で負担する。凍結資産の大半は欧州にあるとされ、日、加などは過重負担と見られる。トランプ―バンスは「ウクライナ支援打ち切り」意向を表明しており、バイデン政権主導でウクライナ再攻勢姿勢を強めたい思惑があると思われる。
ロシアではロストフ原子力発電所の故障が報じられている。クラスノダールでは100以上の変電所が故障、100本の道路が停電などと伝えられる。詳細は不明だが、何が起こるか分からないムードが支配的。混沌感の中で調整が進もう。
<お知らせ>
【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 7/29号」は都合によりお休みさせていただきます。
■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。
一般社団法人FLSG
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