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言葉の奔流を泳いで、月を見上げた日の日記

夜中に目が覚めることが多いので、いつも目が覚めると一瞬「何時だろう?」と思ってからスマホを見るクセがついている。今日は大分朝に近づいている感じがしてから確認したら、3:49だった。トイレに行って、麦茶を飲む。もう、このまま起きてもいいかもしれない。起きて終わってないいろいろなことをやる時間にしてもいいかもしれない。そう思う頭とは裏腹に、身体はベッドに向かい横になる。

もうひと眠りしようと思いながら、Kindle本を開く。発達心理学者の波多野完治著『文章心理学入門』を読む。文章を書くとき、脳の中で何が起こっているのかを知りたくていろいろ探しているときに見つけた本だ。まだ前半だが、自分が苦手だなと思うタイプの文章はこういう原理で成り立っているのかという部分に納得したら気持ちがゆるんだのか、すぐに落ちていた。

スマホのアラームの振動で起こされたときは6:25。猛烈に眠い。スヌーズを押してまた寝るを4回繰り返し、6:45に起き上がる。カーテン越しに今日も陽光が強いことを感じる。カーテンを開けるも眩しくて目を開けていられない。横を向きながら窓を開ける。少し下がった位置にあるお隣の、緑色の瓦がピカピカとその光を反射していた。

リビングでは長男がテレビを見ながら朝食を食べていた。「MIU見るの?」「いや、そんなに時間ない」「あ、そ」と言葉を交わし、キッチンへ。炊飯器に無洗米ともち麦と水を入れてスイッチを押す。また部屋に戻り、今日のカードを引く。「ペンタクル9逆と星の逆」、最近リバースが多いなあと思いながら、解釈に迷ったので本を見る。「自分をよく見せようとしちゃうかも。実現可能なことをしよう」とメモする。

その後、呼吸法を15分間。吐く息を長めにしたり、自然な出入息を感じたり。とにかく次から次へと思考が浮かんでくるので、その度に感覚を頼りに今ここに戻ってくる。マインドフルネス瞑想療法士講座の課題で、毎日やることが増えた。呼吸法、自己洞察、日記……。生活の中で当たり前になってしまえばいいのだが、今はまだ意識しつつ取り組んでいる。

またキッチンに戻って朝食の準備。塩サバの切り身を焼いて、昨日とっておいただし汁で大根の味噌汁を作る。昨晩作っておいた小松菜のナムルを小鉢に盛り、長芋のとろろ汁に卵を落として海苔をちぎって散らす。一汁三菜、健康的な朝ごはんだ。炊きたてのもち麦ご飯にとろろ汁は、結構なごちそうだ。ソファーに座り、ドラマ『MIU404』を見ながら食べる。菅田将暉演じるクズミのえぐさがいかんなく発揮されている。いよいよ来週最終回か。どんな決着がつくのだろう。

ドラマを見終えた後は一通りの身支度をして、観葉植物に水をやり、コーヒーを淹れてからマグカップを持って自室に戻る。56例目のコロナ感染が確認されたと市からのメールが届いている。14万人の市で56人ということは?0.04%の感染率か?と思いながら、ここまでの行動をevernoteに記す。

9:40、Zoomにアクセスする。10:00からは月一で主催している哲学対話だ。今日のテーマは「つながり」で、参加者は10名。初めましての方も、何度目ましての方もいらしたが、高校生が一人参加してくれたことがとてもうれしかった。親御さんに言われてなのか、本人の意思かはわからないが、彼らの言葉にはこちらが学ぶことがたくさん含まれている。前提をゆさぶってくれる。

今日はかなり充実したやり取りがされていた。参加者みんなで一緒に考えて深まっていく感じがすごくあった。いくつもの視点でものすごく考えることができた。時間が来てもまだまだ話したいという気持ちだったが、4分すぎて終了とした。話足りなさがいいのだ。

終了後、13時までTさんと情報交換。脳が興奮気味だから話が止まらない。いくつか質問を投げかけてもらったおかげで、興味がとっちらかっているなかでも、ある程度の方向性が見えてきた感じもある。通話を終えてすぐ、やり取りのなかで出てきた宮本常一の『忘れられた日本人』のkindle版を購入した。ある種のアンカーとして。

ずっとPC画面を見ていたので、頭が鈍く痛い。窓から、一番遠くに見える外環道に目をやる。行き交う車が米粒のように小さく見える。空はぱきっと気持ちのよい青と白。最近は青の色に奥行きが出てきたように思う。

朝食をしっかり食べたのでそんなにお腹は空いていなかったが、お昼にしよう。キッチンに行ってパスタをゆでる用にフライパンにお湯をわかす。小さいフライパンに業務スーパーで買った冷凍ひき肉と冷凍の玉ねぎみじん切りをパラパラと入れて炒める。火が通ったらレトルトのミートソースを入れ、ケチャップを少し足す。ゆであがったパスタにオリーブオイルを少し絡めて、ミートソースをかけ、パセリを散らす。昨日作っておいたツナ入りキャロットラペを山盛り小鉢に持る。

Netflixで「バキ」を見ながら食べる。まだあまり世界観に魅了されていないが、長男が「バキにはすべての男が好きな要素がつまっているんだよ」とイチ押しだったので(この多様性の時代、異論がある方もいるかもしれないが)、もうしばらく見てみるつもり。

食べ終わってアニメを見ながらぼーっとしていると、家の電話が鳴る。嫌な予感。なぜか4回鳴って切れる電話が多いので、6回鳴ってから出た。次男からだった。私が自室に置いたままのスマホへの連絡に気づかなかったので家電にかけてきたのだ。

バイクが途中で動かなくなっちゃったので、保険証書の写真を撮って送ってとのこと。一瞬、事故ったのかと思ったので、ちょっとほっとする。保険証書のコピー、持ってないのか?と思いつつ、写真を撮って送る。

その後、保険会社の人が来てくれるから大丈夫と連絡が入る。ほっとしたので昼寝をすることにする。ベッドに入り、横になりながら『文章心理学入門』の続きをkindleで読む。案の定気づいたら寝ていて、起きたら30分くらいが経っていた。

起きて、朝できなかったことに取り組む。1週間のふりかえりをし、モーニングページを書く。呼吸法もまた15分する。呼吸を意識していても、言葉が次から次へと湧いてきて、その言葉の流れはおさまる気配がない。何度も何度も、聞こえてくる音や身体に注意を向けることを繰り返した。

その後、内田百閒(ひゃっけん)の『百鬼園随筆』を読む。「日本の随筆の最高峰」と、どこかの本で書かれていて少しずつ読み進めている。誰が言ってたんだか忘れちゃったな。井上ひさしさんのように、文章全体に通底するリズムが聞こえてきそうな文章だ。描写も細かい。知らない漢字もいろいろ出てくる。焙烙(ほうろく)って何だろう?と調べたら、食品を炒るための鍋なのか。知らなかった。その焙烙で、川ですくったメダカを炒ってしょうゆをかけて食べたという話は、そのシーンが映像で浮かんできただけでなく、匂いまで感じさせる文章だった。

いつの間にか17時半になり、夕焼小焼の音楽が聞こえてくる。よい子の皆さんはおうちに帰りましょうの時間だが、運動不足のおばさんは夕方の散歩に出かけましょう。

歩いていると、西の方角の建物の間からギリギリと西日が射してくる。眩しくて目を背けると、東南の水色の空に、レースの透かし編みのような十日夜の月が浮かんでいた。

散歩と呼べるのかわからない距離をぷらぷらと歩いた後、酒の量販店によって缶ビールと、家族みんなが食べるピーナッツのつまみを買った。このあたりでは、このお店でしか売っていない。すぐなくなるので4袋。


両手にエコバックをぶら下げての帰り道、月は白からグレーに濃さを増し、夕闇の空にその存在感を放っていた。歩きながらそんな月を見ていたら、北の空から飛行機がゆっくり飛んできた。真っ直ぐ進めばちょうど月にぶつかりそうに見える高さを進んでいる。気になって立ち止まった。鈍いグレーの機体はゆっくりと月に向かっていく。ぶつかるわけはないとわかってはいても、飛行機が近づくにつれてドキドキする。そして、その瞬間「ああっ」と思う。だが、別に何も起こらない。飛行機はゆっくりと月の前を横切って、南の空に遠ざかっていった。

あっという間の1日だった。まだいくつかやることはあるけど、ほぼ店じまい。ビールを飲んで、のり塩ピーナッツを食べよう。

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