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階段を下りながら、屋久島を思い出した

今日は雨の中、気の治療を受けに行った。自宅からは、地下鉄を乗り換えて片道1時間とちょっとだ。

駅に向かう途中、世の中にこんなにバラを育てているお宅があるのかと驚くほど、各お宅の玄関先に色とりどりのバラが雨に濡れながら咲き誇っていた。バラは育てるのが難しいと聞く。それだけ手がかけられているからこその、きれいさなのだろう。

月曜に抗がん剤の投与があったのだが、前回と比べると副作用の痛みは半減している。前回の副作用がひどかったため、主治医の先生が薬剤を2割減らしましょうという判断をしたからだ。「抗がん剤を減らすと、その分効果も減るんじゃないか?」とじゃっかん思いつつ、痛みに飲み込まれた3週間前のようなひどい状態にはなっていないので、今のところ気分は軽い。

そうはいっても、副作用が出ないわけじゃない。首、肩関節、股関節、膝がキリキリ、ギリギリと痛い。特に階段を降りているとき、急にひゅいっと力が抜けて転びそうになる。家の階段でもそうなので、駅の階段には気をつけなければならない。だが、この時期は外で階段の手すりを触るのもこわいので、手すりのすぐ上に手をスタンバイさせながら、駅の階段を下りた。

そんな風に気をつけていると、ふと以前訪れた屋久島でのことが思い出されてきた。ひょんなことがきっかけで、屋久島縦走ツアーに参加したときのことだ。

※私と同じく登山経験がほぼない方のために補足しますと、縦走というのは1つの山に登ったあと、下山をせずにそのまま尾根伝いにいくつかの山の山頂に行くことです。


7年前、屋久島在住の山岳ガイドのHさんと、参加者2人(ほぼ初心者)という、最少催行人数のたった3人というメンバーで、テントや山小屋に泊まりながら、3日間、屋久島の尾根を歩いた。ちなみに、屋久島には九州最高峰の宮之浦岳があり、それ以外にも黒味岳や永田岳などいくつもの山がある。

そういった山々の山頂を訪れながら、まわりに人はいなくて、たまに出会うのは鹿くらい、雲が見下ろす位置にあるという、「ここは天国ですか?」というような日常ではありえない異空間の中を、ゆっくりペースで歩いた。

最終日の早朝は、前日泊まった山小屋から縄文杉を見に行った。日帰りで訪れる人たちがいない早朝の時間帯が一番ゆっくり見られるので、ガイドのHさんがそういう行程を組んでくれたのだ。おかげでものすごくゆっくりと、じゅうぶんに、「縄文杉の仙人」と対話をし、写真もたくさんとることができた。

そして、いよいよ下山をすることになった。山を下りていくと、縄文杉に向かう団体とひっきりなしにすれ違う。連なる人たちとあいさつを交わしながら、たしかにこれだけ大勢の人がいない時間帯に縄文杉を見られて、本当によかったとつくづく思っていた。

3日間の山ライフを思い返しながら、結構長い下りの登山道や階段を降りて、あと少しで平らな道になるというところに差し掛かったとき、気がゆるんだのか、ずるっと足を滑らせて、思いっきり膝を打ちつけてしまった。

一緒にいた最少ツアーメンバーも、たまたまそのとき近くにいた人たちも、「大丈夫っ!?」と一目散に駆けよってきてくれた。

しばらく痛くて立ち上がれなかったが、少しじっとしていると、多少の痛みはあるものの、骨やスジがいっちゃってる感じはなかったので、「大丈夫です」と言って、再び歩き始めた。

最高の縦走経験の最後にこれか。こうして思い出に土をつけるのが、私だよなーと、ちょっと苦い思いをしながら、3日間の縦走を終えたのだった。


そういう、ずるっと滑って転んで階段を落ちたという、受験シーズンには堂々と書きにくいようなエピソードを思いだし、私ってほんとそういうところあるよなあと思いながら、気の治療から帰ってきて家の前ではっとした。

わが家の玄関は、1階分の階段を降りたところにある。この外階段で、以前雨の日につるっとすべって、尾てい骨を強打したのだ。おそらくヒビが入ったのだろう、1か月以上痛みが引かなかった。

ここで同じあやまちを繰り返してはいけないぞ、自分。

慎重すぎるくらい慎重に、がっちり手すりを摑みながら、一段一段踏みしめて階段を下りた。今転んで骨折なんてしたら、治療がストップしてしまう。気をつけるに越したことはない。

おかげで(?)、今日は治療に出かけて家に帰っただけなのに、何かをやり遂げた気になった。今後もしばらくは、慎重に慎重を重ね、しっかり気をつけていこうと思う。


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大前みどり

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対話ファシリテーター、ワークショップデザイナー。考えたこと、体験したこと、学んだこと、記憶の断片の記録。乳がん治療の日記も。