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またまた、新しい朝活

朝起きて窓を開けると、少し前までは「あっつ~」だったのが、「あれ、あつくない」になり、そして今日、「涼しい」になった。

そうだ、歩きに行こう。
自然とそんな気持ちになった。最近のたまの散歩は15~30分程度のものだったので、もっとしっかりがっつり歩きたいと思っていたが、暑さと虫にめっぽう弱い。だが、今日の涼しさだったら1時間は余裕で歩ける。

朝のいろいろを済ませたら、もう9時を回っていた。今からでも遅くないだろう。今歩いたほうが帰って来てからの仕事が進みそうな気がする。Tシャツとジャージにスニーカー、グレゴリーのウエストバッグを斜めがけにして、歩いて数分の川沿いの道に向かう。

途中、道端の雑草を刈っている4人の職人さんがいた。道端には「なんとか造園」と書かれたバンが止まっている。チェーンソーで刈った雑草を、逆掃除機みたいなもので吹き飛ばしながら集めていて、そのブウィーーーンというモーター音が周囲に響いている。私が歩道を通るときは、危なくないようにチェーンソーをよけてくれた。そうか、道端の雑草もこんな風に誰かが処理してくれているんだなと思いながら、ぺこっと頭を下げて通り過ぎる。

川沿いの道に入ると、一気に視界が開ける。自然と大きく息を吸って、身体の中に空気をたくさん取り込みたくなった。

砂利道の感覚をスニーカーの底ごしに足の裏で感じながら、少し早めのスピードで歩く。春はみごとな花を咲かせる桜の木々たちの葉は虫食いの穴だらけで、風にそよいでいる。セミの声が少し離れたところから聞こえるくらいで、BGMはすっかり秋の音だ。ジジジジ、キューンキューン、リロリロリロという虫の声。どれが何の虫なのかまったく知らないけど。そして川の方からはピチュパチュという鳥の声や、グゴグゴと鳴くカエルの声。どれも姿は見えないが、何かを奏でているように聞こえてくる。それに混じって、チェーンソーのモーター音が遠くからかぶせるように響く。

川の向こう岸に、保育園児たちの集団がいた。20人くらいか。ぴょこぴょこっと黄色い帽子で動く姿が、ひよこのようだ。口々になにかを叫ぶ園児たちの声は、狭い空間だったらおそろしくうるさいだろうけど、こうして広い空間で聞こえてくると、生命の躍動感を感じさせる。そのあたりの空間だけ、生命密度が高くなって、何かが立ち上っているように見える。大げさかな。

そこからまたずっと、川沿いの真っ直ぐな道を進む。今日は行き交う人も少ない。少し進むと、白いフィッシングベストを着た釣り人がいた。フライフィッシングの竿を投げ、川面のウキがスーッと流れていくのを見ている。どんな魚が釣れるのだろうか。釣り人を眺めながらも足をとめずに進み続ける。ときおり吹く風が頬を撫でる。涼しくて本当に心地よい。

そのまま進んでいくと、道路と川が交差する。道路の下をくぐる道を歩いていると、突然、黒いトンボが目の前に現れた。少し飛んではどこかにとまり、近づくとまた少し飛んでどこかにとまる。黒いトンボはつかずはなれずの距離を保ちながら進んでいく。追いかけっこのようだなと思いながらしばらく一緒に歩いた。遊んでいるのか、案内をしてくれているのか。そんなことがしばらく続いたあと、黒いトンボはここまでねという感じでくるっと向きを変え、戻っていった。

しばらくいくと、東洋大学のグラウンド横に出る。川沿いで一番みごとな桜の大木が並んでいる。そこではセミが大群で、ふりしぼるように鳴いていた。そこだけぽっかり真夏が残っていた。鉄道橋が近くにあるので、電車の音も混ざって聞こえてくる。

後ろからザッザッザッザッとランニングする人の足音が近づいて来る。少し端によって道をあける。前方では3人のおじさんが川を見ながら立ち話をしていた。そういえば、さっきも別の3人のおじさんが立ち話をしていた。おじさんたちは川で立ち話をするのがお好きなのかしら。

結構歩いたので身体も汗ばんできて、何より太ももがかゆくなってきた。筋肉があたたまるとかゆくなるのは昔からだ。

30分程歩き、川沿いの道を離れて駅に向かう。うちは2つの駅のちょうど中間くらいにあるのだが、こちらの駅は普段は利用していない。駅の手前に結構急なのぼり坂があるからだ。歩きでも息が切れる。この駅の周りにはカフェが多く、自家焙煎の珈琲店もいくつかある。だが、今日はまだ新・朝活1日目。マクドナルドでいいだろう。今後、続いたら少しずついい店にしていこう。

入り口で手を消毒して、空いていた席を取るために本とハンカチを置き、注文カウンターに向かう。コーヒーだけにしようと思ったが、朝食を食べていなかったので結局ソーセージマフィンセットを頼んでしまった。歩いた意味がないじゃないかと自分でツッコミつつ、朝マック好きなんだもの、しょうがない。トレーを受け取り、確保しておいた席に戻る。

奥に細長い店内はほとんど埋まっていたが、席の間隔が確保されているので広々と感じる。しかもほとんどが1人のお客さんなので静かだ。目線を落としてスマホやPC画面を見ている人、包みを開いてマフィンにかぶりついている人。聞こえてくるのはBGMのなんだかわからない静かな曲と、レジでのやり取りの声やキッチンのガシャガシャとした音、ときおり開く自動ドアの音。

マインドレスにバクバクとハッシュドポテトとソーセージマフィンを食べてから、持っていった文庫本を読む。今通っているマインドフルネス瞑想療法士講座の理論的背景となっているのが西田哲学で、その理解のため。西田の人生の変遷を読んでいると、自分は本当にまだまだというか、執念の「し」の字もないなあという気になってくる。まだまだここから。

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30分程読んでいると、冷房で身体が冷えてきたので、また歩くことにする。2台持ちしているガラホを開いて画面を見ると、3703歩と表示されている。8,000歩以上、できれば1万歩は歩きたい。まだ残っていたアイスコーヒーをゴミ箱の液体の捨て口に捨て、トイレに行って、手を消毒して、店を出る。

その後、まだ行ったことのない氷川神社に寄ろうとスマホで場所を調べる(市内には氷川神社が6つある)。地図を見たというのに道を間違え、ぐるーっと大回りをしてやっとたどり着いた。マクドナルドの袋を下げた若いカップルと、初老の女性がお参りをしている。こちらの神様には初めましてのご挨拶なので、本堂のあと、御嶽社や護国神社の境内社にもお参りをして回った。

そこからさらに足を延ばして、前々から気になっていた陶芸工房を見に行こうと思ったのだが、お参りの間に2か所蚊に食われてしまった。しかも手の甲の、すごくかゆいところだ。出かける前に露出している部分には虫よけスプレーをかけたのだが、神社の蚊は生命力が強いのか、まったくきかなかった。

かゆみが強いのでそのまま帰ることにする。初めて通る道で、方向感覚がわからずスマホをぐるぐる回しながら進んだが、またしっかり間違えて結局大回り。なんとか川沿いの道に戻り、行きとは逆側の岸を歩いて帰る。

行きで追いかけっこをした黒いトンボがまた現れた。同じトンボかどうかはわからないが、さっき現れた場所のちょうど対岸あたりだ。同じように少し飛んではどこかに止まり、を繰り返し、再び追いかけっこの形になった。だが、今の私はかゆみを我慢しているので早く帰りたい。トンボを横目にみながら急ぎ足でずんずく先へ進む。

来るときに黄色い帽子の保育園児がいたあたりに、今度は紅白帽の白をかぶって、両手に軍手をはめた小学2~3年生くらいの集団がいた。おそらく100人以上はいるだろう。何をしているのかと思ったら、みんな虫かごを持って草の中を見ている。バッタやコオロギなどの虫を捕まえているようだ。草むらに夢中になっていて、通る人のことなんて目もくれない。ぶつからないように注意しながら、かきわけるようにして集団の中を通りすぎた。

家についてすぐ、ウナコーワクールを刺されたところに塗り、その上から空気に触れないようバンドエイドを貼る。ガラホを見たら8300歩と表示されていた。

朝、本を読むのもいい。何かを書くのもいい。だけど歩くことで、もっと活力が出てくる気がする。そんな気がする9月の始まりの日。

以前の朝活は、結局3日坊主(笑)

なので歩く朝活は、毎日は目指さず、たまーに、風が気持ちのいいときにしようと思っている。

ちなみに、帰宅して調べたら黒いトンボは「神様トンボ」と言われているそうで、やっぱり何か導いてくれていたのかも? また出会ったら今度はゆっくり戯れてみよう。

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