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行きたくなる場所づくり

 会社で中国語講座を受けていたとき、どうしてあれほど頑張れたのだろうと思う。残業も多くて忙しかったのに、何とかやりくりして出席していた。
 先生は私たちを「同士」と呼んだ。一緒に学ぶ仲間だからというのがその理由だ。まったくの初心者が四声を学ぶところから始めた。熱心な先生の指導にだんだん中国語を学ぶのが楽しくなってきた。先生はいつもほめてくれた。それが自信につながり、中国語検定の勉強も進んだ。いつのまにか、中国語を学ぶことより、その場に行って仲間と勉強する時間がかけがえのないものとなり、二年の月日が過ぎた。
 先生と仲間たちのおかげで、中国語検定の三級まで取得することができた。あの時間は会社生活の中でも特別な思い出になっている。

 そして、私も日本語教師の道に進んだ。最初の頃は日本語に関する知識の習得とどう教えるかということばかりにとらわれてしまって、受講者の気持ちを考えることができなかったように思う。「上手な教え方」を身につけるのに必死だったのだ。でも、あるとき、自分ばかりが話しているということに気がついた。この場をみな楽しめているのだろうかという疑問がわいた。そこから、レッスンの内容が変わった。レッスンの場は私のものではなく、そこに来たみんなのものだ。みんなが楽しく話し、お互いのことを知って学びあう場所を作るのが私の役割だと思った。

 今の私の目標はみんなが行きたいと思うような場所を作ることだ。たとえ、仕事に疲れていても、そこへ行けば仲間たちと会える。そして、いろいろな話ができる。新しいことを学べる。都合でしばらく行けなくても、時間ができたときに行けば、前と変わらず仲間が迎えてくれる。そんな場所を作りたい。それは、物理的な教室でもオンラインのクラスでもいい。そして、ゆくゆくはみなが自分の言葉で発信できるような場も作りたい。みんなが主役になれる場所にしたいのだ。

 単なる語学教室ではなくて、交流を深められる場所づくり。どれくらいかかるかわからないけれど、少しずつ実現していきたいと思っている。

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