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男と女の手料理

うちの夫は料理を趣味にしてくれるような理想的な男ではない。

最初に作ってくれたのは13年位前、私が自殺未遂をしたとき、手首をホチキスの針みたいなもので27か所皮膚を閉じ合わせていた時に、2回作ってくれた。すごく美味しかった。すごく簡単な料理だったのだけど。

折に触れて、あの時食べたご飯は美味しかった、と言ってきたのだが、調子に乗って「じゃあまた作ってみるよ」ということにはならなかった。

そこで去年のクリスマスに、私はプレゼントとして手料理が食べたいといった。夫は割と素直に了解してくれた。

ただ、クリスマス当日に作って失敗したものを出したくない、ということで前週の土曜日にまず料理してくれた。作ってくれたのは「麩チャンプルー」。名前の通り沖縄由来の料理である。

めちゃくちゃ美味しかった。大絶賛した。

要はちぎった車麩とカット野菜を炒め合わせただけの簡単料理なのだが、チラチラ見てた限りでは、夫はレシピ通りにだしの素おおさじ1という風にいちいち計量していた。

食べてから数日たって、なるほど、と思った。長いこと主婦をやってると、おおさじ1とレシピに書かれていても、こんなもんでしょと目分量でさっと調味料を投入してしまう。そしてそれでだいたい美味しくは作れるのだが、やはり基本に立ち返って、おおさじ1はおおさじ1を入れると、本当に美味しく完成された料理ができるのだ。

少し反省した、自分の適当な料理の仕方を。

ちなみにクリスマス当日は、同じ料理をまた作るのもあれなので、と今度は「タコライス」を作ってくれた。

めちゃくちゃ美味しかった。大絶賛した。

ただ夫に言わせると、タコライスは失敗だったようだ。ひき肉を炒めすぎて固くなってしまったのと、大事な食材の一つアボカドを買い忘れてたからということだ。まあ全然問題なく美味しかった。


さて。昨日は1月7日。七草がゆの日である。

夫は七草がゆが青臭くてあまり好きじゃないと以前こぼしていた。そこで私は鶏もも肉1ブロックまるまる炊飯器に入れた。あとは適当に塩とガラスープの素だけの味付けである。

炊飯器をおかゆコースで炊いただけのそれは、夫の大絶賛になった。

要は鶏肉でだしを取って、七草の青臭さを消しただけの邪道な七草がゆである。

一口、口に入れた瞬間「うまい!!」と言ってくれた。噛んでもいないのに。私も食べてみたが、なるほど味がもう噛むより先に舌に乗った瞬間美味しいのである。

こんなのは七草がゆのレシピを見たわけじゃない(邪道だから載ってもいないだろう)。単に鶏肉と一緒に炊き上げれば美味しくできるんじゃない? と適当に作っただけなのだが、そこは主婦ですから、作る前からだいたいこんな味になるだろうという予想はつくわけです。

夫の手料理で、基本に立ち返ろう、と軽く思ったことはさらりと忘れて、やはり適当に調味料をふるうが、まあだいたいこんなもんだろう、で上手くやれてしまうので、基本に立ち返るのはいつのことになるやら…。