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2023年本屋大賞受賞作「汝、星のごとく」

Yuu Nagira

 タイトルの「汝、星のごとく」と「切ない愛の物語」がつながらなかったが、読み終えた今つながった。読むのを中断すると、次の展開が気になって仕方がないほど引き込まれた。

描かれている風景は、私の地元の風景で訪れたことのある場所が多い。もちろんラストの今治の花火大会も観たことがある。20代の頃だったか…私も彼氏と見た思い出が重なった。頭の中に青い海と緑と橋がずっと浮かんでいた。

登場人物は男性:青埜櫂(あおのかい)と女性:井上暁海(いのうえあきみ)の物語が17歳から始まり季節ごとに年齢ごとにすすんでいく。高校時代の場面では、ありがちな恋愛だなと思っていた。

瞳子さんの強い生き方に自分も似ているところがあり、共感ができた。この女性の言葉が物語の中で数回繰り返された。

ーいざってときは誰に罵られようが切り捨てる。
ーもしくは誰に恨まれようが手に入れる。
ーそういう覚悟がないと、人生はどんどん複雑になっていくわよ。

著書より引用

暁海が自分の人生を生きてない時期は、少しいらいらしながら読んだ。いつまで島に閉じこもっているのだろうと思った。なぜ、櫂を追いかけないのだろうと。だが父親が戻ってこなくなり、鬱状態の母親を抱えていたのだから仕方ない。

母親は今でいう毒親なのか。母親の世話をする暁海はヤングケアラーだ。そこが櫂との共通項だ。暁海が母親の借金を背負った頃が転機になった。

暁海は北原先生と結婚した。互助会みたいにというのも先生らしい。北原先生の人間性が好きだった。この先生の言葉や行動は経験した者だからわかる強さと落ち着きがあった。

この物語には色々な問題が絡みあっている。不倫・友の自殺・マイノリティー・教師と教え子の結婚・ヤングケアラー・毒親・緩和ケア

正しさなど誰にもわからないんです。
 だから、きみももう捨ててしまいなさい。

著書より引用

尚人と櫂が、楽しく乾杯した日。また二人は、漫画をやり直せるはずだと思い読みすすめていた。だが尚人が亡くなった。ショックな場面だった。

最後、もっともっと櫂と暁海が幸せに過ごせることを応援していた。本当に運命とは非常なものだと思った。幸せな時は、なぜ続かないのだろう。物語と分かっていながらも理不尽だと思った。

著者の名前にある凪。「凪の海」がよく出てきた。風力0の状態。美しい言葉の数々。
あとタイトルになっている星。金星、夕星。

星の輝きと暁海の刺繍のスパンコールの光は、櫂と暁海の二人の愛の光だと思った。



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